京都大学と東邦大学は7月10日、スーパーコンピュータ“富岳”を使い、連星中性子星の合体に対する既存の10倍になる世界最長の合体後1秒間の一般相対性論シミュレーションに成功したことを発表しました。
重力波の検出と電磁波(光学と電波)望遠鏡による観測を組み合わせたマルチメッセンジャー天文学と、理論モデルによるシミュレーションを比べることで、様々なことが理解されるようになってくるようですよ。
中でも、特に理解が望まれているのが、鉄よりも重い重元素がどのように合成されたかです。
ただ、中性子星は直径約20キロ程度で質量が太陽の40%を超えるような超高密度天体なんですねー
この合体を再現するには、高精度の理論計算が必要になります。
このシミュレーションで扱われた中性子星の質量は、太陽質量の1.2倍及び1.5倍ほど。
これは、2017年8月に重力波が観測された連星中性子星の合体におけるパラメータと同じものでした。
シミュレーションそのものは、理化学研究所が運用する“富岳”を用いて7200万CPU時間をかけて実施。
既存のシミュレーションよりも10倍長い、合体後1秒間の変化を調べることに成功しています。
例えば、コバルト以降の重元素です。
これらは、中性子星の合体中や合体後に、物質が系から放出される際に合成されることがより明確になりました。
また、物質が合体後の約0.01秒から放出されることも発見され、0.04秒後にはこの“動的質量放出”はピークに達し、合体後の約0.3秒後に今度は合体時に形成されたドーナツ状の構造“トーラス”から物質が再び放出されることも確認されました。
この動的質量放出は、合体時の潮汐力と衝撃過熱によるものですが、合体後の物質放出はトーラス内の磁気乱流によるものだとし、今回初めて首尾一貫したシミュレーションで示されました。
重力波と電磁波を観測し精緻な理論モデルと比べることで、様々なことが理解されるようになってきます。
この結果は、宇宙分野に限らず原子核物理や素粒子物理学にも、大きな波及効果を及ぼすはずです。
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重力波の検出と電磁波(光学と電波)望遠鏡による観測を組み合わせたマルチメッセンジャー天文学と、理論モデルによるシミュレーションを比べることで、様々なことが理解されるようになってくるようですよ。
この研究成果は、京都大学 基礎物理学研究所 木内健太特任准教授(独・マックスプランク 重力物理学研究所 グループリーダー兼任)、京都大学 基礎物理学研究所 柴田大教授(独・マックスプランク 重力物理学研究所 所長兼任)、京都大学 基礎物理学研究所 林航大大学院生(現・研究員)、東邦大学 関口雄一郎教授たちの共同研究チームによるものです。
シミュレーションによる中性子星合体1秒後の変化
2017年8月のこと、アメリカの重力波望遠鏡“LIGO”によって、連星系を形成していた中性子星が合体したことによる重力波“GW170817”が初めて検出されました。中性子星は、太陽の10~30倍程度の恒星が、一生の最期に大爆発した後に残される宇宙で最も高密度な天体。主に中性子からなる天体で、ブラックホールと異なり半径10キロ程度の表面が存在し、そこに地球の約50万倍の質量が詰まっていている。一般に強い磁場を持つものが多い。
これにより、重力波の検出と電磁波(光学と電波)望遠鏡による観測を組み合わせた、マルチメッセンジャー天文学が始まったと言われています。マルチメッセンジャー天文学は、電磁波(光)や重力波、ニュートリノ、宇宙線などを協調して観測・解析することで行う天文学。それぞれが異なる発生メカニズムを持っているので、これらの観測結果を総合することで発生源の正体に迫ることが可能になる。
一方で、この中性子星同士の合体で重力波が生じたことは分かっていたのですが、合体で一体何が起こったのかは、詳細には理解されていませんでした。中でも、特に理解が望まれているのが、鉄よりも重い重元素がどのように合成されたかです。
ただ、中性子星は直径約20キロ程度で質量が太陽の40%を超えるような超高密度天体なんですねー
この合体を再現するには、高精度の理論計算が必要になります。
天文学では、水素とヘリウムよりも重い元素のことを“重元素”と呼び、水素に対する重元素の割合は重元素量と呼ぶ。重元素は恒星内部の核融合反応により合成され、恒星の死に伴い星間空間へと放出される。なので、星の生と死のサイクルが十分に繰り返されていない初期の宇宙では、現在の宇宙に比べて重元素量が低かったと考えられている。
そこで、今回の研究では、“数値相対論法”を用いて合体する2つの中性子星の世界最長シミュレーションを試みています。このシミュレーションで扱われた中性子星の質量は、太陽質量の1.2倍及び1.5倍ほど。
これは、2017年8月に重力波が観測された連星中性子星の合体におけるパラメータと同じものでした。
シミュレーションそのものは、理化学研究所が運用する“富岳”を用いて7200万CPU時間をかけて実施。
既存のシミュレーションよりも10倍長い、合体後1秒間の変化を調べることに成功しています。
例えば、コバルト以降の重元素です。
これらは、中性子星の合体中や合体後に、物質が系から放出される際に合成されることがより明確になりました。
また、物質が合体後の約0.01秒から放出されることも発見され、0.04秒後にはこの“動的質量放出”はピークに達し、合体後の約0.3秒後に今度は合体時に形成されたドーナツ状の構造“トーラス”から物質が再び放出されることも確認されました。
この動的質量放出は、合体時の潮汐力と衝撃過熱によるものですが、合体後の物質放出はトーラス内の磁気乱流によるものだとし、今回初めて首尾一貫したシミュレーションで示されました。
重力波と電磁波を観測し精緻な理論モデルと比べることで、様々なことが理解されるようになってきます。
この結果は、宇宙分野に限らず原子核物理や素粒子物理学にも、大きな波及効果を及ぼすはずです。
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