24日。15日に続き秋の渡り鳥、シギ・チドリ類を期待して習志野市の谷津干潟鳥獣保護区に行ってきた。続けて通うのはひさびさである。
11時16分に干潟入り口に到着する。この日は日曜日で天候にも恵まれ、潮の状態も『大潮』という好条件にあたるため野鳥観察会のグループが多かった。日本野鳥の会・千葉県支部、同神奈川県支部、千葉県野鳥の会、そして谷津干潟観察センター主催の面々と人間の方も賑わいを見せていた。外国人バーダーが多かったのは、ちょうど東京で『国際鳥類学会』が開催されているからだと誰かが話していた。外国人バーダーはフットワークが良くて、こうした機会にはさまざまな探鳥地に足を運んでいるらしい。満潮というのは午前中から昼にかけて干潟面が干潮になり、午後にかけて徐々に潮が満ちてくることをいうのだ。つまり、干潟全体に散らばっていた水鳥のシギやチドリの仲間が水面が増えて来るとともに水際に集まってきて観察しやすくなる。これをバーダーの間では『潮待ち』などと言ったりする。僕もこの瞬間は好きである。
北側の遊歩道から干潟面を双眼鏡で観察していくと9日間でシギ・チドリの個体数が増えてきているのが解る。「今日は期待できるぞ」 遊歩道をゆっくりと移動しながら、ポイントに着くたびに望遠鏡をセットして、じっくりと観察していく。キアシシギ、ソリハシシギ、キョウジョシギ、ダイゼン、セイタカシギいつもの干潟の役者が勢揃いしている。南側に回りかけた頃、上空をずっと見上げている人がいたので視線の先を追うとタカの仲間のミサゴが翼を大きく広げて浮かんでいた。まるで白い洋凧のようなゆうゆうとした姿である。「幸先が良い」干潟の中央を望遠鏡で観ていくとシギ・チドリの混群が見つかった。端から丁寧に追っていくと、メダイチドリ、ダイゼン、オオソリハシシギ、オバシギ、アオアシシギ、トウネンと秋の渡りの顔ぶれが出揃っている。その時、スコープの視野を素早い動きのシルエットが横切った。「ハヤブサだっ!!」 前回に続き、またもや猛禽類の登場。身の危険を感じたシギ・チドリの混群がいっせいに飛び立ってしまった。中でもオオソリハシシギはこの時から戻ってこなかった。
仕方がないので、淡水池を覗く。ハイドの木陰でしばらく休んでいると「お立ち台」に人気者のカワセミ君登場。良く見ると頭や胸の色彩がずいぶん黒っぽい。今年、繁殖した幼鳥のようだ。カワセミの好きな粘土質の崖地があるわけでもないのに、いったいどこで繁殖したのだろう。コンクリート擁壁の使用していない水道管でも巣として使ったのだろうか。この個体、繰り返し横に飛んではトンボ類を捕食していた。子供だから、まだうまく魚をダイビング・キャッチできないのだろう。随分とサービスのいいカワセミに見とれているうちに満潮の時間が近づいていた。あわてて干潟に戻るとだいぶ潮が満ちてきていて干潟面が少なくなっている。『潮待ち』のセオリーどおりにシギ・チドリ類が残りわずかな干潟面の水際に集まってきている。オバシギ、トウネン、キアシシギが近い。じっくりと撮影する。そうしている間にもどんどん潮が満ちて来た。今日もまたどこからか大好きなアオアシシギの哀調を帯びた声が聴こえてきた。「キョーキョーキョー…キョーキョーキョー…」そろそろ引き上げるとしよう。画像はトップが淡水池にいたカワセミの幼鳥。下が向って左から水際で観察したオバシギとキアシシギ、トウネンの群れ、この日の干潟風景。
※この日、上記の種類の他にハジロコチドリ、キリアイといった希少種のシギ・チドリ類も観察されていたようだが、僕は見られなかった。