一般相対性理論によれば、“運動している物体は、その速度が光の速さに近ければ近いほど、時間の進み方が遅くなる”と予測されていますが、この効果は実験的に証明されています。
また、私たちの宇宙は膨張していて、その膨張速度は地球から遠く離れれば離れるほど速くなります。
この2つの要素を合わせると、地球から遠い宇宙を見た時に、そこにある天体は近くの宇宙の天体を見た時と比べて、スローモーションに見えるはずです。
この予測を証明するには、遠くの宇宙の一瞬の様子をとらえるだけでなく、変化していく様子を“リアルタイム”でとらえなければなりません。
なので、単独で存在する白色矮星が爆発することはありません。
ただ、連星の場合は違うんですねー
白色矮星と連星をなすもう一方の星(伴星)の外層部から流れ出した物質が、主星である白色矮星へと降り積もる“降着”という現象があります。
この降着により、白色矮星の質量が増えて太陽質量の約1.4倍(チャンドラセカール限界)を超えてしまうと、自己重力を支えられなくなって収縮し、暴走的な核融合反応が起こって爆発してしまうことに…
この爆発を起こして星全体が吹き飛ぶ現象を“Ia型超新星”と呼びます。
Ia型超新星は爆発直前の質量がどれも同じで、爆発後のピーク光度もほぼ同じと考えられています。
なので、観測された見かけの明るさと比較することで、地球からの距離を測ることが可能になるわけです。
このような天体や現象は標準光源と呼ばれています。
超新星は明るい現象であり、発生した銀河が遠くても距離を測ることができるので、Ia型超新星は重要な標準光源の一つになっていて、宇宙の加速膨張が発見されるきっかけにもなったりしています。
これまでの研究では、このIa型超新星の解析を通して、約138億年に渡る宇宙の歴史の半分程度までは、一般相対性理論の予測と一致する時間の遅れが観測されました。
でも、それ以上遠くの宇宙で起こった“Ia型超新星”を観測することは難しく、これ以上遠くの宇宙における時間の遅れを観測するのは困難でした。
ただ、遠方で発生しても観測可能な他の天文現象は、明るさの変化が一定では無かったり、遠い宇宙を観測すること自体が技術的に困難だったりするので、時間の遅れを証明することができていませんでした。
この変化を、その動きによって時を刻む“時計の針”に見立てれば、理論上は時間の遅れを検出することが可能なはずです。
とはいえ、数日にわたるクエーサーの明るさの変化を、確実にとらえるのは困難なことです。
そこで、研究チームでは、過去20年以上に渡って様々な波長で観測された190個のクエーサーのデータを解析。
クエーサーが“時を刻む”過程を調べています。
ただ、クエーサーの明るさの変化に時計として使えるような性質があるのかどうかは、正確なところは不明なんですねー
過去の研究では検出に失敗したこともありました。
でも、今回の研究では、クエーサーがそのような性質を持つことを証明することができたんですねー
解析の結果、今から120億年以上前(宇宙誕生から約10億年後)の宇宙では、現在の宇宙と比較して時間の流れが5倍ほど遅くなっているのを検出しています。
もちろん、初期の宇宙が5倍も遅いスローモーションに見えるのは、遠大な距離に隔てられた私たちが観測しているからこそ起きる現象です。
仮に、タイムマシンを使って当時の宇宙に戻ったとしても、時間は旅立つ前の現在の宇宙と同じような速さで流れているように見えるはずです。
ただ、観測によって実証された時間の進み方の遅れは、別のことも証明しています。
宇宙が膨張していることや、遠方の(すなわち初期の)宇宙に銀河の初期の形態であるクエーサーが存在することは、現代の宇宙論ではほぼ共通の認識とされていますが、「それは本当なのか?」という素朴な疑問に答えるのは簡単なことではありません。
クエーサーの明るさが、実際にゆっくり変化しているように見えることを示した今回の解析は、クエーサーが初期の宇宙に確かに存在する天体であり、宇宙がかなりの速度で膨張していることを別の方法で証明したという点で、興味深い研究といえますね。
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また、私たちの宇宙は膨張していて、その膨張速度は地球から遠く離れれば離れるほど速くなります。
図1.一般相対性理論は、運動速度の大きな物体ほど時間の進み方が遅くなることを予測し、現代宇宙論は遠くの宇宙ほど速く膨張していると予測している。この2つの理論を合わせて考えれば、遠くの宇宙にある天体ほどスローモーションで見えることになる。(Credit: The University of Sydney) |
この予測を証明するには、遠くの宇宙の一瞬の様子をとらえるだけでなく、変化していく様子を“リアルタイム”でとらえなければなりません。
白色矮星が引き起こす超新星爆発“Ia型超新星”
誕生当初の白色矮星の表面温度は10万℃を上回ることもありますが、内部で核融合反応は起こらず余熱で輝くのみなので、太陽のように単独の恒星から進化した白色矮星は長い時間をかけて冷えていくことになります。なので、単独で存在する白色矮星が爆発することはありません。
ただ、連星の場合は違うんですねー
白色矮星と連星をなすもう一方の星(伴星)の外層部から流れ出した物質が、主星である白色矮星へと降り積もる“降着”という現象があります。
この降着により、白色矮星の質量が増えて太陽質量の約1.4倍(チャンドラセカール限界)を超えてしまうと、自己重力を支えられなくなって収縮し、暴走的な核融合反応が起こって爆発してしまうことに…
この爆発を起こして星全体が吹き飛ぶ現象を“Ia型超新星”と呼びます。
Ia型超新星は爆発直前の質量がどれも同じで、爆発後のピーク光度もほぼ同じと考えられています。
なので、観測された見かけの明るさと比較することで、地球からの距離を測ることが可能になるわけです。
このような天体や現象は標準光源と呼ばれています。
超新星は明るい現象であり、発生した銀河が遠くても距離を測ることができるので、Ia型超新星は重要な標準光源の一つになっていて、宇宙の加速膨張が発見されるきっかけにもなったりしています。
これまでの研究では、このIa型超新星の解析を通して、約138億年に渡る宇宙の歴史の半分程度までは、一般相対性理論の予測と一致する時間の遅れが観測されました。
でも、それ以上遠くの宇宙で起こった“Ia型超新星”を観測することは難しく、これ以上遠くの宇宙における時間の遅れを観測するのは困難でした。
ただ、遠方で発生しても観測可能な他の天文現象は、明るさの変化が一定では無かったり、遠い宇宙を観測すること自体が技術的に困難だったりするので、時間の遅れを証明することができていませんでした。
クエーサーの観測データから時間の遅れを検出する
今回の研究では、初期の宇宙に存在する“クエーサー”の観測データを解析することで、時間の流れがどのように観測されるのかを解析しています。この研究は、シドニー大学のGeraint F. Lewisさんとオークランド大学のBrendon J. Brewerさんの研究チームが進めています。
可視光線で非常に明るく輝くクエーサーの中心部には巨大なブラックホールがあり、ブラックホールが大量の物質を吸い込む時に莫大なエネルギーが放出されると考えられています。クエーサーは、銀河中心にある超大質量ブラックホールに物質が落ち込む過程で生み出される莫大なエネルギーによって輝く天体。遠方にあるにもかかわらず明るく見えている。
ただ、クエーサーからのエネルギーの放出量は一定ではなく、時間とともに増えたり減ったりするので、クエーサーは明るくなったり暗くなったりします。図2.クエーサーのイメージ図。中心部に超大質量ブラックホールがあり、大量の物質が吸い込まれる過程でエネルギーを放出する。(Credit: NASA, ESA & J. Olmsted (STScI)) |
とはいえ、数日にわたるクエーサーの明るさの変化を、確実にとらえるのは困難なことです。
そこで、研究チームでは、過去20年以上に渡って様々な波長で観測された190個のクエーサーのデータを解析。
クエーサーが“時を刻む”過程を調べています。
ただ、クエーサーの明るさの変化に時計として使えるような性質があるのかどうかは、正確なところは不明なんですねー
過去の研究では検出に失敗したこともありました。
でも、今回の研究では、クエーサーがそのような性質を持つことを証明することができたんですねー
解析の結果、今から120億年以上前(宇宙誕生から約10億年後)の宇宙では、現在の宇宙と比較して時間の流れが5倍ほど遅くなっているのを検出しています。
もちろん、初期の宇宙が5倍も遅いスローモーションに見えるのは、遠大な距離に隔てられた私たちが観測しているからこそ起きる現象です。
仮に、タイムマシンを使って当時の宇宙に戻ったとしても、時間は旅立つ前の現在の宇宙と同じような速さで流れているように見えるはずです。
ただ、観測によって実証された時間の進み方の遅れは、別のことも証明しています。
宇宙が膨張していることや、遠方の(すなわち初期の)宇宙に銀河の初期の形態であるクエーサーが存在することは、現代の宇宙論ではほぼ共通の認識とされていますが、「それは本当なのか?」という素朴な疑問に答えるのは簡単なことではありません。
クエーサーの明るさが、実際にゆっくり変化しているように見えることを示した今回の解析は、クエーサーが初期の宇宙に確かに存在する天体であり、宇宙がかなりの速度で膨張していることを別の方法で証明したという点で、興味深い研究といえますね。
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