長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

316. 2017年、一年間ありがとうございました。

2017-12-31 14:54:59 | 日記・日常
2017年も今日で終了。恒例になりました大晦日のご挨拶です。毎年一年間の反省や新たな年に向けての抱負などをツラツラと書いていましたが今年からはシンプルに行きます。

ブロガーのみなさん、SNS友達のみなさん、今年一年間、僕の拙いブログ投稿、画像投稿にお付き合いいただきありがとうございました。とても感謝しております。僕はみなさんの2018年が良い年になることを願っています。この小さな美しい青い星の環境が全ての生物にとって良好に保たれますように。そしてこの地球上の全ての人々が平和で幸福に過ごすことができますように。


To my overseas friends. Thank you very much for this year.

I wish that your 2018 becomes a good year.

And I wish that all people on this earth can live happily and peacefully.


画像は昨日、千葉県の房総半島を回った時、鴨川市の内浦湾で観た太平洋の美しい夕景です。海辺の地方の生活には憧れます。毎日、日常として朝と夕に美しい太陽の輝きと恵みを体で感じることができるからです。

では、どうか良い新年をお迎えください。そして良い初夢を見てください。




      

315. Bill EVANS  ビル・エヴァンスを聴く日々。

2017-12-28 17:24:49 | JAZZ・ジャズ
毎日の絵の制作のおり、朝から夕方までBGMをかけ続けている話は繰り返し投稿してきた。最近ではクラシックを聴くことが多いのだが、同じジャンルばかり聴いていると飽きもくる。食事と似ていて、たまには別の種類の料理も食べて観たくなるというのが人情というものだ。

この半年ぐらいは朝のモーツァルトに始まって夕方までクラシックにドップリと浸かった後、夜のマッタリとくつろぐ時間帯にジャズ・ピアノなどを聴いている。中でもよく聴くのが今回ご紹介するビル・エヴァンス Bill Evans(1929-1980)のアルバムである。エヴァンスは1950年代から始まるモダンジャズを代表するピアニストの1人として有名で、ドビュッシー、ラヴェルといった19世紀印象主義のクラシック・ピアノに影響を受け、印象主義的な和音、スタンダード楽曲を題材とした創意に富んだアレンジと優美でエモーショナルなピアノ・タッチを取り入れたインター・プレイといわれる演奏を続け、後進のハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレットなど多くの才能あふれるスター・プレイヤーに大きな影響を与えたことでも知られている。
代表的なアルバムはリヴァーサイド・レーベル時代に録音された天才ベーシスト、スコット・ラファロとの共演で知られる「リバーサイド4部作」である。その中でも特に名盤として名高い『ワルツ・フォー・デビイ』はこの時代のジャズを代表するアルバムで表題曲はロックやポップスなどにもアレンジされ今でも人気が高い。

僕は高校時代からジャズを聴き始めて40年が経ったが、実は上記代表作は別としてエヴァンスのアルバムをあまり聴いていなかった。マイルス・デイビスのリーダー・アルバム『カインド・オブ・ブルー』にサイドとして参加した時のクールで抑制の聴いた音、自身の多くのリーダー・アルバムに聴かれる抒情性といったものにあまり興味が持てなかったのである。僕がジャズ・ピアノ、いやジャズという音楽に長い時間求めていたのはもっと、情念的でソウルフル、ブルース感覚豊かな音だった。たとえばピアノで言えばバド・パウエルに始まりウィントン・ケリー、ケニー・ドリュー、マッコイ・タイナーといった黒人プレイヤーによる演奏。あるいはピアノ以外だったらジョン・コルトレーンやオーネット・コールマンのような激しく音のカオスの中にグイグイと引きこまれるようなタイプの音楽に強く惹かれていたのだった。
ところが、音の趣味というものも御多分に盛れず年齢と共に変化してくるものである。50才前後を境として、もっとシットリと情感を持って聴かせてくれるものが良く聴こえてきたのである。いろいろとシットリ・ジャズを聴いている中でピアノの代表選手がこのビル・エヴァンスというわけである。

最近、エヴァンスの曲だけでなく「人」についても興味を持ち、いろいろとネットで調べている。エヴァンスという人はリリカルでエモーショナルなピアノ・タッチから創造するに幸せで明るい音楽家人生を送ったものかと思い込んでいた。ところが1950年代のマイルス・コンボ時代からヘロイン、コカインなどの薬物乱用で心身共にボロボロであったようだ。特に70年代後半からは、自らが原因を作ったとされる内縁の妻、エレインの自殺や肉親として、音楽の理解者として絆の深かった兄ハリーの自殺と2人の自殺が原因でエヴァンスの破滅志向がエスカレートしていったようである。

1980年9月11日。ニューヨークのライブハウス「フアッツ・チューズデイ」に出演。演奏中に激しい体調不良となるが主催者側の演奏中止要請を振り切ってしばらく演奏を続けた。しかしとうとう演奏できない状態となり、自宅に戻り親しい友人、知人によって看護されたが容体が悪化、市内の病院に搬送され同9月15日に死去した。享年51才。プレイヤーとしては円熟期、惜しまれる死であった。

このことを知ってから数多く残されたエヴァンスの名盤を聴いていくと、それまでとは違った「人」「顔」が浮かび上がってくる。リリックでエモーショナルな輝くようなピアノ・タッチの音と音の織り成す美しいタペストリーの陰にプレイヤーの繊細さや奥深さが見え隠れし、さらエヴァンスの精神的な苦悩のようなものまで感じ取ることができるのである。

冬の寒い間、しばらくは「エヴァンス熱」が続きそうである。

画像はトップがリヴァーサイド・レーベル時代の名盤『ポートレート・イン・ジャズ』のCDジャケット。下がその他の名盤ジャケットのうちから3枚。



      



  

314. 『生き物展』 ”The Exhibition of Creature's” in TOKYO  

2017-12-16 18:37:06 | 個展・グループ展
今年もいつの間にか残すところあとわずかとなりました。関東地方も寒い日が続いています。暮れのこの時期に今年最後の以下、画廊企画展に出品します。

・展覧会名 『生き物展』 "The Exhibition of Creature's

・会期 2017年 12/21(木)~12/25(月)12:00~20:00(土日は午後6時まで、最終日は午後5時まで)

・会場 ギャラリー愚怜(ぐれい)Gallery Gray 東京都文京区本郷 5-28-1 tel:03-5800-0806 http://gallerygray.aikotoba.jp

・交通 東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅より徒歩5-6分 東京大学赤門斜め前(本郷通りを隔てて)

・内容「生き物」を共通のテーマとし、9人の作家による絵画、版画、立体、陶芸などにより表現された動物、鳥、昆虫、恐竜などのアート作品を展示する。



※小さな画廊でのグループ展ですので今回長島は基本、在廊いたしませんが会期中1度は顔を出す予定です。

画像は今展のDM。ギャラリー愚怜は東大赤門前の小さなスペースの画廊です。会場は落ち着いた雰囲気となっております。5日間と会期も短いですが、本郷方面やお近くにお越しの際は是非この機会にお立ち寄りください。

313. 『街でくらす野鳥』のポスター原画を制作する。

2017-12-01 19:09:27 | 書籍・出版
先月はS社という出版社の依頼で「街でくらす野鳥」をテーマとしたポスターの原画を集中して制作していた。スズメやカラスに代表される人間の居住空間近くに生息する野鳥たちを1枚のポスターとして制作するという仕事である。こうした仕事は初めてというわけではなく今までにも時々依頼を受けて制作をしている。

編集者からお話のあった内容としては「住宅地や公園、駅前など人間の生活空間の中でも生息している代表的な野鳥たちを10種程度選択し、1枚のポスター原画として制作してほしい」という内容だった。いろいろと検討した結果、以下の野鳥を選び出した。キジバト、コゲラ、ハシブトガラス、シジュウカラ、ツバメ、ヒヨドリ、メジロ、ムクドリ、スズメ、ハクセキレイ、カワラヒワ、以上11種である。夏鳥のツバメ以外は平野部の街中で1年を通してごく普通に
観察でき、繁殖もしている野鳥を選んでみたつもりである。冬鳥でも馴染み深いジョウビタキやツグミといった種類も入れようかどうかと悩んだが案外一般の人たちには認知度がないかもしれないということで除いた。
こうした都市部でも繁殖している野鳥を近年、専門筋では「都市鳥・としちょう」などと呼んでいる。そして観察しやすいということもあり研究対象にする鳥類学者も増えているのだ。

野鳥に限らず動物、昆虫、魚類、植物等、野生生物を対象とする精密画・博物画は、自由に創作する絵画とは異なり難しい点もいくつかある。まず、科学的に正しくなければならないということだ。プロポーションや骨格的なこと、羽などの枚数や色彩の問題、等々といったことである。まぁ、こうした仕事を一度でも受けたことがある画家でないとこの苦労は理解できないと思う。出版社のほうもその点はよく解っているので大概は下絵の段階で中間チェックが入るのである。最近では下絵の時点での「赤入れ(修正)」も減ってきたが、受け始めた頃はずいぶんチェックが入り下絵が真っ赤になったこともあった。ここまで来るのにけっこう鍛えてもらったということである。

こうした身近な野鳥の画像資料は自分でも普段から撮影しているのでまずはそれらの資料を見ながら描いていくことになる。ただ鳥も個体差というものがあるので他の人が撮影したものや図鑑類、海外の資料にまで眼を通して確認していくことも多い。なので仕事机の周辺はたちまち足の踏み場もないほどに、参考資料の山積みとなっていくのが常である。

ようやく線描によるモノクロームの下絵が完成し、編集部にチェックを入れてもらうため画像添付で送信。しばらくしてから制作のGOサインの連絡が入って、ようやく原寸の本紙へのトレース(転写)となる。トレースが完了すると一安心。あとは水彩絵の具で実物と近い色が出るまで着色していくのだが、ここからが長い。納得する表現・色彩になるまでは何度も何度も薄く微妙な透明色を重ねて行くのである。途中、エンドレスで終了しないのではないかという時期を過ぎると不思議なもので「もうこれ以上は描けない、色がのらない」というような飽和状態がやってくる。ここでやっと筆を置くのである。

先日、担当の編集者が東京から原画を受け取りに工房まで来てくれた。これから専門のデザイナーの手により文字や大きさ表示のイラストなどと組み合わせデザインされてから色校正に入るのだがココまで来ると初稿の印刷が上がってくるのが楽しみになってくる。本番の印刷は来年の3月頃、「街でくらす鳥」の1種をテーマとした絵本と同時に発売される。その頃にまた詳細をご報告することにしよう。

原画を渡すとホッとする。翌日は1人、近所の湖沼でゆっくりとバード・ウォッチング。渡ってきたばかりの冬鳥の観察を行って長時間の細かい描画でたまった疲れの気分転換をした。疲労回復には自然の中に入って深呼吸をするのがなによりである。


画像はトップが野鳥ポスター原画制作中の僕。下が同じく制作中の僕、描画のようす4カット、使用した固形水彩絵の具、完成に近づいた原画の全体像。