風は東楡の木通りから

クリスチャンフルート吹きパスピエの愛する音楽、猫たち、薔薇の毎日

霧笛荘夜話

2010-03-03 22:04:40 | 
先日、TVの「なんでも鑑定団」を見ていたらある画家の半生を紹介していてそのバックに流れていた音楽に心ひかれた。

この曲聞いたことあるな。

そうそう、浅田次郎氏の小説「霧笛荘夜話」をイメージしたアルバム「霧笛荘夜話」の霧笛荘のテーマだった。

いつか図書館でCDを探しているとき素敵なイラストに魅かれて借りたんだけど、それがイメージアルバム霧笛荘夜話だったのだ。曲の解説からこの曲が浅田次郎氏の同名の小説があると知り、本も借りて読んだのだった。

イラストは水口理恵子。白いつば広の帽子にレースのワンピースをきた貴婦人のような女性のイラスト。バックの色と人物が何とも言えない雰囲気を醸し出している。作曲は加羽沢美濃ら3人の若手ミュージシャン、バイオリンは高嶋ちさ子。

小説は行き場を失って霧笛荘にたどり着いた人々のそれぞれの生きざま。それぞれの部屋に住む住人達、7編からなる短編小説である。

霧笛荘の管理人の老婆が訪ねてきた人にかつて霧笛荘に住んでいた人々の話をし始める。


音楽も小説のそれぞれのタイトルからなる。

港の見える部屋
鏡のある部屋
朝日のあたる部屋
瑠璃色の部屋
花の咲く部屋
マドロスの部屋
ぬくもりの部屋

なんだか物悲しい、せつなくなるような話。私的には眉子の話(鏡のある部屋)が好き。興味のある人は読んでみて。

小説も美しさと悲しさが心に残る。霧笛荘の住人一人ひとりが一生懸命生きている。

美しい加羽沢美濃の曲。この曲ですっかり加羽沢美濃さんのファンになってしまった。


曲をBGMに小説を再び読んでみよう。

「ぼくはうみがみたくなりました」の映画化を応援しよう!

2006-04-28 18:24:14 | 
「ぼくはうみがみたくなりました」(山下久仁明著、ぶどう社発行)という本がある。

この本は自閉症の青年が主人公の小説だ。この本の著者山下さんは実際に自閉症のお子さんの親御さんでもある。町田おやじの会のメンバーとともに障碍児の放課後活動の場「フリースペースつくしんぼ」を立ち上げた、その代表である。また、日本シナリオ作家協会会員でもある。

話の内容はこうだ。
看護学校の学生あすみはある日知り合った青年を「海を見に行きませんか」と誘った。しかし、同乗した彼は名前も言わない、一言もしゃべらない。こんなことなら1人でくればよかったと思っているところへ老夫婦と知り合いになり、4人の旅が始まった。その中で青年が自閉症であり、その自閉症というものがすこしずつわかってくるのであった。

読んでみたい人はこちらで立ち読みできます。

さて、本の感想など。
一挙に読んでしまった。それだけ引き込まれる作品だ。誤解されがちな自閉症を自閉症の当人がどんな状態にあるのか、また親、兄弟、教育者、第3者の視点でわかりやすくまた、細やかに描かれている。また小説としても展開の面白さがある。時に泣かされ、笑わせられ、この後どうなるのだろうとどきどきさせられる。最後は感動ともにさわやかな風まで吹いてくるような上質な小説である。自閉症を知らない人が読んでも楽しめる内容だ。

この本を読んだ人たちが映画化を望むのもうなずける。山下さん自身も映画化ができたらという思いがあったようだが、このほど、ついに映画の自主制作の方向で動いている。しかし、この話が動き始めるまでにあまりにも悲しい出来事があった。(ご自身のblog「自閉症の小説!?」にこの経緯がしるされている。)

そして自主制作のため資金を集めることからはじめている。もし、興味のある方、カンパをしてもいいという方はこちらをご覧ください。

「ぼくはうみがみたくなりました」製作準備実行委員会&応援サイト

誤解されがちな自閉症の世界をもっと世の中に知ってほしい。差別や偏見は無知から来るものだと私は思う。どうかこの小説が映画化されてもっとお互いを理解し尊重するような社会づくりに用いられていくようにと祈るばかりだ。

人生の刺繍という話

2006-03-11 23:49:14 | 
私の好きな本に「高価で尊いー障害とともに生かされる」(ヘルガ・タイス著、いのちのことば社)という本がある。

この本の著者であるヘルガ・タイスさんは、宣教師として日本にこられ、岐阜県一宮市に希望センターというミニ福祉施設を開設された。そして心に悩みを持つ方、障害のゆえに家に閉じこもりがちな方々への援助や病院施設訪問のなかでの様々な出会いからこの本が生まれたそうだ。

この本に出てくる人たちは、生まれつき、病気または事故による重度の身体障害者である。脳性まひ、筋ジストロフィー、肢体不自由にある人々が、キリストの愛を知って、そのままの自分でいいのだと障害を受け入れ、希望を見出していく姿が書かれている本だ。またそれぞれの状況に当てはまるような聖書の言葉もたくさん紹介されている。

私はこの本の中で「人生の刺繍」という話が特に好きである。
少し紹介しよう。こんな話だよ。

どんなきれいな刺繍も裏を見ると模様がわからない。この色がどうして、ここに引っ張ってあるのか、あの色の意図が何のためにそこにあるのかわからない。そのいろいろな糸が無意味に見えてくる。

しかし、それは表から見るといっぺんにわかる。その糸がきれいな模様を作るために必要だったと驚く。

私たちの人生も同じ。ただ、いまは裏からしか見えないだけ。

どうしてこの出来事があったのか、
なぜつらい思いをしなければならなかったのか、
何のためにあの苦しみ、病気や障害が与えられたのか、
多くの場合、今はわからない。

今は裏しかみえないため、なぜという疑問に答えられないことがたくさんある。
しかし、天の御国へ行ったとき、初めて人生の刺繍を表から見るようになり、そのときは、神様のすばらしいご計画や目的を知りただ驚きと喜びのみとなる。

ヘルガ・タイスさんは生まれつき左手がない。思春期に入って劣等感に悩んだり、「負けるものか」と自分の周りに壁を作っていた時期もあったということだ。ちょうどそんな時この話を聞き、これが本当なら自分も積極的に将来を期待して生きていこう、反抗するのをやめて、神様と協力して素敵な一生の刺繍を、他の人の人生にない模様を作ってもらおうと決心したそうである。

彼女はこうも言っているのだ。

「神様は時々私の人生の刺繍を表からチラッとのぞかせてくださる。もし自分に障害がなかったらこの本に出てくる素敵な方々との出会いもなかっただろうと思うと若いころ受け入れがたかったことのために心から感謝するのみ」であると・・・。

そして最後に紹介されている聖書の言葉はこのことにぴったりとあてはまる。

「神のなさることは、すべて時にかなって美しい。神はまた、人の心に永遠への思いを与えられた。しかし、人は、神が行われるみわざを初めから終わりまで見きわめることができない。」(旧約聖書 伝道の書3章11節)