７／１３川柳前月号鑑賞「やさしくて優しい人に気を遣う」/

「川柳くろがね」２０１８年６月号より
前月号鑑賞　石神 紅雀 選・評
「やさしくて優しい人に気を遣う」　　　　樫根　わ子
　なぜか涙が出る。優しすぎる貴方はきっと何を言っても断らないから、貴方が潰れてしまいそうで……。

「ギリギリの合格だけど胸張って」　　　　阿部　　龍
　合格は合格。長女も救済措置とやらでの国試合格だった。「運」も実力のうち。合格おめでとう！

「夏草とお転婆になるミニトマト」　　　　的場しずえ
　ひと雨で草丈を伸ばす夏の畑に、真っ赤な実がちらほら。ミニトマトはお転婆なお嬢さんだったとは。

「忙しさぽやく根っこに幸がある」　　　　有松　市子
　ハッとさせられた。忙しいのはやる事があるから。動かせる身体があるから。必要とされているから。

「母さんが先に惚れたと笑い合い」　　　　八木田風子
　はい、こちそうさま。イケメンのご主人と可愛い子どもさんに囲まれて、幸せいっぱいの熱烈両想い。

「断れず少し斜めの保証印」　　　　　　　度渡　憲峰
　肉親でもないのになぜ？　なんで私に？　そう思いながら押した保証印は、心なしか少し曲がっていた。

「生ぬるい恋のパズルがじれったい」　　　大串美佐子
　美佐子さんはおいくつ？　そのまま最後まで行ってしまうのがお望み？　じれったさこそ、恋の醍醐味。

くろがね抄　　 吉富　廣　選
　　　　　　　　荒尾　中山　和
草を食む午に安堵の阿蘇の原
地割れして野焼きを阻む野も哀し
とどろきの滝が渡れと虹の橋
激動の平成今や暮れんとす
音もなくスロースローの老いがくる

　　　　　　　　八幡西　時津 みつこ
シナリオの隅で自戒の石を積む
力ーナビで行方不明の影さがす
ポケットの底にわたしの予備の顔
正論は曲げぬ礫をはね返す
解凍がうまくできない蟠り

　　　　　　　　中間　桑原　康博
電源を切れぬスマホの依存症
指差し呼称うしろ安全留守になる
隠し味つまみつかみの匙加減
ゆるやかに下降してるという記憶
宣誓のそれから夫婦ロングラン

　　　　　　　　呉　　野西　うさぎ
後追いをすっかり忘れ一周忌
仏前で力－ネーションが笑ってる
医者につく小さなうそが命とり
入れ歯なし八〇二〇太鼓判
堂々と優待席に座りた

　　　　　　　　小倉北　矢野　隆
和やかに宅配便の顔届く
片耳は塞いではなす好い話
耳奥に蝉一びきを住まわせる
神と言う闇にあずけている安堵
心には幸せ計る差しがない

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