長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

206.『愛犬がマムシに咬まれた』の巻

2015-08-29 21:29:27 | 日記・日常

今年の夏はほんとに暑かった。特に梅雨明けからお盆ぐらいまでは酷暑で仕事に集中できず、すっかりまいってしまった。そんな中、日課の愛犬との散歩もとても朝昼には出られず日が暮れてからのナイト・ウォーキングとしていた。今回の事件はこのことが原因でおこった。

愛犬のサチヲ(雑種、11才♀)との出会いは11年前、娘たちがカヌーを習っていた頃、近所の川のカヌー練習場に兄弟たちといっしょに捨てられているのを見つけたことから始まった。柴犬を飼っていたので反対したのだが娘たちの「絶対飼ってほしいっ!!」の連打に根負けして飼う羽目になった。だが、しばらく経つと案の定、犬の世話はせず散歩などはこちらがすることとなった。猟犬の血が混じっているようで小さなころから動く生きものには過剰反応する。夏の夜散歩のときなどはアブラゼミをジャンピング・キャッチする芸当を見せたりしてくれる。

さて、梅雨が明け猛烈な暑さが始まった頃、絵の仕事が一段落して、いつものように連れ合いとサチヲの夜散歩に出かけた。コースは住宅地内から里山の水田地帯を30-40分程ぐるっと周る。水田きわの車道にさしかかった時、サチヲが道の端の暗い草薮に何かを発見したらしく前足で猛烈にアタックしている。「どうせ、場所からしてカエルかキリギリスだろう」と思っていた。ところが2回アタックしてしばらく歩き始めると尾を下げてビッコを引き始めた。どうしたんだろう?あれこれ想像していると連れ合いが「もしかしたらマムシに咬まれたんじゃないの!?」と言い出した。家まではすぐそこだったので一旦帰ってサチヲをつなぎ、急いで懐中電灯を持って現場に確かめにいった。先ほどの草薮辺りを探していると「いたいた、マムシ!!」体に銭型斑点(ぜにがたはんてん)と呼ばれる独特のもようの蛇がニョロニョロと移動していた。僕は今までにこの周辺で何度も遭遇しているのでその場で種を判断することができた。

この近くはマムシが多く「マムシ谷」などと名づけられた場所もあり、知人がキノコ採りの時に咬まれて大変なことになったこともある。急いでお世話になっている動物病院に連絡をとり、車にサチヲを乗せて向った。病院に着き事情を話して応急処置をしてもらいながら先生と話していると「人間の場合は免疫がないので血清の投与などが必要となるが犬は犬種に限らず、マムシの毒への免疫があるので、それほど心配することはない」とのことで、一先ず安心した。しかし、そうは言っても咬まれた方の脚がかなりパンパンに腫れてきていてうまく歩けなくなっている。治療後、抗生物質(飲み薬)と傷口への塗り薬をもらい、首には傷口を舐めたり噛んだりしないように「エリザベス・カラー」というプラスチックの襟巻をつけてもらった。

最初の2週間ぐらいは足の腫れがひかなかったが、抗生物質の投与と傷薬を塗り続けているうちに腫れも引き、それ以前よりも元気に歩けるようになった。「この犬は捨てられて生き残っていた経験があるので丈夫である」 ただ、途中、エリザベス・カラーの長さが短く、傷口を舐めてしまったので、カラーを段ボールで継ぎ足して長くされ画像のように不便そうな状態となっている。ここまで快復するのに一か月近くかかっている。愛犬をお持ちのブロガーのみなさん、マムシに咬まれたら慌てずに迅速な対応と処置を!画像はカラーのせいで小屋に入れず玄関につながれるサチヲ。下が画面向かって左から同じく玄関から出たサチヲ、ようやく良くなってきた傷口。

 

   


205.水彩画『烏天狗・カラステング』を描く。

2015-08-26 20:23:44 | 絵画・素描

今月は酷暑の中、水彩画で『カラステング』を制作した。神話・伝説をテーマとしたこのシリーズとしては珍しく妖怪に属するキャラクターである。日本の妖怪の中でもカラステングはとても人気者である。鋭い嘴を持つ顔面、背中には翼が生え、修験道の行者風コスチュームで恰好よくきめている。全体にシャープな印象を持つため絵になり易いのか昔話や絵本、最近ではアニメやゲームなどさまざまな分野に登場する。

そのルーツを辿ると、お隣の中国の古代神話では音を発する「流星」であり、インドでは神話に登場しインドネシア航空のシンボルマークともなっている怪鳥「ガルダ」、仏教の世界では守護神「迦楼羅天(かるらてん)」の姿が重なり、日本に伝わってカラステングとなったとも言われている。

日本の古典絵画や浮世絵版画にも数多く登場するが、その舞台はやはり深くて暗い闇夜である。そしてそのシテュエーションがよく似合う。今回の作品でもカラステングが潜在的に持っているそのダークなイメージを損なわないように注意しながら制作を進めていった。円窓構図をとり、深く青黒い闇の中を音もなく飛翔している2羽のカラステングを構成した。背景にはいつも登場する幻想的なエレメントとしての浮遊する球体や発光体と合わせて「和」のイメージを強調するために狐火を連想する「炎」も入れてみた。それから最近、細部へのこだわりが強くなってきて使用する筆がどんどん細くなっている。はたしてどんな作品に仕上がったのか、全体像は画廊での個展会場でご高覧ください。画像はトップが制作中の水彩画。下が向かって左から部分のアップ、使用した細密描写用の筆、仕事場の壁にかかるカラステングの面(福島県で購入したもの)。

 

      

 


204.プロ野球も後半戦、激しいゲームが続いています。

2015-08-20 19:14:06 | 野球・スポーツ

言い訳を書くわけではないのだが、今年の夏も異常な暑さが続いていた。そして毎度のことなのだが、お盆前後に仕事が集中していたことも重なってブログの更新が空いてしまった。ここへ来てようやく、熱さも緩み、仕事も落ちついてきた。今日は熱戦がつづいた高校野球の決勝戦、神奈川の名門、東海大相模が強豪、仙台育英を下しひさびさの優勝を決めた。いい試合だったねぇ。

この猛暑の中、プロ野球も後半戦真只中である。セリーグは1位から5位までが団子で、まだまだどこが頭を取るか解らない状態の混戦である。毎年、団子の混戦はパリーグのおかぶだったのだが珍しいシーズンとなっている。そしてパリーグの方はというと首位、福岡ソフトバンク・ホークスの独走状態となっており優勝マジック・№が点滅し始めている。我が千葉ロッテ・マリーンズの現在の順位は51勝52敗勝率4割9分5厘で、2位の北海道日本ハム・ファイターズと8.5ゲーム差で3位となっている。

今年のロッテはシーズン序盤より先発投手の不足、打線の不調などが原因で苦しい戦いが続いている。勝率5割までいったかと思うと連敗が続き、順位も4位と5位の間を行ったり来たりということの繰り返し、選手もファンもフラストレーションが溜まる状況が続いてきた。個人的にも球場からは足が遠のき気味だった。ファンの姿勢としてはこういうことではいけないんだけどねぇ…。ここ数年来、夏になるとチーム全体が調子を落とすことが多かったのだが、今年は梅雨空けぐらいから少し調子が良くなり、投打もかみ合ってきて何とかAクラス入りを果たしたところだ。これも珍しいパターンである。それから今のところ他チームにくらべて怪我人が少ないということもラッキーと言えるだろう。パリーグの打率十傑に3人がランキングされていたり、キューバの主砲、デスパイネがホームランを打った試合は必ず勝というジンクスも生まれている。

千葉ロッテ・マリーンズ、今が大事な時期。ここで踏ん張って得意の短期決戦、クライマックス・シリーズ参戦の権利を勝ち得てください。最後まで応援しています。ボチボチ暑さも峠を過ぎたようだし、一日の制作が終わってからホーム球場にナイター観戦に出かけることにしようかなぁ。生ビールがうまそうっ!!画像はトップがゲーム中盤、ベンチ前で円陣を組むロッテナイン。下が向かって左から今年の先発投手、勝ち頭の一人石川歩、4番バッターのアルフレド・デスパイネ、内野席から観たQVC・マリンスタジアム。

 

      

 

 


203.板目木版画『コタンクルカムイ』を制作する日々。

2015-08-03 21:42:45 | 版画

梅雨が明け、先月末から今月に入って日増しに酷暑が続いている。工房のある千葉北東部でも野外で39℃を記録した日もあった。公称されている数字は日陰でのものらしく実際は日向で40℃を越えている時もあるようだ。さすがに、ここまで暑い日が続くと頭は朦朧として、集中力がなくなってくる。

先月からこの酷暑の中、大判の板目木版画の制作をしている。今回の画題は『コタンクルカムイ』。北海道アイヌの人々が昔から「村を守る神」として大切にしてきた大型のフクロウである。和名はシマフクロウ。日本の北海道東部、サハリン、ロシアの極東地域の森林に留鳥として生息するが数は少なく、森林開発などの影響による絶滅が危惧されている種である。森林の大きな樹洞に営巣し、夜間、水辺で魚を採る習性が知られている。雌雄が2羽で鳴き交わし、ホッ、とホッホー、と鳴き合うのだが、ホッ、ホッホーとつながって聞こえることが多い。深い森林の中で低くてよく通る声で鳴く。枝などにとまった姿勢で頭から尾羽まで71㎝というのだから、フクロウ類の中でもかなり大型のグループの中に入る。いずれにしても繁殖する環境は自然環境が豊かで、広い面積を必要としている。

この偉大な神としてのフクロウの神秘性や大きさを表現するために今回の板目木版画では肖像画風に顔をアップにトリミングし、さらに実物大よりも大きく表してみた。日本の野鳥を木版画で彫り始めてから10年ほどの年月がたった。鳥の羽というのは繊細なものが多く、ザクザクと彫っていくことが味わいとなる板目木版画では、なかなか表現するのに苦労する。だんだんと細かい刃先の彫刻刀を使用することが増えてきた。けっこう大きな版木に彫っているのに、削りカスはほんのわずかな量にしかならない。今回ためしに削りカスを最初からとっておいてみた。結果は添付画像のとおりである。おそらく数多い木版画家の中でもこれだけカスが少ない人はそんなにいないんじゃないかなぁ…妙なことを自慢してもしょうがない。選んだ画題に対して自分なりの表現や彫り方を探究してきた結果である。

ここまで、彫っては摺ってを繰り返し、4回の試し摺りを重ねてきた。そろそろ彫りの作業は終了。あとは薄口の和紙に黒1色で丁寧に摺りあげるだけとなった。まだまだ猛暑が続きそうなので摺りの作業を想うと辛くなるが、ここは奮起して最後まで完成させよう。技術的、作業的なことよりも、このフクロウが持っている深い神秘性が表現できたかどうかが一番気がかりになっている。画像はトップが彫りの作業中の版木。下が向かって左から木版画の削りカス、彫り途中の羽のアップ、今回制作に使用した彫刻刀類。