太陽系外惑星(系外惑星)の大気にどんな分子が含まれているのかは、惑星の形成や進化を探る上で欠かせない情報です。
でも、これまでの観測では、限られた温度でのみ存在するとされる、いくつかの分子が検出されていませんでした。
今回の研究では、系外惑星“WASP-31b”の大気中から“水素化クロム(CrH)”の検出に成功。
この発見は、系外惑星の大気中で初めて発見された金属水素化物でした。
また、水素化クロムは900~1900℃の温度範囲でしか存在しない分子なので、温度条件をもとに“WASP-31b”の物理的性質を探る上で重要な発見になるようです。
このことを理解するには、多数の惑星を観測し、その性質を知る必要があります。
このため、太陽以外の天体の周りを回る惑星“系外惑星”は重要な観測対象とされています。
近年の技術革新により、系外惑星の大気に含まれる分子の種類を探ることが可能になっています。
光の波長ごとの強度分布をスペクトルと言い、地球から見て系外惑星が恒星(主星)の手前を通過(トランジット)している時に、系外惑星の大気を通過してきた主星のスペクトルが透過スペクトルになります。
個々の元素は決まった波長の光を吸収する性質があるので、透過スペクトルには大気に含まれる元素に対応した波長で光の強度が弱まる箇所“吸収線”が現れることになります。
“透過スペクトル”と“主星から直接届いた光のスペクトル”を比較することで吸収線を調べることができ、その波長から元素の種類を直接特定することができます。
ただ、系外惑星の大気を通過した光は、通過せずに直接届いた主星の光に混ざっていて、その光の量は極めてわずかなものです。
また、大気中に含まれる元素の量が少なければ少ないほど、吸収線も弱くなってしまいます。
吸収線は異なる元素が非常に近い値をとることもあるので、吸収線が重なり合うことで元素の種類を誤認してしまうこともあり得ます。
そのため、系外惑星の大気成分の研究には極めて精度の高い分光観測を必要とし、その作業は極めて困難なものになります。
過去の観測で見つかったと主張された元素が、後の観測では見つからなかったり、誤認であると断定されたりしたケースも珍しくありませんでした。
“ExoGemS”は、アメリカ・ハワイのマウナケア山の“ジェミニ北望遠鏡”に設置された分光観測装置“GRACES”を用いて、高精度な分光観測データを取得するプロジェクト。
今回、取得したデータを分析すると、“WASP-31b”の大気から“水素化クロム”が検出されたんですねー
これは過去の観測結果と比べても極めて高精度で、発見の確定に必要とされる水準(5σ以上)を満たしているそうです。
水素化クロムは過去に褐色矮星(※)の大気で見つかったことはありますが、系外惑星の大気で見つかったのは初めてのこと。
元素としてのクロムは非常に珍しい存在なので、水素化クロムの存在量も極めてわずかで、吸収線は非常に弱いものになります。
また、水素化クロムの吸収線は、より豊富に存在するカリウムと非常に近い値をとるという別の難しさもあります。
でも、今回の“ExoGemS”による高精度な分光観測データでは、わずか2nmの波長の違いを区別し水素化クロムの存在量を明確になっていました。
さらに、今回の研究では、南米チリの超大型望遠鏡“VLT”に設置された分光観測装置“UVES”で、2017年春ごろに2回観測された“WASP-31b”のデータも組み合わせて分析を実施。
ただ、“UVES”のデータは、“ExoGemS”とは観測波長が異なっていたことや、もともと金属水素化物を発見するデータではなかったことから、水素化クロムの存在を示す吸収線はわずかしか観測できないため、あくまで予備的データの位置づけとなっています。
それは、水素化クロムが、他の分子よりも狭い900~1900℃という温度範囲でしか存在できないからです。
このため、水素化クロムは大気の温度を測る“温度計分子”の1つとみなされていて、惑星大気の温度だけでなく、大気の性質や循環を探る上でも重要な探索対象となっていました。
実際に、“WASP-31b”の大気の推定温度は、これまでの観測で1100度と推定されていて、水素化クロムが存在できる温度範囲内にあります。
惑星大気からの水素化クロムの発見は今回が初めてのことでした。
ただ、研究チームは他の惑星の大気中にも温度範囲に敏感な金属水素化物が存在すると考えています。
このような分子を発見することができれば、系外惑星の大気についての理解がさらに深まるはずです。
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でも、これまでの観測では、限られた温度でのみ存在するとされる、いくつかの分子が検出されていませんでした。
今回の研究では、系外惑星“WASP-31b”の大気中から“水素化クロム(CrH)”の検出に成功。
この発見は、系外惑星の大気中で初めて発見された金属水素化物でした。
また、水素化クロムは900~1900℃の温度範囲でしか存在しない分子なので、温度条件をもとに“WASP-31b”の物理的性質を探る上で重要な発見になるようです。
この研究は、コーネル大学のLaura Flaggさんたちの研究チームが進めています。
“WASP-31b”のイメージ図。(Credit: ESA, Hubble & NASA) |
遠く離れた惑星の大気分子を観測
私たちの地球を含め、宇宙に存在する惑星はどのように形成され、進化していったのでしょうか?このことを理解するには、多数の惑星を観測し、その性質を知る必要があります。
このため、太陽以外の天体の周りを回る惑星“系外惑星”は重要な観測対象とされています。
近年の技術革新により、系外惑星の大気に含まれる分子の種類を探ることが可能になっています。
光の波長ごとの強度分布をスペクトルと言い、地球から見て系外惑星が恒星(主星)の手前を通過(トランジット)している時に、系外惑星の大気を通過してきた主星のスペクトルが透過スペクトルになります。
個々の元素は決まった波長の光を吸収する性質があるので、透過スペクトルには大気に含まれる元素に対応した波長で光の強度が弱まる箇所“吸収線”が現れることになります。
“透過スペクトル”と“主星から直接届いた光のスペクトル”を比較することで吸収線を調べることができ、その波長から元素の種類を直接特定することができます。
ただ、系外惑星の大気を通過した光は、通過せずに直接届いた主星の光に混ざっていて、その光の量は極めてわずかなものです。
また、大気中に含まれる元素の量が少なければ少ないほど、吸収線も弱くなってしまいます。
吸収線は異なる元素が非常に近い値をとることもあるので、吸収線が重なり合うことで元素の種類を誤認してしまうこともあり得ます。
そのため、系外惑星の大気成分の研究には極めて精度の高い分光観測を必要とし、その作業は極めて困難なものになります。
過去の観測で見つかったと主張された元素が、後の観測では見つからなかったり、誤認であると断定されたりしたケースも珍しくありませんでした。
惑星大気中から金属水素化物を初めて発見
今回の研究では、サーベイプロジェクト“ExoGemS(Exoplanets with Gemini Spectroscopy)”の一環として、2022年3月12日に地球から約1300光年彼方に位置する系外惑星“WASP-31b”を観測しています。“ExoGemS”は、アメリカ・ハワイのマウナケア山の“ジェミニ北望遠鏡”に設置された分光観測装置“GRACES”を用いて、高精度な分光観測データを取得するプロジェクト。
今回、取得したデータを分析すると、“WASP-31b”の大気から“水素化クロム”が検出されたんですねー
これは過去の観測結果と比べても極めて高精度で、発見の確定に必要とされる水準(5σ以上)を満たしているそうです。
水素化クロムは過去に褐色矮星(※)の大気で見つかったことはありますが、系外惑星の大気で見つかったのは初めてのこと。
褐色矮星は巨大ガス惑星と恒星の中間に属する天体。褐色矮星の中心部では、重水素やリチウムの核融合反応が起こっているが、存在量が非常に少ない原子核を素にしている反応なので、すぐに停止してしまう。その後は、赤外線放射をしながらゆっくりと冷えていくことになる。
それだけでなく、系外惑星の大気で金属水素化物が見つかったのも、今回が初めてのことでした。元素としてのクロムは非常に珍しい存在なので、水素化クロムの存在量も極めてわずかで、吸収線は非常に弱いものになります。
また、水素化クロムの吸収線は、より豊富に存在するカリウムと非常に近い値をとるという別の難しさもあります。
でも、今回の“ExoGemS”による高精度な分光観測データでは、わずか2nmの波長の違いを区別し水素化クロムの存在量を明確になっていました。
さらに、今回の研究では、南米チリの超大型望遠鏡“VLT”に設置された分光観測装置“UVES”で、2017年春ごろに2回観測された“WASP-31b”のデータも組み合わせて分析を実施。
ただ、“UVES”のデータは、“ExoGemS”とは観測波長が異なっていたことや、もともと金属水素化物を発見するデータではなかったことから、水素化クロムの存在を示す吸収線はわずかしか観測できないため、あくまで予備的データの位置づけとなっています。
水素化クロムは“温度計分子”
今回の発見は、水素化クロムの性質を考慮すれば重要なものだと考えられています。それは、水素化クロムが、他の分子よりも狭い900~1900℃という温度範囲でしか存在できないからです。
このため、水素化クロムは大気の温度を測る“温度計分子”の1つとみなされていて、惑星大気の温度だけでなく、大気の性質や循環を探る上でも重要な探索対象となっていました。
実際に、“WASP-31b”の大気の推定温度は、これまでの観測で1100度と推定されていて、水素化クロムが存在できる温度範囲内にあります。
惑星大気からの水素化クロムの発見は今回が初めてのことでした。
ただ、研究チームは他の惑星の大気中にも温度範囲に敏感な金属水素化物が存在すると考えています。
このような分子を発見することができれば、系外惑星の大気についての理解がさらに深まるはずです。
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