ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

サスペンス・ドラマに出演(その2)

2013-02-24 02:24:53 | 能楽
ところで撮影会場となったのは江東区にある浅間神社だったのですが、都内にこんな趣のある神社があるとは知りませんでした。

とはいえもっと驚かされたのは撮影のためのセット。能を舞う舞台は神楽殿でしたが、その前には鉄柵があり、由緒書きの金属プレートがあったのだそうです。さらに神楽殿の左右には なぜか狐?の像が置いてあります。これらがみな、ドラマに設定された時代~昭和初期と合わない、ということで、鉄柵の前には木製の柵を置いて隠し、金属プレートの由緒書きは木製のそれに取り替えられ、狐?像にはすっぽりと木製の覆いを取りつけて。。いやはや、さすがプロの技ですね。

能が上演されるのは天神社の初祭りという設定で、境内にはうどん屋さんの露店が出ています。これもみんな持ち込みのセットですが、当たり前だけどお品書きに書かれた値段が何銭という単位だったり、そもそも のれんの「うどん」という文字が右から読む書き方だったり。もう、ここだけ80年昔にタイムスリップしたかのようです。これらのセットを作った美術さんとも親しく話をさせて頂きましたが、こうした説明をこの方に聞いて、ようやくその努力を知った ぬえなのでした。

さて ぬえが撮影会場に到着したすぐ後に、子役の子どもたちも集まってきました。こちらは演劇を勉強している劇団員さんなどではなくて、やはりエキストラとして参加したようです。でも撮影が始まってみると、あ、そうか! と思いましたが全員和服で、中には裸足の子も。。 待機時間が長いのでダウンジャケットなんか羽織っていましたが、もちろん撮影が始まったら薄い和服のままです。これもまた大変だ。

ぬえも朝9時には装束を着て、すぐにリハーサルが始まりましたが、やがて金田一と明智の会話のシーンの撮影に移ってしまって、ちょっと時間を持てあましました。ずっと神楽殿の上で待っていましたが、しばらく能の撮影もないようなので、装束を着たまま神楽殿を下りて火に当たり(本当に極寒でした!)ついでに子役の子どもたちと遊びました。



よく見ると、子どもたちは新聞紙にくるんだ焼き芋やお団子なんか持っています。おやつかと思ったら、これも撮影の小道具なんですね! なるほど~昭和初期の神社の祭礼では 綿菓子でもチョコバナナでもなく、焼き芋やお団子を食べながら芸能を見て楽しんでいたのか。

で、それだから子どもたちは手に持った焼き芋を食べるわけにはいきません。撮影が始まったら、それを手に持っていないと。でも、やることのない子どもたちは焼き芋を持ってるだけで我慢できるのか。 はい、やっぱり出来ずに、なめたりなんかしてました。ぬえもそれに混じって「上の方1cmだけ残して、下を方だけ食べちゃえばいいじゃん」「撮影のときどうするの?」「新聞紙にくるんだところは見えないんだから食べてもわかんないよ」「中身がないのに新聞紙のところ、持てないじゃない」「それは、エアでお願いします」「手で持ったら新聞紙がつぶれちゃうよ~」。。と、延々と子どもたちと遊んでいました。女の子に「山P好き?」と聞いたら「ん~?わかんない」「どっちでもない」と、おや? そういう反応かい。

あ~! わかった!「バレンタインデーが近いからか!彼氏がいるんだ!」「違う! 違うよっ!」。。何しに来たんだ ぬえ。

さてようやく ぬえたちの撮影が始まり、これも滞りなく終わりました。まあ、ぬえたちの仕事は特殊なので、監督さんからの演技指導などもないのが普通ですが、やはり面を外す所作は意識して、撮影されている様子をイメージして稽古はしましたので、これも問題なく進みました。終わってみれば予定よりも大幅に早く終了したことになり、お昼ご飯。。いわゆるロケ弁を頂いて解散。

やっぱり今回感心したのは美術さん? のセットの精緻さですかね。張り出された能の番組も、ちょっと内容はアレですが古い字体で細かく書き込まれていて、何というかプロのこだわりを堪能させて頂きました。





で、家に帰ってから持参したデジカメをチェックしたら。。山Pと一緒に焚き火に当たっているところや。。なんとお囃子方が ぬえの知らぬ間に伊藤英明さんに鼓の体験コーナーなんかやってるぢゃないか!



(俳優さんはいずれも顔を出した写真はNGだそうなので、雰囲気だけご覧下さい。)

肝心の放送日なんですが、今年の秋か来年か、ということでした(!)