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金属の雲が大気中に漂いチタンの雨が降っている? これまで発見された中で最も高い反射率を持つ系外惑星“LTT 9779 b”

2023年09月22日 | 系外惑星
2020年に発見された太陽系外惑星“LTT 9779 b”が金属の雲で覆われていて、これまで発見された中で最も高い反射率を持つ系外惑星だということが明らかになりました。

このことは、ヨーロッパ宇宙機関の系外惑星観測衛星“ケオプス”による観測から分かったこと。
“LTT 9779 b”は主星からの光の80%を反射しているようです。
系外惑星“LTT 9779 b”と主星のイメージ図。(Credit: Ricardo Ramírez Reyes (Universidad de Chile))
系外惑星“LTT 9779 b”と主星のイメージ図。(Credit: Ricardo Ramírez Reyes (Universidad de Chile))

すでに発見されている系外惑星の観測

系外惑星観測衛星“ケオプス(CHEOPS:CHaracterizing ExOPlanets Satellite)”は系外惑星を観測するための衛星なんですが、その主目的は新たな系外惑星の発見ではなく、すでに発見されている系外惑星のフォローアップです。

NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー(Kepler)”やトランジット惑星探査衛星“TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)”などの探査衛星とは違い、主目的は発見済みの系外惑星を詳細に観測することになります。

地球から見て系外惑星が主星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探る“トランジット法”という手法により、“ケオプス”は高精度で惑星のサイズを測定します。

“トランジット法”による測定結果と、すでに別の手法によって得られている惑星の質量の情報とを組み合わせると、惑星の密度が分かってきます。
そこから系外惑星の内部構造や組成、ガス惑星か岩石惑星か、大気や海に覆われているかなどが判断できるんですねー
さらに、雲の存在やその組成なども明らかにできるかもしれません。

“ケオプス”の高い精度で、すでに発見されている惑星が恒星の手前を通過するタイミングのわずかな変動を測定することにより、まだ見つかっていない惑星を発見する可能性もあります。

また、一部の惑星については衛星や環の探査にも利用できるそうです。
観測中の系外惑星観測衛星“ケオプス”のイメージ図。(Credit: ESA / ATG medialab)
観測中の系外惑星観測衛星“ケオプス”のイメージ図。(Credit: ESA / ATG medialab)

金属の雲が大気中に漂い、チタンの雨が降っている惑星

鏡のように光を反射する“LTT 9779 b”のサイズは海王星ほど。

惑星全体を覆う雲は、主に砂やガラスと同じケイ酸塩でできていて、チタンなどの金属が混ざっています。

“LTT 9779 b”では、金属の雲が大気中に漂い、チタンの雨が降っていると見られています。

系外惑星のほとんどは、大気が光を吸収したり、表面が暗かったりするので反射率(アルベド)が低くなります。

反射率が高くなるのは、氷で覆われた天体や、金星のように反射する雲に覆われた天体なんですねー

“LTT 9779 b”は、主星の周りをわずか19時間で1周していて、昼側の表面温度は最高で約2000℃にも達すると推定されています。

金属やケイ酸塩の雲を形成するには大気が高温すぎるように思われますが、“LTT 9779 b”の大気では、ケイ酸塩と金属の蒸気が過飽和の状態なので、非常に高温にもかかわらず金属の雲が形成される可能性があるそうです。

主星の近くを公転しているのに大気が存在する理由

“LTT 9779 b”の半径は地球の4.7倍(海王星の1.2倍)ほどです。

そのサイズと温度から、“LTT 9779 b”は“ウルトラホットネプチューン”と呼ばれています。

これまで主星を1日未満で周回する惑星は、すべて“ホットジュピター”か地球の2倍より小さな半径の岩石惑星のいずれかでした。

ただ、“LTT 9779 b”のような惑星は、恒星によって大気が吹き飛ばされて岩石部分のみ残ると予想されています。

それでは、なぜ“LTT 9779 b”の大気は吹き飛ばされずに存在するのでしょうか?

この論文の筆頭著者であるマルセイユ天体物理学研究所のSergio Hoyerさんによれば、“LTT 9779 b”が海王星のような惑星でいられるのは、雲が光を反射することで惑星が高温になりすぎて蒸発するのを防ぐ一方で、金属によって大気が重くなり吹き飛ばされにくくなっているとのことです。

主星の背後に“LTT 9779 b”が隠れる様子を観測

“LTT 9779 b”は、“TESS”や地上望遠鏡による追観測により2020年に発見された系外惑星で、今回“ケオプス”によりフォローアップ観測が行われました。

“ケオプス”は、系外惑星が主星の手前を通過(トランジット)することだけでなく、“LTT 9779 b”が主星の背後に隠れる様子も観測していました。

それは、惑星がどれほどの光を反射しているかを知るため。
惑星が見えている間は、主星と惑星を合わせた明るさがとらえられますよね。
一方、惑星が主星の背後に隠れると、主星だけの明るさになるからです。

その明るさの差から、惑星の光の反射率を知ることができ、“LTT 9779 b”が主星からの光の80%を反射していることが分かったわけです。
これまで発見された中で最も高い反射率を持つ系外惑星“LTT 9779 b”(Credit: Ricardo Ramírez Reyes (Universidad de Chile))

数千個の系外惑星が見つかっている現在、その研究は系外惑星の発見から、惑星のサイズや性質を調べるといった特徴付に変わりつつあります。
惑星がどんな物質からどのように形成されたのかを知ろうとしているんですねー

そのおかげで、“LTT 9779 b”が高い反射率を持ち、公転周期が短いにもかかわらず大気を持っていることが分かりました。

“ケオプス”の観測によって系外惑星の研究がさらに進むと、いろんな系外惑星の発見が期待できますね。


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