「ゆわさる別室 」の別室

日々BGMな音楽付き見聞録(現在たれぱんだとキイロイトリ暴走中)~sulphurous monkeys~

20130302

2013-03-02 | 矮小布団圧縮袋

○土曜も出勤で会議が午後3時半頃終わり、まだ作業も宿題も残っているのだが、会社帰りに久しぶりに少し息抜きせんとやりきれんな、と、WBCのブラジル戦のヤフードームで湧いてる福岡市内を後にして、JR鹿児島本線で折尾から、福北ゆたか線で下車したのは中間駅。駅前の広場で市街地地図を見て方向を探すキイロイトリ。鞍手から遠賀川沿いにバイクで中間市役所付近に行ったことはあるのだが、電車で行ったのは初めてだなあ。
 
 「世界の車窓から」(><)折尾駅ホームから。キイロイトリ「アチコチ コウジチュウ デ メイロ ミタイデス」あまり来ないから、確かに乗り換えでわかんなくなって迷ったw。に写真撮りに来ててよかったね。

        
 5~6分ですぐ中間に。へー、こんな近かったんだ。折尾行くって感覚で行けるんね。改札から一歩でると、駅前からのどかな景色が続く…いったい、ここまで何をしに来たのかというと、

  
 実は、ぶらっとユナイテッドシネマなかま16まで、映画を見に来たのだ。九州最多スクリーンを誇る?場所で、名画座的に名作を企画上映しているという(特別上映だから、お代は¥1000)。


 今週やってるのが「裏切りのサーカス」(2011、英独仏合作、2012年4月公開)。たまたまYouTubeで見かけたTrailerの画面の渋い雰囲気と、出演者の顔ぶれ(爆)についつい釣られて、検索してたら、いきなり「何これ、明日3月2日からって…しかも中間の映画館!?でやってるって、なんじゃいそれは!?」と気づき、会社帰りにえっちらおっちらやってきたのだ(駅に下りて、「…本当に、こういうところで上映なんてしてるのかなあ…?」と思ったくらいだったが・爆)。申し訳ありません!

 いや、ほんっとに、こういう映画を見たいとずっと思ってたんだろうなあ自分、って思った。ストーリーは難しいんじゃなくて、原作知らなくても「さあ、この中のいったい誰が裏切り者なのか?」だけで、なんだかんだ言わずに見りゃあいいんです!難解?地味?いえいえ、個人的感想としては「英国王のスピーチ」とかより全然、目が冴えちゃって、途中もじわじわ怖かったし、退屈しなかった。時間があっという間に過ぎちゃったと思います!これは派手なアクション映画でなく、スパイ映画というよりも、ひたひたとした無気味さと緊張感の迫るサスペンスミステリーでしょう。まあ、自分は火薬多いやつよか、こっちの方が断然好きです。日頃チャンネル銀河で「主任警部モース」だの「ルイス警部」だの、AXNミステリーの英国ミステリードラマや映画だの(ちょっと残酷な所もあるけどね)を見慣れている方、あと、BSで「シャーロック」のカンバーバッチさんにはまった、なんて人は、(もちろん見てるんだろうけど)見なくてどーすんだよ!?な映画ですな。というわけで、原作小説未読でDVDも未見だったのだが、わたくし的には、いきなり最初の体験が映画館のスクリーンだったので、非常に幸せ。

 最初から前半はもう、出てくる人全員が怪しいというか疑わしい(笑)。イギリス的なドラマでよくある、あの非常にスタイリッシュな、そして細かい生活描写とか、意味深げな断片的な台詞とか、何度も巡る回想シーンとかなんかに、伏線や謎解きのヒントがばりばり入っていて(シャーロックだのミスマープルだのもそうだが、英国のドラマなんかの)とにかくこのしつこさがマニアにはたまりません。でも、だんだん後半になっていって、だんだん真相が見えてくるんだけど、気がつきゃもうその2時間位の間にかなり各登場人物の関係性のドラマの方に見てる側がはまっていて(そのへんの作り方が憎い)、ラスト「ええええ?そんな…」というか、ちょっと強引なようなしかしその淡々としたせつなさに、過去のいろんなことがあっただろうと想像が広がり、まさに言葉と映像の「行間」に、しみじみとしたものが迫ってくる。これこそが映画でしょう、てのを久々見たな。目に見えるものをいちいち説明してもらえないと理解できない、想像力の欠落した子供はお呼びでない!映画というべきか。もっとも、R-15だけどさw。それに、自分がこの映画を初見でもだいたいわかったのは、ベルリンの壁崩壊以前の世界地図を学校で習って知ってるからかもしれないし、1970年代の気分を子供の頃リアルタイムで知っててイメージできるから(あのメガネの子、うちの兄ちゃんぐらいじゃね?)、ということもあるだろう。(確かに平成生まれの人など「ソ連」とか知らないから、ワシらにはおなじみの「西側の感じるKGBへの生理的な恐怖のイメージ」とかが前提としてすっと入ってこなくて、こんな話は難しいかもしれんね)

 しかし、前の「ツーリスト」みたいに一回見たら結末わかるからいいわ、じゃなくて、この映画は一度見て、結末がわかってからも今度は二回目に見て「ああ、こういう意味だったんだよね…」と分かっても、全然興ざめどころか、またせつない気持ちになりそう。実はゲイリー・オールドマンってそんなに好きというわけではないのだが、改めて今回「待田京介風(or芦田伸介風)」(爆)にじわじわと来る彼は、とにかく何か凄いっすね(表情とか、最後の最後まで怪しいし)。各出演作をおさらいしなきゃいけないんだろうなあと(激しく遅いんですけど)。あと、コリン・ファースやジョン・ハートは有名どころとして、この激渋の人選の中においてカンバーバッチさんはわりと若め(笑)の方だったりとか、その他にも「名前は知らんが顔はよく見たことある感じの人」がまた、仰山出てくるw(キャシー・バークさんとか、キーラン・ハインズさんとか、マーク・ストロングさんとか、トム・ハーディさんとか。おお、レイコンってサイモン・マクバーニーさんだったんだ♪)。それに「英国映画におけるトビー・ジョーンズ」と言えばもはや「西村京太郎サスペンス・トラベルミステリーにおける山村紅葉」「天知茂の明智先生の江戸川乱歩の美女シリーズにおける岡部正純」的(爆)に、「出オチ」でキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ !!!!!とか思って非常にウケてしまうし。

 回想のクリスマスパーティーシーンで、ヴィスコンティの「地獄に堕ちた野郎ども」の騒ぎのシーンを連想したというYahoo!のコメントをちらと見た(そういえばトム・ハーディさんなぞのファッションは70年代なせいか「家族の肖像」のヘルムート・バーガー風だったり)が、自分などは「灰とダイヤモンド」のあの妙なポロネーズで夜明けまでへろへろに歌い踊り続ける人々のシーンなども思い出した。多分ガイ・バージェスがモデルの「アナザー・カントリー」を思い出すところもあったりとか、結構古今の映画へのオマージュ的エッセンスもちらちらっと随所に潜ませていたりするのかな? それと、「コントロールの部屋」を見るたびに「…ああ、うちの部屋も、掃除しなきゃいけないんだった…とほほ(←ツッコむとこって、そこかよ><)」という途方に暮れた思いに駆られるのであった(ああ、でもせめて、あのくらいの散らかり方ならまだ、人も招けないことないんだけど!)。
 しかしこの、全編に流れるどこか退廃的な欧州の香りというか、壮年のほろ苦さというか、ロケーションのインテリアと渋い衣裳の画面の雰囲気というか(ポール・スミスはんでっか!)、スペクタクルな大味、とは対極のところにある渋味というか。カメラの一カット一カットずつ捉えていく(缶詰だの、タバコだの、壁の絵だの、車だの、酒の瓶だの、メガネだの、階段の手すりだの、ドアにはさむやつだの…)人間の「日常的な生活感の具体性」に、フェティッシュ(愛着のまなざし?)とか言っちゃ失礼なのかもしれないけど(笑)いちいち意味を持たせていて、「人間の指先感覚」のような細かいところに非常にこだわって丁寧に丁寧に作られている、という感じ。その細かい画面を知らず知らず見続けているうちに、気がついたらその登場人物たちのキャラの匂いみたいのが、生者も死者も妙に生々しく立っていて、観終わったあとに妙に残って(むしろ、画面を見ているその時よりも、見終わった後の方がその人間の存在感を、逆に生々しく)思い出してしまうのだ。そういう思い出し方は、自分が毎日の生活や人生そのものの中で折々感じる「回想」の生々しさに、実は非常に近い。(出てくる登場人物たち自身がそれぞれ、そういう感じ方をしているから、ってこともある。映画「インド夜想曲」とかタルコフスキーとかなんかでも、こういう感覚を感じたことがあるのを思い出す。でもこの“残像”って、「映画の文法」の基本中の基本だと思うんだが。うーん、まあ見てる人の疲労度は高いかもしれんが、それを楽しめる感覚が共有できないと難解、ってことなのだろうか?)…まあこういうものは、好きな人はこよなく偏愛するだろうなあ、と思われる。「濃厚な」名画を、久しぶりに映画館で見た気分になった。予想外に遥かに遠くtripできた、思い出深い中間の夜、となりました。いい企画だな。一応金曜までらしい。
      
(写真:パンフはなくって、かろうじてチラシはあったのでもらってきた。眺めるたれぱんだとむすび丸とキイロイトリ。夕方ご飯食べる暇がなく着いて入場したので、空腹のあまり買っておかわりしたポップコーンをおみやげに持ち帰る)

本日のBGM:
 Spinning Wheel / Sammy Davis Jr.
 胃腸に消化はよくないのかもしれないが個人的にはなんだか後からじわじわと来て「残る」映画だった(…ちょっと余韻で、目が冴えて眠れなくなってきちゃった、やばいっすw)。淀川長治さんだったら、どんな感想を持たれただろう?…それにしてもこれも帰ってからだが、この映画について検索すると物凄く偉いことになってて、難解で駄目で全然良くないという人(そんなにわかんないかなあ?)のいる一方、語りたい人はみな極端に熱っぽく様々な解釈を語る語る(笑)という具合。世界的にマニアがいそうな様子がよくわかる。しかも昨年末の記事によると、続編企画中とか??この高水準を維持して続編が続けられるのだろうか??ちなみに、音楽も非常に効果的に使われていて、DVDも欲しいがサントラも欲しい。各シーンの挿入曲も泣かせる。どこで何の曲が出るか、ってことも一種の伏線やトリックだったりするので、言わないでおこうw。
 上記の曲も、イントロも何かのテレビ?で聴いたことある気がするのに曲名を知らず、今回映画の中で流れて「これは!」と気づいて、帰ってから調べてわかった。というようなことが、よくあるのです。(20130302)

 ※追記 思うに、自分は原作小説を未読で今回臨んだからよかったのかも。「読んでから映画見た」人から見ると、いろいろ細かい問題や難点もたくさんあるらしい。
 自分はフォーサイスの「ジャッカルの日」の角川文庫版も「映画見てから読む」の方だったし、今回のも見た後でハヤカワ文庫版を借りてきたので、これから読みます。
コメント