「小鮒の甘露煮」
主な伝承地域 佐久地域
主な使用食材 フナ、醤油、砂糖
歴史・由来・関連行事
県の東部に位置する佐久市は、群馬県との境に位置し、田んぼで淡水魚のフナやコイを飼えるほどきれいな水源に恵まれており、田んぼで水稲と一緒にフナやコイを育てる「水田養鮒」や「水田養鯉」などがおこなわれていた。それまで副産物として収穫していたフナだが、水田転作の進展とともにコイよりも手がかからないフナを養殖するようになった。地元では、9月になると5cm前後の小フナが生きたまま袋詰めされて販売される。町ではあちこちで「小フナ」の文字が見られた。小フナは、醤油と砂糖で甘辛く炊いて甘露煮にされる。買ってきた(若しくは、田んぼでとってきた)小フナを、水を何度もかえながらきれいに洗い生きたまま小フナを鍋に入れて調理する。柔らかくなるまで炊いたら、ほかほかの新米と一緒に食べる。小フナの僅かな苦みに秋の訪れを感じる。
海のない信州は、山に囲まれ、千曲川、木曽川、天竜川など豊かな水源に恵まれており、川や湖には淡水魚が育まれている。それをとって食べ、山の地域ならではの食文化が根付いていった。信州では川魚を昔から甘露煮にしておかずとして食べる風習がある。佐久の「コイの甘露煮」や諏訪湖の「ワカサギの甘露煮」なども信州の郷土料理として根付いており、丸ごと食べられる川魚の甘露煮は、カルシウムが豊富な上、昔は貴重なたんぱく源でもあった。
食習の機会や時季
田植えが終わると田んぼへ稚魚を放し、稲と共にフナを育てる「稲田養魚」がおこなわれる。秋になり、米と共に水揚げされる。佐久市では、多い日で約3000袋(1袋1キロ)が県内のスーパーマーケットや東信地方の学校給食などへ出荷されるという。恒例の「フナ祭り」では、早朝からフナを買い求める客で賑わい、2日間で約1200kgを完売した年もある。毎年、小フナを楽しみにしている人も多く、佐久地域の秋の味覚とて親しまれている。
飲食方法
佐久地域の「小鮒の甘露煮」の特徴は、やはり小フナを生きたまま調理すること。小フナが跳ねるので飛び出さないように急いで蓋をしなければならない。焦げ付かないよう、母親たちは常に鍋のそばにいた。骨まで柔らかくなった「小鮒の甘露煮」は、ごはんのおかずや酒のつまみとして食されている。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
今も地元では各家庭で「小鮒の甘露煮」をつくっている。佐久地域では、「水田養鮒」で育てた米は「フナ米」として販売されている。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/kobunano_kanroni_nagano.html より
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