ヒラリーが敗れ、トランプが勝利してちょうど一年。
次々と問題が噴出しても一貫してトランプを支持する層が、このクラスと言われている。
この本ではこの層にフォーカスしてアメリカの本質に迫ろうというもの。
著者は元々「ミドル・クラス」という表現を使いたかったよう。
編集者と著者の議論の末、「ワーキング」とした。
層の定義は =「富裕層でも貧困層でもないアメリカ人」
ここからだけでも、アメリカの階級を語ることの難しさがわかる。
本を通し、著者がこの難しいテーマをうまくさばいていると感じた。
各章のタイトルは、それぞれとても興味深い質問形となっている。
例えば、
「なぜ、ワーキング・クラスは貧困層に反感を抱くのか」
「なぜ、ワーキング・クラスは専門職に反感を抱き、富裕層を高く評価するのか?」
「なぜ、ワーキング・クラスは仕事のある場所に引っ越さないのか?」
「なぜ、ワーキング・クラスは子供の教育に熱心に取り組まないのか?」
「なぜ、ワーキング・クラスは製造業の仕事が戻ってこないことを理解していのか?」
ここでは単純に答えられる「引っ越し」について解答しておきたい。
答=「エリート層」はキャリアを目指し、引っ越しをすることを厭わない。
「ワーキング・クラス」はコミュニティや安定を重視する。「変化とは損失です」
このように、カリフォルニア大学の教授であり、いったんハーバード・ビジネス・レビューでのウェブ版で発表した内容への反響も含めまとめている著者の文章には、説得力がある。
多様性そして対立する党の主張ゆえに生ずる、政府が行う援助へ対する誤解がクラス間で発生しているという。
日本のような単一民族では想像もつかない、アメリカの現状が容易に解決できない深い問題だという認識が深まった。
結論:トランプが勝利してちょうど一年、のタイミングでその変化をもたらした層を理解できる貴重な一冊。