長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

309. LTAP リトルターン・アートプロジェクト展が始まります。

2017-10-30 17:45:57 | 個展・グループ展
絶滅危惧種の水鳥であるカモメ科のコアジサシの生息する東京都大田区「森ケ崎水再生センター屋上コロニー」を管理する自然保護団体、LTP(リトルターン・プロジェクト)の企画による下記展覧会に出品します。

・展覧会名:LTAP.リトルターン・アートプロジェクト展

・会期:2017年11月4日(土)9:30~16:00、11月5日(日)9:30~15:00。

・会場:千葉県我孫子市生涯学習センター「アビスタ」1階 04-7182-0515
 この期間、会場はジャパン・バードフェスティバルの会場ともなっています。

・内容:「アートの力でコアジサシを守ろう!」のスローガンに共鳴した自然や野生生物を描く画家、イラストレーター、立体作家など18名によるコアジサシ保護のための展示となります。作品は全て特別の許可を得て今年の6/3に現 地取材をして制作したものです。基本、一人1点の出品となります。

・交通:電車利用の方はJR我孫子駅からバス利用となります。車の方は「アビスタ」には専用駐車場があります。

・巡回展:展覧会は来春までに東京、千葉と2ヵ所の移動をして開催されます。

コアジサシはかつては平野部の水辺に普通に渡来し繁殖していた夏鳥ですが、生息環境の開発による悪化で棲家を追われ激減、現在は環境省が指定する「絶滅危惧種」の1種となっています。私たち作家の微々たる力ですが少しでも保護活動に協力しようと制作、出品しました。コアジサシの未来に明るい光が見えることを願って止みません。

コアジサシの保護活動を地道に続けるLTP(リトルターン・プロジェクト)の活動内容にご興味のある方々はこちらのホームページをご覧になっていただきたい。

http://www.littletern.net/



※長島は板目木版画1点(画像)を出品します。今回会場にはおりませんが野鳥ファン、アートファン、またコアジサシの保護にご興味のある方はこの機会に是非ご高覧ください。どうぞよろしくお願いいたします。

画像はトップが今展のために取材、制作した板目木版画(1版多色摺り)「 飛来・Come flying 」取材の日、コロニーのコアジサシの親子の頭上をたまたまアオスジアゲハが飛来した瞬間を版画作品にしました。
下が向かって左から作品の部分アップ、取材で撮影したカモメ科の野鳥コアジサシの成鳥2カットと森ケ崎のコロニー風景。



         











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308. 消しゴム版画ワークショップ 『干潟の野鳥や生きものを彫ろう』

2017-10-10 17:09:15 | イベント・ワークショップ
トータル1か月半、ロング・ランと思っていた谷津干潟での野鳥版画個展「日本の野鳥 in 谷津干潟」もそろそろ折り返し地点となった。おかげさまで好評をいただき多くの来場者に訪れていただいている。8日(月祝)、個展の関連イベントである消しゴム版画のワークショップ『干潟の野鳥や生きものを彫ろう』を行うため早朝から車に道具などの荷物をたくさん積んで会場へ向かった。

会場である谷津干潟自然観察センターに到着。荷物を降ろして準備をしていると窓から見える淡水池からここで塒をとっているサギ類や北国から渡ってきたばかりの冬鳥のカモであるコガモの群れがいっせいに干潟方向に向かって飛び立った。そして池の上空を40羽近いヒヨドリの群れが鳴き交わしながら飛んで行った。「秋の渡り」の群れであろう。なかなかこんなロケーションの雰囲気は美術館や画廊などの展示では味わえないことである。開始時間にはまだ余裕があるので、事前にイベント担当であるレンジャーのHさんと今日のスケジュール打ち合わせをする。午前1回、午後1回の2回開催。すでに事前申し込みも多数あり当日申し込みの電話も何件か、かかって来ていた。ありがたいことである。

この消しゴム版画を使ったワークショップ、ここ10年弱ぐらいで随分いろんな場所で開催してきた。たいていが自然関係などの公共施設が多いのだがテフェスのテントブースなどでも行ってきた。初めは小さなプレス機を持ち込んで銅版画などでも行ったこともあるが会場の条件がさまざまであり臨機応変に対応できる画材として「消しゴム版画」を用いる形になってきた。そしてこの素材であれば手や指先に力のない小さな子供たちや年配者でも簡単に短時間で彫って摺ることができるのだ。
ワークショップというのであるから制作の指導だけではなく実際に僕自身が版を彫りハガキなどに摺って作品を作る現場も見せている。それから彫る下絵はオリジナルで考えても良いのだが事前に僕が原画を描いた小さな下絵を準備してきている。それから施設や環境によりモチーフも変えている。今回は千葉県の谷津干潟なのでこの季節の干潟で観察することができる野鳥や生きものを題材に下絵も準備した。

開始時間が近づいてくるとセッテイングされた会場のテーブル周辺には参加者が続々と集まって来始めた。老若男女、年齢もさまざまな人たち。オープンとなりHさんから谷津干潟の紹介とイベント内容、講師紹介があってから自己紹介を済ませるとここからはヨーイドン! ホワイトボードに完成までの手順の説明~下絵のゴム板へのトレース~彫り版の説明と実演~それぞれが彫りの作業~スタンプパッドを用いた摺りの説明と実演~それぞれが試し摺りとハガキへの本摺り~完成。と、休むことなく大忙しの流れとなる。この間、目の前の個展会場に版画を観に来た人たちに合間を見つけては作品説明などを行う。参加者は大人も子供も凄い集中力でモクモクと制作していた。ようやくカフエで休憩しお昼を食べたのは13:00を過ぎていた。

午後は新たな参加者で1時半スタート。いつものことだが、ここまで来るとあっと言う間に時間が過ぎて行く。好評のため終了予定時間を1時間以上オーバーしてゴール!!今回トータルで40人が参加。センターで用意していただいた大きな紙にも参加者全員がスタンプを摺って行き、楽しい共同作品もできあがった。

終了後、レンジャーのHさんとお茶を飲みながら反省会。アンケート用紙も見せていただき100%好評の内容だったので、ほっと一安心し胸を撫で下ろした。朝とは逆に荷物や画材の後片付けを始めていると窓から見える淡水池には水鳥たちが塒入りでバラバラと戻って来始めていた。「そうか、この職場は朝の鳥たちの塒出に始まり夕方の塒入りを観て人間も1日の仕事を終了するんだな」。
このことをHさんに話すと「そーなんです。言ってみればとても贅沢な職場なんですよねぇ」と答えが返ってきた。心地よい疲れが全身を覆い始め、夕暮れ色に染まりつつある美しい干潟の風景を後にして帰路に着いた。

今回、ワークショップを企画してくださったセンタースタッフのみなさん、そして力作を制作してくれた参加者のみなさん、ありがとうございました。

長島充 野鳥版画展『日本の野鳥 in 谷津干潟』はちょうど折り返し地点、会期は10/31(火)まで。僕がこの後、会場に在廊するのは10/28(土)の午後です。まだ、ご高覧いただいていない野鳥ファン、版画ファンの方々、ぜひ足をお運びください。よろしくお願いします。

展覧会の詳細は以下、習志野市谷津干潟自然観察センターのホームページまで。 http://www.seibu-la.co.jp/yatsuhigata/

画像はトップが消しゴム版画の彫りの実演。下がワークショップのようすと僕が参考に制作した野鳥の消しゴム版。



                               



307. 「版と表現」 木口木版画の世界 展が開催中です。

2017-10-03 18:34:31 | 個展・グループ展
1日。先月27日から横浜市、岩崎ミュージアムで開催されている「版と表現」木口木版画の世界展のオープニング・パーティーに参加するため出品者の1人として行ってきた。

この展覧会は隔年開催で今回が4回目となるということだ。僕は今回初めてお声をかけていただき参加することとなった。たぶんこのメンバーでお酒が絡めば深夜までになるだろうと横浜スタジアムのすぐ隣のホテルを事前予約しておいた。千葉の奥地から横浜まで出て行き深夜まで飲むとまず帰っては来れない。JR横浜駅から地下鉄に乗り換えると通路脇にはそこらじゅうにプロ野球の地元チーム「横浜ベイスターズ」の選手の顔写真を大伸ばしにしたポスターが貼ってあり盛り上がりを見せていた。
日本大通り駅から地上に上がると外は蒸し暑い。さすが横浜、道を行き交う人々はどこかオシャレで垢抜けて映った。横浜スタジアムが近づくと球場内からものすごい声援が聞こえてくる。それもそのはずこの日のカープ戦はベイスターズが勝てばクライマックスシリーズの出場権が得られるという大事な試合だったのだ(結果はベイスターズの勝利)。

ホテルでチエックインを済ませ再び外に出るとパーティーの前に参加しようと思っていたギャラリートークの開始時間が過ぎている。あわてて大通りに出てタクシーを拾って会場に直行した。会場となっている岩崎ミュージアムに来るのも初めてだったが「港の見える丘公園」の前にある落ち着いた佇まいである。煉瓦造りの洋風のコンパクトな建物は入り口に美しいステンドグラスがはめ込まれてあって、さながら「丘の上の小さなチャペル」といった雰囲気である。
会場に入ると部屋の入口まで来場者でいっぱいだった。熱気すら感じる。すでに3名のベテラン木口木版画家(柄澤齋氏、栗田正義氏、三塩佳晴氏)と1名の美術評論家(藤嶋俊會氏)によるギャラリートークが始まっていた。

拝聴するのが途中からだったが、3人が木口木版画の制作を始めた頃、まだ専門とする版画家も少なく手さぐりだったことや、この特殊な木版画技法の魅力やその出会いなどの話が次から次へと話される。参加者も食い入るように聞いていた。前半も聞きたかった。遅刻したことが悔やまれた。
トークが済むとパーティーの準備までの時間、周囲の壁面に展示された出品作を1点1点ゆっくり観て回る。木口木版画は材料に制約があるため掌サイズの小さな画面が多い。だが、むしろそのために製作者は求心的で細密な世界に向かうのである。「山椒は小粒でもピリリと辛い」小さいが奥深く、濃密な世界にいつの間にか吸い込まれていく自分がいた。今回15名、約80点近い小宇宙が整然と並んだ。真四角に近い形の広すぎず狭すぎない展示空間もこの技法とよく合っていたように思う。

会場で主催者である「スージ・アンティック&ギャラリー」のオーナー、鈴江さんに久しぶりにお会いし挨拶する。ギャラリーが鎌倉の由比ヶ浜にあった頃だったからかなり時間が経っている。それから今回、出品手続きでいろいろとお世話になったミュージアムの小池氏ともお話しできた。

柄澤氏の乾杯の音頭でパーティーが始まるとお酒も入り会場はたちまち賑わいをみせてくる。展覧会関係者、出品版画家、作家、美術関係者、アートコレクター等、さまざまな方々に挨拶し、話し、お酒を酌み交わす。その中で僕が美術学校の学生時代35-36年前、木口木版画を習った故・日和崎尊夫・夫人と再会しお話しすることができたことはとても嬉しかった。当時、日和崎氏の集中講義のあと国分寺界隈で飲んだくれてアトリエに転がり込んでいたのだが、そのことをよく憶えてくださっていて懐かしがられていた。アルコールと共にすべての記憶が走馬灯のように回り始めた頃、関係者全員で記念写真を撮りお開きとなった。楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行く。二次会は有志のみなさんと横浜の繁華街の飲み屋に繰り出して深夜まで。

懐かしい人たちとの嬉しい出会い、懐かしい話と充実した時間を過ごすことができた。関係者のみなさん、ありがとうございました。この場をお借りして参加させていただけたことに感謝いたします。

展覧会は今月の22日まで。ありそうでない木口木版画の小宇宙だけを集めた企画展。芸術の秋、美術ファン、版画ファンのみなさん、この機会に是非ご高覧ください。

会場は岩崎ミュージアム。http://www.iwasaki.ac.jp/museum/ tel:045-623-2111

画像はトップが当日の展覧会会場のようす。下が向かって左から岩崎ミュージアム外観とギャラリートーク、オープニングパーティーのようす。展示作品の一部。