「ネイビーストレングス クラフトジン/石川酒造場」
おきなわ原産のカラキやタンカン、カーブチーなどをボタニカルと使用したフルーティーでスパイシーなクラフトジン。度数は57度と高く、濃厚な味わいをお楽しみいただけます。
沖縄生まれのクラフトジン 石川酒造場「ネイビーストレングス クラフトジン」 投稿者 オリオンストーリー編集部 投稿日 2020年7月4日
世界的に有名なお酒のひとつ「ジン」。
原則ジュニパーベリー(セイヨウネズの実)が原材料として入っていれば、ジンと認められるレシピの「自由さ」もあり、近年では、「クラフトジン」と呼ばれる小規模なジン造りが世界的に流行し、日本国内でも大きな注目を集めています。
今回は、沖縄の泡盛酒造所・石川酒造場から誕生したクラフトジン、「ネイビーストレングス クラフトジン」「ジンジャー・クラフトジン」について紹介。開発を担当した銘苅 淳(めかる あつし)さんからお話を聞いてきました。
クラフトジンの開発を担当した銘刈さん
泡盛の酒造所から、なぜ「ジン」が生まれたのか
石川酒造場では2017年頃からクラフトジンの製造をスタート。しかし、なぜそもそも泡盛の酒造メーカーがジンを造ることになったのでしょうか。
「元々、蒸留酒をベースにしたクラフトジンの世界に魅力を感じていました。泡盛をベースにおいしいジンが造れたらおもしろいかなと。そして社内にジンが好きな社員がいたこともあり、おいしいジンを造ろうとなりました」
実は泡盛酒造所がジンやウォッカなどのスピリッツを製造するのは、近年ではあまり珍しくありません。スピリッツのお酒を製造するには、泡盛とはまた違う製造免許が必要です。
「世界的に見てもジンってたくさん種類があるんです。有名なジンを模倣しているだけだと、いつまで経っても同じ土俵に立てない。だからこそ、世界でひとつだけと言えるクラフトジンを造りたかった」
数あるジンのカテゴリーの中から、アルコール度数が57度以上とパンチの効いた「ネイビーストレングス」という分野に分けられるジンを造ることになったのも、他社との「差別化」を図る上で大きかったと話します。
「他社と似たようなジンを造ってもしょうがない。そこでネイビーストレングスに目を付けました。当時、他の酒造メーカーでは、ほとんど取り扱っていなかったので」
沖縄クラフトを目指す途中、大きな障害が立ちはだかる
石川酒造場では、他社との違いを明確にするため、「カーブチー」「タンカン」「ピパーチ」「からき」などの沖縄由来の素材を使用したクラフトジンを製造しています。
「柑橘系がベースのお酒って、日本人によく好まれるんです。沖縄はシークヮーサーとか、タンカンとか、柑橘系の果実ってたくさんありますし。いろいろと試行錯誤した結果、カーブチーとタンカンをベースにすることにしました。また、後味にスパイシーさを加えるために、ピパーチなども加えています」
しかし、ここで大きな障害が。
「このフルーティーとスパイシーが全然合わなくて。味が分散してバラバラになってしまう。それらをうまくまとめる、間をつなぐ存在が欲しかった。いろんな素材を試した結果、からきを使用することにしました」
からきは沖縄県内で親しまれている素材で、シナモンのような風味が特徴。主に本島北部ではその葉っぱを煎じて「からき茶」としてよく飲まれています。そのからきが、2つの味わいをうまく繋いでくれ、バランスが取れたベースとなる原酒が出来上がりました。
「石川酒造場では、ボタニカル(素材)一つ一つを丁寧に蒸留しています。それらの香りや味わいのバランスをみて、毎年ブレンド比率を調整しています。もちろん、原材料は変えていません。そういった意味では手間暇をかけた非常にデリケートなお酒と言っていいと思います」
「泡盛感は消し去った」。泡盛業界が抱える「ジレンマ」を一刀両断
石川酒造場では沖縄素材を使用するという以外にも、泡盛酒造が抱えるジレンマとも言える部分で、独自の「こだわり」を持っていました。
「他社さんは、やはり泡盛メーカーということで、あえて泡盛を連想させるジン造りを行っていますが、我々は泡盛感はいい意味で消し去りました。二度手間かもしれませんが、泡盛の原酒に再留をかけて、泡盛の風味や味わいをクリアにしています。もちろん、泡盛感を否定するわけではありません。我々も実際は泡盛酒造所ですし。でも、あくまでジンを造っているので、そこはこだわりました」
さらに、ボタニカルのカーブチーとタンカンは、工場内で丁寧に人の手で一つ一つ皮をむいているといいます。おいしいジンを造るためには、労を惜しみません。
「大量生産するのであれば、例えばタンカンをジュースにしているところの搾りカスを再利用することも考えられますが、それだといい原酒ができない。かなり手間がかかっていますが、だからこそおいしいクラフトジンが出来上がったと思います」
こだわり抜いた「クラフトジン」。その評価は?
ほとんどの工程を手作り(クラフト)で行ったこと、そして当初は蒸留器もなかったため、販売初年度の製造本数は100本にも満たなかったそう。それでも、沖縄県内の一次産業から三次産業まで、全産業の各社がその年のおすすめ商品や新商品をお披露目する「沖縄産業まつり」にて、すぐさま完売する盛況ぶりでした。
「テストマーケットも兼ねていたのですが、すぐに売り切れてしまい。一時は幻とも言われてしまいました。嬉しい反面、増産体制を整えるという新たな課題に直面したということでもあります。今ではジン専用の蒸留器を稼働させ、1500本ほど製造できるようになりました。そのため、ネットでの販売も今年6月からやっとスタートできています」
さらに、スピリッツのコンペティションでは権威のある「東京ウィスキー&スピリッツコンペティション2020」にて、「ネイビーストレングス クラフトジン」「ジンジャー・クラフトジン」それぞれが銀賞を受賞しました。
このコンペティションでは、世界中から名だたるメーカーのジンが一同に集結し、プロによるブラインドテイスティング(銘柄がわからない状態で)により評価が行われます。要するに、単純においしいジンが選ばれるコンペティションにて、賞を獲得したことになります。
石川酒造場の2つのクラフトジンのおすすめの飲み方を紹介
クラフトジンで作る自宅カクテルはまた格別
まずネイビーストレングス クラフトジン(57度)は、柑橘系のフルーティーな風味が特徴。ジン特有のスパイシーさも、あと味に余韻として少し残る程度で、驚くほど飲みやすい。鼻に残るフルーティーな香りが何とも言えない、極上のお酒です。
おすすめの飲み方は、トニックウォーターで割るシンプルな「ジントニック」。爽やかでフルーティーな香りに甘みのある味で飲みやすく、女性にも人気があります。さらに、他のジントニックとは見た目も違い、なんと色が白く濁る「ホワイトジントニック」として楽しめます。
「クラフトなので、一般的なジンよりも油分が多く含まれているため、加水すると白く濁ります。ジンの世界ではほぼない現象で、あえて個性として残しました。ライムではなく、オレンジを添えて。原材料にタンカンを使っているので、その酸味がとてもよく合うほか、白とオレンジのコントラストがとても絵になるんです」
一方のジンジャー・クラフトジン(45度)は、沖縄の新ショウガを使用したスパイシーな味わいが特徴。おすすめの飲み方は、やはりジンジャーエールで割った「ジンバック」。そのほか、原材料にコーラの原料である「クローブ(丁子)」を使用しているため、「ジンコーク」もおすすめ。どちらも、肉料理にピッタリです。
今後の展望は?
「手作業がゆえに増産することが難しく、沖縄県内の市場でしか出回っていなかったのですが、ある程度の評価もいただけたので、これを国内そしてゆくゆくは世界へ進出していくのが目標です。たくさんの人に、このクラフトジンを飲んでもらいたい。ただそれだけです」
現在、沖縄県内のコンビニエンスストアにて、販売している既存商品よりも小さい(200ml)サイズを販売し、より日常にクラフトジンが近くなるような販路の拡大も計画中だといいます。
そのほか、別の種類のクラフトジンを開発中とのこと。進化を続ける石川酒造場の「クラフトジン」から目が離せませんね!
*https://www.orionbeer.co.jp/story/ishikawashuzojo-craftgin/ より
泡盛蔵元の石川酒造場(株式会社石川酒造場) 沖縄県西原町小那覇1438-1
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