長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

100.アオバズクの巣立ち

2013-08-23 13:33:24 | 野鳥・自然

当ブログも記念すべき100回目を迎えた。その100回目はやはり野鳥の話題。このところ仕事の関係でブログの更新が遅れている。ネタはそろっているのだが話題が少し前のことになってしまう。と、言うことで今回も先月の末の話。

地元、鳥仲間のS氏より連絡をいただいた。「今年も例の場所でアオバズクの雛が無事に巣立ったよ。」 さっそくカメラ片手に散歩がてら近くの場所に見に行って来た。『アオバズク』というのはフクロウ科のハトよりも少し小さい渡り鳥である。夏鳥で、ちょうど木々の青葉が繁る季節に東南アジアや中国東部から日本に渡って来るので、この名がつけられた。人里近くの平野部や低山の林で繁殖し、渡って来たばかりの頃は夕刻からホッホーッ、ホッホーッと繰り返しよく通る声で鳴いている。一般的にはこれをフクロウの声と思っている人が多いが、フクロウ科の『フクロウ』はホホッ、ゴロスク、ホホッともう少し野太い声で鳴き、途中にこのゴロスクが入るので区別することができる。大木のウロ(空洞)などで繁殖するので、街中の公園や神社などでもウロのある大木があれば観察することがある。主な餌は小さなネズミやヒミズなどの哺乳類や昆虫で、夜間巣の近くの街灯で明かりにやってくるガやカブトムシなどを狙って飛び回る姿を観察することもある。

この日、大木の下の小さな空き地にはギャラリー(野鳥観察者)が60人ほど詰めかけていた。携帯電話とインターネットの普及であっという間に情報が広がってしまう。人の数の多さにまず驚いた。雛は3羽が巣立ったようである。僕は2羽しか見つけることができなかった。雛のうち1羽は木の下の草むらに落ちていた。誰かが助けてここに移動したようだ。雛から少し離れた高い横枝に親鳥が2羽、心配そうに見守っていたのが印象的だった。近年、アオバズクやサンコウチョウ、ヒクイナなど平野部で繁殖する夏鳥の日本への渡来数が激減している。いつまでも、こうした野鳥が渡って来れるような環境が残されていってほしい。一フクロウファンの僕としても切に願う毎日である。画像はトップが巣立ちの時、地面に落ちてしまった幼鳥。下が渡って来た頃の成鳥と繁殖した巨木。

  

 

 


99.一千二百枚の版画にサインをする。

2013-08-06 12:11:28 | 書籍・出版

『版画芸術』という美術雑誌がある。一年に春夏秋冬、計4回出版される季刊誌である。1970年代のいわゆる『版画ブーム』の時代から40年以上にわたり伝統版画、創作版画、現代版画など版画芸術全般を紹介してきた国内唯一の版画専門誌である…というか唯一になってしまったと言ったほうが正しいのかもしれない。前のバブル期の頃は美術出版関係も景気が良くて同類の版画専門誌も3-4種類は出ていた。なので今ではとても貴重な誌面となっている。

ちょうど一年前に東京での版画のグループ展オープニングに編集長のM氏と編集者のK女史が会場に来てくれた。特にM氏は僕の20代後半から続けて作品を見て頂いている数少ない関係者である。その頃からときどき特集記事の掲載などでお世話になってきた。立食パーティーの会場で歓談していると「実は来年の企画なのですが、版画を制作してほしい」と言う。この季刊誌には『アートコレクション』という企画があり、現役の版画家が4種類のオリジナル版画を制作、各号と同時刊行するという内容である。他ならぬM氏からのご依頼である。快く承諾の返事をした。

4種類で各300枚ということは1200枚の版画作品を摺るということだ。つまり、ラージエディションということになる。銅版画ではエッチングにしろメゾチントにしろメッキをかけてせいぜい100枚~200枚ぐらいが限度である。編集部の希望もあって大量印刷に耐える木口木版画で制作することに決定した。今年の春頃から少しづつ構想を練り、6月に4作品の版の彫りが完成した(絵柄は発売まで秘密です)。今年は秋から冬にかけて東京での絵画新作展を皮切りに数箇所での個展を予定しているので自摺りをする時間がとれない。見本摺りまで自分でおこない本摺りは普段蔵書票などで摺りを依頼しているT木版画工房のベテラン摺り師、K氏にお願いした。今月に入って1200枚すべての本摺りが完成してきた。後は僕のサイン入れである。一枚一枚摺りの状態を確認しながら鉛筆で同じような調子でサインを書いていく。ゆっくりと100枚サインするのに約一時間かかった。サインを入れながらいろいろなことを考える。版画というのは複数芸術である。過去の歴史を見てもギュスターヴ・ドレや安藤広重など西洋でも日本でも元々、版元があって制作されたものである。現代の日本は版元不在と言われている。こうした形の受注仕事こそむしろ版画の王道といっても過言ではないだろう。サインも枚数が多いと一仕事であるが、仕事とは言え安定した調子で摺り上げていく摺り師の方はさらにたいへんである。

整頓された和室で汗が版画に落ちないように冷房を効かせ慎重にサインを書き続けている。9月発売の版画芸術・秋号の誌面には関連した特集記事も組まれていて先日、編集部の方と楽しい取材の一時を過ごした。ブログをご覧のみなさん、この機会に是非、大手書店などでご覧になってください。阿部出版・版画芸術のホームページでもご確認することができます。画像はトップが版画にサインを入れている手元。下はそのようす。

最後にこの企画をいただいた阿部出版・版画芸術編集部と木版画摺り師、K氏に心から感謝いたします。

 


98.ゴーヤのカーテン

2013-08-01 13:38:08 | 日記・日常

昨年、今年と夏の猛暑が続いている。梅雨明けには地域によって40℃近くを記録し、高齢者を中心に熱中病による死者が全国区で出た。

僕が子供の頃には30℃を超えるということは稀であったが、最近では当たり前のように受け止めている。とにかく暑い…水分補給や休憩を小まめにとることも大切だが我が家ではここ数年来、家庭菜園の一部として外壁にネットを張り巡らしツル植物野菜であるゴーヤを育てている。連れ合いの趣味で庭は田舎風に設えているのだが、ナスやキュウリ、トマトなどの畑とは別に食用プラス猛暑対策ということでやっている。5月に植えたゴーヤも見る見るツルをのばし、葉もたくさん生い茂ってまさに『ゴーヤカーテン』状態となって来た。立派な日陰ができている。

このゴーヤカーテン、埼玉県の熊谷市など、毎年記録的な猛暑となる地域では学校や商店街でも実際に採用しているケースもある。なんせ晴天の日中に日向とゴーヤの日陰では5℃も違うというのだから効果はてきめんである。家の中から見た感じも太陽光を透過して見える鮮やかで透明感のあるリーフグリーンは美しく目に優しい。花は明るい黄色でたくさん咲くとこれも美しい。しばらく、目を離している間にゴーヤの実がたくさんなっている。この夏も我が家の食卓にはゴーヤチャンプルを始め、ゴーヤサラダ、ゴーヤ味噌汁がしばらくの間並びそうである。ブロガーのみなさんも是非一度ためしてみてください。画像はトップが我が家の中から見たゴーヤのカーテン。下がゴーヤの花とゴーヤの実。庭から見たゴーヤのカーテン。