宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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ファルコン9ロケットが着陸に失敗… でも衛星の打ち上げには成功

2016年06月20日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
スペースX社のファルコン9ロケットが、
6月15日に衛星の打ち上げと洋上の無人ドローン船への着陸を実施しました。

2つの人工衛星の軌道投入には成功するのですが、
ここ最近上手く行っていたロケット回収には失敗…

ファルコン9ロケットは、ドローン船への着地衝撃で壊れて分解してしまったそうです。


静止トランスファー軌道への打ち上げ

今回の衛星も静止トランスファ軌道への打ち上げとなり、
難易度が高いなかで着陸が実施されました。

静止トランスファー軌道は通常の200キロも高い位置にあり、
高くまで飛ぶ必要があるので、ロケットは多くの燃料を消費することになります。

ロケットは残り少ない燃料で、機体の減速とコントロールを行うことになるので、
着陸の難易度が高くなるんですねー

今回の着陸は、ドローン船にかなりの衝撃を与えたようで、
中継用のカメラは、煙を上げるファルコン9ロケットを一瞬とらえた後に止まってしまい、
着陸は失敗に終わってしまいます。


着陸噴射の出力不足

着陸噴射に使われた3つのエンジンのうち1つの出力が足りなかったことが、
今回の失敗の原因のようです。

ファルコン9ロケットはでは、通常“着陸噴射”に1基のエンジンが使われてきました。

でも前々回から3基のエンジンを使い一気に降下速度を落とす方法に切り替え、
ここ2回の着陸は上手くいっていたんですねー

今後、今回のようなケースに備えて、
さらなるファルコン9ロケットのアップグレードが行われるようです。

6月16日には国際宇宙ステーションへのドラゴン補給船の打ち上げが控えています。

ファルコン9ロケットはドラゴン補給船を打ち上げた後、
フロリダの陸上基地への着陸を試みることになっています。

さらに、8月にもロケットの打ち上げが予定されていて、
秋には、スペースX社が目指す低コストなロケット打ち上げ計画にとって重要な、
回収したロケットの再打ち上げを行うことになっています。

今回の失敗は残念ですが、
ファルコン9ロケットが着実に技術力や信頼性を向上しているのは実感できますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 衛星打ち上げ後のファルコン9ロケットが4度目の着陸に成功!


2例目! 重力波を直接検出、今回もブラックホール同士の合体で発生

2016年06月19日 | 宇宙 space
アインシュタインが、
100年前に存在を予言しながら未確認だった現象“重力波”を、
世界で初めて検出したのが昨年の9月14日のことでした。

それに続く2例目の直接検出が、
レーザー干渉計型重力波検出器“LIGO”により成功していたようです。


データ分析技術で確認

アメリカのレーザー干渉型重力波検出器“LIGO”が、
2015年12月26日に重力波を検出していたそうです。

この重力波検出は、今年の2月に発表された2015年9月の現象に次ぐ、
史上2例目になる直接検出になります。

“LIGO”は、3000キロ以上離れたワシントン州ハンフォールドと、
ルイジアナ州リビングストンに設置されている双子の重力波検出器。

1例目の初検出の際は、データ中にはっきりとしたピークが見られました。

でも今回の重力波は、データ中に埋もれるような微かなもの…
最新のデータ分析技術を用いて、やっと重力波であることが確認されています。


見えない天体をとらえる

重力波をとらえることは、
その起源になる天体や重力の持つ特質についての情報を得る、
唯一の手段になります。

今回の現象では、
14億光年彼方で太陽質量の7.5倍と14.2倍のブラックホールが、
光速の半分ほどの速度で合体し、
その最後の瞬間に重力波が発生したと見られています。

合体後に出来たのは、太陽の20.8倍の質量を持つ自転するブラックホールで、
残りの太陽質量程度のエネルギーが重力波として放射されたんですねー

1例目に続いて検出できた今回の重力波もブラックホール同士の合体でした。

なので実際には、重力波を介してブラックホールの連星系という、
直接見えない天体を観測できたことになります。

今後、観測例が増えれば、
どのようにしてブラックホールが合体するのか?
といった疑問の答えが得られるかもしれません。

いま考えられている説は2つで、
  もともと連星であった天体のそれぞれがブラックホールになって合体する。
  ブラックホールが数多く存在する領域で、
    2つのブラックホールが出会って最終的に合体する。
というもの。

両シナリオは、かなり異なるものですが、
実際にどちらがより頻繁に起こっているのか気になりますね。


宇宙誕生の謎にも迫れる?

この秋には、“LIGO”をバックアップする全長3キロの重力波干渉計“Virgo”が、
イタリアのピサで稼動を始めます。

“Virgo”の感度は“LIGO”を超えるので、初期宇宙の観測にも期待できるんですねー

宇宙がたった38万歳程度の頃は、光さえも直進できず雲のように不透明でした。

でも重力波は、そのような空間さえも通り抜けることができたはずなので、
初期宇宙のさまざまな現象を調べる唯一のツールが重力波なんですねー


こちらの記事もどうぞ
  宇宙で重力波観測! “LISAパスファインダー”の実験が成功
  重力波の検出から出た疑問「なぜブラックホールは大質量化できたのか?」


凍りついた天体“冥王星”… でも氷が絶えず湧きあがる場所がある

2016年06月18日 | 冥王星の探査
冥王星で最も目立つ、明るいハート形の領域“スプートニク平原”。
この平原が、地質学的に「生きている」ことが明らかになりました。

今回発表された発見の内容は、
“スプートニク平原”の下にある氷の対流が、その表面をたえず新たに覆い直し、
多角形のパターンを作り出しているというもの。

一見穏やかそうな平原の西半分では、
比較的温度の高い窒素の氷が、下からたえず湧きあがっていて、
新たに表面に到達した氷は横に広がり、クレーターやその他の痕跡を消し去り、
この領域を若々しく保っているそうです。

“スプートニク平原”に見られる多角形のパターンも、
湧きあがってきた氷が作り出していて、
その形は、氷床のゆっくりした動きとともに変化していくと考えられているんですねー
NASAの探査機“ニューホライズンズ”が、
冥王星の帯状の領域を最高の分解能で撮影した画像。


科学者が驚いたこと

2015年7月のこと、NASAの無人探査機“ニューホライズンズ”が、
冥王星へのフライバイ(接近通過)を行いました。

このとき科学者たちが驚いたのは、
冥王星の地形や色、氷の様子が、低温の太陽系外縁部で作られたものとしては、
きわめて多様なこと。

それは、太陽から遠く離れた太陽系外縁部では、
太陽からの熱がほとんど届かないので、すべてがその場で凍りつくと考えていたから…

太陽系が誕生した当時から、
死んだ破片が円盤状になって、太陽系を取り巻いていると思っていたからでした。


次々に湧きあがる氷

“スプートニク平原”は差し渡しは約1200キロもある、
冥王星の特異な地形の1つです。

冥王星のように凍りついた古い天体の表面は、
風化などが無いのでクレーターだらけになっているはずです。

でも、“スプートニク平原”の滑らかな表面は、あまりにも若々しく、
周囲の山々から流れ下ってきた氷河が、氷原に氷を供給しているようでした。

詳しく観察すると、平原は多角形のパターンで埋め尽くされていて、
それぞれの多角形は中心部分がわずかに高くなっていました。

今回の発見は、これを見て、
「多角形のパターンは“スプートニク平原”の下にある
     氷の対流によって作り出されたのかも知れない」
という提案から始まることになります。

実は、“スプートニク平原”の正体は巨大な盆地で、
くぼみに柔らかい窒素の氷が堆積することで、平原のように見えているからです。

冥王星の内部にある放射性元素は、いまでも放射性崩壊により熱を発生しています。
その熱が、差し渡し10~40キロの多角形のセル構造を作り出しているようです。
“ニューホライズンズ”が撮影した最高の分解能画像を組み合わせたもの。

組み合わせた画像の全体像(巨大サイズ画像)。


どんどん塗り替える

新たな研究によると、
“スプートニク平原”の表面は50万~100万年で完全に置き換わるようです。

つまり、地球上でサーベルタイガーが生きていた時代には、
この領域の風景は、今とはまったく違っていたことになるんですねー

地球よりも40倍も太陽から遠く離れた小さな氷の天体で、
これほど高速な地質過程を目にするとは思いませんよね。

でも、地球や火星にあってもおかしくないような構造が、
太陽系の外縁の地球とは大きくかけ離れた環境に見つかった…

ただ、冥王星の対流については、
窒素の氷の層の厚さについては意見が分かれています。

その正解が明らかになれば、
冥王星の鼓動するハートの成り立ちについても、
なんらかの事実が明らかになるはずです。

そして、このプロセスを理解できれば、
冥王星の内部で起きていることも明らかになるのかもしれません。


仕組みの解明へ向けて

“スプートニク平原”の表面が、
対流によって湧きあがってきた氷に覆われているように見えることと、
その仕組みを解明することとは、まったくの別問題になります。

現時点では、“スプートニク平原”は、底が平らな衝突盆地に、
冥王星全体の窒素が集まっている場所である可能性が高いこと、
窒素をこの場所に集めたのが気候の作用なのか、氷河の作用なのかは、
まだ分かりません。

冥王星のハートの謎を解き明かし、
太陽系に唯一の構造であるかどうかを決定するのには、
さらなる研究が必要なようです。

それに、冥王星の近くにあるエリスやマケマケなどの大きな天体にも、
似たような構造があるかもしれません。

いま分かっていることは、冥王星が予想以上に活動的な天体だということ。

同じくらいの大きさの他の順惑星にも、
少なくとも同レベルの活動があると想像するとワクワクしますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ フライバイから半年… でも“ニューホライズンズ”のデータ送信はまだまだ続く

トラブル解決後に

2016年06月17日 | ~2016年 日記
2年前のデータが無くなっているのに気づいてドタバタ…
会議もキャンセルして、とりあえずPDFファイルを発見。
このファイルから流用できそう (^_^;)


スペイン産の白ワイン辛口 有機農法で育ったブドウだって
ワインバーテラ塚口

初めての直接観測。 ガス雲が秒速300キロで超大質量ブラックホールに向かって落下している様子

2016年06月17日 | 宇宙 space
10億光年彼方の楕円銀河の中心にある超大質量ブラックホールに、
ガス雲の塊が雨のように降る様子がとらえられました。

冷たく高密度のガスが、銀河中心のブラックホールに落ちていく現象を、
直接観測した初めての例になるそうです。


低温のガス塊

これまで、巨大な銀河の中心にある超大質量ブラックホールは、
ゆっくりと一定のペースで、高温の電離ガスを吸い込んでいくと考えられてきました。

でも最近では、
超大質量ブラックホールは「不規則なペースで低温のガス塊を吸い込む」という、
説も考えられるようになっています。

今回イエール大学の研究チームが行ったアルマ望遠鏡による観測から、
冷たく高密度のガスが、銀河中心のブラックホールに落ち込んでいく様子がとらえられ、
この説が初めて直接観測により裏付けられたんですねー

研究チームが観測したのは、みずがめ座の方向約10億光年の距離に位置する、
50個ほどの銀河を含む銀河団“エイベル2597”。

この銀河団の中心には巨大な楕円銀河が存在していました。


塊を長期間にわたって食べ続ける

NASAのX線天文衛星“チャンドラ”の観測によって、
“エイベル2597”内の銀河間の空間は、
希薄で高温な電離ガスで満たされていることが分かっています。

この非常に高温のガスは、すぐに冷えて凝縮し銀河に落下することに…

そして銀河内では、
星の形成を促したりブラックホールに落ちていったりします。
銀河団“エイベル2597”の中心に位置する巨大楕円銀河の周囲(イメージ図)
周囲を取り巻く高温で希薄な電離ガスの一部が冷えて密度の高いガス塊となり、
銀河に落下していく様子を表している。

アルマ望遠鏡がとらえたのは、3つの巨大で冷たいガス塊が、
秒速300キロで超大質量ブラックホールに向かって落下している様子でした。

主に一酸化炭素(CO)から成るこれらのガス塊は、
数十光年にもわたる大きさで、太陽の100万倍もの質量を持っています。

巨大楕円銀河の中心近くで、
高温ガスが冷えて凝縮し銀河に落ちていくというプロセスが、
シナリオ通りに起こっている様子が、今回初めて観測されたことになるんですねー
銀河団“エイベル2597”の中心にある巨大楕円銀河の疑似カラー画像。
ブラックホールのすぐ近くから発せられる電波が、
手前に位置する冷たいガスに吸収されて「影」になっていて、
その「影」のデータから3つのガス塊が秒速300キロで、
ブラックホールに落下していることが分かった。

実際には3つだけでなく数千個もの塊が、ブラックホールの周りに存在し、
それをブラックホールが長期にわたって食べ続ける… っと研究者たちは考えています。

こうした現象がありふれたものであるという理論予測を確かめるために、
研究チームではアルマ望遠鏡を使って、他の銀河を観測するそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 接近したガス雲を調べるとブラックホール周辺のことが分ってきた