ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

伊豆・子ども創作能の公開稽古(まさかの感染騒動つき)その1

2020-11-11 11:24:40 | 能楽
去る11月8日、もう20年も稽古を続けている静岡県・伊豆の国市の「子ども創作能」の公開稽古を行ってきました。

今年のコロナ禍で、やはり困難を強いられている子どもたち。じつは去年から不運に見舞われてきました。「伊豆の頼朝」という作品を上演している子ども創作能ですが、毎年10月、当地で源頼朝が挙兵したゆかりの守山八幡宮の秋祭りで神社に奉納上演をしているのですが、去年の上演当日、まさかの台風直撃で秋祭りそのものが中止に。。ぬえの能楽師としての経験の中でも、催しが中止になって、来演をお願いしていたお囃子方の出演をキャンセルしたのは初めての経験です。

その後今年の2月に大仁地区の「梅まつり」イベントに出演することができましたが、その直後に新型コロナウイルス問題が勃発して、4月にこれまた恒例で鎌倉市からお招きいただいて上演する「鎌倉まつり」公演が中止に追い込まれました。またまたお囃子方にご迷惑をお掛けしてしまいましたが、出演の子どもたち。。とくに6年生にとっては卒業記念としての公演でもあったので、かわいそうな事になりました。

さらには笛の寺井宏明先生のご尽力によって、今年は箱根神社での子ども創作能の奉納も決定していたのに、これまた中止に。そして今年の10月の守山八幡宮の秋祭り奉納上演も中止になりました。。

ああ。。

仕方なく、子どもたちが上演曲目を忘れないために稽古は続けていましたが、それも上演の目標はないまま。。

ま、それでも毎回配役を換えての稽古は意外な盛り上がりを見せておりました。聞けば学校のクラブ活動やらお稽古ごとも自粛の空気が蔓延して、子どもたちは なかなか身体を動かす機会も少ないのだとか。。

ああ。。

ここで ぬえはとうとう我慢できなくなりまして、無観客・無宣伝でゲリラライブ的な上演をママさん方に提案することに。会場は市内にある小さな野外ステージで。近くには密を避けて広い着替えができる広い和室を備えた公民館もあるし。よし! これならいけるぞ!

。。が、ママさん方からはやはり慎重論が出ました。いわく「この時期に無理にやる必要はないのでは?」「通りがかりの人が上演を見て、はたしてこの時期、喜んでくれるのでしょうか? むしろ反感を覚えるのでは。。」 。。ごもっとも。。orz

なおも我慢できない ぬえ。今度ははじめから予約されていた稽古会場が公民館のホールだったのに目をつけて、普段の稽古を本格的にして、装束を着けて公演のリハーサルのように行うことを再度提案。これはママさん方も賛成頂きまして、それどころか「それなら限定的に公開できるのではないか」「椅子をあらかじめ間隔をあけて並べて」「受付を設けて見学者の名簿を作って」「私、検温器を用意できます」と、どんどんアイデアが出されて、ついに「公開稽古」になりました。宣伝は ぬえがチラシを作って、子どもたちがお友だちなどに配る程度に、小ぢんまりと行います。

そして翌日に満を持しての公開稽古を控えたその前日の夜、ママさん方の一人から連絡がありました。

「。。子どもが通う学校の、同じクラスの子が感染していることがわかりました。。」

え。。

(続く)
(画像は夏の頃のお稽古のものです)