昨日、久々に東京へ出た。このところの新型コロナウィルスの拡散状況で世の中は「自粛ムード」。前回ブログにも投稿したが、僕自身もこのことににリンクしてなるべく工房からの外出を控え、引きこもりで作品制作の毎日が続いている。社会との関わりを持つ指導にに行っている専門学校の卒業式などは規模を小さくし外部講師などは出席できない連絡が入り、社会人相手のカルチャーセンターも「様子見」の休校が延長されるという連絡が入った。
今や日本中、いや世界中が鬱屈とした精神状態に苛まれているのではないだろうか。しかし、僕のような家仕事の人間でも籠もってばかりは居られない。都内で開催されている知人の二つの展覧会を観に行くのと、次女の専門学校の卒業式に出席するために久々に東京へ出かけたのである。娘の卒業式が午後3時からということで時間的に少し余裕があった。都心までは電車利用で工房から2時間程かかるのだが、混雑する時間帯を避けるため(ウィルス対策)ゆっくり目に出発した。
正午前に銀座に到着。1月中旬頃とは打って変わって、中央の銀座通りでは仕事の車はそこそこ走っているのだが歩道や商店は閑散としている。ウィルス以前は賑わっていた中国からの観光客もほとんど見られないし日本人も少ない。まるで海外からの観光客が増える以前の昔の銀座にタイムスリップしてしまったような不思議な感覚になった。そんな中、8丁目の永井画廊で開催中の「高木公史 展 - 芸術家ポートレートシリーズ - 」を観てきた。高木君は美大受験の予備校時代からの友人である。東京芸大の大学院を終了後、渡独しデュッセルドルフ芸術アカデミーに留学。卒業後もドイツを拠点に絵画作品の制作を続け、ヨーロッパ各地で発表活動を行ってきた画家である。3年前に久々に日本の東京で個展を開催し昨年、静岡の池田20世紀美術館で回顧展も開催している。静岡の回顧展に伺えなかったので今回の個展には是非伺おうと思っていた。会場には写真かと見紛うようなリアルに表現された人物の油彩画と鉛筆画が整然と展示されていた。高木君らしい清潔で緻密な仕事である。特に等身大以上の鉛筆画によるさまざまな画家たちの肖像画は迫力があった。画廊の方に伺うと生憎、本人は今回体調を崩し帰国することができなかったとのこと。またしてもリアルでの再会ができずに残念だった。
有楽町のガード下にある創業60年以上という行きつけのラーメン店で昼食をとる。ここも普段の昼休みならお店の外まで列ができているのだが空いていてスンナリと座れた。お店の中のテレビが民法のニュース番組でウィルス関係の討論会を流していた。
山手線で原宿へ移動。電車の中の乗客の8割以上がマスクをしていて、たまに咳込む人がいると全員が振り向いていた。原宿に到着。こちらも駅周辺は普段よりも空いていた。しばらく歩いて竹下通りを横目で見るとここには若者がいつもどおりたくさん訪れている。ウィルス対策で学校も休校になっていることと関係があるのだろうか。お次の目的である「積雲画廊」に到着。こちらでは漫画家の岩本久則さんによる「オーラス・きゅうそく展」が開催中。岩本さんは日本野鳥の会の会員で野鳥の世界の大先輩でもある。この画廊で毎年個展を開催してきたが画廊自体が今年の秋に事情で閉廊することとなり、今回が最後の個展ということとなった。展示作品はいつものように野生生物を愛する岩本さんらしい愛情とユーモアがあふれたアクリル絵画とイラスト作品等でとても暖かい雰囲気に包まれていた。この状況下で来場者が少ないのではないかと心配されたようだが、さすがに野鳥の会のベテランで人気者であり毎日多くの方々が来場中のようである。この日も自然関係の人が数多くみえていて興味深いお話を伺うことができた。最終個展というのが寂しい限りである。岩本さん、また会場を変えても是非、新作個展を開催してください。
積雲画廊で連れ合いと合流。ここから電車で市ヶ谷に向かう。この状況下、電車に乗る度に周囲を見回し、つい緊張してしまうのである。市ヶ谷駅に近づいたころ車窓から外を観ると土手では花大根が咲き乱れスジグロシロチョウが2頭、ヒラヒラと飛んでいた。車窓から反対側の「飯田濠」の水面に目を移すと数十羽のカモ科・ハシビロガモがそれぞれペアになりクルクルとディスプレイを繰り返していた。今日の東京行のトリは「歯学会館」という立派なビル。午後三時から次女が3年間通った歯科衛生士養成専門学校の卒業式が行われるのだ。三姉妹の中でこれまで紆余曲折のあった次女。最終的には手に技術を持つ人生を選んだ。その晴れ舞台である。我が家の家訓の1つに「家族の大切な節目の行事には可能な限り出席すること」というのがある。今回もそれである。新型ウィルス問題で多くの学校関係で卒業式が中止となっているところもある。この卒業式も時間を大幅に短縮しての開催である。まぁ、その中で開催できたのだから良しとしなければバチが当たる。晴れやかで美しい様々な色彩の袴姿に身を包んだ同級生たちと一緒に無事この日を迎えることができた。次女の嬉しそうな笑顔を遠目で観ながら感慨深い気持ちになるのだった。式が終わり会場を出て土手をゆっくりと歩いているとソメイヨシノの蕾が大きく膨らんできていた。長かった冬も終わり、もうすぐ春がやって来る。
久々の東京行、帰宅するとドッと疲れが出た。すぐに手洗い、顔洗いをしてから、お茶を一口飲むと突然睡魔が襲ってきた。リビングのテーブルでコクリコクリとやっているうちに、そのまま眠りについてしまった。自分では気づいていなかったが体が自然と緊張状態にあったのかも知れない。
画像はトップが昨日の銀座通りのようす。下が向かって左から永井画廊企画による「高木公司 展」DM、昨日のJR.原宿駅、原宿・積雲画廊の「オーラス・きゅうそく展」DM、市ヶ谷「歯学会会館」の外観と次女の卒業式風景。