不眠と言ったって結局睡眠薬で眠るんだけど、僕は20年来の不眠症です。
薬を飲まなければそのうち夜が明けてしまい、昼も目が覚めっぱなしで、次の夜も…といったくらいのもんです。眠らねばそのうち死んじゃうので、仕方なくお医者様に薬を処方して貰ってる次第。薬は3種類、入眠剤、安定剤、睡眠剤。これを普通の倍の量服用している。お医者様によるとこれはもう限界の量で、これ以上の種類・量は精神科の領分になってしまうらしく、僕はそれでも構わないんだけど、お医者様はそれを許可してくれません。
睡眠薬を服用すると夢を見なくなるので、長年服用し続けると脳が縮んだり、一部記憶が上手に再生できなくなるらしですが、まあ、普通人間歳とればみんなそういう状態になるものなんで、あまり気にはしていません。
不眠の症状ってのは思い出すのも嫌なもので、口中のねばつき、目のかすみ、体内の痒みなどがあらわれます。体は眠りたいんだけど、あたまがそれを許さない感じです。あたまの暴走です。そのうち体もあたまもおかしくなってしまいます。小林秀雄はそんな症状のもとある文章を書いています。
遠くで犬の鳴く声がした。いいよ、いいよ、そんなに恐がらなくてもいい。眼をつぶるんだ、二度と開けてはいけない、どうぞ、二度と眼があきませんように。
眠られぬ夜の海は、―――眠られぬ夜の海は、アメリイの乳房のようだ。そうそう、そんな文句があったっけ、アメリイって誰の女房なのか知らん、―――そうだ、花櫛の下の顔は、白い狐の顔だった。それは、生きる事を断念した程無意味な面差しで、耳元まで裂けた口が、―――いや、いや、思うまい。
【眠られぬ夜】
そうそう、こんな感じ。こんな感じで年明け数日を僕は過ごしています。
2012/1/8 17:41 錦糸町 LYNX