akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

バリアフリーさが映画祭2014

2014-11-23 | バリアフリー映画、福祉

バリアフリーさが映画祭2014、盛況のうちに終了しました。

一日目は、東京大学先端科学研究センター特任研究員でバリアフリー映画研究会理事長の大河内直之先生とNPO法人メディア・アクセス・サポート・センター(MASC)の事務局長川野浩二さんと映画祭プロデューサーの山上徹二郎さんとともにシンポジウム。「バリアフリー映画の未来~進化する字幕表示・音声ガイド提供技術と新しい映画鑑賞」

私が副音声ライブを務めた昨日の『テルマエロマエⅡ』、今日の『ルパン三世vs名探偵コナン』も、たくさんの方々にご覧頂き、ほっとしました。ありがとうございました。

全盲の方も、子どもたちも、団体でいらしていた知的障害の方々も声をあげて笑っていて「とにかく楽しかった」と感想を下さいました。

『テルマエロマエⅡ』のガイド台本制作は短期間集中でしたが、作品のおかげてとても楽しく作らせて頂きました。
一番大声で笑っていらしたのは大河内先生でしたが…。(ステージ上にもしっかり聞こえていました。ルパンVSコナンも、3回目の鑑賞を楽しんで下さり、ガイド制作者冥利に尽きます)

今回は、映画製作に携わったフジテレビの方にも台本をチェックいただくことができました。ルシウスと真実がラテン語で会話をするところは、ライブヴォイスオーバーで語れて、活動弁士としてはこれも楽しい経験でした。またライブガイド付きでの上映機会があればと思います。

Bmapで昨年音声ガイド制作した『くちづけ』も上映され、多くの方が涙しながら観賞しておりました。上映前のご挨拶を担当させていただきましたが、こうしてバリアフリー映画祭でご覧いただけて、こちらも苦労して作った甲斐がありました。

映画祭ラストの『永遠の0』もしっかり観賞して帰ってきました。(感想は長くなるので省きます)

 

最近は、関東で言うと埼玉や千葉にも視覚障害者の方々の映画鑑賞団体ができ活発に活動なさっていますし、横浜のシネマ ジャック&ベティでの定例の音声ガイド付き上映もしっかり定着して視覚障害の方々が集っていらっしゃいますし、CityLightsさんは10月に北区上中里に毎日音声ガイド付きの映画を上映するシネマカフェを立ち上げました。

聴覚障害の方々の、手話や字幕付きでお芝居や映画を鑑賞する活動も広がりを見せていて、ここ数年で当事者がより積極的に映画や芝居にアクセスするようになったことを感じています。

でも、製作者側や映画館など提供する側の意識とアクションは、まだまだです。

映画産業はビジネスですので、観客として障害者のパイが小さいことや、字幕やとりわけ音声ガイドの制作費が負担になること、映画館側に情報保障のシステムがなくその設備投資が難しいことなど、困難はいろいろあります。

また「バリアフリー映画」という名称や字幕・音声ガイド付き上映が、障害者のためのものというイメージで、逆に一般の人にとってバリアになってしまっているというのも事実です。

しかし、公開と同時に障害のある方も観たい作品が観られるに越したことはなく、その方法を技術的に解決できないかと苦心していらっしゃるのがMASCの川野さんです。

今年は、東京国際映画祭で字幕が表示されるメガネを試すことができました。音声ガイドについては、音声透かしという技法で作品に音声ガイドデータを入れておき、必要な人はアイフォンなどのアプリにそれを同期させてイヤホンで聞くという技術です。

これによって映画館は、設備投資も、ガイドや字幕が邪魔になるという一般客を逃すリスクも低くなります。

ただ、まだまだ試運転の段階で問題もあります。メガネは重すぎて、表示される字幕もぼやけて安定せず、非常に目が疲れます。

網膜への影響も考えると、私自身はこうした技術に頼ることはあまり得策とは思えません。

むしろ、最近定着してきた公開後数回の字幕付き上映はもう少し一般に受け入れられていくのではと思いますし、ひとつの映画館で一回や二回でなく、もう少し回数や曜日の選択肢を増やし、それでもその回には行けず別の日に映画館で観たいという方のため最低限の情報保障アイテムとして数個ずつ置いておくというのがいい気がします。

音声ガイドについては、アイフォンやスマートフォンは視覚障害者にとってもとても身近なものになりつつありますし、アプリをダウンロードすればガイドが聞けるというのは革新的です。毎回映画館にFMラジオを持ち込んで音声ガイドを送受信しなくてはならないといった手間もなくなります。ただ、館内でアイフォンを起動させるということ自体が「盗撮」や「光の漏れ」など心配要素を含んでいて、映画業界として慎重な部分があります。結果、やはり映画館に数台、作動させても画面は明るくならない、撮影もできないというそのためだけのアイフォンを置くということになるのかもしれません。

こうした技術による個別のサービスはもちろん大事ですが、私は、少し相手に寄り添って、不便さやバリアの意味も感じながら一緒に楽しむことができたほうが、成熟した社会につながるのではという気がします。

そうした意味で、5年目になる「バリアフリーさが映画祭」はとても素晴らしい催しだと思っています。

すべての映画作品をバリアフリーにしたり、常にバリアフリー上映で見るのは無理なことですが、子どもも高齢者も、様々な障害のある方も同じ空間で一緒に映画を楽しめる機会が、たまにはあってもいいのではないでしょうか。

それぞれに、気づきもたくさんあります。これは自分には邪魔だ、楽しめない、でも障害のある人には必要なんだなと思うとしたら、それも気づきです。

「わかりやすくて、自分が気づかない細かいところまで気づかせてくれて、ある意味、映画の見方を教えてくれる」「笑いを増幅してくれる」新しい映画鑑賞として、喜んで下さる方もいます。

映画は人に発見や感動を与えてくれる素晴らしいエンターテインメントであると同時に、人を結ぶ、素晴らしいツールです。「バリアフリー映画」というジャンルが、優しい社会に寄与し、映画産業の中にも根付いていくことを願います。

そして、多くの「映画」が、障害のある方々にとっても健常者にとっても、人生を彩り豊かにしてくれる感動や出会いを届けてくれますよう。

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