goo blog サービス終了のお知らせ 

天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

2009-2010 冬の旅 8、北の秘境駅 室蘭本線小幌駅

2010-01-31 | 鉄道
夕陽に染まる小幌駅構内 函館方向より札幌方向を望む

2009-2010 冬の旅 7、苫小牧市科学センター ミールに会える街からの続きです

苫小牧駅を13:04発の函館行き特急「スーパー北斗12」号に乗車…のつもりが、列車の到着が遅れている。
数十分遅れてやって来た「スーパー北斗12」号の自由席車内は超満員、立ち席の乗客であふれるデッキに何とか潜り込んで発車。
今日(2009年12月29日)はもう年末の帰省ラッシュのピーク時期、札幌から道南各地に帰省して年越しをする人が集中しているのだな。乗降に時間がかかって延着したのだろう。

「スーパー北斗12」号は懸命に走って遅れを徐々に回復しながら、洞爺駅に到着。ここで下車。
 
洞爺で14:37発長万部行き普通列車478Dに乗り換えて、これから向かうのは4つ先にある室蘭本線の無人駅、小幌駅
何故そんな駅へ向かうかと言うと…実はこの小幌駅、ただの駅ではない。
駅の周囲には人家も何も無く、何より駅につながる道路が見当たらない!
一体、誰が利用するのか。いや、そもそも利用する人などいるのか?
それ以前に、利用することが現実的に可能なのか?
「列車でしか到達出来ず、列車でしか脱出出来ない」という、有り得ない条件下にある謎の駅。

以前から鉄道愛好家と一部の好事家の間で秘かに語り草となっていた、そんな謎の駅は今、インターネットの普及によってその存在と面白さが一気に世間に広く知れ渡ることとなり、いつしかこう呼ばれることとなった…
曰く、秘境駅と!

全国に幾つかある秘境駅の中でも、特に小幌駅は冬には積雪によって完全に鎖される北海道の海岸に面した山中という極めて厳しい地理的気象的条件と、駅につながる道路が全く存在せず文字通り「駅から外界へは完全に遮断されていて鉄道以外の手段では到達・脱出不可能」であることから極付けの秘境駅とされており、
故にこの駅に憧れ、ただ下車して訪れ、また乗車して去る旅人は数多いという。
かく言う僕も実は2008年の夏に小幌駅を鈍行列車で「停車」して、そのまま走り去っている。この時、「いつかは降り立ってみたい…」と強く想ったのだが、1年あまり経って遂に実際に小幌駅に「降り立つ」ことになった。
しかも厳冬期。秘境駅が雪に鎖される、最も厳しい季節を選んでの“小幌駅上陸”である。自ずと到着前から、期待と覚悟が高まる!

 
15:03、長万部行き普通列車は小幌駅に到着した。
唯一人、僕だけを降ろして、列車はプラットホームを離れ、トンネルに吸い込まれて行く。
思わず「あ…取り残された!」という感覚。




降り立った長万部方面上りプラットホームでは、煤けて朽ち果て始めた駅名板が出迎えてくれた。
列車の走行音がトンネルの奥に消えた後は、辺りは山から海から吹き抜ける風の音と水音に支配される…水音?
何と小幌駅は雪解けの渓流の真上にある「橋上駅」スタイルだった。足元を、冷たそうな水が結構な勢いで海へと流れて行く。思わず足がすくむほどの、寒さを感じる渓流の水音。


小幌駅の発車時刻表。
1日に停車する列車は上下合わせて8本のみ。早朝深夜には普通列車さえも通過してしまう。


プラットホームを離れて函館方向から札幌方向を見る、これが小幌駅の全景。
ホームの先で線路はすぐにトンネルに吸い込まれている。


一方、函館方向を見るとこちらもこの通り、駅の先はすぐトンネル。
小幌駅はトンネルとトンネルの谷間にあるのだ。






小幌駅から見る海側の風景。
短いプラットホームと、保線業務用と思われる建家があるだけで、その先は原野。
原野は海岸に続いていて、木々の向こうから打ち寄せる波の音が聞こえる。


しかし、海へと向かう道などは一切見当たらない。
それでも恐らく原野を強引に乗り越えて海へと向かう釣り人はいるようで、密漁禁止を呼びかける立て看板が原野の向こうに見える。
そう言えば確か、この駅を「利用する」とされる乗客は殆ど釣り客のみだと聞いたことがあるが、それにしてもこの原野を乗り越えて行くとは…。
増してや雪に覆われた今の状態でこの原野に足を踏み入れることは、即「遭難」を意味するとしか思えない。
実際、雪の上には足跡一つ付いてはいなかった。


山側にはトンネルの出入口にやはり保線業務用らしき小屋があり、駅の真下を流れる渓流が続いているだけで、こちらにも道らしきものは一切見当たらない。
山の上には国道が走っているそうで、時折自動車の走行音が聞こえてくるが、相当距離と高低差がありそうで、徒歩での到達は不可能だろう。
勿論、雪に覆われた今は即「遭難」となることも想像に難くない。

「…本当に、ここは秘境だ。
誰も近付けないし、どこにも出られない、正真正銘の秘境駅だ!
山と海と雪に閉じ込められてしまった。」



秘境駅を、特急列車が高速で通過して行く。
特急の車内にある日常社会と、秘境駅に一人取り残されている僕とでは、まるで別世界にいるようだ。
世間と隔絶されてしまったような、孤独感が深まっていく…




午後3時を回ると、北海道の短い陽は傾き始める。
小幌駅は早くも夕闇の気配に包まれる。

「寂しい…もう帰ろう!」

しかし、この時、驚くべきものを目にしてしまった。

駅の海側、海岸へと続く原野の脇のほうに、小高くなった丘があるのだが、保線小屋の裏手の方からその丘の上へと足跡が続いていたのだ。
さっき海側に来たときには気が付かなかった。
「…!誰か、ここから海の方の丘の上に行ったんだ!でも一体、何の為に?」
でも僕には、その足跡を辿って登って行こうという気力は無かった。
夕陽に照らし出される足跡を見ているうちに、何とも言えない気分になってきた僕は足早に次に来る東室蘭行き普通列車の停る下りプラットホームへと戻った。

そしてそこでもまた、驚くべきものを発見。

ホームの奥の斜面に、木に結わえ付けられ雪に埋れたこれは…
「駅ノート!?」
そう、これはまさしく、全国各地の無人駅に旅人が自主的に設置する形で発生し、それを見かけた旅人が自主的にコメントを書き込み、勝手連的に維持管理を行う「原始的アナログBBS」とでも言うべき情報掲示板システム、「駅ノート」!

かつてインターネットが普及していなかった頃はかなり有効な情報交換ツールとして多くの旅人に愛用されており、実際に質量共に現在のネット掲示板にも匹敵する情報がノート上の手書きコメントでやり取りされていたのだ。
ネット掲示板全盛の今もなお、その独特の温かみと叙情的な雰囲気に惹かれる駅ノートファンは多く、日本各地の無人駅には旅人のコメントで埋め尽くされたノートがひっそりと次の旅人の書き込みを待っているのを見かけることは数多い…
という事は僕も知っていたし、実際に駅ノートを見かけると必ずコメントを書き残すようにしているのだが、それにしても待合室すらないこの小幌駅で、雪の中から駅ノートを掘り出す事になろうとは!
雪の中から出てきた「小幌駅駅ノート」は、北海道の山中に野晒しという過酷な保管状況にも耐えるよう頑丈なビニールケースに2重に収められており、管理人氏の情熱の程が伺える。
その熱意に感心し敬服しつつ、今日この日この時間に九州は熊本から酔狂な旅行者がこの秘境駅を訪れたということをしっかり書き込ませて貰った。




駅ノートを元通りにケースに戻して、木の根元の雪の中に埋めると、列車の接近を告げる自動放送のアナウンスが小幌駅に響き渡った。
「さあ帰ろう!」
ワンマンのディーゼルカーが僕の目の前に停車し、ドアが開いた。
暖房の効いた車内に入ると、秘境から日常に戻ってきた気がした。
小幌駅15:26発、東室蘭行き普通列車487D。23分間の“秘境滞在”だった。

16:16、伊達紋別で487Dから下車。
ここで16:37発の函館行き特急「スーパー北斗16」号に乗り換えて、今来た線路を函館方向へと引き返す。
小幌駅のように停車する列車が極端に少ない場合、目指す方面へと向かう列車を待つより先に来る逆方面行きの列車に乗ってしまい、改めて目指す方面へと向かう特急に乗り換えてしまった方が結果的に速く目的地に到着出来る場合というのがたまにある。
「乗り鉄」をやる連中の間で「返し」などと呼ばれるテクニックで、今回の旅のように特急も乗り放題の周遊きっぷなどを使っている場合は特に有効とされ、このテクニックを駆使出来るようになれば一端の「乗り鉄」として認められるというか、まぁ立派な重症患者に認定という訳である。
ともあれ、函館目指しひた走る「スーパー北斗16」号はやがて、さっきまで滞在していた“秘境”を駆け抜けて行く。
トンネルの谷間に雪に鎖された秘境駅は既に闇に包まれ、特急の車中からはその存在を確認することすら出来なかった…

ここまでの鉄旅データ
走行区間:苫小牧駅→洞爺駅→小幌駅→伊達紋別駅→函館駅(室蘭本線・函館本線経由)
走行距離:321.5キロ(JR営業キロで算出)


2009-2010 冬の旅 9、最北のブルートレイン 寝台夜行急行「はまなす」に続きます

2009-2010 冬の旅 7、苫小牧市科学センター ミールに会える街

2010-01-31 | 博物館・美術館に行く
苫小牧市科学センター・ミール展示館の宇宙ステーション「ミール」
現在、世界で唯一現存する実物予備機である


2009-2010 冬の旅 6、室蘭市青少年科学館 北の街のプラネタリウムからの続きです

苫小牧駅に着く頃にはすっかり日が暮れていた。
駅からホテルまでの道沿い、公園を彩るイルミネーション。
 

夜の街へと繰り出したい気分にもなったが、今夜は長旅の疲れを取るためにホテルの部屋で寛いで、早めに就寝。

第3日目 2009(平成21)年12月29日

ぐっすり眠ったのでスッキリ起床。今日はいい天気。
チェックアウトする際にフロントに手荷物を預かってもらって、歩いて目指すは苫小牧市科学センター
ここには世界で唯一、ロシア(旧ソ連)の宇宙ステーション「ミール」の実物予備機が展示されているミール展示館があるのだ。



実はここに来るのはこれで2回目。
前に来たのは2008年の夏の終わりだったが、早くも秋の気配が色濃く漂う街にはとても風情があり、「また苫小牧にミールに会いに来たい」と思っていたのです。
苫小牧の街の中心部にも程近く、散歩がてらに気軽に歩いて訪れることが出来る科学センター。
さっそくミールと再会。
先ずは展示館の職員さんに挨拶して、写真撮影とネットでの公開可否を伺います。快くOKを出して頂けたので、安心して見学と撮影開始。


展示館の2階通路、定番の撮り位置から見下ろすミール。
右奥のコアモジュール(居住区)の手前側にクバント(天体物理観測モジュール)が結合した状態です。


1階フロアに降りて、至近距離から見るミール。
船体の赤旗ソ連国旗、船外活動用の手摺が印象的。




クバント側から見るサイドビュー。
さすが宇宙ステーション、圧倒的な重量感があります。




コアモジュールのドッキングポート。
このドッキングポートを介して各種のモジュールが接続され、ミールの実機は世界最大級の宇宙建造物となったのです。




ドッキングポートの巨大なインターフェースコネクタ(と思われる接続部)。
これって、実際の軌道上でもカバーも無しで剥き出しだったんでしょうかね?

外観を見て歩いていたら、展示館の職員さんから「船内もご覧になりませんか?」と声を掛けられたので、喜んで見せて頂きました。



コアモジュール内のドッキングポートに続く部位にある操縦席。
夥しい数のアナログなボタン・スイッチ類が並んでいて、如何にも操縦が難しそう。
さらに中に入って初めて気が付いたのだが、操縦席の足元部には地球を確認するための小さな窓もあります。
案内して下さった職員さんによると「本当は、この窓から地球の映像が見えるような展示とかもやりたいんですけどねぇ」とのこと。
また「展示館の天井に黒いスクリーンを張って、ミールが実際に宇宙を飛んでいるように見せたりもしたいと考えてます」おお、それは実現したら楽しそう!
「それならいっそのこと、ドッキングポートに実物大の他モジュールやソユーズを風船で再現してドッキングさせてみたりしたらどうでしょう!?」
「ええ、そういったこともやりたいんですが、展示館内のスペースに限りがあるから難しいんですよ」
制約がある中で、いろいろと展示方法を工夫しておられるんですね。

「ところで、今日は本州から来られたんですか?」と聞かれたので、
「いえ、もうちょっと遠く…九州の熊本からです」と答えると「そんな遠くから!」と驚かれました。
いえいえ、実はここに来るのは2回目なんですよ!
それだけの価値があるんですよ、何しろミールに会えるのは今では地球でもここだけなんですから。それに宇宙にあったミールの実機も2001年3月に大気圏突入し、失われていますから。
でも、実は現在ミールに代わって地球周回軌道を飛んでいる国際宇宙ステーション(ISS)のズヴェズダと呼ばれるロシアのモジュールは、基本的にこのミールのコアモジュールと同じ構造となっています。
偉大なる先駆者としてのミールの業績はISSに引き継がれ、今なお宇宙を飛び続けているのです。


ミール展示館にはミール関連の資料もあります。
これはミールで使われたノート。一緒に付いているのは低重力環境でも使える「宇宙ペン」でしょうか。
はて、「一方ソ連は鉛筆を使った」という有名なジョークもあるのだが、あれはやっぱりフィクションだったのかな?


ミールに搭乗した歴代の宇宙飛行士達の名鑑。
随分初期の頃から、ソ連のみならず当時の「東側陣営」諸国の飛行士達がミールを訪れていたんですねぇ。
僕がダマスカスで資料館を探し歩いたシリアのファーリス(ファリス)飛行士の名前もあります。

ここでいきなり、お宝グッズが登場!

説明も何も無く宇宙食のパックなどと並んで展示されているこのキーホルダーとピンバッヂ、
何と宇宙科学研究本部のM-Vロケット5号機と小惑星探査機「はやぶさ」の公式グッズです。
確か「はやぶさ」の公式グッズは今のところこのバッヂとキーホルダーのみしか作られていない筈。
それにしても、こんな貴重なお宝グッズが何故、ミール展示館に!?謎は尽きない(笑)

ミール展示館を満喫したので、ミール船内を案内して下さった職員の方にお礼と「また熊本からミールに会いに来ます」と挨拶してから、ミール展示館を後にします。
次は科学センター本館の方へ。

ミール展示館との連絡通路の先には、宇宙開発史の年表と歴代の世界のロケットが勢揃いした展示パネル。
これはカッコいい!


そして僕のお気に入りの場所は、連絡通路脇にあるこの図書スペースだったりします。
科学館・博物館には大抵あるこの図書スペース、何気にいい本が揃っていたりしますからねぇ。
ここでも小学生の頃に学校の図書室で読み耽った「学研まんがひみつシリーズ『コロ助の科学質問箱』」を見つけて、暫し立ち読み。
ああ懐かしい!

 
苫小牧市科学センター本館は「昭和45年1月、当地方の科学する心を育成し、郷土文化の向上・発展を図るため、苫小牧市青少年センターとして開設しました」(公式ホームページ「施設の概要」より転載)という、とても歴史のある施設。
展示も年季が入っていますが、見やすく解りやすいように工夫されていて味があります。


昭和45年の開設から平成元年まで使われていたという、旧プラネタリウム投影機。
延べ50万人が、この投影機が映し出した星を見たそうです。


そしてこちらが、現在使用されているプラネタリウム投影機。
苫小牧市科学センターのプラネタリウムは、昨日の室蘭市青少年科学館のものより一回り大きめのドーム。
今夜の苫小牧の星空案内と、室蘭と同じくオリオンとプレアデス星団がテーマの「冬の星空とプレアデスの七人姉妹」の物語が上映されました。

ミールとプラネタリウムを堪能して、すっかり満足。
ホテルで手荷物をピックアップして、駅に向かいます。ミールに会える街、苫小牧を後にしてこれから行く先は…秘境駅!

2009-2010 冬の旅 8、北の秘境駅 室蘭本線小幌駅に続きます