ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

満潮の! 厳島神社(憧れ。。)

2006-10-07 23:09:23 | 能楽

広島での結婚式は無事に終わり、ぬえも体調を復しつつあって、なんとか無難に『高砂』を勤めることができ、いまは京都に移動しました。あ~楽しい披露宴だった。

さて、自分ではちっとも知らなかったのですが、昨日は中秋の名月だと広島に着いてから知って、月下の広島城を見に行ったのですが。。ということは今日は大潮。。これは厳島神社に行かなければ。。というか、厳島神社には時間が許せば行こうと考えていたので、今回は潮位表のコピーまで持参していたのです。大潮だということは知っていたけれど、中秋の名月だという事を知らなかった、という。。どっちにしても間抜けな話ですけども。。

前回、5年前にはじめて厳島神社を訪れたときは、潮位なんて気にして行かなかったのが失敗で、ぬえが到着してみたら、汐は引きまくっておりました。。能舞台は。。フツーに大地に建っていて、東京に帰ってから友人にそれを言ったところ「ええ~~っ、汐が引いてるんじゃただの野外の舞台じゃない」と言われた。ごもっとも。今回は潮位表まで調べて、結婚式への出席までは充分に時間があることもわかったので、朝9時にホテルを出発して宮島へ向かいました。

満潮の厳島神社は。。感動的なほど美しかった。床板の隙間を通して水面が見え隠れし、舞楽の舞台の正面の海に浮かぶ大鳥居は人の手によって造られたのが信じられないほど孤高な姿で。ああ、本当に来てよかった。。



肝心の能舞台は。。これはまた。。水の上に浮かぶ舞台は、なんだか優しい感じで、舞台が持つ、あの緊張感というようなものからは少し距離を取っているように思いました。なんだかのんびりとした気分で舞台を眺めるなんて不思議な感じ。

それにしてもこの舞台は。。干潮の時に見たときは気がつかなかったけれど、切戸口のすぐ外側は水面。。切戸口は使えないのね。切戸から地謡や後見が登場できない、となれば、こういう場合はもちろん橋掛りを通って登場するわけなので、そこまでは問題ない。でも。。もし舞台にいる後見がいつもの感覚で切戸から出ようとしたら。。考えられない事ではないので、うう。。



それでも、前回に干潮の際には砂浜に下りて舞台を間近で見ることができました。それはそれで良い経験で、いろいろわかった事もあったのです。『道成寺』に使う鐘の作物を吊すために天井に取り付けられている滑車の位置が通常の舞台よりもかなり後方で、あれでは鐘は吊せない、と思ったこととか。今回はそういう意味では遠くから眺めるだけに終始してしまいました。干潮にも満潮にも、違った趣をたたえる舞台。来週あたりでしょうか、喜多流で毎年恒例の「観月能」があるはずで、舞台を取り巻く回廊だけでは観客を収容しきれないので臨時の桟敷席が設えられ始めていました。ここで舞えるなんて、シテも幸せでしょうね。


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3 コメント

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日曜日はありがとうございました (きょうこ)
2006-10-09 20:57:54
初めてコメントさせて頂きます。

日曜日に京都の会でお世話になった、きょうこです。

(先日ご結婚されたキョウコさんとは別人です)

仕舞の地謡と、後席での楽しいお話、ありがとうございました。

まさかいつもブログを拝見しているぬえさんとは思わず、そうだと分かってびっくりしましたが、直接お会いできて本当に嬉しかったです。



私も去年、友達の結婚式で広島に呼んでもらい、せっかくの機会でしたので、厳島神社と原爆ドームを見てきました。

その時の能舞台は、台風の被害に遭って鏡板が4分の1しかなく、本舞台の床板もはずされていて大変痛々しい状態でしたが、それでも荘厳さは失われていませんでした。

引き潮時に行ってしまいましたし、ぬえさんの記事を読ませてもらって、また干潮時に、できれば能楽が舞われている時に見に行きたいと思いました。



これからもぬえさんのサイトやブログを楽しみにしています。

もちろん舞台や、他の活動も、及ばずながら応援しています。

頑張って下さい。



長々と失礼しました。
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TBさせていただきました。 (カツミアオイ)
2006-10-30 14:08:37
 先日、観月能を見に行ったばかりなので、おもわずTBさせていただきました。

 夜だったため、写真が撮れなかったので、素敵な写真が見られて良かったです。
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観月能! (ぬえ)
2006-10-30 23:04:53
>カツミアオイさん、コメントありがとうございます。



観月能! 行ったのですか! いいなあ。。

今年の観月能は。。えっと、『羽衣』と『猩々乱』ですね?



『羽衣』はあまり夜には向かない曲だと思うけれど。。でもカツミアオイさんのレポートを拝見して、照明をふんだんに使って、それが水面に反射してシテの袖に映っている姿を想像してみると。。うう、意外に良いかもしれないっ



こういう素晴らしい環境で、舞うことはもちろんですが、地謡に出る機会も ぬえにはないので本当に羨ましいかぎりです。喜多流の若手~中堅には友人も多いので、今度会ったら「どんな感じなの?」って聞いてみよう。



。。歯がみして悔しがる事になりそうだから、やっぱりやめておこう。。(__;)
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