長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

231.『第64回 東京芸術大学 卒業・修了制作展』を観に行く。

2016-01-30 20:32:36 | 日記・日常

29日午後から東京都美術館で開催中の『第64回 東京芸術大学 卒業・修了制作展』を観に行ってきた。実は長女がこの3月で美術学部デザイン科を無事卒業することとなり卒業制作の作品を出品しているのである。長島家に古くから伝わる家訓の一つに「家族の大切な節目の行事にはどんなに忙しくても出席すること」というものがあることもあり、午前中のカルチャー教室での指導を終え、昼食を済ませるとまっすぐに上野に向かった。

日暮里から谷中の墓地を抜けて速足で歩いて行くと約20分ほどで会場である東京都美術館に到着した。なんの因果かロビー階の展示スペースは僕が秋に出品している版画の公募展と同じ場所となっていた。受付を入ると週末ということもあり来場者が多い。先端芸術科の会場を過ぎて隣が娘の所属するデザイン科のスペースだった。すぐに娘の姿を発見、4年間の集大成の作品を前に説明を受ける。平面作家の子どもなので、美大のデザイン科に進学してからは、てっきりグラフィック的なものやイラストレーションに興味を持つものかと思っていたら、そちらにはほとんど興味を示さずにスペース・デザインに興味を持ち続けていた。この時点で空間系のデザイン会社に就職も決まっている。

ところが、DNAがそうさせるのか卒業制作は立体ではなく平面作品である。但しその内容は「古い建築物の表面のエイジングと色彩をテーマにしている」のだそうだ。30個ほどの小さいパネルに建築物の表面の肌合いや色彩をイメージした作品を一つの壁に並べ構成した作品となっていた。娘とは表現分野も違うし、美術の予備校に通う頃から余計なアドバイスはなるべくしないようにしてきたが、ここで一言、「おまえは色感がいいんだなぁ」と感想をもらした。うれしそうな笑顔を見せて、このフレーズが気に入ったのか「今日のブームだね!」と言うので、会場で他の作品を観ても「これは色感がいい」と繰り返し言い続けてしまった。

家に来たことがあるデザイン科の友人に合わせてくれたり、同級生の作品を一通り観終わったので、他の会場を案内してもらうことにして異なる科ごとに順番に観ていった。先端芸術科、工芸科、建築科、日本画科、油絵科…どれも若いエネルギーに満ち溢れていて見応えがあったが僕の個人的な感想を言えばデザイン科、工芸科と日本画科に完成度が高く充実した作品が揃っていたように感じた。都美館での展示を一巡すると遅れてきた家内と合流し、もう一巡。第二会場である東京芸術大学の学内展示作品を観に行った。こちらは学部の作品以外に修士コースの作品もあり見応えがあった。ここまで観てくると結構疲れた。両足も棒のように硬くなっている。ただ、いやな感じではなく若い表現に触れ、さわやかで心地よい残像が網膜に焼き付いた。時間的にもリミットに近くなったので娘と別れて元来た日暮里駅へと向かった。

毎年多くの美術家希望者が美大を卒業し社会に出て行くがここからは厳しい道のりとなる。今後のフレッシュなアーティストやデザイナーとしての活躍を祈りながら帰路に着いた。画像はトップが長女の卒業制作作品の前でのスナップ。下が向かって左から展覧会受付、長女の作品の全体像、同級生の作品2点、デザイン科会場内風景、同級生の参加型作品の中に入った僕。

 

          

 


230.『吾輩も猫である』 その三

2016-01-22 20:52:05 | 日記・日常

吾輩も猫である。名前はタマオである。クロトラの♂である。ご存知、エカキのご主人の「長島家」に厄介になっている。かかり付けの獣医の話では人間に例えて70才代なんだそうだ。つい最近、年甲斐もなく激しい縄張り争いをして下腹部に大けがをしてしまった。たくさん、出血もして死にかけたので、この時だけは長島家の人々はとても優しかったのだが傷が治るといつものように部屋のあちこちにマーキングをしたのでとたんに態度が冷たくなった。吾輩の直せない悪いクセである。

そうそう、言い忘れていたが、昨年秋にビッグニュースがあった。これまでこの家の猫族は吾輩一匹だったのだが、新しい仲間ができたのだ。それがこのブログのトップ画像の♀のミケである。まだ生後3か月である。名前は長島家ですったもんだした挙句、次女の方が考えた「チミヨ」と決定した。みんな「チミ」と呼んでいる。またしてもご主人の推す名前は却下されてしまった。どうやら「リン」とつけたかったようだが、ありきたりだということだったらしい。いつまでもブツブツと悔しがっていた。

このチミ、高3になる三女の方の友人の家の前の空き地で親と生き別れて何日も鳴き続け死にかけていたそうだ。見かねたこの友人が拾ってきてしばらく面倒を見ていたようだが、家の事情で飼えなくなり、ここにやってきたということだ。10月10日に来た時には、体重がわずか184gしかなく眼も見えていなかった。それが次女の方の献身的な養育により、あれよあれよと大きく成長し今では吾輩とほとんど大きさが変わらないほどにまでなっている。健康に育ったおかげでとてもヤンチャである。朝早くから部屋中を素早く走り回り、壁を忍者のように駆け登る。寝ている吾輩の顔を鋭い爪でかきむしり、大事な尾っぽに牙で咬み付いて来るのであるからたまらない。毎日、体中に傷が絶えないのである。おまけに吾輩のエサにまでちょっかいを出してくる。

しかし、親のぬくもりや優しさを知らないせいなのか、やたらとすり寄って甘えても来るのである。まぁ、これはこれでかわいいところもある。ようやくできた猫族の仲間でもあるし、なるべく仲良く暮らしていくつもりである。それに近頃、美人いや美猫になってきた。そー言えばこの間、ご主人たちが不吉なことを言っていた。ミケの♀というのは統計的に気性がとても荒いのだそうだ。くわばらくわばら。ちょっと自信が持てなくなってきたなぁ。画像はトップが最近のチミ。下が向かって左から最近のカットもう一枚、一か月ぐらい、家に来て2-3週間ぐらい、吾輩と仲良く寝るようす、吾輩。

 

            


229. 2016年描き初め・水彩画『ワタリガラス』の制作

2016-01-16 21:12:34 | 絵画・素描

今年の「描き初め・かきぞめ」は手漉き和紙に水彩画で『ワタリガラス』を描いている。ワタリガラスはユーラシア大陸、アフリカ北部、北アメリカ、グリーンランドと北半球に広く分布するスズメ目カラス科の大形のカラスである。日本には冬鳥として主に北海道東部に少数が渡来する。特徴としては全身が黒く、青の光沢があり、嘴は太く長い。喉の細長い羽を立てることがあり、鳴き声はカポン、カポンなどと聞こえるという。

英語でRaven(レイブン)というが、19世紀アメリカの作家、エドガー・アラン・ポーが1845年に発表した物語詩『大鴉・オオガラス・The Raven』はその音楽性、様式化された言葉、幻想的な雰囲気で名高い。心が乱れる主人公の元に、人間の言葉を話す大鴉が謎めいた訪問をし、主人公はジワジワと狂気に陥っていくというミステリアスな筋書きである。ポーはこの1作で瞬く間に文学界のスターとなったという記念すべき作品でもある。挿画としてはジョン・テニエルやギュスターブ・モローの手によるものが有名である。

カラスと言えばまず、墓場や死臭がする場所に数多く群れ集まる不吉な鳥というイメージがつきものだが神話・伝説の世界では北欧~ユーラシア大陸各地~日本~北米(ネイティブ・アメリカン)などの広い地域のものに数多く登場し、その多くが神の使いや神聖な鳥、吉兆の鳥として伝承されている。日本神話に登場する3本脚の『八咫烏・ヤタガラス』もワタリガラスではないかとする一説もある。イギリスではチャールズ2世の勅命で、6羽のワタリガラスがロンドン塔で飼育されており、「ロンドン塔からワタリガラスがいなくなるとイギリスは滅びる」という言い伝えがある。最近では映画でお馴染みの「ハリー・ポッター・シリーズ」にRavenという名のついた登場人物や魔法学校の寮が登場している。

いずれにしてもワタリガラスはカラスはカラスでも高貴で神聖な存在、そして人間を魔の手から守ってくれる、ありがたい正義の味方の鳥なのである。今回の水彩画ではこのイメージを表現しようと横顔をアップに構成し力強い姿として描写し、背景には神聖さを表す金泥を塗り込んでみた。絵のサイズは小さいがはたしてワタリガラスの神聖な姿が表現できたであろうか。絵の全体は個展の会場でご覧いただきたい。画像はトップが制作中の水彩画『ワタリガラス』、下が向かって左から顔の部分のアップと今回使用した画材(アクリル、胡粉など)。

 

   

 

 

 


228. フィールドノートから② 印西市『白鳥の郷』今年の鳥見初め

2016-01-13 19:53:04 | 野鳥・自然

今年の鳥見初めは3日に千葉県北東部に位置する印西市の『白鳥の郷』で白鳥三昧をしてきた。東京に下宿している長女が暮れから帰って来ていて、「久々にお正月にハクチョウを観に行きたい」と言う。そういえばこの子が中学生ぐらいまでは、毎年、正月はここにハクチョウを見に来るのが、わが家の年中行事だった。だんだん子どもたちが成長してくると、子ども抜きで冬に1回来る程度になってしまった。子どもにとっては、ハクチョウを観に来ることイコール新年という印象が記憶の中に、すり込まれていたのだなぁ。と、いうわけでハクチョウの塒入りを観察するには午後3時過ぎぐらいが良いだろうと家族で車に乗り込んで出かけた。

この『白鳥の郷』は最初は冬に水を張った田んぼに、たまたま一家族が渡来しただけだったという。それが、毎年渡来するようになり、地元「白鳥を守る会」の人たちの並々ならぬ保護活動の努力の結果、現在では最大1200羽もの白鳥類が飛来するようになった。僕らが見始めた頃は200羽前後だったように記憶しているが、その6倍にも膨れ上がったんだねぇ。が日本列島に越冬に渡って来るハクチョウ類はオオハクチョウ、コハクチョウが多く、その他、稀にナキハクチョウやコハクチョウの北アメリカ亜種のアメリカコハクチョウなどが観察されている。それぞれの種は一見似通っているが識別のポイントは嘴の基部の黄色の形状を比較するのが解り易い。以下、今日のフィールドノート。

<観察種> コハクチョウ(成鳥、幼鳥合計400羽±)、亜種アメリカコハクチョウ(成鳥×4羽)、オオハクチョウ(成鳥、幼鳥合計20羽+)、オナガガモ(♂♀合計900羽±)、カワウ(×1羽)、アオサギ(×1羽)、ダイサギ(×1羽)、タシギ(×2羽)、モズ(×1羽)、ハシボソガラス(×1羽)、ハシブトガラス(×3羽)、ヒバリ(×1羽)、ムクドリ(×50羽+)、ツグミ(×2羽)、タヒバリ(×7羽)。以上、14種。※亜種アメリカコハクチョウ(C.c.columbianus)は亜種コハクチョウの群れの中を探しているうちに成鳥4羽を発見できた。幼鳥や交雑個体もいたのかもしれないが見つけられなかった。今冬は暖冬のせいか、南下してくる数がまだ昨年の半数以下だということだった。

それにしても、この亜種アメリカコハクチョウは図鑑で見ると分布域が亜種コハクチョウとはまるで違っている。コハクチョウがユーラシア大陸北部で繁殖し、ヨーロッパ北西部や東アジアで越冬するのに対して、アメリカコハクチョウは北アメリカ北部(カナダ北部やアラスカ北部)で繁殖し、北アメリカ中部で越冬する。渡りのコースからもはずれているのだが、いったいどこで交差するのだろうか?ベーリング海峡上あたりだろうか?そんなことに想像を膨らますのも「渡り鳥」を観察する魅力の一つである。

日の入の時間前後に管理小屋に「白鳥を守る会」の人が来て給餌を始めるとこの群れには狭く見える冬水田んぼがコオーツ、コオーッ、…とハクチョウたちの元気な声で大騒ぎになってきた。西の空を見るとオレンジ色に染まった美しい夕空が広がっている。ここで今年の「白鳥参り」は終了となった。画像はトップが『白鳥の郷』の冬水田んぼで休息するハクチョウたち。下が向かって左からコハクチョウの成鳥と幼鳥、亜種アメリカコハクチョウの頭部のアップ(嘴の基部の黄色がわずかしかない)、オオハクチョウ成鳥、日の入時間の給餌のようす、この日の夕景。

 

            


227. 展覧会のお知らせ 『2016 New Year Best Selection』展

2016-01-08 19:39:36 | 個展・グループ展

今月、大阪の画廊の企画で開催されるグループ展のお知らせです。

・展覧会名: 2016 New Year Best Selection 

・出品作家:淺田 ようこ(水彩画) 稲垣 直樹(油彩画) 鳥垣 英子(日本画) 長島 充(木版画・木口木版画) 李 暁剛(テンペラ・油彩混合技法)

・会期:2016年1月14日(木)~1月24日(日) 1/19(火)休廊 11:00~18:00(最終日 17:00迄)

・会場:アートデアート・ビュー 大阪府高槻市北園町13-30 tel 072-685-0466  URL http://www.artdeart.jp

・交通:阪急高槻駅徒歩4分 JR高槻駅徒歩6分

・入場無料

・内容(DMの文章より):「1998年アートデアートギャラリーを立ち上げ、2009年現在の庭のある民家にアートデアート・ビューとして移転、早や17年となりました。このように続けてこられたのも応援してくださるお客様・作家の方々のおかげと感謝しております。今年も力を込めた作家の作品をご紹介出来るように頑張りますのでよろしくお願いいたします。新年のスタートは活躍中の5名の精鋭作家による作品展です。ご高覧いただけたら幸いです」

※昨年10月~11月にかけて野鳥をテーマとした版画作品の企画個展を開催していただいた高槻のギャラリーでの新春グループ展です。5名の作家がそれぞれ異なる手法により大作~小作品を出品します。絵画作品のなかで長島は一人版画作品による参加となっています。冬の季節感をテーマとした野鳥版画作品7点を出品する予定です。京阪神方面の絵画ファン、野鳥ファンの方々、この機会に是非ご高覧ください。今回、長島は在廊はしませんが、よろしくお願いします。画像はトップが展覧会DMの表面。下がその切手面。

 

 

 


226. 2016年 新年あけましておめでとうございます。

2016-01-01 09:19:37 | 日記・日常

ブロガーのみなさん、SNSのみなさん、2016年、新年明けましておめでとうございます。本年も変わらずくよろしくお願いいたします。

今日は朝から絵に描いたような元旦日和の晴天で、抜けるような青空が広がっています。みなさん、どんな朝を迎えましたか。毎年この日に思うことですが、普段何気なく生活している当工房のある平凡な町の風景もどことなく輝いて見えてくるのが不思議です。

さて恒例の年頭の誓いの言葉ですが、今年はシンプルにします。 それは『再挑戦』です。

大晦日のブログのご挨拶で視力、体力、集中力が確実に衰えてきているとネガティブなことを書きましたが、むしろ、それだからこそ『再挑戦』なのです。〇〇才の大台を前にして新しいこと、今までやろうと思い続けていてできていなかったことをこの一年というよりはこの何年かで始めようと思っています。何事もまずは自分自身を鼓舞していくことから始まります。内容はここではあえて書きません。追ってブログに更新していきたいと思っていますのでご期待ください。

トップ画像は大晦日と対になるように、僕の敬愛する19世紀ドイツロマン派の画家、カスパール・ダヴィット・フリードリヒの油彩画『朝日の中の婦人』としました。小さな作品ですが、日の出のスケール感を感じさせてくれます。この絵はフリードリヒが31才の時、素描の展覧会でゲーテに認められ創作の中心を油彩画へと移行し始めた時期の出発点となる代表作だそうです。弱く低い朝日に向かって立つ婦人は何を想っているのでしょうか。

2016年がみなさんにとって素晴らしい一年となることを祈念しております。今晩は良い初夢を見てください。