ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

中国五県研究大会の研究協議の様子をお届けします!!

2014-11-13 20:56:52 | 対話型鑑賞
中国五県研究大会の研究協議の様子をお届けします!!


春日美由紀先生 研究授業協議
会場責任者:向陽中学校青木
記録: 第二中学校 飯塚先生・伊藤先生
授業者:大社中学校 春日先生

司会:斐川西中:安部
司会:斐川西中学校の安部と言います。どうぞ、よろしくお願いします。時間配分としては、最初、授業者からの自評を15分程度、最後の指導講評を15分程度、中の協議を30分程度という流れで行いたいと思いますので、皆様のご意見で密度の濃い30分間の協議にしていただきたいと思います。どうぞご協力ください。よろしくお願いします。

まず自評をお願いします。

春日自評: 授業研究においでくださいまして、ありがとうございます。最初に、今日で5回目の取り組みでしたが、これまでの4回までの取り組みについて、生徒に感想を書いてもらっていますので、生徒4人から、今までの対話型鑑賞について話してもらおうと思います。

生徒女子1:私は、この鑑賞を体験するまでは、鑑賞しても今までは、きれいだとか、すごい、微妙ですと言っていましたが、この鑑賞をやるようになって、絵をみることが楽しくなってきました。
生徒女子2:この鑑賞をするようになって、鑑賞すること自体に楽しさを感じるようになった。普段の授業では、間違っているのはいやだなと思っていて余り発言することはなかったのですが、この鑑賞の場合は自由にいえるので、発表することに自信が持てるようになった。
生徒男子1:今は、自信を持って発表できるようになった。同じものをみても、考え方は一人一人違っているのがわかった。この対話型鑑賞という鑑賞方法はマイナー鑑賞方法だと思いますが、この対話型鑑賞という鑑賞が出来て、作品を見て感じたことや考え方はこれからの生活に活かしていけると感じたのでよかったです。
生徒男子2:対話型鑑賞のようなことをして、絵を描くときには、作者の伝えたかったことなど、絵の細かいところにも作者の思いが描かれていたので、自分の作品を描くときにも細かいところまで気をつけて描こうと思いました。

春日:これまでの子どもたちの受け止めを伝えさせていただきました。指導案にも載せてある今年度5月からの取り組みをパワポで最初に簡単に説明します。

今年度閉校になる光中学校の生徒と最初にこの「ひまわり」損保ジャパン所蔵のもので自己紹介をかねて鑑賞しました。このひまわりのどれが自分かということを説明しなくてはならないことから、必然的によくみるだろうなあと思うことを仕掛けました。また、何でそう「考える」のかを言うことで根拠を見つけ、さらによく見るようになることを仕掛けています。また、友達が(見えたことから)どのように理由・根拠を言うのかということで、必然に聞くようになるので、「聴く」も自然に出来るように仕向けました。美術通信の№1,2にもありますが、「見知っている友達なのに、新たな発見が出来た。」「同じものを見ても、考え方が違うことを体験した。」などの感想があるので後で時間があったらみてください。
2作品目では根拠を明らかにして話すと言うことを授業の課題の中心としました。この「椅子」の作品は誰が使う椅子なのかということで、使う人を連想させるものなので、色・形から、どんなイメージを持つのかということを考えさせました。
・椅子の色から木が材料
・椅子の形・構造より手作りの椅子
・椅子の上にあるものや周りの様子から,この椅子を使っている人はおじいさん男の人ではないかと言うことが出てきました。
3作品目は慧可断臂図を見せました。このときは作品の中から根拠を問うことばかりでなく、「そこからどう思うか」と言うこともねらいに3年生ですので、社会の歴史の知識もあり、この断臂図は水墨画の技法を用いた作品、雪舟の作品であるということを導き出していきました。そこからどう思うか、という解釈や自分なりの読み取りができるよう、作品は段階を追って意図的に選んでいます。お寺の子がいて、だるまでは無いかと言うことが後のワークシートの記述でありました。通信を参照してください。
 4作品目は、ベン・シャーンの解放です。前回見せた作品もメッセージ性の高い作品であると思って選んでいます。根拠を確かめながら絵をみるということは出来ているので、作品自体が見る人に伝える何かが有るという作品を選びました。通信を参照して生徒達の記述をみてください。
1クラス、17名しかいませんので、全ての生徒の意見を生徒に返すことが出来たことが、今回の研究では良かったと思います。
評価については、みなさん気になる所だと思います。どこからそう思ったのかについては、より詳細な根拠にもとづいて、話すことは出来るから、話したことを書くことによって自分の中により定着させたいと考えました。
手立てを持たせながら、自己の意見を明確にし、自分の意見を発言もくみ取りますが、発言したことは、書けると思っているので、書けるよう指導しました。
 書けない生徒はどうするのか。という意見もあるともいますが、思ったことは書けるはずなので、思ったことを発言することを通じて、言語化し、それを記述できるようにし、それを評価することは、誤りではないと思っています。
IC機器で検証してきていますが、言ったことは書けているので,『記述を評価することに誤りは無い』と思っています。
それで、次では、生徒はどのように変化したのかも興味があると思いますので、生徒の変容がみられる例を示すと、この生徒です。
書いていることが多くなっていることは,『記述量が飛躍的に多くなっている』。4回目は、人の意見だったり、自分の意見の視点が複数に増えているのでこの子にとっては、3回目から4回目が転機ではなかったかと思っています。
最後に、ワークシートの振り返り評価の集計結果を示します。ワークシートの、自己評価Fの評価は、私にとっての通知表です。
平均値を取ったところで、4なり3なりといった高い評価をしている生徒が9割以上となっています。
 Cの評価が低いのは、意見を言えなかった生徒がいるからで、自分の取り組みを正当に評価した結果です。でも、言うことは出来なかったけれど、書くことは出来ています。
これだけの取り組みをして、今回に臨んでいます。

県立美術館で授業をさせてもらいたいと言うことを早めにお願いしていたので、展示の場所も一番奥の広いスペースの真ん中に作品があったので、鑑賞しやすかったと思います。
ベン・シャーンの作品より、描かれているものが多かったので読み取りはしやすかったのではないかと思います。
オープンエンドで正解はないということは、自由な解釈を認めることなので、生徒からの多様な意見を引き出したいと思いました。
最後に、この授業のエールのつもりでお孫さんからの手紙を読みました。カゴの中には、女の子の赤ちゃんがいるということ。白い服の男の子はお父さんという、草光さんのお孫さんからは紙をもらって、県に草光氏の業績に上がっていって、研究の対象になると良いと思っています。
ご意見、ご提案をいただき、今後の研究にまた役立てたいと思います。
本日はありがとうございました。

司会:安部
提案発表のようにまとめてくださいましたので、わかりやすかったと思いますが、濃い15分にしていきたいと思います。

益田:横田中:松田
対話型鑑賞というマイナーな鑑賞をやっていますが、今までの積み重ねで今日があるというなと思いますが、理由を聞くことが多いな。と、それで、子どもたちを、じっと見ていると,『絵をすごくよく見ているな』と思いました。ただ好きなことを言って、自分ではたまにあることなのですが、言い合って終わりじゃないところが、造形的なねらいと作者の心情に迫る鑑賞になっていたと思います。そこで質問ですが、
Q:島根ゆかりの作者と最初に紹介されましたが、石見焼きのハンドが描かれているので、生徒から島根だという意見は出たのではないかと思うのですが・・・。
A:今のこどもにそれ(ハンド)を島根ゆかりのものだという発見は難しいと思いました。あらかじめ知らせることで、作品に対して、より島根のものだと思って意欲を喚起する、まあ、もともと意欲は高いのですが、刺激になるかなと思いました。

安来:安来一中:中西
Q:教室では、注意をされた点を教えてほしい。
Q:自校ではないところで、苦労されたところを教えてアドバイスをして欲しい。

A:注意は見る。考える。話す。聴く。です。
A:じっくり見るという様子を指導者は観察します。
A:最初は『何とかがある』という言い方しかしないので、最初は、もちろんそういう言い方しかしないですが、繰り返しやる中で、生徒たちは学習するので、形式的なトレーニングかもしれないですが、美術の世界だけではなく、光中の音楽の先生が、音楽をする時、自分たちを出せるようになった。ということを話してくださり、これは、出すというハードルがより低くなったのではないかと、それで、他教科にも反映されているのではないかと思っています。角先生にご理解とご協力をいただいて、この鑑賞方法で鑑賞させていただくことが出来て、周りの先生方の理解もあり、生徒との関係については、お便りを返すことで、添削評価をすることで、関係を作り、今日の読み取りはよく出来ているので、17人しかいないということもあり、あまり苦労は無かったです。生徒たちは、元気で明るく私を受け入れてくれたので、それは、光中学校の普段からの教育の成果ではないかと思って、感謝するところです。

中西:失礼な言い方をするようですが、春日先生が話をしておられる間は顔が下向いていた男の子が、同じクラスの女子の発言の時には、顔が上がった。光中学校の生徒さんは、とてもつながった関係であると思いました。そのつながりを普段から築いておられる光中学校の先生方と教育はすばらしいと思います。また、そのよさを引き出された春日先生もとてもすばらしいと思います。

春日:この春から、この研究大会のために出前授業をさせていただいているこの私を、いつも明るく元気に迎えてくれることを嬉しく思っています。
それは、いつも生徒に関わっておられる光中学校の先生方、光中学校で行われている教育のたまものだと思い、それがあったから、私のようなものがたまに出かけても、好意的に受け入れてくれたと思います。

鳥取県 中野
自分自身が対話型鑑賞をしたことがないので、(今から発言することも)どうかとは思うが、キャプション「四人の子ら」を最後におっしゃっておられたが、「死んだ赤ちゃん」という(生徒発言)のはスルーしても良かったのか?
春日:とても難しい質問だと思います。
「(乳母車の中の子どもが)死んだのではないか」という意見をその場で、その子の意見を否定するのは私の中ではなかった。というのも、どの子の意見も、正しい、正しくないではなく、担保してやらないといけないと思っています。指導案の中で、タイトルを明かすことも盛り込んでいますが、「亡くなった」という意見の後、たたみかけるようにキャプションをいうのはどうかと思われた。初めて今回、作者の身内の方に手紙を書いたのでわかったのですが、そのかごの中には赤ちゃんがいることがはっきりしたのです。この作品だけを見て、かごしか描かれていないことからは、このかごの中に赤ちゃんがいるとも、いないとも、死んでいるともわからないわけです。その時に、どの(生徒の)意見も担保してやらないと感性を育てることに繋がらないと思っています。作品を観て、楽しみ味わうのが重要なのであって、人はひとりでは生きていくことは出来ないから、美術史とか美術研究家がするものではなくて、『子どもたちの意見を確保してやることのなかから考えを育んでいくこと』がこの鑑賞法では、なくてはならないものであって、この中学生の多感な時期にこそ、友達の様々な意見に触れ、自尊感情を高め合ったり、感性を育てることこそ大事だと考えています。答えになっていますでしょうか。

司会:後おひとりだけですが…

愛媛県美:鈴木
今日は、関係者ではないなか参加させていただきました。
今日一番いいなと思ったのですが、授業が終わった後の感想を聞いた生徒さんがいて、「学校と同じで緊張しなかった」と返ってきました。私も美術館にいるものとして、この対話型鑑賞をすることが有りますが、「意見を言えなかった」とか「緊張してあまり意見も言えなかった」人もいますが、『緊張しなかった』というのは美術館の立場ではとても嬉しいです。美術館で普段の授業のようにリラックスして緊張せずにのびのびと意見を言っている姿が見られてとても楽しく思いました。

司会:どなたかもう、ひとり。

出雲第二:伊藤
Q:記録者で申し訳無いですが一つ伺いたいことがあります。
春日先生が(研究に)取り上げられた作品で実際私も鑑賞の授業をしたことがあるが、必ず最後に「実際どんな意図で描かれた作品のなのか」と質問してくる生徒がいます。何時の時代に描かれたのかと言うことと作者の名前は紹介はするのだが、作品の価値もどれだけ伝えていくのか、自分の中で迷いながら(鑑賞の授業を)やることが多いのですが、情報提供の基準があれば教えて欲しいです。

春日:セミナーVTSJでMOMAの元教育関係にいたF.ヤノウィン氏に言われたことを基本にしています。
与える情報は最小限にし、興味のある者が自分で調べる、というスタンスです。今は、いつでも、グーグルで調べられますよね。医大生とやった時は、医大生は興味の度合いが高いので、やっている最中でもググりますね。それでいいと思っています。

指導助言:澄川
中国5県造形教育研究大会、ご開催おめでとうございます。
10分の中でお伝えできることをしたいと思います。
光中3回お邪魔しましたが、良く語る子どもたちだなと感心させられます。
また、本日会場提供してくださった、島根県立美術館にお礼申しあげます。
どこから、美術の言葉で、
日々の積み重ねがあって出てきたものである。
月に一回で前授業の中で培ったものである。
パワポとは、よいまとめをされたと思います。
指導案の中にはなかったのですが、最後、手紙を読まれましたよね。あれ、驚いたのですけど、手紙を読まれた後、がらっと変わりました。手紙を読んでもらって見方は、また変わったのではないかと思います。
私は、お父さんが描いていると思わなかった。
また、ふるさとの実感がもてた。効果的だった。
最後、授業後に、ポニーの女の子が、ボードを持って前に出てきていたので、どうしてなのか聞いてみた。
ずーっと遠くだから、『女の子とお母さんの表情が気になっていて、「もっと見てみたい、もっと感じてみたい」』と、もっと気になるという感性が育っているのはすばらしい。
今回で5回になるが、定期的に実施する効果を、明確にしていかなくてはならない。その中で、高まりを見せないといけない。
今日は、授業を見せていただき、3年生の生徒の大半はこの後、美術というものに携わらない生徒もいるのではないかと思います。その生徒たちに、どんな作品を鑑賞させるべきなのは大事です。
中学校の教員だから、期末で評価もしないといけないから、鑑賞をやる。それは×(バツ)です。まずいです。その鑑賞が次の鑑賞や表現に繋がることが大事。
PDCAサイクルが大事と言われますが、私は、その前にRを付けて、RPDCAが大事だと思います。RはR(リサーチ)で、P(プラン)D(実行)C(検証)というサイクルが大事かなと思いました。
この子達の実態把握(リサーチ)があって、どんな授業をやるのかを考えなければならない。
鑑賞をグループ、ペアでやる、ふせんを使ってやる、色々やり方はあるけれど、この子達がねらいにせまるのには、このやり方が一番合っているというものにして欲しい。
この方法が効果的だというか、狙いがあっての授業なのだ。
全員がBの評価になる授業を作っていくのが大事。
どんな授業をするのかが大事。
共通事項「(記述は省略)」
共通事項という視点が大事。
どこから、色・形・材料から自分がどう思うのか。今一度共通事項を確認して欲しい。位置づけて授業を行って欲しい。あの生徒達は共通事項をもって鑑賞をしていた。
だから、春日先生は作者の心情まで、授業の中で持って行けた。
ワークシートも、文章能力に長けた子が評価されるのではなく、この子がどんなことを感じていたのか、有効な視点だと思うので、今一度共通事項の視点をもって、記述を分析していけば、内容を伴わない長文では意味がないこともわかる。
最後に発表した生徒が、鑑賞を通して、最後まで描くことを丁寧にしていこうと言っていたように、表現で感じとったものが鑑賞へ、鑑賞で感じ取ったものが表現へつながっていくように。
また、別の日に、ある日の放課後、女子生徒の一人が、わざわざ駆け寄ってきて、「美術館の授業を楽しみにしています」と言った一言に尽きる。
どんなことを学んだか聞いたことがありますが、今日の授業で「どんな学びがあったか」が語れる授業であって欲しい。
春日先生に貴重な授業を提供してもらった。

司会:安部
今日の貴重な授業をご提供くださった春日先生、光中で普段より授業を行っていただいている角先生、光中学校の生徒の皆さんに温かい拍手をお願いいたします。(拍手喝采)
以上で研究授業の研究協議を終えさせていただきます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国五県造形研のレポート第2弾です。生徒との対話をお届けします!!

2014-11-09 11:57:31 | 対話型鑑賞
中国五県造形研のレポート第2弾です。生徒との対話をお届けします!!


50分の授業記録ですので、長いですよ。よろしくお願いします。

2014.10.31 島根県立美術館
「四人の子等」草光信成 1927年作
ナビゲーター:春日美由紀

T:はい、じゃあ、始めましょう。

S:気を付け。礼。
S:お願いします。
T:お願いします。

T:はい、じゃあ、今日は、美術館で、いつもはこのように画像を映してみてもらってますけど、今日は美術館さんの協力のお蔭で、本物の作品をみながらと思ってます。で、今日の作品はせっかくなので、島根県出雲市ゆかりの作家さんの作品です。しっかりよくみる。みながら考える。で、自分の意見を話す。友だちの意見を聴く。ということをやってほしいなと思います。今まで4回やってきたので、だいたいね、この授業の流れというのはわかっていると思うので、しっかり、今日も今までやってきた学習の成果を発揮してもらったらと思います。
ふたつ、キーワードがあったよね。
ん?「どこからそう思う」ということと、もうひとつ、「そこからどう思う」っていうのがあったと思います。だから「みる・考える・話す・聴く」という活動をしながら「どこからそう思ったのか」「そこからどう思うのか」ということにもしっかり頭を働かせてほしいなと思います。
では、移動します。
(講義室から展示室へ移動する)
じゃあ、男子が前に。地べたで。ごめんね。
じゃあ、女子が後ろで。
どう、この角度でみえる?大丈夫?OK?
だめよ。男子のお尻蹴っちゃだめよ。
そこ繋げたら、もっとゆったり座れるけど、いい?
ね。まっすぐでもいい?大丈夫?OK?
入った?大丈夫?みえる?大丈夫?みえますか?
はい。それじゃあ、今からこの作品です。いいかな?じっくりみてください。
今、座っているけど、そこのポジションに帰るとして、前に出てきてみていいですよ。せっかくの機会なので。立ってみてもらっていいです。男子も立っていいよ。女子がみえないよ。
はい、じゃあ、みんな立ってみるか。それで、近づいてみよう。もうみたよ。という人は後ろの人と交代しよう。
(みんな立ち上がって、作品の前に移動する。)
ここから出たらダメよ。(作品の前にある柵内に入らないよう指示する。)
じゃあ、男子がよくみたら、女子と交代する?身長差が若干あるので、で、これはね。(非常灯を覆うカバーについて)作品をみるのに明るすぎるから隠しているの。当たってもいいよ。
蹴っちゃいました。
ああ、蹴っても大丈夫だから・・・。
え~、しっかりみれたら、さっきの場所に戻りましょう。
よくみていいよ。
まあ、途中で、出てきてもいいし・・・。
よくみて。遠慮しなくていいよ。みた?大丈夫?
大丈夫?窮屈じゃない?いい?
(みんなが元の場所に戻り、体制が整ったのを確認して)
T:はい。じゃあ、誰からでも・・・。はい。
S1:まず、水色の浴衣を着た女性と奥の赤いリボンを頭に飾り付けた赤い浴衣を着た女の子がいるので、まずここは日本だと思いました。
T:はい。うん。日本。
S1:小さな子供3人と、もう一人女の子一人とおそらく集まってきていると思うので、お母さんだと思うんですけど、あの、水色の浴衣の女性は、で、集まってかごを囲んでいるので、女の子はひまわりを持っていますし、多分かごにはもう一人子供が乗っているんだと思いました。
T:はい、ありがとう。なんかいっぱい言ってくれましたね。みんな言われちゃったよ。って思っても、自分で言ってくれたらいいからね。
T:着物を着た、青い、え、それから、この奥の女の子と言ってくれましたけど、洋服じゃなくて着物を着ている、この着物が日本じゃないかな。だから、この服装からこの絵が描かれている場所は日本じゃないかなと、そういう風に言ってくれたんじゃないかと、と、たくさん子供が描かれていることから、この女の人がお母さんじゃないかな。で、のぞきこんでいるこの中に赤ちゃん?が、いるんじゃないかということを言ってくれました。同じことでもいいし、自分はこう思ったということを言ってください。
S2:Kさんと同じで、青い浴衣?を着ていて、そこからは日本ぽいなと思ったし、あと、その同じ女の人が履いている?下駄を履いているので、そこからも日本のところじゃないかなって思いました。
T:ありがとう。新しい発見として、ここ(指さし)履物に注目してくれたんだね。これが下駄?
S2:下駄に見えました。
T:はい、今のみんなの履いているものとは違うね。様子が。で、Kさんと同じようにこの着物と履物でここは日本じゃないかと言ってくれました。はい、他に?はい、Sさん。
S3:今、日本っていうのは私も思って、ヘチマもあるし、着物の柄とかも日本ぽいなと思って、日本かなと思ったし、みんなでのぞきこんでいるから乳母車かな。と思って、なんか、落葉が落ちていて、結構小っちゃい子が厚着しているから、秋から冬じゃないかと思いました。
T:今、ヘチマがあるって言ってくれましたけど、ヘチマってどこにある?
S3:そこに(指さす)
T:ああ、そこに、(指さしながら)ぶら下がっているね。これがヘチマのようにみえる。いいですか?ヘチマですか?キュウリじゃないか。とかゴーヤじゃないかって、いないか。どうもヘチマだね。で、この子たち(指さす)厚着しとって、枯れ葉も落ちているから秋から冬。ヘチマっていつなるの?
S:口々に:夏
T:どうだ?あれ?考えて・・・。ヘチマがなっとるけど、枯れ葉が落ちていて、で、子供の服はちょっと厚着っぽい。季節はいつなの?はい。考えるね。ヘチマは夏だよ。枯れ葉はなんか秋っぽいよ。この子たちは厚着してるよ。さあ、季節はいつなんでしょう?ってことも考えないといけないね。他に?
S4:私もみんなが言っているように、ここは日本で、青い着物の人が下駄?を履いていることや枯葉が落ちていたり、男の子の足下は土で、乳母車もあるから、ここは外だと思います。
T:えっと、今、たくさんのことを言ってくれたけど、地面が茶色っぽい?茶色っぽいことから何をイメージした?
S4:土。
T:ああ、土。ね。ここなんかね。(指さしながら)土っぽい。で、枯葉も落ちている。それから、よく見つけてくれたよね。乳母車の車はどこにある?
S4:足のところ。
T:ああ、ここにあるね。(指さしながら)で、こういうものは外で使う。だから、ここは家の中じゃなくて家の外じゃないかな。と。だから、日本という国じゃないかな。ということと、地面が土っぽい、茶色に塗られてて、土っぽいから、だから、ここは外じゃないか。枯葉も落ちているし。で、これは車輪もついているし、真ん中にあるカゴは乳母車じゃないかなというふうに言ってくれました。
T:はい、他に。
T:ああ、さっき男子、ダダダダって手が挙がってたのに、ない?みんな言われた?はい。
S5:まあ、さっきの季節の話なんですけど、僕は秋っぽいなと、夏の終わりから秋の初めかなと思って、その訳は、落葉も落ちているんですけど、髪にリボンを付けた女の子が手に持っているのがひまわりだと思って、ひまわりが枯れているので、夏の終わった感じがひまわりをみて思ったので、秋の初めごろでちょっと寒いので下にいる男の子二人は袖なしを着ているのかなと思いました。
T:なるほど。ありがとう。ちょっと待ってよ。いま、ひまわりは枯れていると言ったけど、どこから枯れているってことを自分は考えた?
S5:えっと、ひまわりの葉っぱの数が少ないので、ちょっとまあ、葉が落ちて、あ、花が落ちて、枯れ始めているのかなと思いました。
T:花が落ちている状態と、枯れているんじゃないかなというヒントはどこからくる?
S5:ひまわりの黄色っていう輝きが少ないので、枯れているかなっと・・・。
T:ああ、輝きがない!!
S5:はい。
T:色が、ねえ、枯れたっぽい。
S5:はい。
T:みどりみどりしてないもんね。で、枯れているから、まあ、秋かな?と。あの、ちょっと寒い。夏から秋。だからこの子たちは袖なしを着ている。はい。男の子って言ったけど、ほんと?なんで男の子だと思った?どこからそう思うだが?どこから男の子だと?
S5:え~、まあ、まあ小さいのであれかも知れないですけど、ちょっと髪の感じとかが男の子の坊主かな。と思ったので、男の子かなと思いました。
T:ああ、なるほど。この髪の短さが男の子じゃないかと。はい。男の子。女の子じゃないかな?て人いる?いないか。みんな男の子だと思っている。なるほど、じゃ、男の子。はい、じゃあ、男の子の服装とひまわりの枯れた感から、季節が夏から秋くらいなんじゃないかなという風に言ってくれました。さっきの何だか季節の謎が解ける答えがA君から出されたけど、別にそうじゃないよっていう人がいてもいいよ。
T:はいじゃあ、他に?
S6:えっと、また季節の話になるんですけど、最初、まあ、Kさんがリボン付けた女の子はひまわりを持っておられると言っていて、まあ、自分もそう思ったし、あと、右上の端っこの方にある黄色い花が自分には朝顔にみえたので、まあ最初は夏かな。と思っていたんですけど、ヘチマの若干緑から茶色が入っているところがあるところから、秋になりかけているのかなと思ったので、やっぱりAさんが言ったように、夏の終わりから秋にかけてかな。と思いました。
T:なるほど。友だちの意見を聴きながら、季節について考えていると、ヘチマの色がもっとよくみえてきたんだね。で、緑のところに若干茶色がかったところがあるのがみなさん分かりますか?分かる?この辺りかな?ここが、枯れかかっている。で、季節が夏から秋に変わっているときじゃないかなって言ってくれました。何となく季節がそんな感じじゃないかなっていうのが分かりかけてきてますけど、あと、ほら、真ん中に何かあるよね。さっきから乳母車っていう話題が出てたんですけど、ちょっと、あそこを何かみて、意見のある人いませんか?
T:はい。
S7:まあ、私も言われたように、白い服の男の子が足を掛けていたりとか、カゴみたいなものをみんながのぞきこんでいるから、私も乳母車かなと思って、それの周りを囲んでいる右下の男の子二人が、青い着物の人に、ちょっとなついているっていうか、手を差し出している感じから家族かなと思いました。
T:この子が(指さしながら)のぞきこもうとしている。この人たちは(指さしながら)手を差しのべていることから、この人になついている。から、この人たちは家族かな。はい。他に。
T:はい。お願いします。
S8:えっと、まあ、さっきも言われたんですけど、あのカゴにタイヤが付いていたりとか、あの、こう、着物を着た女の子とか、あの、のぞきこんでいるから、あの中には赤ちゃんがいると思ったし、あの、手前にいる小さい男の子が、なんか、あの、その、青い着物を着たお母さんだと思う人になんか抱っこしてほしいみたいな感じから、なんか、その、お母さんは何か赤ちゃんをお世話しているけど、なんか、その二人の男の子はお母さんにかまってほしい感じかなあと思いました。
T:ああ、なるほど。お母さんが、この乳母車の中には何があるの?いるの?Mさん、どう?この乳母車、みんなのぞきこんでいるけど、空っぽ?ん?
S9:赤ちゃん。赤ちゃんがいる。
T:んん?もうちょっと大きい声で!!
S9:赤ちゃんがいると思います。
T:ああ、赤ちゃんがいるのね。Kさんが最初に言ってくれたけど、赤ちゃんがいるんじゃないかと。それでのぞきこんでいるのではないかと。で、この二人の小っちゃい子は、お母さんがそっちに気を取られているから、僕たちもかまって!!って。なのかな?この手は(指さしながら)、どうでしょう。Nさん。
S10:私は、どちらかと言うと、その子たちも赤ちゃんが見たいから、お母さんに「見せて!」って言ってるんじゃないかと思います。
T:見せて!!って、抱っこして見せて!!ってみたいな、アクションで。ということですか?
S10:はい。
T:ということは、どうやらこの中に(指さしながら)、赤ちゃんがいるんじゃないかなあと、いう感じですね。
T:はあ、じゃあ、みんなちょっとよくみてよ。赤ちゃんがいるのをお母さんとこの人は誰だ?(指さしながら)、生徒の方を確認しながら、お姉さん?で、みているけど、ちょっと顔みてよ。は?ちょっとあの顔みて、何か思うことない?
(しばし、沈黙・・・。食い入るように絵をみる生徒達・・・)
T:男子。男子どう?はい。
S11:お母さんとお姉さんが、何か笑ってないから、まあ、色んなこと考えたんですけど、この乳母車の子どもが死んどる。
T:おおっ。なして?
S11:と、ひまわりの花が、あれみたい。葬式の時に、花とか入れたりするじゃないですか、あれにみえたり、乳母車が少し腐っとる、何か緑色みたい、使い古されたみたいな感じで、死んどるような気がする。
T:ああ、それは、この二人の表情が、笑ってないから。
S11:はい。
T:と思う。うん。そんな風に、表情から読み取れることないですか?今、衝撃的な、中の赤ちゃんが、亡くなっているじゃないかという発言も出ましたが、どうでしょう?
T:はい。
S12:Hさんは、ちょっとかわいそうで、不幸で明るそうな表情ではないと言ったのですけど、そうはみえるかなと思ったんですけど、微妙にちょっと微笑んでいる?というかそんな風にもみえるんじゃないのかなと思って、で、さっきみんなが言ったように、なんか、その二人の小さい男の子とかもみたいって感じで、お母さんにねだっている感じがしました。
T:みせて、みせて!!ってせがんでいるのだから、やっぱり赤ちゃんは生きていて、でもちょっと、なんか、微かに微笑んでいるような、だから、満面の笑みではないけど、この中に赤ちゃんはいるのではないかと思うわけですね。で、生きている?
S12:生きている。
T:生きている。はい、他に、どうでしょう。表情から・・・。
T:はい。Sさん。
S13:今、絵をみて、悲しんでいるとか、喜んでいるとか、ちょっと分かんなかったんですけど、でも、あの、もしHさんが言ったみたいに、カゴの中の子どもが死んでいるとしたら、なんか、無表情じゃなくて、もっと、泣いたりしているんじゃないかなっと思ったので、まだ、自分の意見は考え中なんですけど、死んではないのかな。と思いました。
T:なるほど。死んではないのではないかと。でも、なんか、死んでいたらもっと泣くんじゃないかなと。でも、じゃあ、この微妙な表情はなんなんだろうと・・・。
T:いい、みんな。「どこからそう思うか」はいっぱい言って、みましたね。で、だいたい人物関係は家族じゃないかなと、家族?じゃないかなと?うん。子どもとお母さんだよね。ええ~~~。私、今、みんなに、ここ、投げとるよ。子どもとお母さんだね。はい。で、家族じゃないかなと、で、男の子とお姉さん、で、お母さん、このカゴの中に赤ちゃんがいるんじゃないかなと、で、描かれているよね。で、季節も何となく、場所も、何となく、みんな、そうなんじゃないかなというところで、えっと、意見がまとまってきているけど、じゃあ、「そこからどう思う」の?お姉さんやお母さんの表情だったり、この二人のこの仕草だったり、お母さんと子どもだったり・・・。
(沈黙・・・。かなり長い・・・。)
T:じゃあ、Oさんから。
S14:今、子どもとお母さんで、お母さんはたくさんの子どもを育てないといけないから、お母さん、今、笑ってない、今、ちょっと疲れたっぽい顔をしていて、ちょっと子育てに疲れているのかな。って思いました。
T:ああ、なるほど。子どもがまた5人目が生まれて、私育てるの大変だわ。みたいな。で、疲れている。なるほど。はい。新しい意見。「そこからどう思うのか」って、自分の意見を言ってくれました。はい。今、そういう意見欲しいよ。はい、どうですか?
S15:はい。今までの自分の意見をまとめて、小さい男の子が、かまってって、言ってるのとか、赤ちゃんをみんながみている、のとかから、とても幸せないい家族なんじゃないかな。と思いました。
T:幸せないい家族じゃないかなと、お母さんに抱っこ抱っこってせがんでいる子の様子とかみて、で、すごく幸せな家族なんじゃないかなと、いう風に思う。なるほど。
T:はい。どうぞ。
S16:私は、Oさんの意見から考えたことで、Oさんの言われたとおりに、お母さんも恐らく娘さんの方も何か、無表情で、しかもちょっとぐったりしているというか、あの、手をカゴに置いている様子からみて、脱力気味にみえたので、で、そして3人の男の子は、乳母車に見られるものに足を掛けて登ろうとしていたり、後残りの二人の男の子は、多分お母さんに甘えようとしているから、手をのばしていると思うんですけれども、やんちゃそうな感じがしたので、お母さんとお姉さんは疲れたような顔をしているようにみえたのは、その世話に手を焼いていて、だから、そんな風にちょっとぐったりしているようにみえました。
T:ああ、Oさんの意見に自分も、こう、触発されて、みたら、表情がない。表情がないと思ったのはどの辺からそう思った?
S16:えっと、まず、女の子の目とお母さんの目が、何となく、虚ろと言うか、下を向いていたので、女の子は斜め下の方を向いて、お母さんはもうそのまま下の方を向いて、視線が下がって、頭もちょっと、傾きからみて、ちょっと、疲れているような、力が抜けているから、頭が傾いて疲れているようにみえました。口元も、なんか、ちょっと、笑おうともしているような感じでもないし、どんな表情をしているかよくわからないし、とりあえず口元が上がってない、口角が、まず、だから、表情が出ていないと思いました。
T:なるほど。表情が出ていない。口角がこう、上がっていると、笑った顔になるけど、口角上がってない。下がってもないし、上がってもない。つまり表情がない。口角からそういう感じがする。唇の描かれ方からそういう風に思われる。で、じゃあ、この目線は、カゴの中の赤ちゃんをみているというよりは・・・
S16:お母さんは、赤ちゃんをみているようだけれど、お姉さんはカゴの外側の方に視線が行っている。カゴの中の赤ちゃんをみているかもしれないけれど、それよりはカゴの外の方を向いているような気がします。
T:なるほど。この目線の先は(指さしながら)外になっているんじゃないかな。と。
S16:もしかしたら、そうかも知れないし、やっぱり、中をみているとしても、明るい表情にはみえないので、あと、肩の力も抜けて、なで肩状態、下がっているようにみえた、カゴに寄りかかっている、脱力、疲れている。
T:やんちゃな男の子の世話に疲れ、また、赤ちゃんができて、喜んであげたいけど、なんだかお疲れモード、みたいな感じですか。
S16:そうみえました。
T:はい。というふうに言ってくれました。男子、どう?はい、S君。
S17:はい、あの、青いお母さんらしき人の、まあ、顔っていうか、目がなんか、一点を見つめているっていうか、物をみようとしてみていない、っていうか、なんか放心状態。何も考えていないような感じで、あの、赤い服のお姉さんぽい人も、苦笑いっていうか、なんか、まあ、みんなも言ってたんですけど、うれしそうじゃないっていうか、まあ、落ち込んでいるような様子から、僕の解釈は、まあ、ほんとは、次の子どもが生まれる予定だったけど、流産かなんかで、産まれなくなって、ほんとは産まれる予定だったのに、みたいな感じで、お母さんは中を、空想の赤ちゃんをみてて、子どもは事の重大さを分かってなくて、いつも通り甘えようとしている。
T:なるほど。ということはあの中に赤ちゃんはいない。と、S君はみんなの会話の中から思ってしまいました。みたいな感じ。はい。表情から、もしかしたらカゴの中の赤ちゃんは、亡くなっているんじゃないかなあ。本当は産まれるはずだったのに産まれなくて、空のままなんじゃないかなあ。やあ、やっぱり赤ちゃんはいて、で、も、ちょっと、子育てにお母さんは疲れているかなあ。というような、みなさんこの絵から、読み取りをしてくれていますけど、「そこからどう思う」ってことを考えてくれているんですけど、もうひとつ投げてましたね。お母さんと子どもだよ。じゃあ、お父さんは?どうなの?ええ、みんなの中には家族っていったら、お父さん、いなくてもいいの?どうだろう?どうだろう?
T:ええ~~、たくさん挙げてくれましたね。じゃあ、1.2.3の順で。
S18:着ているものから、今の平成の時代じゃないって思って、それから、右上のところにちょっと空がみえるんですけど、そんなに暗くないので、まあ、昼とか夕方かな。と思ったので、で、なんか昔は、女の人は家にいて、男の人が働きに行くというような考え方だったと思うので、お父さんは今、仕事に行っているんじゃないかなと思います。
T:なるほど。ええ、ちょっと日本でも時代が昔、女の人は家にいて子育てをして、お父さんは外に仕事。で、あそこが(指さしながら)外?空?
S18:空
T:空で、暗くないから、昼?
S18:夕方。
T:夕方かな。で、お父さんは仕事で今いない。ということでした。はい。
S19:私は、なんか、やっぱりカゴの中には赤ちゃんがいると思って、まあ、あの、お母さんは笑ってないし、うれしそうじゃないから、悲しいことがあったんだろうと思って、で、お姉さんも、何か姿勢が傾いているし、視線は何か中の赤ちゃんをみているかなあ、と、思って、まずその、お父さんがうつってないから、なんかお父さんは別にすぐ帰ってくる人ならそんな悲しい顔はしないと思うので、戦争に行っているとか、まあ、遠くに行ったとか、で、何かもう会えないところにいるのかなあ。と思いました。
T:ああ、なるほど・・・。このお母さんの表情はお父さんがいない、すぐ帰ってくる、仕事に行って帰ってくるっていう状況じゃなくて、戦争に行っているのかも知れない。あるいは、遠くに仕事に行って、しばらく帰ってこられないかも知れない、から、悲しい表情じゃないかなと。
S19:子どもとか、白い人(白い服を着ている男の子)は乳母車に登ろうとしていて、そういう時、普通親だったら、注意とかすると思うし、なんか前の男の子が、お母さんに何か話しかけている、上をみているけど、お母さんはそこも見てないし、乳母車の中に視線があるから、何か、考え事っていうか、Hさんが言ったみたいに、放心状態っていうか、何かそんな感じじゃないかなと思いました。
T:え~~、ということは、何だろう、ざっくりいうと、お父さんいない、で、お母さん、何か不安。子どもいっぱいいるし・・・。ちょっと私大変なんだけど・・・。で、なんか、放心状態っていうか、考えられなくなっているという感じで、ここにいるんじゃないかな。子どもが、お母さん、お母さんって言っているのにみてないし、子どもが乳母車に中のぞこうと思ってあがっていても、ちょっとやめなさいって言ってないし・・・。
S20:私は、子どもは乳母車の中にはいると思うんですけど、お姉さんの方とか、お母さんらしき人の顔が笑っていないので、あの、なんか、心配事があって、お父さんが、どこか遠くに出稼ぎに行っていて、行方が分からなくなっているから、あの、お母さんの方が、どこに行ってしまったんだろうと、心配しているんじゃないかなと思いました。
T:なるほど。お父さんがいなくて、行方が分からなくなって、お父さんいなくなってどうしましょう。子どもたくさんいるし・・・。って、感じですか。
T:で、今、こうやって、たくさんの読み取りをしてくれましたが、この絵をみた時に、あなたたちは、この絵からどんなメッセージを受けるんですか?この前も言ったよね。前みた作品も、何か描く人は、描くことによって伝えたいものがあるんだよって、考えたよね。ベン・シャーンの解放みた時にも。じゃあ、この作品はどうなの?今、色んな読み取りをしてくれましたけど、聴くと、ああ、そうかも知れないな。と思えるように、ちゃんと根拠に基づいて自分なりに解釈して、ああ、そういう考え方も確かにあるなと、みんなここで認め合っていると思います。で、友だちの意見で、そうだなって思うことは自分の意見の中にも取り入れたよね。誰々さんも言ってたけど、とかっていう言い方もしたし、誰々さんと同じで、とか、誰々さんが言ってくれたので、自分もこんな風にとかって、そうやって読み取ったこの作品からみんなは何を受け取るの?
(沈黙・・・。)
T:何を受け取るの?この作品はみんなに何を語りかけているの?
(沈黙・・・。)
T:では、それを書きますか。今日の授業の最後10分になったので、色んなことを読み取りました。みんなの言っていることは、きちんと、ここ、ここは、こうだから、こうじゃないかなって、根拠に基づいて、「どこからそう思ったか」について、で、「そこからどう思うか」を話してくれました。で、自分なりにこう思う、という解釈をしてくれました。これはみんなが絵をみて、絵から読み取ったことです。じゃあ、読み取ったみんなはこの絵から何を受け取るのでしょう。メッセージを。それをじゃあ、書きましょう。バインダーをもらってください。鉛筆付いてるし・・・。えっと、そこで書いてくれていいし、近づいて、もう1回みたかったら、近づいて書いてくれてもいいです。消しゴムは鉛筆の後ろに付いているので・・・。
書きやすい形で書いていいよ。
(静かに書き始める・・・。記述時間は約10分)


T:ごめんなさい。まだ、書いている最中だと思いますけど、美術館なので、チャイム鳴りません。時間が来てしまいました。ちょっと、書いている物を置いて、顔を上げてもらっていいですか。いい?はい、あのね。この作品を描いたのは、ここにもあるように(キャプションを指さす)、キャプションがあるんですけど、草光信成(くさみつのぶしげ)っていう、島根県出雲市今市町の出身の画家です。で、お孫さんがおられます。そのお孫さんに、この作品を使ってみなさんと授業するんでよろしくお願いします。というお便りを出したら、返事が来たんで、最後にちょっとそれを紹介して終わりたいと思います。
(手紙の一部を省略しながら読む)
 え~、丁寧なお便りを拝受しました。祖父の「四人の子等」を授業で使われるというお話、大変ありがたく思います。閉校する中学校の生徒達にも良い思い出になるような授業となりますよう願っております。地元の方々が、いつも、祖父の作品を大切に思っていただいているのを知り、うれしく思います。え~、「四人の子等」の乳母車に乗ろうとしているいたずらっ子は私の父です。え~、祖父はいつも祖母のことを描いていました。怖い祖母でした。楽しく素晴らしい授業をしてください。草光俊雄。
え~、このお手紙をくださった方は、この人(白い服のいたずらっ子を指さしながら)を父に持つ方です。え~、みなさんと楽しい授業が1時間できてよかったなと思います。書きかけのものは全部書いて書き終えてから、帰りましょう。じゃあ、座ったままでいいので、姿勢を正して、終わりの挨拶をしたいと思います。

S:気を付け。礼。
S:ありがとうございました。
T:ありがとうございました。
(拍手)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お待たせしました!!中国五県のレポートをお届けします。

2014-11-08 12:52:35 | 対話型鑑賞
お待たせしました!!中国五県のレポートをお届けします。


大変お待たせしました。中国五県造形教育研究大会の報告をします。
画像で当日の流れは追えると思いますので、みてください。

掲載する文面は生徒の作品に関する記述です。当日の鑑賞中の対話のやり取りも文字起こし中ですので、しばしお待ちください。

中国五県造形教育研究大会 授業公開(島根県立美術館)でのみなさんの作品解釈をお届けします!!

まずは、ふりかえりの集計から

授業のふりかえり(数字は評価の人数。左から順に 4 3 2 1と評価。4の方が上位)

    A しっかり絵をみることができた 15人 2人 0人 0人
B 絵を見てしっかり考えることができた 16人 0人 1人 0人
C 自分の意見を言うことができた 10人 2人 2人 3人
D 友だちの意見をしっかり聞くことができた 14人 1人 2人 0人
E 友だちの意見を聞いて、自分の考えをより深めることができた 14人 2人 1人 0人
F このような鑑賞をまたやりたい 13人 3人 1人 0人

 今回の作品は前回に続いて「どこからそう思ったか。」に加えて「そこからどう思うか。」についても考えるように促しましたが、みんな真剣に作品をみて、考えて、話してくれましたね。郷土の作家の作品であることもみんなの興味を引いたのではないかと思っています。最後にお孫さんからの手紙を紹介しましたが、その反応のついても授業を参観しておられる先生から空気が変わったと評されました。また、たくさんの生徒の手が挙がったことや、みんながとてもたくさん話せることにも参観された先生方はとてもびっくりしておられました。また、私のこの鑑賞活動の同志である愛媛県美術館の鈴木学芸員さんも参観してくれていましたが、みんながリラックスして鑑賞活動を楽しんでいる様子がみられてとても感動しておられました。岡山大学の先生は、みんなの鑑賞の様子を見て、自分も燃えてきたとおっしゃって、大学に帰ったら学生相手に燃える授業をしようとおっしゃっていました。
 みんなの真剣で前向きな授業への取り組みが多くの先生の心に驚きと感動を残したようです。私も本当に楽しく充実した授業になりました。みんな、本当にありがとう!!
 では、最終回なので、全員の全文を紹介します。大量だけど、最後まで読んでくださいね。すべての人の記述の後に、私のコメントも※で入れています。

(男子)
 今日のこの絵は家族だと思った。この青い服を着ている人はお母さんではなくておばあさんだと思う。あの乳母車の中にはなにも入ってないと思う。
※どうして青い着物の人のことをおばあさんだと思ったのかを根拠をもとに書いてくれると、新たな解釈が生まれたかもしれません。また、乳母車の中に何も入ってないと考えたのもどうしてなのか、それを書いてくれると、その考えを聞いた人が、また新たな見方をしてくれたかも知れません。理由を書いて欲しかったです。
(女子)
 これまでの自分の意見とみんなの意見を合わせて、私は青いゆかたをきて、げたをはいている女性をみて、まずここは日本だと思い、赤いリボンを飾りつけたゆたかの女の子と、ぼうず頭から見て、三人の小さい人は男の子と思いました。みんなが集まっているところから見て、4人の子供は青いゆかたの人の子供で、中央の物は車輪がついているところから乳母車だと思い、お母さんと子供たちがのぞきこんでいる様子から、赤子がいると考えました。しかし、娘と母の顔は口角が上がっても下がってもないので無表情に見えたし、男の子が母にあまえようと手を伸ばしているように見えているが、母は気にしている様子もなく、白い服の子が乳母車に足をかけて登ろうとしていても、母は注意する様子もなく、乳母車に視線が落ちているし、娘も乳母車の中に視線が落ちている上、2人の目は何かを見ようとしているような目にも見えないので、放心状態かなと思いました。そして、娘が手にしている花はヒマワリに見え、左上の作物はヘチマに見えました。そして2つとも茶色がかった、今にも枯れはじめているようなくすんだような色をしているし、2つとも夏に育つ物なので季節は夏の終わりから秋のはじめ頃に思えます。この絵には父親の姿がないので、父は遠くに行っていると思います。娘と母が子供を前にして表情がないのは、3人の少年がそれぞれにあまえようとしたり、乳母車によじ登ろうとしているところから見て、3人ともやんちゃな子だろうから、娘と母とで3人の子の世話で無表情になるのなら、考えなしに子を何人も産むなという教訓を教えられたようなことを感じました。とてもおもしろかったです。みなさん、ありがとうございました。
※女の人と女の子の着ているものは浴衣ではなくて着物でしょうね。最近のみなさんにとって着物が身近ではないから、着物のようなものは浴衣と思ってしまいますね。でも、女の人は白い足袋も履いているので、履物も下駄ではなく草履だと思います。服装の名称は違っていましたが、言いたいことは、服装を見て日本人であり、日本で描かれた絵であるということが言いたかったのだと思ったので、授業の場では訂正しませんでしたが、この場で伝えておきます。そして、描かれている沢山のものをみて、季節や人間関係や、お母さんとお姉さんの表情からもいろいろなことが考えられましたね。子どもがたくさんいて育てるのに苦労をしているから、子どもを産むのは考えた方がよいということを言いたかったのではないかと考えていますが、この時代は、子どもが小さい時に病気で亡くなることも多く、たくさん兄弟がいても大人になるまで育つのは2人か3人という時代だったので、子どもはたくさん産みました。でも、やんちゃな男の子が多いと、育てるのは大変で、お母さんとお姉さんは確かに疲れていたかも知れませんね。
 (女子)
 今回この絵をみて、青い着物を着た人がお母さんで、女の子や3人の男の子は青い着物を着た人の子どもだと思いました。この家族には家にお父さんがいないのかなと思いました。理由はこの絵にはお父さんがうつってないし、女の子やお母さんが笑ってないから、お父さんが遠くに仕事に行ったり、戦争に行ったりしているのかなと思いました。だから、この絵が伝えようとしていることは、家族といる時間を大切にするということかなと思いました。
※この絵が伝えたいことは何だったのかという最後の問いに、きちんと答えてくれています。「家族といる時間を大切にする」ということが伝えたかったのではないかという読み取りは、とっても素敵です!!
 (女子)
 私は女の子の持っている花がヒマワリに見えて、それに茶色がかったヘチマや小さな子供の足下に落ちている落葉から季節は秋だと思いました。そして、みんながのぞいてみているかごみたいなのに、タイヤもついているから乳母車で、中にはみんなが珍しそうに見ているようにも見えるから、最近生まれた赤ちゃんがいると思います。左側の子どもの服がベルトみたいなのをしていたり、女の子がリボンを付けているから、和服を着ているけど、そんなに昔じゃなくて、大正から昭和にかけての時代に見えます。右の母親みたいな人と女の子があまり楽しそうな表情をしてないようなので、この絵はお父さんが戦争に行ってから乳母車にいる赤ちゃんが生まれて、そのお父さんが赤ちゃんを見らずに戦争で死んでしまって、悲しんでいる様子に見えました。
 この絵から、お母さんが「この子を見せてあげたかった・・・。」みたいなことを言っているようで、家族を思う気持ちが伝わってきました。
※いろいろなものをよくみて、しっかり考えていますね。細かいものの色の変化にも気付けています。また、服装などから時代を考えているのは、他教科の知識も活かせていますね。お父さんが描かれていないこととお母さんと女の子の表情を関連付けて、お父さんは戦争に行っている。と考えたのも理に適っていますね。そこから「家族を思う気持ち」をメッセージとして受け取れています。悲しさはあるけれど、家族を思う心温まる作品として受け取れていますね。
 (女子)
 私はこの絵から、みんなの意見もふまえて、やっぱり家族なのではないかと思いました。でも、お父さんがいないことから、着物を女性が着ていることから、昔の時代だと感じたので、お父さんは戦争に出てしまったのではないかなあと思いました。私は、最初の方は微笑んでいると思いましたが、やっぱりそうではなくて、戦争にお父さんが行って、家にはいなくて、寂しいという感じだと思いました。でも、手前の小さい子たちはその事の大きさを感じていなくて、手をのばしてお母さんに甘えて無邪気な感じだと思います。この絵から、戦争は家族に大きな寂しさと悲しみがあるということを伝えたいのではないかなあと思いました。
※女性の服装、表情とお父さんが描かれていないことから、この人もお父さんは戦争に行っていると考えたようです。でも、そこから受け取ったメッセージは「戦争は家族に大きな寂しさと悲しみがある」ということで、この感じ方はこの人自身の感じ方で、今までの人と違っていて、とてもいいと思います。この人に限らず、同じ作品をみても、感じ方は人それぞれに違いがあるということがこの文章からもわかります。「みんなちがって、みんないい。」(金子みすず)
って、本当に、こういうことなのだと思います。
 (男子)
 多分時代は戦時中の日本、明治~昭和で、季節は夏の終わり~秋上旬だと思いました。家族のお母さんらしき人物と頭部に赤色の物体を身に付けている女性が着物を着ていることから明治昭和ごろなのではないかと考えました。季節の方はアサガオ、ヘチマ、オチバなど季節感たっぷりの風物詩がたっぷりと描かれていたので季節は夏の終わり~秋上旬くらいかなと思いました。
※作品を詳細に観察して自分の考えを構築していますね。「どこからそう思う」がきちんとできています。できれば「そこからどう思う」も記述してくれるとよかったのですが、記述時間が短かったので時間切れだったのが残念です。
 (女子)
 私は、この絵はゆりかごもあり子供たちもお母さんもその中をのぞいているので中には赤ちゃんがいるのではないかと思います。しかし、赤ちゃんが産まれているというのにお父さんらしき人の姿が見えません。しかも大きい物心がついていそうな2人のお姉さんとお母さんが笑っておらず無表情です。普通、赤ちゃんを見て笑わないでいられる人は私はいないと思います。そのため、私はお母さんが赤ちゃんを見ながら全く別のお父さんの心配をしているのではないかと思いました。以上のことから、私はいくら多人数でも、一家の大黒柱がいないというのはさみしいことなのだなと思いました。これは、私も何となく分かります。私の父も度々仕事でどこかへ行くので、何か心許ない感じです。
※やはりこの人もお父さんが描かれていないことと女性二人の表情からこの人なりの読み取りをしています。この人はお父さんの不在を自分の家でお父さんがしばしば出かけ不在になることを関連付け、父の存在の大きさを感じていますね。やはりこの人も同じ絵なのに、この絵から自分なりの感じ方ができていて素敵ですね。
 (男子)
 今日僕が見た絵には人は一人では生きてはいけない。協力して生きていくから人なんだということを感じ取れました。
子供がたくさんいて一人で子育てしていくことは大変なので親一人よりも二人のほうが上手くやっていけると思うので協力して生きていくことはとても大事なことだと思います。
 核家族化が進む世の中ですが、おじいさん、おばあさんなどの支援を受けていき、そして協力していくことがこれからの世の中の課題だと思います。
※この人は、読み取りを省略し「そこからどう思う」だけを書いてくれました。そしてこの人も他の人と同様に、この人にしかできない解釈をしてくれました。そしてこれからの社会のありようについてまでも触れてくれています。この作品の持つ力の大きさを感じますね。また、この人もきっと温かい家族(おじいさんやおばあさん)に囲まれて暮らしているのだろうということも文面から伝わってきますね。
 (男子)
 僕はこの作品をみて、とても貧しい家族だと思いました。理由はお母さんらしき人とお姉さんらしき人の目や表情が明るくなくて、すごく深刻そうで、おそらくお父さんは前はいたけど、病気かなにかで死んでしまって、今はもういなくて、残った5人の子供をどうやって一人で育てていこうかなあとすごく考えている感じがすごく伝わってきました。他には小さな子供が赤ちゃんがのっている車に上がろうとしていても注意してないし、2人の子供がおそらくお母さんにあまえているけど、かまってもらえないことから、すごく考え事をしているんじゃないかと思いました。
※お母さんの表情が明るくないことから、すごく考え事をしているようだと考えています。乳母車によじ登ろうとしている男の子に注意をしてないことや、二人の子どもがかまってほしいのにそれも無視しているようなのが余計に深刻さを感じると考えているところも、作品をよくみていると思います。最後に「そこからどう思う」を書いてくれていたら、私はもっとうれしいです。この作品から、あなたはどんなメッセージを受け取りましたか?
 (男子)
 この作品は、季節は絵の上の方の黄色いあさがおと緑から茶色へと枯れていく左上のヘチマ、赤いリボンをした女の子の持っている茶色がかった黄色いヒマワリから夏の終わりから秋への季節の変わり目なのかなと思いました。この絵の中で目で確認できる5人の人物は水色の着物を着た人が手前にいる2人の男の子のなつきかたから、その人はお母さんで、奥にいる赤いリボンをつけた女の子は4人の子どもの中で一番体が大きいので一番上のお姉さんだと思いました。中央には車輪のついたかごがあってこれは乳母車でその中を周りの人が見ていることから、赤ちゃんがいると思いました。でも、絵の中にお父さんがいないところとお母さんとお姉さんの表情からお父さんには戦争に行っていて、安否や行方が分からないので、とても心配だし、少し悲しい雰囲気だと感じました。このようなことから、この絵を描いた作者は僕たちに季節が夏から秋へと変わり、夏が終わっていくのを悲しく思う気持ちと、お父さんがいない悲しさの2つの悲しさをうったえかけていると思いました。
 僕は今日の対話型鑑賞最後の授業を美術館で本物の絵をみながら鑑賞して、今までの学校での授業よりもリラックスしてできて、とても良かったです。
※この人もお父さんが描かれていないことから戦争に行っていると考えたようです。そして、その悲しさと夏の終わり、季節の変わり目の悲しさを重ねて感じているところが、この人独自の解釈だと思います。作品が語りかけてくる(伝える)ことはひとつではなく、複数あることをこの人は感じ取れているようですね。そして、本番が一番リラックスできているのが何よりすごいことだと思いました。知人の愛媛県美術館の学芸員さんもそこ、感動しておられましたよ。
 (女子)
 青い服の女の人が着物を着ていることから、この絵は昔の日本だと思いました。そして、お姉さんとお母さんがのぞいていることから乳母車の中には赤ちゃんがいると思いました。でも、2人とも笑ってないし、お父さんがうつってないので、お父さんは遠いところにいるか亡くなったかなどしてもう会えない存在になったんじゃないかと思いました。あと、3人子どもがいますが、まだ子供なのでお母さんの気持ちが分からず、いつものようにあまえているんじゃないかなと思いました。でも、あまえてくる子供がいても気づかないので、何か不安を抱えて考え事をしているんじゃないかと思いました。このことから戦争はやめようという事を伝えたいんじゃないかと思いました。
※簡潔に作品からのメッセージまで記述してくれました。「どこからそう思う」「そこからどう思う」がきちんと整理されて記述できているのは素晴らしいと思います。とくに子供たちの動作とお母さんの表情を結びつけながら、解釈できているところは深い観察にもとづいた読み取りができていると思います。そして、作品からのメッセージはやはり他の人とも違う「戦争反対」として受け取れているところもいいですね。
 (男子)
 この絵はお母さんらしき人がゆかたを着ていたし、髪も今の髪型ではないので、昔の日本だと思った。そして季節に関しては自分は考えていなかったけれど、みんなの意見を聞いてヘチマが少し枯れているところや落ち葉があることなどから夏の終わりから秋の初めにかけてだと思った。
 初めは家族が赤ちゃんを見ていると思ったが、お母さんやお姉さんらしき人の表情があまりさえないようだったし、目がいきいきとしてないので悲しんでいると思った。これは、本当は産まれるまずだった赤ちゃんが産まれなくて悲しんでいると自分は思った。春日先生が「お父さんは?」と言われたので、そこに何かポイントが隠されていると思った。僕はお父さんが戦争に行ってしまい、それでお母さん一人で育てることになったと思う。
お父さんが戦争に行ってしまい、これからどうやって子育てをしていこうかお母さんが不安に思っているようにも見えた。
 最後に手紙を聞いて、実の家族を絵に描いたということだったので作者は家族のことをとても思っているし、一番の存在だと思った。
 僕がこの絵から感じたことは「家族を大切にしなさい」ということ。このお母さんが悲しんでいるのは家族に何らかのことがあって、家族を一番に思っているお母さんは子どものことも気にならないくらい悲しみにくれているときだと思う。
※手紙が読まれたのを聞いて、また新たな考えが浮かんだようですね。お母さんが気になってる家族に何らかのことがあったというのが何なのかまでもう少し考えてほしかったですが、時間が足りなかったと思います。ちょっと残念です。でも、この人は仲間の話をよく聞いて、自分の考えを広げたり、発見できているところが素晴らしいと思います。このような柔軟な思考ができるようになったことが大きな成果ではないかと思います。
 (女子)
 初め見た時は幸せな親子に見えました。でも、近寄ってみると青い着物のお母さんぽい人の表情が真顔に見えたので何か分からないけれど、何か昔の悲しいことを思い出しているように見えました。
 緑から茶色になりつつあるヘチマ、花びらが少なくてしおれているヒマワリ、たくさんの落ちている落葉、右上に少し見える晴れてない空から私は季節が夏の終わりから秋の初めらへんかなと思いました。
 着物、髪型、着物の柄からやはり日本の絵だと思いました。
※「そこからどう思う」を書いて欲しかったです。時間が足りなかったのでしょう。残念です。でも、右上に空を発見してくれましたし、そのことから時刻も読み取ってくれました。お母さんが思い出している昔の悲しいこととは何なのかも考えてみてください。
 (女子)
 この絵は着物を着たり、絵の質感というか茶色がかった古さを感じたので平成ではなく、昭和っぽいなと思いました。ヘチマがなっているけど茶色がかっていて、落ち葉が落ちていて、リボンを付けた女の子が持っている花がしわしわでしおれているので、夏の終わりから秋にかけてかなと思いました。お母さんの表情は目がボーッとしていて、全く頬が上がっていないので無表情で、女の子もとびきりの笑顔というわけでもなく、何となく見つめている感じがするので、気持ちは明るくないと思いました。この絵には母と子ども4人がうつっていて、父親がいないので戦争とかで遠くへ行ってしまいいつ帰ってくるのかわからなく、不安に思うから、お母さんはあのような表情かなと思います。もし父が帰ってこなかったら、乳母車の中にもいる子どもと合わせて5人を養っていけるのか心配だったと思います。
 この絵から、家族を大切に思わないといけないことや、子どもを育てていく大変さをわかって、子どもを産む責任を感じてほしいのではないかと思います。子供は可愛いから産みたい気持ちも大切だけれど、父がいなくなるとかという困難に負けない強い心も必要だと思いました。
 だけれど、手紙を聞いて、父はいるんだ!という驚きがありました。では、なんで母はこのような表情をしていたのか疑問です。
 この授業で最後と思うと楽しいことが減って、物足りなくなります。このような機会があったので春日先生にも出会うことができました。
 光中最後で、良いことづくしだったなと感じます。春日先生のお気に入りの絵で、また、みんなで対話型鑑賞をしたいなと思います。自信をもってこれから発表していきたいです。
※手紙を聞いて新たに起きた疑問について考えてくれたでしょうか?それが知りたいですね。でも、父がいても「家族の大切さ」は変わらないと思いますし、子どもを育ていことは大変な責任が伴うので、「困難に負けない強い心も必要」なのは変わらないのではないでしょうか。光中の皆さんと一緒に見た作品はたったの5作品ですが、みなさんは回数を重ねるたびに成長していきました。今後も折に触れて作品を鑑賞していってくれるとうれしいです。対話型鑑賞は仲間がいると楽しいですが、一人でもできるのです。私は一人対話と称して実践しています。やってみてください。
 (男子)
(ア)お母さんたちの服の濃さから光は、絵を描いている方からきていると思う。なんで乳母車にいる子を描かなかったんだろうなと思った。
(イ)たぶん、乳母車の中にいる子どもはぐったりとしているかもしれないと思った。もし、元気だったら、ひまわりに手をのばしているかなと思った。
(ウ)もしかしたら、この家族のお父さんが絵を描いているかなと思った。
※短い文で、箇条書きにしていますが、この人なりの発見や思考は刺激的です。特に光の方向を考えたり、絵を描いているのがお父さんではないかというのは他の人にはない発想で、みんなも聞くと、その可能性を否定できませんよね。仲間の意見を尊重しながらも、独自の考えを導いていく勇気も大事だと思います。
 (女子)
 私は家族の風景だと思います。乳母車を人がのぞきこもうとしたり、のぞいたりしているところからそう思いました。でも、お父さんは見当たらなくて、青い着物のお母さんらしき人や、赤いリボンをつけた女の人(お姉さん)らしき人が無表情というか、なにか心配したり、考えたりしていると、顔がこわばっている(眉とかが)ところから思って、お父さんはもういないと思いました。
 でも、子どもを心配しているようにも見えたので、子どもがカゼとかで、それを見つめているのかなとも思いました。
 この絵や、自分の考えから、子どもがいっぱいいて、一見幸せそうな家族だけど、お父さんがいないさみしさや悲しさが感じられました。でも、読んでもらった手紙から、この絵を描いた人がお父さんということなのか、家族の絆が感じられたし、あたたかい作品だと思いました。
※手紙を聞いて絵から受け取られる印象が変わったようですね。さみしさや悲しさを感じながらも、父がいるということで「家族の絆」と受け止めるようになりましたね。そういう変化もまた、作品の持つ素晴らしさではないかと思います。多様な解釈を受容できる作品だからこそ、作家が亡くなっても、こうして長い間、多くの人の心をひきつけるのだと思います。
 (男子)
 鑑賞中にも言ったんですが、ヒマワリの枯れた感じや男の子が着ている服、ヘチマの色から秋の初めごろだと思いました。さらに、絵全体の色使いも明るくないことからも分かりました。女の人二人の表情を見て思ったことは悲しそうだということです。視線が下を向いていたり、笑ってなかったりしたことから感じました。影の付け方からも表情が暗い感じがしました。
 この絵からシングルマザーの大変さが伝わってきました。お父さんがいないところがシングルマザーだと思います。顔の表情からです。
 今日はとても緊張したのですが、いつも通りに発表したり、聞いたりできていい経験ができました。
※この人も、作品の描き方や表現の仕方に注目して作品をみているところが、少し他の人と違う所かなと思います。作品を描かれているものから考えるだけでなく、色だったり、構図(この絵だと乳母車が中央に描かれている)、表現の仕方(光の方向や影の付け方)などからも作品をみて考えています。こうすることでより多角的に作品をみることができると思います。さまざまに読み取ったことを組み合わせながら自分の解釈ができるようになると、作品をもっと深く味わえると思います。

 以上が今回のみなさんの読み取りでした。時間がなくて授業の感想を書いてもらうことができなかったのが残念ですが、すべての活動を終えての感想文が届くのを楽しみにしています。また、その時にはお便りを出したいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする