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イッピンNHK 「食卓を華やかに!うるわしの器~和歌山 紀州漆器~」

2023-12-07 07:12:03 | イッピンNHK

 第228回 2019年7月16日 「食卓を華やかに!うるわしの器~和歌山 紀州漆器~」リサーチャー: 前田亜季

 番組内容
 「紀州漆器」の産地、和歌山の職人が作ったゆがんだフォルムに漆の艶やかさを持った盃。木地がひょうたんで作られている。海南市は漆器作りが昔から盛ん。伝統の根来(ねごろ)塗りを応用した室内用プランター、ガラスに漆で装飾しナイフとフォークが使える皿など、最新技術と伝統を融合させた、新たな製品を生み出している。その現場を前田亜季がリサーチ。何気ない暮らしに彩りを添える漆の器を目指す、紀の国の職人技に迫る。

*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201907161930001301000 より

 

 1.紀州漆器(漆屋はやし:林克彦さん)

 紀州漆器の伝統工芸士「漆屋はやし」の林克彦さんは、代々、紀州漆器職人の家系に生まれ、京都で修業し、代々受け継いだ伝統技法を土台にしながらも、斬新なアレンジを加えた上質な商品を製作しています。
 
 林さんは、「和歌山の風土が育てたもの」を使用することにこだわっています。
 
 紀州漆器は、豊富な紀州材を使って木椀を製造し、椀木地に漆を塗り、加飾するという「分業制」が導入されて発展を遂げてきました。
 ところが2000年に入ると、ろくろを挽く職人達がいなくなり始めます。
 林さんは近い将来、同じ地域で活動するろくろ挽きの職人がいなくなり「器の木地」が手に入らなくなるのではないかと案じ、自分で調達出来る素材を探すことにしました。
 
 林さん素材探しの理念は、「和歌山の風土が育てたもの」を使用すること。
 最初に取り組んだのは、「みかんの皮」でした。
 和歌山がみかんの豊かな産地であることに目を付けたのです。
 既にみかんの皮を使って器を作っている職人さんもいたのですが、漆塗りの器を作るのは林さんだけです。
 
 そして、職人生活の転機となる素材「ひょうたん」と出会います。
 「ひょうたん」もみかんと同様、地元で調達することが出来る素材です。
 
 「ひょうたん」は全部形が違い、不揃いですが、林さんが漆を塗って器に仕上げることで、生まれ変わります。
 「ひょうたん」のくびれた部分を盃にします。
 まず、「ひょうたん」を乾燥させて輪切りにします。
 その内側に布を張って、下地を塗っていきます。
 岩を細かく砕いた粉と漆を混ぜたものを塗り、器の強度を高めます。
 一回塗るごとに湿度と温度が調整された部屋で漆が乾くのを待ち、また塗ったら乾かしと、何回も上塗りを重ねていきます。
 内側だけで2ヶ月も掛かります。
 
 次は、外側に流れるような模様を塗っていきます。
 まずは「黄緑」の漆を刷毛目を残すように塗ります。
 通常は、塗ってしばらくすると平らになって刷毛目が消えるのですが、この「黄緑」の漆は粘り気が強く、刷毛目が残りやすくしています。
 わずかな刷毛目の凹凸が模様になっていくのです。
 
 次に塗るのは「深緑」の漆です。
 今度は刷毛目が残りにくい漆で「黄緑」が隠れるほど塗ったら紙やすりで砥ぐと、下の「黄緑」の刷毛目が浮き出てきます。
 器全体をまんべんなく均等に砥ぎますが、模様はまばらです。
 敢えて刷毛目を残した「黄緑色」の漆の高さが異なっているためです。
 「黄緑色」の高い部分だけが浮かび上がります。
 その模様は一つ一つ違います。
 
 林さんは、最近も新たな素材に挑戦しています。
 「椿」や「梅干しの種」に漆を塗り、アクセサリーやケータイストラップなどを製作しています。

 林さんのお祖父様が紀州漆器の職人だった頃は、まだ重箱や硯箱を作っていました。
 しかしそういったものは、現代では求められにくくなっています。
 そのため林さんは、5、6年前から自分で作った物を自分で売るようにしています。
 それは、使う人のこと。彼が目指したのは、様々なお客さんと出会い多くの声を聞くことで、今の生活の中で使いやすい器を作ることを目指しているのです。
 
 「紀州漆器」は他の産地よりも漆を厚く塗るので、熱が伝わりにくく、熱い汁物を入れた場合でも、手にちょうど良い温もりを感じさせることが出来る料理用の器としても愛用されてきました。
 独特の「ほっこり感」が、昔から食卓を豊かなものにしてきたのです。
 
 林さんは、洋食ベースになった現代の食文化に合わせて、ワンプレートで食事を楽しめる器やパスタ皿などフォークとナイフで食事を楽しむための紀州漆器を考えました。
 
 漆屋はやし 和歌山県海南市船尾222

 

 2.ヒノキの間伐材で作られた室内用プランター「Te Pot」(島安汎工芸製作所)

 大正5(1916)年創業の「島安汎工芸製作所」は、木取り、組立、塗りの全ての工程を自社工場で一貫して行い、販売までの全てを行う、日本最大級の漆器専門メーカーです。

 「島安汎工芸製作所」には、伝統的な「根来塗」の商品から、洋風のテーブルセットやカジュアルでシンプルな重箱など、和モダンな漆器まで多くの商品がラインナップされています。

 四代目社長の島 平(しま たいら)さんは、長い年月を伝統を守り続けながらも、先んじて改革を行い、カジュアルな漆器を作り、若者にも受け入れられるようにしているとおっしゃいます。

 伝統ある「紀州塗」をモダンなデザインにアレンジしたのが、平成12(2000)年に誕生した「Neo Japanesque 汎」シリーズです。
 上質な質感と豊富なカラーバリエーションで好評を博し、人気ブランドになりました。
 
 更に、「Neo Japanesque 汎」の感性と世界遺産熊野のヒノキを融合させたエコ漆器「Njeco汎」シリーズも注目されています。

 「紀伊の国」は、「木の国」とも呼ばれ、和歌山県の古い国名である「紀の国」は「木の国」が転じたものとも言われているくらい豊かな森林資源を持ち、その森林面積は、県の面積の4分の3以上に当たる約36万1千㌶にも上ります。
 そのうちの約6割は民有林で、成長が早く建築に適した針葉樹の「スギ」と「ヒノキ」が多く植えられています。

 森林の育成には、間伐作業が欠かせません。
 そして発生した間伐材は今まで利用価値のないものとされてきました。

 「島安汎工芸製作所」では、地元のものを大切に使っていきたいという思いから、その間伐材を加工した台形集成材を使用することによって、エコでありながらスタイリッシュな「Njeco汎」を生み出したのです。

 開発から製造まで手掛けたのは、5代目の息子の島圭佑さんです。
 圭佑さんは京都嵯峨芸術大学短期大学部、石川県山中にある「挽物轆轤ひきものろくろ技術研修所」で学び、その後帰郷して、代々続く「島安汎工芸製作所」に入社しました。
 現在は、身につけた技術を活かして、商品の開発・制作に携わっています。

 圭佑さんは、LEXUSが主催する「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018」の和歌山県代表に選出されたことがきっかけで、熊野古道のヒノキの間伐材を使った室内用のプランター「Te pot」を制作することになりました。

 コンセプトは「捨てられるはずだった材料を育てる器へ」。
 「Te pot」という名前には、「手のひらサイズ・テーブルや食卓にも置ける」「特別な土地である熊野古道というパワーを手元に」という意味が込められています。

 圭佑さんは、「Te pot」をダイニングテーブルやキッチン、寝室など、様々な場所で使うことが出来るように水受けを一体化させ、更にスタイリッシュなデザインにこだわりました。

 「Standardタイプ」は、ヒノキの木目を活かして仕上げられたナチュラルなデザインで、自然な木目と節目を楽しむことが出来ます。

 一方「Premiumタイプ」は、「根来塗」の技法を用いてモダンな色味にアレンジした「変根来」(かわりねごろ)という塗りで仕上げられた高級感のあるデザインのもので、和室・洋室どちらでもインテリアに馴染みます。

 まず、外側から鉋(かんな)をかけます。
 間伐材には「節」(ふし)が入っているため、同じ力で削ると「節」に引っかかって吹っ飛んでしまう可能性もあり、難しい素材です。
 ただ、芯が抜けていて削る部分が少ないため、材料を余り捨てることもないため、「エコ」でもあります。

 形が整ったら、小さな刃物を使って表面を滑らかにしていきます。
 そしてプランターの縁の部分を土などを入れやすくするために広げていったら、プランターの形は出来上がりです。
 
 次に「金」の漆を塗って模様を出していきますが、そのために、まず下地に「白」の漆を塗ります。
 こうすることで、その上に塗る金色がより鮮やかになるのです。
 その上に更に「オフホワイト」を塗って3つの層を塗り重ねます。
 紙やすりで砥いでいくと、「金」が浮き出て美しい模様が出来ました。
 これは伝統的な「根来塗」を応用した塗り方で、経年劣化をしたように「金」を出したら、完成です。
 
 島安汎工芸製作所 和歌山県海南市大野中507-1

 

 3.漆ガラス食器「GLASS JAPAN」(塗り工房ふじい:藤井嘉彦さん)

 「塗り工房ふじい」を主宰するさんは、漆器業を営む家に生まれた藤井嘉彦さんは、若い頃、家業の漆器業の修行のため、中東・米国・欧州などを見聞し、製品の輸出や百貨店での展示に奔走していました。

 海外ではフォークやナイフがメインのカトラリーのため、表面に傷が付きやすいフォークやナイフを多様する洋食器の分野に「漆」は不向きでした。
 海外のテーブルウェアとして受け入れられない「悔しさ」が藤井さんが独自の漆器を開発するきっかけなりました。
 
 平成13(2001)年に「塗り工房ふじい」を立ち上げます。
 そして、海南市黒江の伝統技術と革新を融合した今までの漆器のイメージを変える新しい洋食器を生み出しました。
 ガラスに、漆工芸技法の一つである「蒔絵」を施した世界初の漆を主としたガラス食器「GLASS JAPAN」(グラスジャパン)です。

 藤井さんが独自の漆技塗りとガラス食器を融合させた、「GLASS JAPAN」(グラスジャパン)を開発した背景には、
伝統に対する熱い想いがありました。
 
 「伝統工芸をそのままの形で後世に残そうとするだけでは、 その文化は生き残れないでしょう。
 伝統を大切にするなら、時代に応じて変化させなければいけない」

 ガラスは表面が滑らかで漆がつきにくいことから、藤井さんはまず、強力な接着剤「プライマー」を独自に開発。
ガラスの裏面からこの「プライマー」と漆を塗り、更にその上に、食洗器対応のコーティングを施すことにより、カラトリーの使用が可能になったのです。

 現在、「GLASS JAPAN」(グラスジャパン)は料理を格上げする器として、海外の有数のホテルやレストランなどで採用されている他、南紀白浜空港の記念品にも使われています。

 その後藤井さんは、器以外にも、グラスやプレート、カトラリーの柄、タイルやパネル、テーブルなどのインテリア類まで、ガラスと漆を融合した製品を次々と作り出しています。

 藤井さんは、丁寧に脱脂したガラスにスプレーガンで「プライマー」を裏面全体に吹きつけます。
 それから、商品によっては金箔や銀箔を載せてからエアーで吹き飛ばすと、迫力ある模様が現れてきます。

 その上に漆を塗り重ねていきます。
 「GLASS JAPAN」(グラスジャパン)は器の裏側から塗りを施すため、通常の漆器とは逆の順序で塗らなければなりません。
 生まれる色味を目で確認出来ないので、熟練の技術だけが頼りです。
 塗料を吹きつける音や振動など限られた情報を基に、何百枚もの器に同じ色味を再現していきます。

 漆器を漆器たらしめているのは、その色味です。
 藤井さんは、漆黒をベースに朱色などの「漆」を塗り重ね、一度の塗りでは表現出来ない奥深い色を表現します。
 仕上げに「黒」の漆を塗ります。
 裏側は黒一色になりましたが、表面にはキレイな小宇宙が広がっています。

 最後に、全ての食洗機に対応出来るテーブルウェアにするため、ガラスを粉剤してパウダー状にしたものを漆に練り込み何層にも重ねて、表面をクリアにしました。

 塗り工房ふじい 和歌山県海南市名高532-4

*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Wakayama/Kishushikki より


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