小学校時代には、よく「ツブしぇめ」して子ども会などの財源としました。ツブはタニシのことで、食用になります。「田んぼのサザエ」と言われるほどに美味しい巻貝です。写真を御覧になれば薄汚い感じを受けますが、藻類が貝殻に付着しているだけです。貝殻の中身は、普通の巻貝です。春先の田んぼには、邪魔になる稲がありませんので、地中から春の到来とともに表面に這い出してきたツブを拾うことができます。どなたが所有している田んぼでも関係なく、入ることができました。「ツブしぇめ」には、慣習的に入会権が設定されているようなものです。
味が良いので、蛋白源としての価値も高くて、捕まえて売ることができました。集落ごとにあった子ども会に必要なお金を調達するために、春には「ツブしぇめ」と「木の芽(アケビの芽)採り」を行いました。小学校児童会や中学校のの財源としても「作業」という名称で行われていました。「ツブしぇめ」は子どもの公的な作業の一つだったのです。
ツブは食用以外にも使われました。釣りの餌です。畑沢の千鳥川で釣れる魚は、ほとんどが「ニガ」と呼んでいるアブラハヤです。美味しくないので、食べないのですが、子どもの遊び相手には最適でした。御飯粒でも簡単にかかってきてくれます。でも、御飯粒は柔らかいので、魚がかかる前に直ぐになくなってしまいます。そこで、ツブをつぶしてその身を針に付けます。特にツブの〇〇と呼んでいた部分は、形も良くて針持ちが良かったようです。でも、全てのツブに存在する訳ではなくて、殻をつぶした時に子貝が出てくるツブにはありませんでした。ツブ(タニシ)は胎生です。
ところで、タニシには何種類もいるようですが、畑沢のツブがそのいずれであるかを確認していません。
1960年代に入って、畑沢でも大量の農薬が使用されるとほとんど姿を消してしまいましたが、最近になって、農薬の成分が変わってきたことと、耕作放棄した水田が増加しましたので、タニシをかなり見かけるようになりました。しかし、食べると減少してしまうようでそのままそっとしています。