○出張を終えて福岡に戻ってくると、博多の東長寺の桜もすっかり咲いていた。
本日のBGM: Cloud Atlas (Original Soundtrack)/ Johnny Klimek, Reinhold Heil
ケーブルテレビの映画チャンネルで先日日曜日「バットマンビギンズ」「ダークナイト」「エアフォース・ワン」という“春休みゲイリー・オールドマン祭り三本立て(爆)”をやっていたので、留守録機能も使いつつ、初めてこれらの有名な作品を見て、世評の言うところの意味を知った(遅い)。これと前後して、子供の頃にニュースで知って「見たことないけど凄く怖い話」というイメージをやたらふくらませていた、チャールトン・ヘストン主演の有名なSF映画「ソイレント・グリーン」(1973)も、映画専門のチャンネルで放送されていたのを、これも初めて見た(甚だしく遅い)。その映画は、問題の結末のどうこうよりも、どっちかというと設定の細かい其処此処に見られる凄まじい無縁社会・安楽死・人間の尊厳軽視・ハラスメント・想像力欠如と思考停止な格差社会への辛辣な風刺のところが実はキモだったのか(しかし1973年だからまだ今よりも道徳律的にはショッキングだったのだろう、21世紀は随分尊厳が希薄になっていて恐ろしい)、と改めてよくわかった。それにしてもなんでこんな懐かしい昭和48年頃(稲垣吾郎さんとかが生まれた頃でしょ?)の映画が、いまどき放送されているのだろうか?と疑問に思ったが、今回(またもやケーブルテレビの3月中の割引サービス券を利用して)博多の映画館で公開中の「クラウド アトラス」をたまたま見て、これも納得した。すなわち(家具の女性も含めて)「典拠」ってことで、いまどきの話題になってたわけか。
この映画の方は、細かいところはともかく、話は6つのどれも要領が似ているので、全然難しいとは思わなかった。話がつながっていくらしいところも、すぐわかった。ただ、6つの話といっても、合わせた一本が6倍濃くなるかどうか?「イントレランス」より飛び過ぎる感じもするし、それぞれ1/6の分ずつでむしろ薄くなっちゃう感じもしなくもなく、仮装オンパレードは作ってる人が遊んでる感じはするが、その「映画に流れている考え方」に共感できるかどうか?という問題もあり、そのへんが評価の分かれる理由のようにも思う。ファンタジーなのだろうが、各時代の「悪」の方の造型の仕方がどうも単純で浅く子供っぽい感じがするためだろうか。特にトム・ハンクスがメインの一番後のやつとか、新しい時代の方の3つが漫画チックだと思った。2341年分のラストも自分にはあまりカタルシスにならなかったかも。実際、普通日本だったら(244 ENDLI-xの「Kurikaesu 春」のPVみたいな)アニメで作っちゃいそうな話を、西洋の人が手仕事実写でやってみました、みたいな感じというのか。全体としてはSFなのだろう。自分は基本、ホラーでグロテスクな造形は嫌いだし(画面を見ない)、2341年や2144年や2012年の話みたいな映画だったら、わざわざ映画館に行かないし、テレビ放映でもほとんど見ない。自分が映画で見るなら1936年のクラシックタイプか、1973年のサスペンスか1848年の歴史劇的なあたりなので、これらがザッピングされると日頃見ないものが視界に乱入してくるような居心地悪さは残る。(SF好きな観客の賛同は得られなさそうだが)原作未読でSFでなくてもいい自分の感じとしては、原作無視して正直1936年の話だけで激しく地味な2時間位の芸術的映画を作ってくれても構わなかった(←制作者の趣旨と違うだろ・笑)。Ben Whishaw先生のちょっと悪そうな独特の空気感は、Julien Baumgartner先生的に「おお!来た!」って感じで突出してたもんな。ちなみにJames D'Arcyさんは「ヒッチコック」にも出るそうで、アンソニー・パーキンス役と聞き「それ、あり!」でうなずける(こういう顔と声のタイプの人って、英米人にいますなあ)。※なお、ヒュー・グラントはやっぱりヒュー・グラントであったw
…ま、そういう冒険的な作だった、ということだろう。最近「スカイフォール」「裏切りのサーカス」といい、これといい、もう制作者の年齢も自分位なので「子供の時からあの映画見てたな、この人」と推測されるようなネタがあちこちでわかってツッコめる(すなわち音楽の場合でもしているような楽しみ方ができる)のが、20代の時にはできなかったが最近可能にになってきた(というより、ついやってしまう)映画の観方でもある。あと心残りなのは、問題の「六重奏」そのものが(たぶん視覚は瞬時に入れ替わり可能でも、聴覚は時間の流れだからあまり速く切り替わりすぎると残りにくいのだろう)、台詞が説明ぽく絶賛するわりには、思ったよりも音そのものとして見ている側の耳にあまり残っていなかったことで、YouTubeあたりで音だけ再確認してみたい。(20130325)