長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

410. 美術学校のリモート授業も終盤となる。

2020-07-20 16:43:12 | カルチャー・学校
なかなかコロナ禍が粘っこく続き、収束する様子が見えない昨今である。ニュースでは東京などの大都市圏で増加する感染者数が毎日発表される。

このコロナ禍の中、5月末から始まった非常勤講師を勤める東京のA美術学院のリモート授業も今月末で終盤を迎える。ここまでで5クラス110名以上の学生に指導してきた。これから行う最後の1クラスを含めると130名以上ということになる。始めた頃は学校も講師も学生も初めてのリモート体験だったので、果たしてキチンと授業になるかどうか、それぞれの立場で不安であったが、どうにかここまでたどり着いた。為せば成るものである。

僕がこの期間に心がけたのは、とにかく特別な状況、特別な場とせずに、リモートであってもリアルと同じ気持ちで学生に接し、同じ内容で授業を行うということだった。それはただでさえこの状況下で不安を抱える若者たちに少しでも安心できる時間を持ってほしかったからである。朝一番の挨拶から休憩時間、個別の呼びかけ等もリアルと同じように行い、ジョークもリアルと同じように意識的に取り入れた。そして何よりこの状況下に負けないように励まし、このことをネガティヴに捉えずにポジティヴに捕らえ、前を見て進んで行くようにということを強調した。作品の出来不出来などは二の次である。とにかく安まずにこの授業に参加してほしかった。

5クラス分を終了してみて、やはりどうしてもやりずらい点も出てきた。リアルでは普通にできるその時の機微、機微にアドバイスができないということ、学生同士が隣人の作品を観ることができず刺激が少ないということ、その結果、どうしても制作のペースが全体的に遅くなってしまったということだった。まぁ、仕方がないと言えば仕方がないが、さらにこの状況が続き、リモート授業が続くならば、課題として考えていかなければならない。大学の語学など学科のリモート授業と異なり実技制作が主体の美術学校では指導方法も言葉にできない微妙な内容があるのである。こちらとしてもかなり考えさせられることも多く勉強になった。

とりあえず、今年度前期の僕のリモート授業は今月で終了する。夏休みを挟みコロナ禍が収束へと向かい後期からの授業は学生たちの顔を見てリアルで行えるようにと祈っている。

※今回使用した画像は全て実際のリモート授業中のものではなく準備,調整中に撮影されたものとなっている。



      

409. 苦渋の決断、年内の個展を延期する。

2020-07-04 19:22:03 | 個展・グループ展
今年も早、7月となった。1年の半分が終了したわけである。この年齢になると年々、時間が経つのがとても速く感じるのである。この半年を振り返ると3月から丸三ヶ月はコロナウィルス対策として、工房での自粛生活を続けてきたのである。思い返すとけっこう長い道のりだった…。

先月辺りからアート関係でも動きが出てきた。閉館、閉廊していた美術館や画廊がボチボチとオープンし始めたのである。だが、先月末、東京の街を回った感じでは人出もまだまだのようだし企画展を開催している画廊もコロナ対策としていろいろな予防策、条件を付けて開けているというところが多い。未だにネットによる動画配信の展覧会を行っているところもある。
僕の3月からの展覧会の予定もご多分に漏れず、一部を除きほとんどのものが中止や延期となってしまった。グループ展が4件、個展が2件、版画関係のイベントが2件、気が付けば結構な数になっている。フリーで制作発表、販売をしている者にとってはたいへんな痛手である。まぁ、この状況下では仕方がないと言えばそれまでなのだが。

今年の秋に久々に東京で『野鳥版画』の企画個展を企業が持つギャラリースペースで予定していた。1か月間のロングランで展示してくれる内容だったのだが。先月末にギャラリー・スタッフの方からメールが入り「10月からの展示もコロナ対策としていろいろと作家、来場者に条件が付きますがどういたしますか?」という内容だった。例えばどのような条件かというと「一度に会場に入れる方々の人数は5名までとする」とか「来場者には常にスタッフが付きます」とか、そのほかにも衛生面などの条件が列挙されていた。そして「長島さんの個展は来場者が多く、コミュニケーションもよく取られていますのでこの条件内容で満足していただけるかどうか。来年度に見合わせるという選択肢もありますよ」ということだった。とても良心的で親切なメールでのアドバイスだった。

しかし今年の作品発表の中心となる展示内容である。何日か迷ったのだが僕自身も作品を発表して販売するという目的以外に、常に来場していただいている方々とのコミュニケーションを重んじているのである。いつもリピーターとして来ていただいている方々の顔を思い浮かべながら個展の予定を延期することに決定しメールの返信をした。まさに苦渋の決断であった。ここは1つ現実を前向きに捉え個展の準備期間が延びたと思って、日々、作品制作に精進するよう覚悟を決めたのだった。

幸い今からなら来年の同じ時期に会場の予定を押さえることが可能だという。即答で回答した。しかしニュース等を観ていると、まだ東京では感染者数が上がってきたり、コロナウィルスの第二波が起こることが予想されたりしている。今後もこの状況がどうなっていくのかは解らない。来年の秋までには強力なワクチンが開発され、コロナが収束していくことを祈るのみである。

※画像は自粛生活の中、工房で『野鳥版画』を制作中の僕。