宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

もしパラシュートが開かなかったら… をブルー・オリジン社がテスト

2016年06月16日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)

再使用可能なロケット開発でしのぎを削る、
イーロン・マスク氏が率いるスペースX社と、
ジェフ・ベゾス氏が率いるブルー・オリジン社。

そのブルー・オリジン社が、
次回、興味深いテストを行うんですねー

それは、着陸中の宇宙船を意図的にクラッシュさせること。
有人飛行を見据えた安全性能の確認になるそうです。


安全装置

このテストでは、
宇宙船“ニュー・シェパード”に搭載されたパラシュートに不具合を発生させます。

もちろん宇宙船は、
パラシュートのトラブルの際にも生還する必要があります。

なのでトラブル発生時に備えて、
いくつかのフェールセーフ機能(安全装置)を搭載することになります。

ブルー・オリジン社は、
2018年には民間企業による宇宙飛行を目指しているので、
フェールセーフ機能は必須の仕組みになるんですねー


どんな仕組み?

まず、次回のテストで想定するのは、
1つのメインパラシュートが動作しなかったケースになります。

このトラブルが発生すると、地上にかなり近づいた時点で、
カプセルに搭載された“レトロ・ロケット”と呼ばれる3つの小型エンジンが点火、
カプセルを押し上げようとします。

さらに、カプセルにはショック吸収機構が搭載されていて、
地面との衝突の衝撃を和らげます。

また、乗員にも負荷がかからないよう
シートもショックを和らげるようなデザインになっているんだとか。

ブルー・オリジン社の計画では、
“ニュー・シェパード”は地上約100キロの高度まで打ち上げられ、
乗員は数分間の無重力体験を楽しむことができます。

そのような素晴らしい宇宙旅行が悪夢に変わらないためにも、
今回のようなバックアップのフェールセーフ機能は必須なんですねー

このテストは月末までに行われる予定で、打ち上げられる“ニュー・シェパード”は、
これまでに3回再利用に成功したものを利用するそうです。


こちらの記事もどうぞ
  有人宇宙船“ドラゴン2”が、打ち上げ中断システムの試験に成功!
  ドラゴン有人宇宙船、緊急脱出パラシュート試験を実施

リュウグウへ向けて! “はやぶさ2”が追加イオン・エンジン運転で軌道修正に成功

2016年06月15日 | 小惑星探査 はやぶさ2
小惑星探査機“はやぶさ2”が2回目のイオン・エンジン運転で、
予定通りの軌道に乗ったことをJAXAが発表しました。

“はやぶさ2”は、2015年12月3日の地球スイングバイのあと、
小惑星リュウグウに向けて航行していました。

リュウグウ到着は2018年の6月から7月頃の予定なんですが、
それまでにイオン・エンジンによる制御が必要になります。

1回目の制御になる第1期イオン・エンジン連続運転は3月22日~5月5日に実施。

この時は3台のイオン・エンジン(A、C、D)が使われ、
運転時間は約794.4時間で、総加速量は約127m/sでした。

個別のイオン・エンジンの運転をすべて合計した総運転時間は、
794.4時間×3台で2383.2時間。

ただ、イオン・エンジン運転終了後に精密な軌道決定を行ったところ、
さらに微修正をした方がいいことが分かります。

このため5月20日21時から21日00時39分までの約3.6時間、
2台のイオン・エンジン(A、D)を動かす追加の運転が行われています。
このときの加速量は約0.4m/sでした。
“はやぶさ2”の往路軌道

そして5月21日以降の計測データに基づいて軌道決定を行ってみると、
計画されていた軌道と整合していることが確認。

“はやぶさ2”は一連のイオン・エンジン運転で、
予定通りの軌道に変更されたことが分かったんですねー

次は第2期イオン・エンジン運転。
今度は、2016年の11月から約5か月間にわたって行われる予定です。


こちらの記事もどうぞ ⇒ スイングバイによる軌道変更に成功! 探査機“はやぶさ2”は目標への軌道を順調に航行中

終末期を迎えた星を連続で観測すると、星の最終進化が分かってくる?

2016年06月14日 | 宇宙 space
一生の終末期を迎えた星の観測。

この観測を、日韓共同VLBI観測網“KaVA”を用いて行ってみると、
星を取り巻くガスから放射される一酸化ケイ素メーザーの複雑な形状が、
鮮明にとらえられたんですねー

この成果は“KaVA”によるもので、
本格運用開始により、星の最終進化における物質放出の研究が、
大きく進むと期待されているようです。


VLBI観測

恒星の寿命は数千万年から数十億年に及びます。

そして、その終末期のわずか数千年のうちに、
大量の物質を周囲の星間空間にまき散らすことが知られています。

このようなガス流の中には、メーザー放射(分子からのマイクロ波)が見られ、
数百~数千キロ離れた複数の電波望遠鏡を用いたVLBIによる観測で、
高解像度で撮像することができます。

でも、大掛かりな観測を何度も連続して実施することは、
これまで出来ていませんでした。

  VLBIはVery Long Baseline Interferometry(超長基線電波干渉計)の略。
  VLBI観測とは、遠い場所にある複数の電波望遠鏡が協力して観測を行うこと。



終末期の星を観測

ここ数年、日本と韓国では、
それぞれのVLBI専用電波望遠鏡を組み合わせた共同VLBI観測網“KaVA”により、
連続撮像を実行するための準備が進められてきました。

その一環として行われたのが、
うお座WX星に見られるSiO(一酸化ケイ素)メーザーの撮像観測です。

うお座WX星は約1900光年彼方に位置する、一生の終末期を迎えた星で、
660日周期で変光していて、星から吹き出した物質が周囲を取り巻いています。

この観測では、短時間で十分な画質が得られるか、
また異なる波長のメーザー放射像が合成可能かどうかが試されています。

その結果、2種類のSiOメーザー放射の精密な強度分布が得られ、
うお座WX星を取り巻くようなリング状の分布が鮮明に描き出されました。
うお座WX星を取り巻くガスから放射されるSiOメーザーの分布。
色の違いは2種類のメーザー放射に対応しているため。

さらに、2種類のメーザー放射の分布がとても似ていて、
お互いにほぼ近傍していることも分かります。

この類似した分布は、
星の周期的な明るさの変化に伴って少しずつ変化するはずなので、
そうした変化を追跡できる性能を“KaVA”が持っていることが、
実証されたことになるんですねー

メーザー放射は、
特殊な物理条件(ガスの密度・温度・メーザー放射をする分子の割合)でのみ再現するもので、
今回の2種類のメーザー放射も必要な温度が大きく異なるはずです。

それらが、ほぼ同じ部分で見られることが示された今回の観測は、
この条件を満たす仕組みを説明する物理解釈モデルに、
非常に強い制限を与えることになります。

星の最終進化における物質放出の観測的研究が、
“KaVA”によって大きく発展すると期待されるんですねー

今後、研究グループでは、
アルマ望遠鏡との共同連続撮像でメーザー以外の電波放射も観測し、
星周縁のダイナミックな全貌を解明することを目指すそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ メーザー源を調べてみると、大質量星形成領域の構造が分かってきた

宇宙飛行士が初搭乗! 宇宙で膨らませて使う居住モジュール

2016年06月13日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2度目に見事膨らませることに成功した、
宇宙で膨らませて使う居住モジュール“ビゲロー拡張可能活動モジュール”。

このモジュールは、
将来の月や火星への探査ミッション、そして宇宙ホテルなど、
楽しみな利用用途が想定されていて、
今回やっと、宇宙飛行士の初搭乗が行われたんですねー

今回、“ビゲロー拡張可能活動モジュール”に搭乗したのは、
モジュールを膨らませる作業を担当していたNASAのジェフ・ウィリアムズ飛行士と、
ロシアのオレグ・スクリポチカ飛行士。

両飛行士はハッチを開けてモジュールの中に入り、
空気のサンプルと各種センサーからのデータを収集。

データは最終的にNASAと開発元のビゲロー・エアロスペース社で、
検証されることになります。

なお、ウィリアムズ飛行士によると、
中の空気は少し冷たくて、でも綺麗だったそうです。

“ビゲロー拡張可能活動モジュール”は4月の8日に、
スペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げられました。

その後、国際宇宙ステーションのトランクウィリティー・モジュールに接続、
内部に空気が注入され16平方メートルにまで膨らんでいます。

膨張前の大きさは3.6平方メートルなので、
「打ち上げ時は小さく、宇宙で大きく」というコンセプトの実現には、
成功しているんですねー

今後、“ビゲロー拡張可能活動モジュール”のハッチは締められ、
2年間にわたる耐久テストが行われることになります。

そしてテストが終わった後は、大気圏に投下され、燃え尽きる予定。

楽しみなのは、
ビゲロー・エアロスペースが打ち上げ予定の膨張式モジュール“B330”。

旅行者の滞在も可能な拡張式モジュールを2020年に打ち上げるんですねー

はたして、このホテルの宿泊料金はいくら必要なんでしょうか?

個人で行って泊まれる訳ではないので、往復の交通費の方が気になりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ISSで試験開始! 宇宙で膨らませて使う居住モジュール

未知の力が働いている? 予測よりも速かった宇宙の膨張速度

2016年06月12日 | 宇宙 space
遠方銀河までの正確な距離の測定から、
ハッブル定数の値が73.2と高精度で求められました。

この値は、宇宙の膨張速度が従来の予測より5~9%も速いことを示していて、
まだ解明されていない力が働いているようです。


ハッブル定数

今回の研究では、
ハッブル宇宙望遠鏡とハワイのケック望遠鏡を用いた観測で、
現在の宇宙の膨張率を測定しています。

宇宙の膨張率は、
ある銀河までの距離とその銀河の後退速度(私たちから遠ざかっていく速度)から、
知ることができます。

そこで、銀河までの距離を測定するため研究チームが行ったのは、
ケフェイド変光星とIa型超新星の両方が存在する銀河を探し出すことでした。
りゅう座の銀河UGC 9391。
○の部分はケフェイド変光星、×の部分はIa型超新星2003du。

ケフェイド変光星の変光周期は絶対等級と関係があり、
周期から本来の明るさを知ることができます。

また、Ia型超新星は遠方にあっても観測できるほど明るく、
本来の明るさが全て一定とされています。

どちらも真の明るさを理論的に知ることができるので、
それと見かけの明るさとを比較することで、
天体まで(=天体が属する銀河まで)の距離を求めることができるんですねー
ハッブル定数を求めるための3ステップの説明図、
天の川銀河の中(太陽系の近く)はケフェイド変光星とその視差、
近傍銀河はケフェイド変光星とIa型超新星、
遠方銀河はIa型超新星を用いて測定。

研究チームは、両タイプの天体が存在する銀河までの距離を測定してデータを較正し、
さらに遠方銀河に存在する約3000個のIa型超新星までの距離を計測。

一方で銀河の後退速度は、
銀河からの光の波長が、どの程度引き伸ばされているかを測定して知ることができました。

そして銀河の距離と後退速度から求められた、
ハッブル定数として知られる宇宙の膨張率を表す値は、
73.2km/s/Mpcとなりました。

この値が表しているのはは、
1Mpc離れるごとに膨張速度が秒速73.2km大きくなるということ。

  1メガパーセクトは約326万光年。


未知の力の存在

今回求められた現在の宇宙のハッブル定数は、
不確定性が2.4%しかない極めて正確な値でした。

でも、ビッグバンの残光である宇宙背景放射の観測から予測されるものとは、
合致していないんですねー

NASAのマイクロ波観測衛星“WMAP”による観測から予測される値は今回の結果より5%小さく、
ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”のデータによる予測は9%小さいからです。

この違いを説明できる可能性があるのが、
宇宙を加速膨張させているダークエネルギーのふるまいや、
ダークマターの未知の性質です。

今回の結果は、
宇宙の95%を占めているダークエネルギーやダークマター、
暗黒放射といったものの謎に迫る、重要な手がかりになるのかもしれません。


こちらの記事もどうぞ
  宇宙膨張の謎を解く立体地図
  宇宙の加速膨張に迫る “バリオン音響振動分光サーベイ”
  宇宙の3次元地図を作ってみると、一般相対性理論の正しさが検証できた