今週になってから少しだけ体調が良い。慢性的な腹痛や吐き気が和らいでいるから固形食も試しつつある。2度目の退院以降では最もマシな状態だろう。楽観的に考えて放射線治療の効果で出つつあると喜ぶべきだろうが、実は束の間の安楽に過ぎずこれから山場を迎える可能性が高い。
細胞の再生に要する期間はまちまちだが、個々の正常細胞は常に崩壊と再生を繰り返しており、多くの固形細胞は2~3週間ごとに再生しているらしい。放射線が細胞を破壊するのは、複写のために不可欠なDNAを壊して再生できなくするからだ。DNAを壊された細胞は再生できずに死ぬ。
私に苦痛を与えているのは癌細胞だ。放射線は癌細胞も正常細胞も破壊する。その時に私が知覚できるのは主に私に苦痛を与えている癌細胞の破壊効果だけであってそうでない細胞の変異は知覚されない。しかしこの2つの破壊は同時進行している。例えば食道の正常細胞や食道と肺の境界の細胞が破壊されても知覚されていない。最も危惧されるのは肺に穴が開くことでありそうなれば放射線治療は中断または中止せざるを得なくなる。
傷口の再生を実感することは易しい。目で見ることもできる。しかし再生は傷口だけではなくその周囲でも起こっている。傷口以外の再生が気付かれないように、患部以外の破壊はその悪影響が現れるまでは気付かれない。現在の安楽は実は破裂しそうな時限爆弾を抱えているような危険な状態でもある。
食道と肺との境界が放射線によって破壊されれば食物が肺に流入して、嚥下障害と同様に肺炎を起こす。この副作用が不可避と思われたからこそ私は治療不可能と宣告された。現在行っている放射線治療は僅か数%の可能性に賭けたギャンブルだ。来週辺りが生死の分岐点になるのではないだろうか。癌細胞だけが上手く死滅して正常細胞が都合良く再生した場合だけ肺炎を免れることができる。
現時点で考えるなら抗癌剤による治療は全く無駄で有害な期間だった。私は元々抗癌剤の効果を信じていなかったが、内科医の「抗癌剤で癌細胞を叩いてからでなければ手術も放射線治療も不可能だ」との指導に従って2度に亘って入院して抗癌剤による治療を受けた。しかしその結果は悲惨なものであり、「効果は無かった」から「ステントを使って延命を図る以外に打つ手は無い」という宣告へと繋がった。もし私が従順な患者であれば大人しくそれに従っていただろう。しかし私はゴネて「成功率数%」とまで言われた放射線治療を選択した。
これが良い結果を招くかどうかは今のところ分からない。しかし現時点で言えることは、抗癌剤による治療が有害だったということだ。放射線治療の開始を遅れさせただけではなく、様々な副作用によって体力を低下させて抵抗力も回復力も劣化させたからだ。百害あって一利なしだったと言えるだろう。
蝋燭は消える前に一瞬明るくなると言うが、現在の症状軽減が一時的なものなのか治癒への一歩なのか判別できない。後になってから初めて分かることだ。私はベストを尽くせなかった。抗癌剤によるロスタイムさえ無ければ充実した体力を生かしてより力強く闘病できていただろうと今更ながら悔やまれる。しかしこれは後の祭りだ。今の私は結果を待つ俎板の鯉の立場だ。
細胞の再生に要する期間はまちまちだが、個々の正常細胞は常に崩壊と再生を繰り返しており、多くの固形細胞は2~3週間ごとに再生しているらしい。放射線が細胞を破壊するのは、複写のために不可欠なDNAを壊して再生できなくするからだ。DNAを壊された細胞は再生できずに死ぬ。
私に苦痛を与えているのは癌細胞だ。放射線は癌細胞も正常細胞も破壊する。その時に私が知覚できるのは主に私に苦痛を与えている癌細胞の破壊効果だけであってそうでない細胞の変異は知覚されない。しかしこの2つの破壊は同時進行している。例えば食道の正常細胞や食道と肺の境界の細胞が破壊されても知覚されていない。最も危惧されるのは肺に穴が開くことでありそうなれば放射線治療は中断または中止せざるを得なくなる。
傷口の再生を実感することは易しい。目で見ることもできる。しかし再生は傷口だけではなくその周囲でも起こっている。傷口以外の再生が気付かれないように、患部以外の破壊はその悪影響が現れるまでは気付かれない。現在の安楽は実は破裂しそうな時限爆弾を抱えているような危険な状態でもある。
食道と肺との境界が放射線によって破壊されれば食物が肺に流入して、嚥下障害と同様に肺炎を起こす。この副作用が不可避と思われたからこそ私は治療不可能と宣告された。現在行っている放射線治療は僅か数%の可能性に賭けたギャンブルだ。来週辺りが生死の分岐点になるのではないだろうか。癌細胞だけが上手く死滅して正常細胞が都合良く再生した場合だけ肺炎を免れることができる。
現時点で考えるなら抗癌剤による治療は全く無駄で有害な期間だった。私は元々抗癌剤の効果を信じていなかったが、内科医の「抗癌剤で癌細胞を叩いてからでなければ手術も放射線治療も不可能だ」との指導に従って2度に亘って入院して抗癌剤による治療を受けた。しかしその結果は悲惨なものであり、「効果は無かった」から「ステントを使って延命を図る以外に打つ手は無い」という宣告へと繋がった。もし私が従順な患者であれば大人しくそれに従っていただろう。しかし私はゴネて「成功率数%」とまで言われた放射線治療を選択した。
これが良い結果を招くかどうかは今のところ分からない。しかし現時点で言えることは、抗癌剤による治療が有害だったということだ。放射線治療の開始を遅れさせただけではなく、様々な副作用によって体力を低下させて抵抗力も回復力も劣化させたからだ。百害あって一利なしだったと言えるだろう。
蝋燭は消える前に一瞬明るくなると言うが、現在の症状軽減が一時的なものなのか治癒への一歩なのか判別できない。後になってから初めて分かることだ。私はベストを尽くせなかった。抗癌剤によるロスタイムさえ無ければ充実した体力を生かしてより力強く闘病できていただろうと今更ながら悔やまれる。しかしこれは後の祭りだ。今の私は結果を待つ俎板の鯉の立場だ。