ぬえの能楽通信blog

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活動報告書(2015.04.18~07.15)

2016-04-08 14:38:42 | 能楽の心と癒しプロジェクト
能楽の心と癒やしプロジェクト
第27~29次被災地支援活動
(2015年04月18日~07月15日)


 〔活動報告書〕

【趣旨と活動の概要】

 東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒やしプロジェクト」では、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、2011年6月よりすでに26度に渡り岩手県釜石市、陸前高田市、宮城県石巻市、気仙沼市、南三陸町、女川町、東松島市、仙台市、大崎市、登米市、七ヶ浜町、多賀城市および福島県双葉町の住民が避難していた旧埼玉県立騎西高校避難所にて能楽を上演することによって被災者を支援する活動を行って参りましたが、このたびプロジェクトメンバーのうち能楽チームの八田、寺井は、去る2015年4月18日より7月15日までの間に下記の通り計3度の活動を、宮城県・塩釜市、気仙沼市、石巻市にて行いました。

それぞれの地域においてプロジェクトに協力してくださる方のご尽力により今回の活動が実現しました。関係各位には改めまして深謝申しあげます。(以下敬称略)

【第27次被災地支援活動】

この活動は、塩竈神社の定例の祭典の際に地元・塩釜市の青年団が主催して行われる芸能奉納の催しに参加させて頂いた。塩竈神社には震災の直後からプロジェクトのメンバーは参詣しており、ここでの能楽奉納の希望を持っていましたがなかなか実現には至なかった。この度は塩釜市の市民の方のご協力を得て、ようやく奉納が実現したもの。


【4月18日(土)】

◎「しおがまさま神々の花灯り」公演 18:30開演
主催:塩釜市青年四団体連絡協議会
後援:塩竈市/塩釜商工会議所/塩竈市観光物産協会/塩竃市教育委員会/東日本旅客鉄道株式会社仙台支所/特定非営利活動法人 塩竃市体育協会/しおナビ実行委員会
協力:志波彦神社/塩竈神社/庄子隆弘
会場:塩竈神社舞殿
内容:能「吉野天人」
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)

なお、当日は宮司さまより奉納出演した八田・寺井に対して感謝状が贈られ、また上演の様子は河北新報紙にて大きく報道されましたことをご報告申し上げる。






【第28次被災地支援活動】

2015年6月、プロジェクトでは初の災害公営住宅での上演を気仙沼市で行った。避難所、仮設住宅に引き続いて活動の場が新たな段階に入ったことを感じる。が、仮設住宅と比べて住環境は格段に改善されたものの、仮設住宅では無料であった家賃が発生し、数年後には「災害」の文字を外して一般の公営住宅と同じ扱いになるとのことで、そのときにはさらに家賃が増額されるであろうという観測もある。また地域コミュニティを改めて構築するのは難しい面もあり、孤独死など、なお問題は山積している感がある。

引き続いて翌日には唐桑半島の先端に位置する御崎神社での奉納上演をし、さらに気仙沼市の八瀬地区にある月立小学校の旧校舎の前での上演を行った。同小学校の校庭には仮設住宅がありますが集会所はないながら、大変趣のある校舎の前で上演することで、地域の方にも、また仮設住宅の住民さんにも楽しんで頂ける催しとなった。また とくに御崎神社さまには宿泊・食事までご厚志を頂いた。改めまして御礼申し上げる。

【6月18日(木)】

◎「能楽の心と癒やしをあなたに」公演 14:00開演
主催:能楽の心と癒やしプロジェクト
協力:気仙沼市南郷災害公営住宅/村上充
会場:南郷災害公営住宅コミュニティセンター
内容:能「羽衣」
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)

【6月19日(金)】

◎「御崎神社能楽奉納」公演 10:00開演
主催:能楽の心と癒やしプロジェクト
協力:御崎神社/菊地隆太郎
会場:御崎神社境内(気仙沼市唐桑)
内容:能「羽衣」
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)

◎「能楽の心と癒やしをあなたに」公演 16:00開演
主催:能楽の心と癒やしプロジェクト
協力:八瀬・森の学校/菊地隆太郎
会場:旧気仙沼市立月立小学校
内容:能「羽衣」
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)


【第29次被災地支援活動】

2015年7月には これまたプロジェクトとして初となる学校でのワークショップを気仙沼市立大島中学校で行うことができた。

プロジェクトでは「文化の復興」を目的の一つとして掲げているが、このワークショップはその目的に沿う活動のひとつとして特筆される。のみならず、プロジェクトの活動の原点が八田が震災前に参加した宮城県内での学校公演にあったので、学校での活動は悲願でもあった。

大島中学校さまも気仙沼市内~大島へのフェリーの渡航費をご負担頂くなど、大変ご協力を頂いた。また生徒さんたちも はじめての能楽の体験に深く興味を持ち、熱心に取り組んでくれたため、意義深い学習の機会となったと思う。

【7月14日(火)】

◎「大島中学校能楽ワークショップ」 13:05開演
主催:能楽の心と癒やしプロジェクト
協力:気仙沼市立大島中学校/村上緑
会場:気仙沼市立大島中学校
内容:能「羽衣」の略式上演・舞と囃子の体験など
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)


また、翌日には石巻に移動して、ラジオに出演、また仮設商店街「石巻立町復興ふれあい商店街」での上演を行った。

【7月15日(水)】

◎「ラジオ石巻」出演 11:00
主催:能楽の心と癒やしプロジェクト
協力:ラジオ石巻
会場:ラジオ石巻スタジオ
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)

◎「能楽の心と癒やしをあなたに」公演 14:00開演
主催:能楽の心と癒やしプロジェクト
協力:石巻立町復興ふれあい商店街/石巻市商工会議所
会場:石巻立町復興ふれあい商店街
内容:能「猩々」
出演者:八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)


【収入・支出】

3度に渡る活動でしたが、活動中、また東京での活動資金の寄付もあり、またプロジェクトのメンバーが活動と前後して東北地方での教室運営など経済活動をした場合は交通費も自己負担する、という原則を立てたため、支出面でも、今後のプロジェクトの活動に支障が出るような大きな損失はありませんでした。

プロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。交通費節約のため、できるだけ深夜割引の制度を利用して終夜運転をして早朝に現地に到着するなど工夫はしておりますが、体力や公演スケジュールによって、必ずしも深夜走行ができない場合もあります。宿泊につきましては、従来は住民ボランティアさま等のご厚意により無料、または安価での宿泊ができましたが、街が落ち着きを取り戻しつつある昨今では旅館などに宿泊する機会も増えてきました。この場合にも宿泊費はおおよそ5,000円まで、素泊まりを旨としており、食費については酒食の区別がつきにくいため、すべて自己負担としております。

また前述の通り、メンバーが活動の前後に経済活動を行う場合は交通費についても自己負担を原則とする事に致しました(経済活動をする場所から活動を行う場所への移動や、活動のために必要な宿泊はプロジェクトの支出としております)。

【成果と感想・今後の展望】
今回は塩竈神社への奉納、学校での能楽ワークショップ、災害公営住宅での活動と、いずれもプロジェクトにとって記念すべき活動が多くできました。活動の実現にご尽力してくださった関係者に改めて感謝申し上げます。とくに災害公営住宅の建設は震災からの復興のひとつの節目でもありますが、これに伴う新たな問題が生まれていること、防潮堤など被災地がかかえる大きな問題がいまだに残されていることなど、まだまだ被災地からは目を離せない状況が続いています。震災の記憶の風化が叫ばれている現在、被災地がどのような方向に向かっていくのか、今後とも見守っていきたいと考えております。
今回も多くの市民の方々のご協力を賜って活動ができました。改めまして御礼申しあげるとともに、プロジェクトの息長い支援のために今後とも皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げる次第です。

平成28年4月8日


                「能楽の心と癒やしプロジェクト」

                               代表   八田 達弥

                             (住所)
                             (電話)
                             E-mail: QYJ13065@nifty.com