長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

157.秋の渡りの谷津干潟 その2 

2014-08-28 21:15:56 | 野鳥・自然

24日。15日に続き秋の渡り鳥、シギ・チドリ類を期待して習志野市の谷津干潟鳥獣保護区に行ってきた。続けて通うのはひさびさである。

11時16分に干潟入り口に到着する。この日は日曜日で天候にも恵まれ、潮の状態も『大潮』という好条件にあたるため野鳥観察会のグループが多かった。日本野鳥の会・千葉県支部、同神奈川県支部、千葉県野鳥の会、そして谷津干潟観察センター主催の面々と人間の方も賑わいを見せていた。外国人バーダーが多かったのは、ちょうど東京で『国際鳥類学会』が開催されているからだと誰かが話していた。外国人バーダーはフットワークが良くて、こうした機会にはさまざまな探鳥地に足を運んでいるらしい。満潮というのは午前中から昼にかけて干潟面が干潮になり、午後にかけて徐々に潮が満ちてくることをいうのだ。つまり、干潟全体に散らばっていた水鳥のシギやチドリの仲間が水面が増えて来るとともに水際に集まってきて観察しやすくなる。これをバーダーの間では『潮待ち』などと言ったりする。僕もこの瞬間は好きである。

北側の遊歩道から干潟面を双眼鏡で観察していくと9日間でシギ・チドリの個体数が増えてきているのが解る。「今日は期待できるぞ」 遊歩道をゆっくりと移動しながら、ポイントに着くたびに望遠鏡をセットして、じっくりと観察していく。キアシシギ、ソリハシシギ、キョウジョシギ、ダイゼン、セイタカシギいつもの干潟の役者が勢揃いしている。南側に回りかけた頃、上空をずっと見上げている人がいたので視線の先を追うとタカの仲間のミサゴが翼を大きく広げて浮かんでいた。まるで白い洋凧のようなゆうゆうとした姿である。「幸先が良い」干潟の中央を望遠鏡で観ていくとシギ・チドリの混群が見つかった。端から丁寧に追っていくと、メダイチドリ、ダイゼン、オオソリハシシギ、オバシギ、アオアシシギ、トウネンと秋の渡りの顔ぶれが出揃っている。その時、スコープの視野を素早い動きのシルエットが横切った。「ハヤブサだっ!!」 前回に続き、またもや猛禽類の登場。身の危険を感じたシギ・チドリの混群がいっせいに飛び立ってしまった。中でもオオソリハシシギはこの時から戻ってこなかった。

仕方がないので、淡水池を覗く。ハイドの木陰でしばらく休んでいると「お立ち台」に人気者のカワセミ君登場。良く見ると頭や胸の色彩がずいぶん黒っぽい。今年、繁殖した幼鳥のようだ。カワセミの好きな粘土質の崖地があるわけでもないのに、いったいどこで繁殖したのだろう。コンクリート擁壁の使用していない水道管でも巣として使ったのだろうか。この個体、繰り返し横に飛んではトンボ類を捕食していた。子供だから、まだうまく魚をダイビング・キャッチできないのだろう。随分とサービスのいいカワセミに見とれているうちに満潮の時間が近づいていた。あわてて干潟に戻るとだいぶ潮が満ちてきていて干潟面が少なくなっている。『潮待ち』のセオリーどおりにシギ・チドリ類が残りわずかな干潟面の水際に集まってきている。オバシギ、トウネン、キアシシギが近い。じっくりと撮影する。そうしている間にもどんどん潮が満ちて来た。今日もまたどこからか大好きなアオアシシギの哀調を帯びた声が聴こえてきた。「キョーキョーキョー…キョーキョーキョー…」そろそろ引き上げるとしよう。画像はトップが淡水池にいたカワセミの幼鳥。下が向って左から水際で観察したオバシギとキアシシギ、トウネンの群れ、この日の干潟風景。

※この日、上記の種類の他にハジロコチドリ、キリアイといった希少種のシギ・チドリ類も観察されていたようだが、僕は見られなかった。

 

      


156.秋の渡りの谷津干潟 その1

2014-08-21 20:24:25 | 野鳥・自然

今月はお盆に入って少し暑さがゆるんだと思っていたら、明けてこの猛暑に閉口している。工房で冷房をつけていても頭がボーッとしてくるほどだ。

暑いといっても山野や水辺の生物の世界の暦ではすでに秋のシーズンが始まっている。15日、お盆の中日。ひさびさに千葉県習志野市にある『谷津干潟国設鳥獣保護区』に野鳥観察に行ってきた。以前は、月に2-3回、集中的に通っていた時期があったが、最近は仕事(制作)の関係で一年に数回のペースとなってしまった。この干潟の今の季節はシベリヤやアラスカなどの原野で繁殖した旅鳥のシギ・チドリが多数立ち寄っていく時期である。これから秋冬期に向かい越冬地である東南アジアやオセアニアに渡っていく途中、餌となるゴカイやカニなどの多い日本の干潟で十分栄養補給をしていくのである。

干潟での野鳥観察は『潮』の干満があるため干潮と満潮の時間を事前に調べて行かなければならない…と、書くと海釣りを連想する人もいるだろう。なぜかと言うと、満潮時にあたってしまうと鳥が留まることができず他の場所へ飛び去ってしまうし、逆に完全に干潮になれば広い干潟に鳥たちが散らばってしまって、距離が遠かったりする。その、中間を狙うのがベテラン・バーダーなのだ。この日は『中潮』。干潮が15:19で、満潮は21:26。と、いうことは午後遅くからゆったりと満ちてくるというところである。したがって、いつもよりゆっくりめに家を出た。

お昼過ぎに干潟の周回路入り口に到着。ほぼ満潮状態で干潟には水の中に立っていられる足の長いサギ類の姿が目につく。日陰のあるハイドのベンチで持ってきた弁当を食べながら望遠鏡をのぞいているうちに、東側に干潟が現れてきて、1時半ごろ東京湾方面からシギ・チドリの混群が飛来した。白黒のコントラストが眩しいチドリ科のダイゼン、同じくチドリ科で後頸から胸のオレンジが美しいメダイチドリ、そしてチョコマカと動いているのはシギ科のキョウジョシギとトウネンだ。ここでは特別珍しい野鳥というわけではないのだが、この季節と4-5月の春の渡りの時期にしかお目にかかれないので、じっくりと望遠鏡をかまえて観察しようとした…その時、視界に猛禽類の姿が横切った。と、同時に30羽ほどのダイゼンが飛び去ってしまう。あわてて双眼鏡を向けるとハヤブサである。干潟上を滑翔するように低く飛ぶと、顔面の特長的な模様がはっきりと解るほど近くを飛んでサービスしてくれた。まさに格好の良い戦闘機といった勇士であった。

さらに歩いて観察センター横の淡水池を除くがサギ類とカルガモ、カイツブリが見られたのみ。南側の四阿にもどると定位置に鳥友のK氏が来ている。挨拶を交わして鳥情報を交換したり、干潟の最近のようすを聴いているとあっという間に時間が過ぎ、東京湾から水路を通って、干潟の潮がグングンと満ち始めた。分散していたダイゼンやキアシシギがひっくり返ったボートのお立ち台に集まってくる。そろそろ今日の観察も終盤となる。ここから元来た周回路を右回りに戻り夕映えの中の野鳥たちを観察しつつ、心地よい潮風の吹く中、帰路に着いた。この日観察できた野鳥はスズメやカラスを入れて26種だった。画像はトップが夕映えの風景の中、水辺で休息するシギ・チドリ類。下が左から望遠鏡と谷津干潟風景。満潮時、干潟に集まってきたキアシシギ、水路周辺に群れるサギ類、夕映えの空。 

 

         

 


155.プロ野球は後半戦の真っただ中。

2014-08-08 21:04:01 | 野球・スポーツ

今月は毎日厳しい猛暑が続く。お盆が過ぎれば少しは緩んでくるのだろうか。さて今回は野球の話題である。

猛暑の中でも、プロ野球が熱い!! 後半戦も真っただ中で、毎年、この時期を乗り切れるかどうかでほぼ結果が見えてくる時期でもある。そして4月から続く長い連戦で両リーグ共、怪我人が続出する時期でもある。僕がサポーターとなっている地元パリーグ球団の千葉ロッテマリーンズもここにきて御多分にもれず野戦病院に送られる選手が後を絶たない。まぁ、開幕からのレギュラーがずっと出場できているチームなど皆無なのだが。それからホームグランドであるQVC千葉マリンスタジアムというのが海に近くドーム球場ではない立地条件からくるのか、真夏の過酷さは有名である。僕は数年前に相手チームの選手が猛暑で朦朧としてしまってダウンした試合を観たことがある。また人工芝は夏の日差しでかなり温度が上がりプレー中に火傷をすることもあるそうだ。プロ野球選手も命がけである。

マリーンズの成績はここまで45勝52敗2引き分け、借金7でリーグ4位である。1位のソフトバンク・ホークスと2位のオリックス・バファローズがガンガン飛ばしているのでリーグ優勝を狙うのがなかなか難しくなってきた。そして3位までの上位に入らなければクライマックスシリーズの出場権が得られない。ところがここにきて3位の日本ハムフェイターズが連敗していてゲーム差が3.5と縮まってきた。「微妙~っ…だが、いけるかも」 先月、キューバの主砲デスパイネ選手を獲得。WBCで活躍した名プレーヤーである。これが刺激になったのか打線も調子が上がってきて現在5連勝中である。2010年のリーグ戦3位から勝ち上って日本シリーズまでのし上がり優勝もしたチーム。この年『下剋上』という流行語まで作った。リーグ戦3位に入り短期決戦まで持ち込めば望みも見えてくるはずだ。勝って、負けて、また勝って、千葉ロッテマリーンズ、今が粘り時。猛暑にめげず良いプレーを続けてください。影ながら応援しています。画像はトップがロッテの右腕、唐川侑己。下が現在、怪我で治療中のリリーフ投手、カルロス・ロサ、同じくリリーフの大谷智久、バッターボックスでのキューバの主砲デスパイネ。

 

      


154.ブルックナーの交響曲を聴く日々。

2014-08-01 19:00:00 | 音楽・BGM

絵画や版画作品を制作するときには必ずBGMを聴いている。音楽は僕にとっては耳と脳の栄養となる食物に近い感覚として存在している。自慢ではないがコテコテの演歌以外はクラッシック、ポップス、ロック、ブルース、ジャズ、レゲエ、ファド、フォルクローレ、津軽三味線など、たくさんの種類の音楽を聴いてきた。長い時間流すので一つのジャンルだけではすぐに飽きてしまうのだ。譜面もろくすっぽ読めず、楽器も弾けない音痴なのだが、聞くことには妙なこだわりがあって、以前はよく季節によって聴くジャンルを替えていた。たとえば、春から夏の昼間はロックやレゲエを聴き、夜間はジャズを聴く。秋から冬にかけてはクラッシック音楽を中心に聴いていた。それから状況によってもジャンルを替えた。絵画を描いている時、版画の細かい彫りの作業の時には、バロック系の音楽を聴いて集中力を高め、版画の摺りの労働の時には、ワークソングとしてシカゴ・ブルースを聴いていたりした。その延々と続くディスクの交換が面倒くさくなってくるとラジオのFMの音楽番組に替える。そして本当に制作に集中してくると何もかけなくなる。

今年になって突然クラッシックのブルックナーに目覚めた。中でも交響曲を集中的に聴いている。20代に友人に勧められて初めて聴いた時には、その演奏時間の長さと同じようなメロディーの繰り返しに閉口し、LPレコードの再生途中に居眠りをしてしまった記憶がある。それから至極難解なイメージを持ってしまった。つまり一度挫折したのである。                          

アントン・ブルックナー(Anton Bruckner  1824-1896) と言えば、対位法を駆使した交響曲と崇高な宗教曲を数多く生み出した19世紀オーストリアを代表する偉大な作曲家であり、孤高の生涯を送ったことでも知られている。クラッシック音楽ファン、中でも交響曲ファンにはベートーヴェン、ブラームスと並び、頭文字のBをとって『交響曲の3大B』と呼ばれ人気が高い。大きなCDショップに行くと大きな棚に数多くのアルバムが揃っている。

それにしても音楽の嗜好というものは年齢によって変わってくるものだ。以前は難解で退屈に聞こえていた曲が、今は雄大で宇宙的な広がりを持ち、奥行きがあるヨーロッパの深い森林がイメージされ、聴こえてくる。そしてなによりも心地いい響きを持っている。交響曲は生涯に11曲が書かれている。0番~9番、そしてスコアがない未完のものが1曲ある。一般的な人気は4番・ロマンティックと7・8・9番だが、その他のものも魅力があり、どれも捨てがたい。現在まで一応すべての番号を聴いてみた。演奏も巨匠カラヤン指揮+ベルリンフィルの緻密で完全主義的な盤、ヨッフム指揮+バイエルン放送フィルの模範的演奏とされる盤、ベーム指揮+ウィーンフィルの情感あふれる名演盤、旧東独のブロムシュテット指揮+ドレスデン国立歌劇場オケの燻し銀の盤などなど…。そして最近気に入っているのは我が国が誇るブルックナー演奏の巨匠、朝比奈隆が大阪フィル、新日本フィル、N響を指揮した名演盤の数々である。自ら古典主義を名乗り、スコアどおりの演奏にこだわる。そして一つの曲を何回も繰り返し指揮する姿勢はまさにマエストロ(職人)の域である。たとえばブルックナーの交響曲9番のような未完の曲を生涯に6回も演奏し録音したのは史上空前であると言われている。

先月、聴いて感動したアルバムは2000年に録音されたN響との9番の演奏盤だった。 この時、マエストロ朝比奈氏は御年なんと、92才。まさに神の域に達した歴史に残る名演である。圧倒的な激しさと巨大さを持つ第1楽章から始まり、魔性の力を持つと呼ばれる第2楽章。そして彼岸的な崇高さを感じさせる第3楽章により感動的に演奏されるこの曲は第4楽章を未完成のままにして終わる。そしてこの翌年、朝比奈隆氏も93年の生涯を閉じるのである。未完成の9番と老巨匠最晩年の演奏。なんともドラマチックな組み合わせである。

猛暑の中、変わらずに絵画や版画を制作する日々。しばらくはブルックナー狂いが続きそうな予感がしている。画像はトップが朝比奈+N響のブルックナー・交響曲第9番のCDジャケ。下が左から各種ブルックナーのCD盤と最近読み始めた伝記本。