9月7日に打ち上げられた小型月着陸実証機“SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)”の“クリティカル運用期間”終了をJAXAが発表しました。
“SLIM”はH-IIAロケット47号機(H-IIA・F47)に搭載され、種子島宇宙センターを2023年9月7日8時42分11秒(日本時間)に離床。
ロケットからの分離後、予定していた軌道への探査機投入に成功し、午前9時45分に“SLIM”からの信号受信で太陽補足制御を完了していました。
ロケットからの探査機分離後、探査機の維持に必要となる太陽電池パネルによる電力発生、地上との通信、姿勢制御などの機能が健全に動作することが“SLIM”から受信したテレメトリにより確認。
さらに、軌道制御に必要となる推進系などの機能も健全に動作することが確認できたので、クリティカル運用期間は終了することになりました。
今後は、約20日程度をかけて搭載機器の機能確認を実施しつつ、所定のタイミングで月遷移軌道への軌道制御を行うための準備期間“地球周回運用期間”へ移行することになります。
9月15日午後1時の時点で“SLIM”の軌道は目標との誤差が非常に小さく、予定していた微調整は必要ないようです。
“SLIM”は正常な状にあるそうです。
地球周回軌道から離脱させる軌道変換指令は、10月1日午前2時40分ごろ送出され、南大西洋の上空約660キロの地点で“SLIM”のメインエンジンを約39秒間噴射。
予定通りの軌道変換を確認したことで“月遷移フェーズ”への移行を完了しています。
今後は必要に応じて軌道を修正し、10月4日午後に1回目の月とのスイングバイを実施する予定です。
月の高度5000キロ付近を通過しています。
月スイングバイの約45分前には、航法カメラで撮影した月の画像が公開されています。
探査機が惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、速度や方向を変える飛行方式があります。
この飛行方式の特徴は、燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行えることにあります。
積極的に軌道や速度を変更する場合を“スイングバイ”、観測に重点が置かれる場合を“フライバイ”と言い、使い分けています。
“SLIM”のミッションでは、着陸機自身のエンジンと限られた推進剤で月へ向かうためスイングバイを実施。
飛行時間が長くなる代わりに推進剤の消費量が少ない軌道を採用しています。
そのため、月スイングバイを終えた“SLIM”は、月や地球から一旦大きく離れるような軌道を飛行した後で、月周回軌道に入ることになります。
“SLIM”は打ち上げから3~4か月後に月周回軌道へ到着し、月を約1か月間周回した後で、日本初となる月着陸を実施する予定です。
目指しているのは、これまでの“降りやすいところに降りる”着陸ではなく、“降りたいところに降りる”着陸への質的な転換。
これを実現することで、月よりもリソース制約の厳しい惑星への着陸も、現実のものになっていくはずです。
昨今、対象になる天体についての知見が増え、探査すべき内容が今までよりも具体的になっているので、探査対象の付近への高精度着陸が必要になっています。
さらに、将来の太陽系科学探査で必要になるのが、より高性能な観測装置の搭載。
その時のために探査機システムを軽量化し、その分を観測装置にリソース配分ができるよう、探査機の軽量化は欠かせないんですねー
“SLIM”では、ピンポイント着陸技術と、小型で軽量な探査機システムの実現を目標とし、将来の月惑星探査に貢献することを目指しています。
月の地球側にある“神酒の海(Mare Nectaris)”の西に位置するSHIOLIクレーター付近の傾斜地に、正確にピンポイント着陸を行うための航法と、二段階式により安全なタッチダウンを行う技術を実証することになります。
なお、“SLIM”には“LEV(Lunar Excursion Vehicle)”と呼ばれる2機の小型ローバーも搭載されます。
中央大学、東京農工大学、和歌山大学などが開発に参加した“LEV-1”は、月面でジャンプして移動することや、地球との直接通信を目指しています。
一方の“LEV-2”は、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学が開発に参加した小型ローバー、“SORA-Q”の愛称でも知られています。
野球ボールほどの大きさの球体が月面に着地した後に変形し、“クロール走行”と“バタフライ走行”という、2つの走行モードで月面を走行する予定です。
“LEV-1”と“LEV-2”は、“SLIM”から着陸直前に分離され、月面到達後は画像の取得と、地球へのデータ送信を連携して行う予定です。
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“SLIM”はH-IIAロケット47号機(H-IIA・F47)に搭載され、種子島宇宙センターを2023年9月7日8時42分11秒(日本時間)に離床。
ロケットからの分離後、予定していた軌道への探査機投入に成功し、午前9時45分に“SLIM”からの信号受信で太陽補足制御を完了していました。
ロケットからの探査機分離後、探査機の維持に必要となる太陽電池パネルによる電力発生、地上との通信、姿勢制御などの機能が健全に動作することが“SLIM”から受信したテレメトリにより確認。
さらに、軌道制御に必要となる推進系などの機能も健全に動作することが確認できたので、クリティカル運用期間は終了することになりました。
今後は、約20日程度をかけて搭載機器の機能確認を実施しつつ、所定のタイミングで月遷移軌道への軌道制御を行うための準備期間“地球周回運用期間”へ移行することになります。
9月15日午後1時の時点で“SLIM”の軌道は目標との誤差が非常に小さく、予定していた微調整は必要ないようです。
地球周回軌道から離脱し月遷移軌道へ
JAXAは“SLIM”を地球周回軌道から離脱させ、月を目指す月遷移軌道に乗せることに成功。“SLIM”は正常な状にあるそうです。
地球周回軌道から離脱させる軌道変換指令は、10月1日午前2時40分ごろ送出され、南大西洋の上空約660キロの地点で“SLIM”のメインエンジンを約39秒間噴射。
予定通りの軌道変換を確認したことで“月遷移フェーズ”への移行を完了しています。
今後は必要に応じて軌道を修正し、10月4日午後に1回目の月とのスイングバイを実施する予定です。
推進剤の消費量が少ない軌道の採用
10月4日“SLIM”は、月周回軌道投入に向けて軌道を変更するために、地球を公転する月の重力を利用して軌道を変更するスイングバイを実施。月の高度5000キロ付近を通過しています。
月スイングバイの約45分前には、航法カメラで撮影した月の画像が公開されています。
月スイングバイの45分ほど前に“SLIM”の航法カメラで撮影された月。データが圧縮されているので画質は荒くなっている。“SLIM”のX(旧Twitter)公式アカウントのポストから引用。(Credit: JAXA) |
この飛行方式の特徴は、燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行えることにあります。
積極的に軌道や速度を変更する場合を“スイングバイ”、観測に重点が置かれる場合を“フライバイ”と言い、使い分けています。
“SLIM”のミッションでは、着陸機自身のエンジンと限られた推進剤で月へ向かうためスイングバイを実施。
飛行時間が長くなる代わりに推進剤の消費量が少ない軌道を採用しています。
そのため、月スイングバイを終えた“SLIM”は、月や地球から一旦大きく離れるような軌道を飛行した後で、月周回軌道に入ることになります。
“SLIM”は打ち上げから3~4か月後に月周回軌道へ到着し、月を約1か月間周回した後で、日本初となる月着陸を実施する予定です。
“SLIM”の打ち上げから月周回軌道到達までの飛行経路を示した図。2023年10月4日の自転では“③月スイングバイによる軌道変更”まで完了したことになる。(Credit: JAXA) |
“降りやすいところに降りる”から“降りたいところに降りる”着陸への質的転換
“SLIM”は、将来の月惑星探査に必要なピンポイント着陸技術と、小型で軽量な探査機システムの実現を目指す月面探査機です。目指しているのは、これまでの“降りやすいところに降りる”着陸ではなく、“降りたいところに降りる”着陸への質的な転換。
これを実現することで、月よりもリソース制約の厳しい惑星への着陸も、現実のものになっていくはずです。
昨今、対象になる天体についての知見が増え、探査すべき内容が今までよりも具体的になっているので、探査対象の付近への高精度着陸が必要になっています。
さらに、将来の太陽系科学探査で必要になるのが、より高性能な観測装置の搭載。
その時のために探査機システムを軽量化し、その分を観測装置にリソース配分ができるよう、探査機の軽量化は欠かせないんですねー
“SLIM”では、ピンポイント着陸技術と、小型で軽量な探査機システムの実現を目標とし、将来の月惑星探査に貢献することを目指しています。
月の地球側にある“神酒の海(Mare Nectaris)”の西に位置するSHIOLIクレーター付近の傾斜地に、正確にピンポイント着陸を行うための航法と、二段階式により安全なタッチダウンを行う技術を実証することになります。
なお、“SLIM”には“LEV(Lunar Excursion Vehicle)”と呼ばれる2機の小型ローバーも搭載されます。
中央大学、東京農工大学、和歌山大学などが開発に参加した“LEV-1”は、月面でジャンプして移動することや、地球との直接通信を目指しています。
一方の“LEV-2”は、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学が開発に参加した小型ローバー、“SORA-Q”の愛称でも知られています。
野球ボールほどの大きさの球体が月面に着地した後に変形し、“クロール走行”と“バタフライ走行”という、2つの走行モードで月面を走行する予定です。
“LEV-1”と“LEV-2”は、“SLIM”から着陸直前に分離され、月面到達後は画像の取得と、地球へのデータ送信を連携して行う予定です。
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