長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

176. 新年1月は『新世界』で始まる。

2015-01-30 20:44:27 | 音楽・BGM

昨年暮れのブログに師走のBGMは勝手にベートーヴェン月間として毎日ベートーヴェンを聴きまくる話題を書いた。月並みだが、その中でも『第九』を聴いていると…・。師走が『第九』であれば明けて新年初めてのBGMはドヴォルザークの交響曲第九番『新世界』と決めている。元日は一日中『新世界』を数種類の盤で聴きまくって仕上げはヨハン・シュトラウス2世のワルツ集で締めくくるのである。どうやら何かと決め事を作るのが好きな性格らしい。

ドヴォルザークと言えば甦るのが少年時代のこと。有名な第2楽章のラルゴは通っていた小学校の下校のテーマだった。哀調を帯びたこのメロディーが放送室から流れてくると遅くまで校庭の隅で遊んでいた居残り組もしぶしぶ引き上げるのである。もっと強烈に印象に残っているのは音楽室での思い出である。戦後すぐに創立されたその小学校は木造のオンボロ校舎で大雨の日は雨漏りがそこら中でおこり、白アリの大発生あり、夕方は塒になっている体育館からアブラコウモリがたくさん飛び立った。音楽室はそのオンボロ校舎のさらに昼なお暗い場所の二階にあり、薄暗い階段の壁には額装された古い音楽家のリアルな肖像画(当然印刷物だが)がかかっていた。モーツアルトやメンデルスゾーンなどはまだ性格が良さそうな西洋人のお兄さんなのだが、子ども心にブラームスとドヴォルザークは怖かった。映画『日本海海戦』に登場するバルチック艦隊のロシア人艦長のように長い髭を蓄えて強面の表情をしていたのである。さらにこの音楽室にはいわゆる「学校の怪談」があった。それは「放課後暗くなった頃、訪れると誰もいないはずの音楽室から悲しげなピアノの音が聴こえてくる…」という王道を行ったお話しだった。恐ろしげなリアル肖像画と怪談話。この二つの恐怖から僕は「音楽」という授業がとても嫌いになった。

話が音楽からかなり脱線してしまった。『新世界』のぼくの愛聴盤はLP時代から聴いてきたもので、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、シカゴ交響楽団による1977年録音による超名盤である。緻密で明瞭な表現が心地よい。現在CDではシューベルトの『未完成』とのカップリングでかなりお得になっている。いろいろ聴いたがもう一枚というと最近お気に入りの巨匠ヴァーツラフ・ノイマン指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団による1993年録音の盤。『新世界』交響曲がニューヨークで初演されて成功を収めてから100年、その記念のコンサートとしてプラハで演奏されたもの。堂々としていて迫力があり王道中の王道の『新世界』となっている。

今月も残すところあとわずか。月が変わらないうちに、もう一度この二枚の名盤をじっくりと聴くことにしよう。画像はトップがジュリーニ盤のジャケ、下がノイマン盤のジャケ。

 


175. 2015年 初描き。

2015-01-26 21:24:55 | 絵画・素描

2015年、今年の絵画作品の初描きは水彩画による『ニワトリ』である。「コケコッコーッ!!」で一年が始まるなんておめでたいじゃないか。ところが常日頃、神話・伝説をテーマとする僕が描くのであるから当然ただのニワトリでは納まらない。

と、いうわけで今回は日本神話からヒントを得た。もともとニワトリはシルクロード文化圏では各地で、「太陽の使い」「太陽を呼び出す霊鳥」とされてきたようだ。古代ペルシャの大洋神を崇めるゾロアスター教で、ニワトリ崇拝は始まったとされる。この伝説がシルクロードを往来したペルシャ商人によって西はギリシャ・ローマへ、東はインド、中国へと広がっていった。我が日本では8世紀に編纂された「古事記」に登場する。「天岩戸」神話でアマテラスオオミノカミが天岩戸に隠れてしまい、この世界が闇に閉ざされたとき、ヤオヨロズの神々がトコヨノナガナキドリ(=ニワトリ)を鳴かせ、アメノウズメノミコトが舞い、アマテラスオオミノカミを呼び出したという有名な神話の1シーンである。

作品ではストレートに物語を説明するのではなく、太陽の輝きや光を背景に塗った金泥で表現し、ニワトリが宇宙生命と一体になる関係を、頭上に描いたアンドロメダ星雲が胸にぶら下げた鏡(神器)に映り込むことで表現してみた。ニワトリそのものはバストアップ構図で伊藤若冲の「鶏図」のような表情を狙ってみたのだが、作品を鑑賞する人たちにうまく伝わるだろうか。画面全体は個展会場で観ていただきたい。画像はトップが制作中のネパール産手漉き紙に描いている水彩画 『ニワトリ』 の部分。下が同じく顔のディティールと主に使用している固形水彩絵の具(ガッシュ)。

※画像の色彩がオレンジ色に染まって見えるのは長時間の作業でも目が疲れないという「バイオライト(太陽光に近い色のデスクライト)」を使用しているためである。

 

   


174. 2015年・初鳥見

2015-01-19 20:36:04 | 野鳥・自然

暮れから新年にかけていろいろと仕事やら用事が重なりブログが遅れ気味である。そろそろまたがんばって更新を始めることにしよう。

と、いうわけで今回は今年の初鳥見(バード・ウオッチング)の話題。4日、工房近くにある西印旛沼の日入り時間前後に一人MTBに乗って出かけた。ちょうど冬鳥が出揃う季節、いつもの土手、望遠鏡をセットするポイントは決まっている。26年前、この地に移り住んで初めて野鳥を観察に来たのも、この沼のこのポイントである。以来何度訪れたか数えきれない。いつ来ても広い沼の風景はたっぷりと水をたたえていて心を癒してくれるが晩秋から冬の日入り時間は特にお気に入りなのである。その頃と比べれば、沼の南側にチューリップ広場や東京湾から利根川まで続くサイクリング・ロードが開通して訪れる人も増えたが、北東部のこのポイントは人も少なくてまだまだ静かな環境だ。

今日もサイクリング・ロード沿いに3つのポイントを移動しながら双眼鏡と望遠鏡で野鳥を観察して行く。水面に浮かぶカモ類、カイツブリ類。ヨシ原には越冬の小鳥類。時折、上空をタカなどの猛禽類が飛翔する。今年の冬も寒さが厳しいせいか冬鳥たちが元気に賑わっている。今日のスターは水面では23羽を数えた冬羽のカンムリカイツブリ。ヨシ原では一瞬姿を見せてくれたベニマシコの♀。そして猛禽類ではミサゴ、チュウヒ、ハイイロチュウヒが飛翔姿を見せてくれた。

観察記録を付けている野帳(フィールド・ノート)を確認すると合計39種の野鳥を観察していた。時計を見るとそろそろ日入り時間近くになっている。今日は吹く風も弱く穏やかな日で絶好の探鳥日和である。日が傾きかけてくると水面、冬枯れのヨシ原、水鳥たちの群れが夕日で薄ピンク色に染まってきて、例えようもなく美しい景色となる。西側に眼を向けると隣接する新興住宅地の高層マンション周囲が真っ赤に燃えて見える。いつものようにポットに入れてきた熱いコーヒーをすすって冷え切った身体を暖めながら望遠鏡の三脚をたたんだ。「さて、ボチボチ切り上げだ」。

新年から美しい風景を堪能させてくれた沼の竜神様と野鳥たちに感謝!! 画像はトップが沼の杭に羽を休める冬鳥のオナガガモの群れ。下が日入り時間にピンク色に染まる西印旛沼と夕日にシルエットが浮かびあがる高層マンション。

 

      


173. 2015年 新年明けましておめでとうございます。

2015-01-01 21:20:44 | 日記・日常

ブロガーのみなさん、2015年、新年明けましておめでとうございます。

今年も無事に明けました。みなさま、どんな元日を過ごされましたか。僕は暮れから家族が集まり、例年どおり朝は遅めに起床。お節料理とお屠蘇をいただき、近所の神社、寺院に初詣に行ってきました。午後からはこれも例年どおり近所の映画館に新春ロードショーを観に行って来ました。

大晦日のブログにも書きましたが、今年は展覧会が集中している年です。作品を通してまたみなさんと、そして新しい方々との出会いを今から楽しみにしています。恒例の年頭のスローガンは『共鳴』としました。あの音叉の共鳴です。「作品に込めた自身のメッセージと受け手である鑑賞者の心が共鳴する」このことを目指して行きたい。今年に限らずこの数年間、このことを強く思うようになりました。一見、単純に見えますが、実はとても難しいことです。制作者は自分の表現というものが先行してしまうあまり、ついつい自己満足的になりがちなのが常です。

今年一年、このスローガンを胸に精進努力して行く覚悟ですので、よろしくお願いします。では、みなさんが今晩、素敵な初夢を見られることを祈っております。トップ画像は昨年12月の版画個展出品の木版画 『輝く朝(マガン)』。