第245回 2020年2月25日 「カラフル&アート コットンに革命を!~兵庫 播州織~」リサーチャー: 中越典子
番組内容
兵庫県西脇市を中心とした地域で作られている「播州織」。先に染めた糸を織ることで、繊細で複雑な色柄を作りだす綿織物だ。工程のほとんどが分業で、それぞれの技術を極めた腕のいい職人たちが新しい製品を生み出している。極細の糸を織った淡いグラデーションのストール。立体的な柄のシャツ。古い織機の柔らかな織りを生かしたパンツ。リサーチャーは中越典子さん。付加価値のある新たなものづくりに挑戦する人々の思いに迫る。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A202002251930001301000 より
1700年代の初めより、温暖な気候を活かして綿花が栽培されていた現在の兵庫県南西部、播州(播磨)地方では、江戸時代中期になると、比延庄村(ひえしょうむら)の宮大工飛田安兵衛(ひだやすべえ)が京都西陣から織物の技術を持ち帰って以降、農家の副業として「播州縞」(ばんしゅうしま)が生産されるようになりました。
「播州織」(ばんしゅうおり)と呼ばれるようになったのは、明治時代後期です。
現在、「播州織」は、先染めの綿織物の全国シェアおよそ58% (平成30年)を占め、その独特の製法により、
自然な風合い、豊かな色彩、素晴らしい肌触りの生地に仕上がり、多くはシャツやブラウス、ストールなどのファッションアイテムや、テーブルクロスなど様々な製品に加工されています。
その品質の高さで国内のみならず海外からも高い評価を受け、世界的ブランドの生地にも採用されています。
1.播州織ストール「fabori」(兵庫 播Bon)
兵庫県西脇市にある「播(Bon)」は、昭和43(1968)年創業の産地に根付いた100%日本製にこだわった物作りに取り組む生地メーカーです。
その「播(Bon)」が、「お気に入りの1枚を選ぶ楽しさを感じて欲しい」というコンセプトのもと展開しているのが、播州織で作ったストールの自社ブランド「ファボリ(fabori)」です。
「ファボリ(fabori)」という名前は、英語の「お気に入り(favorite)」「織物(fabric)」と日本語の「織り(ori)」を組み合わせたものです。
「ファボリ(fabori)」は、100番手という極めて細い糸を色を重ねて染めてから織ったもので、
向こう側が透けるほど薄く、繊細な色味と絹のような手触りのストールです。
令和元(2019)年にはグッドデザイン賞を受賞しています。
播州織のストールをデザインのは、「播(Bon)」の鬼塚創(おにづか そう)さんです。
東京都出身で、文化ファッション大学院大学(BFGU)で学ばれた鬼塚さんは、当初は東京で就職することを考えていましたが、「播州織産地にデザイナーを呼ぼう」という西脇市長と会い、やりたいことは東京にいても産地にいても同じ、それなら行ってみようと決心したとおっしゃいます。
鬼塚さんは、布を織る前に糸を染める「先染め」により、複雑な柄を織ることが出来るとおっしゃいます。
「先染め」とは織り上がった布に染色するのではなく、染めた何色もの色糸を織りで組み合わせながら繊細な色調とデザインを表現する製法です。
更に鬼塚さんは、極細の糸を使うことで、軽くて透けるような風合いを実現しました。
糸を指定された色に染める工程を担うのは、數原泰三さんです。
數原さんは、染料の配合、窯の温度などを注視しながら、糸を染めていきました。
田中美佐代さんは、配色通りに糸が並んでいるか、糸が抜けていないか、徹底した確認作業を行っています。
森本さんは極細の経糸、横糸で生地に仕上げます。
これまでの工程に携わってきた職人達の努力を蔑ろには出来ないと、糸を傷つけないよう、織り機のスピードや温度や湿度など多岐に渡って気を配っていらっしゃいました。
(株)播 兵庫県西脇市小坂町45-2
2.POLS(ポルス)
播州地方では、普段遣いの綿織物を作ってきましたが、明治時代には鮮やかな化学染料を輸入して、工場生産もスタートさせました。
丈夫で色柄豊富な播州織の評判は国内だけに留まりません。
明治34(1901)年、ジャカード織機を多数導入して「丸萬」(まるまん)は創業しました。
その後、産地への機械式織機導入に尽力し、ファブレスメーカーとなる産元商社へと業態を変換し、世界へ輸出を大きく伸ばしました。
「ファブレス」とは、その名の通り、「fab(工場)」を持たない会社のこと。
工場を所有せずに製造業としての活動を行う企業を指す造語およびビジネスモデル。
その後は、為替の変動や、海外の安価な生産に押され、生産量が減少しましたが、新しい流れを作るべく、
2000年頃から独自のジャカード技術を研究し、独自のジャカード織の生地を開発してきました。
そして平成27(2015)年、テキスタイルデザイナー梶原加奈子氏とともにジャカード織りで制作された
播州織ブランド「POLS(ポルス)」を立ち上げました。
スカーフから始まり、平成30(2018)年にはパタンナー兼デザイナーの宮本祐子さんが加入したことにより、
ウェア制作を本格的に始めました。
令和3(2021)年には大阪自社ビルの1Fをリノベーションして、初の販売店舗「ポルストア大阪」の運営も開始しました。
デザイナー兼パタンナー宮本祐子さんの細部にこだわったディティールやシルエット作りは、「丸萬」の縫製工場が支えています。
丸山氏の会社では経糸、横糸を複雑に織り込んで、厚みのある質感に仕立てています。
織機にコンピューターが搭載されているからこそ、プログラム制御によって複雑なデザインも実現可能となっているのだそうです。
ポルストア大阪 大阪府大阪市中央区内淡路町2丁目4−5
3.tamaki niime (玉木新雌さん)
玉木新雌(たまき にいめ)さんは福井県生まれ。
理想の布を探し求める中、「播州織」に出会い、兵庫県西脇市に移住。
連綿と受け継がれてきた「播州織」の技術を絶やしてはいけないと播州織をアレンジした「新たな播州織」を生み出し、平成16(2004)年にブランド「tamaki niime」を 立ち上げ、独創的な織物を制作しています。
工場に昭和40(1965)年製のベルト式力織機を導入し、自らが織り上げた 「only one shawl」は最新の機械では出せない独特な織柄の立体感が評価されて、人気です。
ショールを中心に、シャツ、パンツ、子供服、バッグなどを製作しています。
また経済産業省の「ザ・ワンダー500」にも選定され、地場産業であった「播州織」を世界ブランドにまで高めました。
現在、玉木さんの工房には「播州織」に憧れる若者達が集まっていて、日々、技の習得に励んでいます。
いつしか、楽しさ、面白さを技術にプラスして貰い、後世に繋げていきたいとおっしゃていました。
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Hyogo/Banshuori より
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