公開研究会「スイスの二大生協の歴史と現況 ミグロとコープ・スイスを比較しつつ」に参加して(2017.9.12)@(公財)生協総合研究所
イタリアの生協について色々調べているうちに 他の国の生協のことも知りたくなり 生協総合研究所の開催するスイスの二大生協についての公開研究会に行ってきました!!
4名の講演者の方々が スイスという国について スイスの生協の歴史について 資料をもとにお話をされてから スイスに在住された経験からみた協同組合と生協について 写真を交えてご紹介いただき ラストはミグロ(MIGROS)とコープ・スイス(Coop Schweiz)というスイスの二大生協についての 事業概要と評価、現況について詳しく説明していただき 大変興味深く勉強になりました
スイスは九州くらいの大きさの山岳国で 面積は日本の1/9 人口は日本の7%弱(833万人/日本は1憶2700万人) 外国人比率は22%(日本は2%) ちなみにひとり親世帯の貧困率は31.6%(日本は50.8%) 直接民主制で永世中立国です
そんなスイスでは なんと8人に一人が生協に入っていると聞きビックリ!!
1975年には 組合員が100万人を超えたというのですが スイスの人口が833万人ということは... それだけ生協は信頼されているのだなぁと感じました
また ジュネーブのさまざまな協同組合についても写真入りでご紹介くださいました 酪農協同組合連合会 エクリーブル住宅協同組合 バン・デ・パキ(労働者協同組合)ここは歴史ある公共施設の経営を担っています
ジュネーブでは 物価が高いのと 隣国へのアクセスがよいため 営業時間が長めで価格も安めなフランスまで車でちょいと買い物に行きやすいのですって
もともとジュネーブでは 空港や駅以外は 平日は夜6~7時には閉まり 日曜も休みですね この営業時間を延長したり年に何回か日曜にも営業するにも住民投票 といったお国柄です
スイスで生協といえば Migros(ミグロ)と コープ・スイス(Coop Suisse)の二大生協ですね
日本のように 地域によってたくさんの生協があるのとは成り立ちが少し違います
例: BILANZ 2017年3月号「Beste Feinde Die unheimliche Macht von Migros und Coop」(最高のライバル ミグロとコープのとてつもないパワー) ← MigrosとCoopの両CEOがスーパーマンの恰好で表紙を飾っています
ミグロの方が少し規模が大きく 大型・中型店でチェーン展開をしてるのに対し コープ・スイスの方は小型店が多く 地域ごとの生協の名残が残っています
その他 PB(プライベートブランド)はミグロの方が多い等 ふたつの特徴を細かく見てゆきました
ふたつとも 好立地の大半にすでに出店済みなので 競合の出店の余地はあまりないのだそうです もちろん仏・伊・独等の大手チェーンはありますが コミュニティの権限が高く 出店するにも許可が必要です
ブランド好感度は ミグロが1位 コープ・スイスが3位
このブランド力の背景には 毎週機関紙を組合員に送付したり 社会貢献度も高く ポイントカードも充実しているとのこと さらにMigipediaという商品情報サイトまであるというのです!
子供がスーパーマーケットごっこで遊べる「ミニミグロ」があり 小さな頃から遊びながら身につけさせる戦略はさらに「食育」にも通じています スイスの農業等の一次産業人口は0.7%(日本は1.1%)と少ないのです
さらには高齢者対応で 「おばあちゃんの革命」やお食事会(タボラータ)等もやっています
コープ・スイスは最近「昆虫食品」を売り出し 数が少ないせいかすぐに売り切れたそうですが...こういった開発費も ヨーロッパ一人件費の高い豊かなスイスであればこそです
まとめとしては 生協の国民生活への貢献の最高度の実例がまさにスイスであり あらゆる面で国民経済に配慮した政策(商品、店舗、雇用)が取られており プラスの循環を作る要素として機能しているが 負の循環の引き金にもなりうるとのこと そして 消費者の圧倒的支持が事業の支えとなっていること
この「負の循環の引き金」とは何でしょうか? わかりやすい例をあげると たとえばもしコープがフランスやイタリアの安い牛乳を扱うと スイスの酪農はつぶれてしまう だからスイスのコープも消費者も政府もそれをちゃんと理解し 少々高くともスイスのものを売るのですね それはちゃんと循環しているとのこと
これは経済が好調なのと 国防意識が高いからとのこと また小さな国であり構造が見えやすいから もっと作物は少ないので外国から輸入はしていますが
スイスは経済的にもとても恵まれており 人件費もヨーロッパ一高く そのため価格の高いものでも購入でき それがスイスの国の経済の循環を支えている
反対に 国境を越えてすぐのフランス等に買い物に行く人も多く(安いし営業時間が長い) 生協がスイス国産にこだわるのは もし生協が他国の安いものに飛びつけば スイスの生産者がつぶれてしまうことを 生協も組合員もそして国もよくわかっているのですね
なので 経済があまり好調でない国からすれば これは理想の姿だなぁ...と感じました
昔チューリッヒにひとり旅をした時 あまりの物価の高さにビックリしたことを思い出しました
スイスでは貧困層は少なく 首切りもないし 取引先に公正な契約をすることが義務付けられており 買い叩きもないそうです 「クオリティ・オブ・ライフ」という ルールを敷いて 自分も労働者であり また同時にサービス利用者でもあるという意識が高く そのため営業時間の制限も厳しく守る(日曜は休みなど)のだそうです...( ゚Д゚)ハァ溜息...
それと イタリアではいくつかの巨大コープに加えて GAS(協同購入グループ)などの小規模な協同購入グループが細々と運営されていますが スイスは主に2つの巨大生協がシェアしているようですね ただ今は少しですが 農家の直売形式をネットで展開しているそうですが伸びる余地は少ないそうです
またスイスの生協が始まった70年代の頃は 移動販売車が主だったそうですが 2000年頃にすたれてしまい だんだんと店舗に変わっていったのだそうです
そしてまた 両生協では宅配事業(ネットスーパー)にも力を入れ 山間部でも翌日配達してくれますがコストは高いとのこと (宅配のページもHPで確認しました)
コンビニサイズの小さな個人商店(日用雑貨や基本的な食品)もあり これらは主に移民が経営し 日曜も営業 夜は9時くらいまで ←日本のような24時間営業はありません~
それでも 2005年から進出した アルディ(ALDI)や 2009年に進出したリドル(Lidl)などのドイツのディスカウントストアに押されてきており さらに国境を越えての買い物同様 これからどのようになってゆくのかな と思います (ドイツでは"Geiz ist Geil"という「ケチはすごい」というディスカウントストアのスローガンが定着しているのです) コープ・スイスは国外をめざし ミグロは食品・健康分野での存在感を増そうとしているとのこと
今回は行く前に ネットでスイスの2大生協について 店舗等についてざっと調べましたが 当日は貴重な資料もどっさりいただき イタリアやイギリス等 欧州各国の生協についての貴重なリポート集もいただき ほくほくで帰ってきました♪
← たくさん資料をいただきました♪
外国の生協について色々知りたい私であります(^O^)/
開催のお知らせは こちら
* * *
研究会の元となった資料「生協総研レポートNo.84 ミグロとコープ・スイス -スイスの二大生協比較」は こちら
内容のピックアップ:
コープ・スイスは伝統的生協として 1890年に生まれたU.S.C.(Union suisse del sociétés de consommation)が 1969年にコープ・スイス(Coop Suisse)となり 2001年には完全に統合して単一生協となっています
一方ミグロ(Migros)は 1925年に 「スイスで一番攻撃された人」といわれる創設者ゴットリープ・ドッドワイラー(Gottlieb Duttweiler)が 1925年に「ミグロ(株)」を資本を出して設立し(フランス語の半卸売(mi-gros)から名付けられた) 1941年に生協に転換し 個人的信念から一切の酒類を置かず ナチとの妥協を一切拒んだそうです
(株式会社から協同組合への転換は歴史的にほとんど前例がないとのこと その点で19世紀の伝統的生協とは全く異なります)
ミグロは1970年代に日本では「似非協同組合」と紹介されたのことですが(ワンマン経営) 1980年には世界で最も成功した協同組合のひとつ(ICA/国際協同組合同盟)とも言われる転換点を迎えています (1980年代には欧州の多くの生協が深刻な危機に見舞われました)
ドイツにも進出してきているとのこと
二つとも圧倒的に国民の信頼を得ており満足度も高く 「あなたはミグロの子?コープの子?」という質問もされることがあるとのこと
価格は安くはないが もし安く調達し 安い人件費で雇用すれば ただちに国内農業従事者と農業生産の減少を招き 失業者の増加 国民所得(世界最高水準)の低下 という負の連鎖を招くと国民も承知しているのだそうです
さらに 「海外の生協2016 - 世界的な環境変化のなかでの歩み - 」(2016.8 Vol.487)も読んでいます♪
素晴らしい公開講演会を開催してくださいました(公財)生協総合研究所様に 心よりお礼申し上げます
ドイツ語ランキング
にほんブログ村