第250回 2020年4月7日 「木々は豊か 技は多彩~秋田 木製品~」リサーチャー: 春輝
番組内容
秋田県は、日本でも有数の森林の豊かな県だ。木工職人たちは、様々な種類の木の性質を知り尽くし、それを生かしたもの作りに取り組んできた。ブナの木がよく曲がることを利用した、優美な背もたれのイス。美しい模様と艶を持つ山桜の樹皮で作った下駄。樹皮を削り、磨きあげる技は、伝統のかば細工だ。そして、波の形にカーブしたクシ。実は、きわめてかたい木を使っており、加工にも金属加工用の機械を使う。それぞれの技に迫る。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A202004071930001301000 より
1.曲木家具(秋田木工)
秋田では豊富な森林資源を使った木工業が栄えてきました。
「秋田木工」は、日本で唯一の曲木家具専門ブランドです。
明治43(1910)年に、曲木に適したブナやナラが豊富な、秋田県の湯沢市に設立されました。
「木が木で立っていたときよりも立派に美しく」という信念の下、
熟練した職人の丹念な手作業で、「曲木家具」を生み出しています。
「曲木」とは、その名の通り、木材を高温で蒸して柔らかくしてから、鉄製の治具にはめ込んで固定し乾燥させる方法です。
蒸して柔らかくした木材の外側に鉄板を当て、鉄板の更に外側にある雌治具から鉄板の方へ圧力をかけ、鉄板と木材を内側の治具の型に沿わせていきます。
それによって、曲げの中心軸は外側(引っ張り側)に移行し、応力を内側に集めることで木材を破損することなく曲げることが出来るのです。
曲木の技術を発明したのは、ドイツ人のミヒャエル・トーネット(1796年〜1871年)です。
この技術により、これまでの椅子とは一線を画す椅子が生まれました。
曲木椅子には、次の4つの特徴があります。
少ない部材でシンプルに仕上げられているため軽い。
切り出した木材を組むのとは異なり、繊維が切れていないため、細いパーツでも丈夫。
アールの組み合わせによって、美しい形が可能に。
また、曲木による体に沿った背のラインが生まれ、機能面でも向上。
曲木に適した木材はブナが主。
ブナ材は価格が比較的安いため、コストを抑えることが出来る。
トーネットは曲木椅子を数多く生み出しました。
特に1859年に発表された「NO.14」は歴史に残る名作となり、現在までに約2億脚製造されたと言われています。
そのトーネットの曲木技術が日本に初めて伝わったのは、明治34(1901)年のことです。
東北地方の各地や、岐阜県の飛騨地域などに曲木細工を生かした工業製品の産地が形成され、明治43(1910)年に「秋田木工」が創業しました。
平成18(2006)年に大塚家具傘下に入りましたが、今も、日本を代表する曲木家具を続け続ける日本唯一の専門工房です。
「秋田木工」では、名立たるデザイナーと名作とも呼べる数々の作品を共に作り上げてきました。
最近では、デザイナー・五十嵐久枝による「MAGEKKO(まげっこ)」が2020年度グッドデザイン賞を受賞しています。
「MAGEKKO」は、 令和元(2019)年に日本の伝統の技術と国内産の自然材を活かした家具を通じて、日本のものづくりの魅力を知っていただきたいとの想いを込めて「AGITA」シリーズ第1弾として発売されたものです。
秋田の方言をもとに名付けられた、曲木の技を存分に味わえるシリーズを象徴する椅子です。
その秋田木工、今年、令和3年11月に創業110周年を迎えます。
10月30日(金)~11月1日(日)の期間、「秋の大特売会」が開催されるそうです。
秋田木工 秋田県湯沢市関口川前117
2.角館 伝四郎「樺下駄」(伝統工芸士・高橋正美さん)
山桜の樹皮は硬く、目が詰まっているため、工芸品に使われてきました。
「角館 伝四郎」は、嘉永四(1851)年)の創業以来、七代に渡って高品質な樺細工を作り続けている、藤木伝四郎商店のブランドです。
番組では、伝統工芸士の高橋正美さんが 樺下駄を製作する工程が紹介されました。
山桜の樹皮は数年かけて乾燥され、美しい模様が広がる赤褐色の層が見えるまで包丁で削っていきます。
これを下駄に張り合わせ、熱した小手で接着剤の膠を丁寧に伸ばしていきます。
低過ぎると膠が溶けず、熱過ぎると焦げ付いてしまうので微妙な温度加減が要求されます。
磨きの最終段階では、無数の凹凸があって僅かな傷も滑らかにしてくれる椋の葉を使います。
最後に動物性の油脂で表面を磨けば、樺下駄は完成です。
藤木伝四郎商店 本店 秋田県仙北市角館町下新町45番地
3.斧折樺の櫛(AKITAアートフォルム・橋野浩之さん)
秋田県鹿鹿角市十和田大湯には、「斧折樺」(おのおれかんば)という、
その名の通り斧が折れてしまうほどの堅さで、水に沈むほど比重がある落葉高木を使った木工品の制作を行っている工房があります。
平成3(1991)年に設立された「AKITAアートフォルム」です。
工芸家・橋野浩行さんは、「斧折樺」(おのおれかんば)と呼ばれる貴重な材料を使った靴べらセットやひねり髪すきなど、オリジナリティー溢れる商品作りを行っています。
斧折樺は過酷な環境で生きるため、年に0.2㎜しか太くならないという日本の樹木です。
現在ではほとんど採れないため、大変希少価値の高い木材になってしまいました。
「斧折樺」は、日本の木の中でも屈指の硬さ。
普通の木工用の刃では歯が立ちません。
そこで橋野さんは、金属加工用の刃を頑強にしたものを使っています。
削った後、残った水分が木から抜けていくと、歯が曲がることがあるため、3年の月日をかけて乾燥させなければなりません。
そして、絶妙な曲線を描くように慎重を重ねて削っていき、椿油に数週間漬け込めば、完成です。
橋野さんの、使う人の気持ちになって考え抜かれたデザインは、使いやすさだけではなく、その滑らかさと木のぬくもりを確かめたくなるようなフォルム。
そして、艶やかな色合いになっています。
更に、経年変化による楽しみもあります。
AKITAアートフォルム 秋田県鹿角市十和田大湯扇ノ平49−3
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Akita/wood より
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