平成26年、絵画作品の描き初め(かきぞめ)が水彩画なら、版画の彫り初め(ほりぞめ)は昨年同様、木口木版画となった。昨年末より、いくつかの版画のオーダー作品を制作していて年が明けてからも、それらを継続制作している。
以前にもブログに書いたが、僕の場合、現在版画作品はイメージサイズによって技法を変えている。公募展などの大きな会場に出品するものは板目木版画、中間の大きさは銅版画、小作品、ミニアチュールは木口木版画と意識的に使い分けているのだ。版画家によっていろんな考えがあると思うが、僕自身はそもそも版画技法というものは潜在的にイメージサイズを持っていると思っている。今回、受けた仕事のうち蔵書票が1点含まれる。西洋では蔵書票を木口木版画で彫ることは、ごく一般的なことである。それは、ビュランと呼ばれる細い彫刻刀で彫り上げるこの技法の持つ緻密な線表現が蔵書票のイメージサイズに合っているのだろう。
コレクターからの希望で「モチーフは中国の伝説に登場する馬の幻獣でお願いしたい」と言うことだった。いろいろ迷った挙句「一角獣」に決定した。『一角獣』のイメージはシルクロード文化圏に広く分布している。どうやら大元となるのはオリエント地域のようである。これが西へヨーロッパまで伝わると『ユニコーン』となり、東に中国まで伝わると『ジ(漢字変換ができない)』という一角獣となる。その姿は犀のようなもの、獅子の体を持つもの、有翼のものなど変化に富んでいて、古より多くの図像が残されている。
この2週間ほど、朝から夕方まで集中力を絶やさないように彫版の作業を進めているのだが、ルーペを使った細かい彫りを強いられるので目の疲れからくるのだろう、首や肩をはじめ上半身がアチコチ痛い。五十肩も加わっているようだ。今の所、良いペースで作業が進んでいるので、来月末まで目や肩を労わりながら制作を続けようと思う。画像はトップが木口木版画の蔵書票を彫る手、下が左から一角獣『ジ』の複写図像、各種版木と使用中のビュラン(彫刻刀)。