私は原子力規制委員会の発足の報道を聞いたときに、原子力安全委員会、同保安院の責任回避と思われる発言を聞いて、規制委員会も責任回避的な処置を取るのではないかと、心配していました。
つまり事故が起こったときの批判を逃れるために、危険と経済性のバランスを失して余りにも厳しい基準を作るのではないかと心配したのです。
例えば機械設計の時の、安全率は普通の機械の場合は3~5倍(例えば想定荷重が10kgのところを30~50kgに耐えられるものとして計算する)の安全を見るのが普通ですが、これを10倍(100kg)などにしたら採算は合わなくなるのは当然で、原発は採算が合わぬから止めたとなるのです。
それで下記のような報道です。
原発の過酷事故対策、基準見直し着手 規制委
原子力規制委員会は10日、東京電力福島第1原子力発電所事故のような過酷な事故(シビアアクシデント)に備えた新安全基準づくりを始めた。国際原子力機関(IAEA)などの国際水準に合う規制に改める方針で、来年3月までに基準案をつくり同7月にも施行する。新基準に対応できない原発は再稼働を認めない方針だ。電力会社の自主的な取り組みにとどまっていた過酷事故対策を厳しく見直す。
原発設計時の想定を大幅に超える自然災害や航空機墜落、テロなどが起きても、メルトダウンや放射性物質の放出を防ぐ。津波による浸水で電源が失われないように、防潮堤や予備の非常用発電機を設置するなどの対策を検討する。
ただ非常時の排気(ベント)の際に放射性物質を取り除くフィルターや、巨大地震でも倒壊しない免震棟などは建設に時間がかかることから、一部項目については猶予期間を設け、完成前の再稼働も認める方向で検討する。
ここで津波や地震などは今まで想定外としたものを、基準に入れるのは当然です、またテロ対策も当然です。
然し航空機墜落、または米国の9.11のように飛行機を使った自爆テロまで考えなくてはならないのでしょうか。
たまたまネットで調べていたらこの問題に対する東京電力の回答 にぶつかりました。
(前略)原子炉建屋は非常に堅牢な構造になっています. 原子力発電所は構造上、航空機の落下を想定して設計されてはいません。現在の設計における考え方は、航空機が原子力施設に落下する確率を評価し、その確率がきわめて小さいことから航空機の落下に対する設計上の考慮は必要ない、というものです。
ただし原子力発電所の設計においては、航空機落下以外にも様々な考慮がなされています。例えば原子力発電所には高い耐震性を持たせる必要があり、このため原子炉建屋は一般に半地下式でかつ非常に頑丈な構造になっています。また、万一の事故に備えるための安全設備として、丈夫な格納容器を有しています。さらに放射線の遮蔽のために、原子炉と格納容器の周囲にはコンクリート製の厚い遮蔽壁が設置されています。こうした事を考慮して設計されていることから、結果的に原子炉建屋は非常に堅牢な構造物になっています。このため、仮に航空機が原子炉建屋に衝突しても、原子炉の心臓部である炉心にまで影響が及ぶことはない、と考えられます。
しかしながら、何よりもまず、そのような事態に至らないよう、(テロに対する)警備体制の強化はもちろん、あらゆる外交的努力、政治的努力が傾注されることが重要です。
私は今回の福島第一の事故の99%は東電、特に経営陣にあると書いて来ましたが、この東電の説明はある程度筋が通っていると思います。
然し東電の説明で欠けているのは、東電が言うように航空機が原発に落下する確率が低いが、それが原子炉建屋を直撃する確率はさらに小さい事、そして今回の福島第一は原子炉そのものでなくて、緊急電源、外部電源の損傷など原子炉建屋外部の損傷が原子炉本体の損傷を招いたことです。
詰まり航空機の墜落対策は原子炉建屋だけでなく原発関係の設備総てで行わなければならないし、それには厖大な資金を必要とします。
然し通常の場合での航空機墜落は考えられるのでしょうか。
対策は原発の強化よりも、民間航空機の進路を原発の上空から外すこと、運転中の原発の上空へのヘリコプターなどの進入を禁止することで、経済活動に妨げない範囲で100%安全を確保できます。
後考えられるのはあの日航機のダッチロールのようにたまたま操縦不能に陥った航空機が不幸にも原発の上に墜落することですが、そこまで考えねばならないのでしょうか。
残るのは戦争またはそれに近い状態になったときの、航空機による自爆テロです。
私はそのようなことは個々のケース、個々の国または団体のことを考え、東電の言う政府の「外交的努力、政治的努力」を考えると、ほぼ絶対にないと思っていますが、ミサイル攻撃と同様に全くないとは切れません。
問題はその対策です。
規制委員会はIAEAの基準に準じて安全基準を作るそうですが、是非そうして貰いたいと思っています。
私は外国のことなら何でもありがたがると言うことでなくて、IAEAの福島第一や女川の調査報告が政府・国会・民間の事故調査委員会の事故防止にほとんど役立たない報告より、遥かに現実的で的を射た報告だと思っているからで、そのIAEAの対策なら現実的な対策をとるだろうと思うからです。
報道によれば規制委員会は、「免震棟などは建設に時間がかかることから、一部項目については猶予期間を設け、完成前の再稼働も認める方向で検討する」そうで現実的な対応も考えているようです。
委員会は安全基準自身もリスク管理と経済性のバランスの取れたものにするよう願っていますが、果たしてどうなることでしょう。
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参照:想定される主なシビアアクシデント対策
・電源設備の多様化、多重化
・非常用電源のバックアップ態勢強化
・放射性物質を浄化するフィルター付きベント装置
・原子炉建屋から出る水素除去装置
・復旧作業の拠点となる免震事務棟
・津波の浸水を防ぐ防潮堤
・原子炉建屋の防水性強化
・電源なしでも稼働する冷却装置