長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

133. 『ワイルドライフアート展2014・日本の生きもの~その多様性』展 開催中です。 

2014-02-28 21:12:26 | 個展・グループ展

先月24日、「ワイルドライフアート展2014・日本の生きもの~その多様性」展の出品のため都内、新宿御苑インフォメーションセンター・アートギャラリーに搬入、展示に行ってきた。

毎年出品しているこの展覧会は「日本ワイルドライフアート協会 JAWLAS」主催による。この会はその名前のように野生生物の絵を描く人たちのグループである。メンバーは図鑑などの細密なイラストレーションを描くイラストレーター、絵本作家、画家、版画家等さまざまなジャンルで活躍する人たちで全国に100人以上の会員がいて、ベテランから若手まで年齢にも幅があるのが特徴だ。毎年、テーマを決めて展示しているのだが、今年のテーマは「日本の生きもの~その多様性」という内容で日本に生息する哺乳類、野鳥、爬虫類、魚類、昆虫などをモチーフとした作品で構成されている。

朝から作品を担いで少し早めに会場に到着した。会場担当のY女史に挨拶をすませ、取りあえず作品を置いて昼食に出た。御苑に近い新宿三丁目周辺は落ち着いた雰囲気でお店を探しながらゆっくり散策したくなるような街である。昼食を済ませて戻ってくると、この日は御苑が休みだというのに外国人観光客がセンターの中を覗いていた。ここは、海外のツーリストに人気のスポットになっているのだ。環境庁が管理する国営の施設なので一般の画廊のように自由には発表できないが、テーマを日本の自然環境に関係あるものとして選考会にパスすればグループなどで発表することができる。パブリックスペースであるために来場者は多く、1週間で1,000人単位の人たちに観てもらえるのも魅力の一つである。

会場で先に来ていた何人かのメンバーと世間話をしているうちに指定の時間となり次々に出品者が集合、地方の会員の作品は宅急便で続々と到着した。荷ほどきをしているのもつかの間、毎回常連で出品していて手馴れているメンバーがどんどん飾り付けをして行く。老若男女、平等に協力し合いあっと言う間に展示が完了した。広い会場に生き生きと描かれた日本の生物たちが並んだようすは見応えのある内容となった。僕は今回、日本に生息しているフクロウ類4種を肖像風に彫った小さな小さな木口木版画4点を出品した。

作業終了後は恒例の懇親会。これをとても楽しみに来る会員も多い。御苑に隣接するイタリアン・レストランでワインを飲みながら楽しい時間を過ごして解散となった。二次会に向かうグループもあったが、僕はここで失礼させていただいた。展覧会は3/2(日)まで。生物好き、アート好きのみなさん是非この機会にご高覧ください。画像はトップが展示途中の展覧会場。下が新宿御苑インフォメーションセンターの入り口、センタースタッフが御苑内の木の実などで作ったオブジェの展示物(今回の出品作品ではありません)、イタリアン・レストランのカウンター。

 

      

 

 

 


132.いまさらですが、今年の冬は寒かった。

2014-02-25 20:09:36 | 日記・日常

いまさらだが、今年の冬は寒かった。関東平野でも45年ぶりの大雪にが降り、奥多摩や秩父、山梨県全域では鉄道や道路が遮断され孤立化してしまい、いまだに復旧作業が続いている。僕の工房があるここ千葉県北東部でも観測史上初めてという34㎝の積雪があり交通網は乱れ、慣れないスコップでの雪掻きに汗を流したりした。

秩父に棲む先輩には、用事もあったので連絡し状況を聞いたが、その町では積雪量は多かったものの道路は閉鎖されておらず、無事だったようだ。奥多摩や山梨にも知人が住んでいるので心配である…。まぁ、毎年のように雪害に苦労されている北海道、東北や日本海側の人たちのことを想えば不満を言っていられないのだが。それにしても近年、夏の猛暑や秋にかけての竜巻や雷雨など、異常気象続きで気になるところだ。今年も続くのだろうか。地球科学者によっていろいろな説があげられている。北半球の温暖化の影響であるとか、氷河期の前兆であるとか…真相は我々凡人には想像もつかない。地球の歴史から見ればほんの一瞬のできごと。有史以前からこの星は異常気象を繰り返してきていることは確かだ。

例年、太平洋側地域では2月下旬から3月初めにかけて大雪が降ることがあるので、まだまだ油断はできない。暦の上ではもうすぐ春。近くの里山では梅の花が見ごろで、ヒバリやウグイスの初さえずりも聞かれ始めている。画像はトップが雪の朝に小屋から出れないでいる我が家の愛犬サチ。下が工房の窓から撮影した大雪の日の風景2カット。

 

   


131.伝説の鳥 『精衛』を描く

2014-02-20 19:50:59 | 絵画・素描

寒い冬が続いている。今月はアトリエの外を深々と雪が降りしきる中、中国の古い伝説に登場する『精衛・せいえい』という幻鳥を水彩画で制作した。

絵画や版画作品は平均して月に3-4点を制作しているのですべてブログで紹介することはできないし、制作の様子を更新してもマンネリになってしまうので選んで紹介している。それから、新作個展に向けて制作しているので全体像を載せることはしていない。作品は展覧会場で見てほしいと思っているからだ。今年は展覧会の予定が少ないが、来年以降はまた発表が続くことになる。なので、しばらくは工房に閉じこもる生活になりそうだ。

それはさておき、『精衛・せいえい』の話題に戻ろう。古代中国の王、「炎帝」には「女娃・じょあい」という美しい娘がいた。箱入り娘として育てたために外出は許さなかった。ある日、帝の留守に家を抜け出した女娃は、東海の大海原を見に出かけ、誤って溺れ死んでしまった。そしてその魂は幻鳥・精衛として生まれ変わった。精衛は無情な海を恨み、埋めてしまおうと山から小石や木切れをくわえていっては海に落とした。長い年月をかければ、いつかは東海が埋まると信じて永遠にこの動作を続けた…という悲話である。中国には今でも「精衛海をうずむ」という言葉が残っていて、「困難を恐れずに最後まで頑張って目的を達成すること」、あるいは「及ばないことを企て徒労に終わること」の象徴とされている。そして、その声は「ジンウェイ(精衛)、ジンウェイ(精衛)…」と中国語で自分の名前を鳴くと伝えられる。

「山海経・せんがいきょう」という古代中国から伝わる博物学書に描かれた精衛は、一見、普通の鳥の姿に見える。野鳥好きの僕の目から見ると、そのプロポーションや羽色からムクドリや九官鳥の仲間に見えるのだが、描いた絵師がモデルとしたのは実際どんな種類の鳥だったのだろうか。画像はトップが制作中の水彩画(部分)。下がアクリル絵の具を出した絵皿と、古文書に登場する精衛の図像。

 

   


130. 御粥ダイエット

2014-02-11 19:59:20 | 日記・日常

今年の冬は寒さが厳しい、特に2月に入ってからは関東地方でも例年にない寒い日が続いている。今回は寒さの話題ではない。ダイエットの話。

40代後半、健康診断で医師からイエローカードを出された。高血圧症、脂質異常症etc.このまほおっておけば、いろいろと合併症にもつながると言う。30代から40代にかけて好きなものを好きなだけ食べ、アルコールも飲みたいだけ飲むといった節度のない生活を続けてきたツケがまわって来たのだろう。医療機関には素直な僕は以後、投薬意外にも担当医師に勧められるがまま、食事療法や有酸素運動を続けてきた。その甲斐もあって血圧や血管年齢などは正常値にもどってきている。 

が、内臓脂肪だけが、なかなか思ったようにいかない。粘っこく付きまとってくるのだ。特に腹回りの脂肪がしぶとく残っている。家族に協力してもらって野菜や魚を中心とした食事にしてもらってきたのだが、まだまだ食べる量が多いのか。何とかしなければ、無い知恵を絞りだしたのが近頃試している『御粥ダイエット』なのだ。と、言っても特別なことをするわけではない。朝食を御粥一杯と沢庵三キレだけに減らしたのだ。毎朝、家族とは別に食事を作らなければならないので、自分用の小さな鍋を用意して御粥を一杯作り、これを沢庵三キレで、ゆっくり時間をかけて食べる。食べ終わったら鍋と食器をお湯で洗い、このお湯もいただいて終了。昼は体も動いているので麺類などを普通に食べるが、夕飯はご飯だけはまた御粥、酒も寒い冬は毎日晩酌をしたくなるが2日か3日ごとに熱燗1,5合のみいただく。

初めはけっこう物足りず、続かないと思ったが、2月半ほど続いている。最近では昼食までに、お腹がグーグーいって空いてくる感覚が心地よく思えてきた。体重も順調に減ってきている。腹回りはというと…もう少し頑張らねばならない。メタボが気になるパソコンの前のあなた、是非一度お試しあれ。画像はトップが朝食の御粥としたがおかずの沢庵三キレ。

 


129. 昭和の広重 『川瀬巴水展 -郷愁の日本風景-』 

2014-02-04 19:33:21 | 美術館企画展

先月17日。地元カルチャ-教室での版画の指導の後、千葉市美術館で開催中の『川瀬巴水展 -郷愁の日本風景-』を観に行ってきた。美術好きのブロガーのみなさん、いつもブログへのアップが遅くなり展覧会レポがリアルタイムでなくてすみません。

川瀬巴水(かわせ はすい 1883~1957年)と言えば大正から昭和にかけて活躍し、人気を得た風景版画家である。この時代衰退していた浮世絵版画(錦絵)の再興を目指した版元(今でいう出版社)の渡辺庄三郎と組み多くの木版画を制作した。日本中に取材したその風景版画は『昭和の広重』と称賛され、現在でも国内をはじめ海外にも多くの熱心なファンを持っていることでも知られている。版元を通し、浮世絵版画の彫り師や刷り師とのコラボレーションによって生まれた木版画は完成度が高く、とても充実した内容となっている。版画というものは本来において西洋でも東洋でもこうした共同作業、共同出版から生み出されるものなのである。

千葉市美術館は今展で来場者が200万人を超えたという。市立という規模としてはたいへんなことである。今までも伊藤若冲、曽我蕭白、田中一村などの個性的な画家の企画展を開催し好評を得てきている。美術館の志向性がぶれずにしっかりとしているということだ。

午後遅めに到着、千葉の街が一望できる7階のレストランで日替わりランチを食べてから、2つの階に分かれた会場に向かった。額装され整然とかけられたカレンダーサイズの風景木版画が約300点。その数に圧倒され、見始めは「全部見られるだろうか?」という気持ちが先立ち、飛ばし気味に観てしまう。巴水の作品の中で僕が特に好きなものは雪景色を主題にしたものと、画面全体に深いブルー系の色調をおびたもの。今回の作品群の中からもけっこう見つけることができた。「雪と青」この2つの表現に作家の特色が強く出ているものだと思っている。それから良かったのは版画の下絵や日本各地に取材した個人コレクションのスケッチ・ブックが多く見られたこと。走るような鉛筆の線やラフに塗られた水彩に現場での作者の息づかいまでも感じることができた。

それにしても作品数が少し多すぎた。ほぼ同寸法、同じような密度の木版画なので、余計そのように感じた。1点1点の印象が薄くなってしまったように思う。もったいない。欲を言えばテーマ別に2期ぐらいに分けて展示してほしかった。画像はトップが川瀬巴水作木版画 『芝増上寺 東京二十景』部分。下が同じく『前橋敷島河原』部分、風景取材したスケッチブック(以上、展覧会図録より複写)。美術館入り口の看板。

※展覧会は1/19に終了しています。