就労がうまくいかない長男を気にかけてくださったアメリカの恩師から障害者就労に関しての講演会があると聞いて早速行ってみた。
主催は「中瀬ひがした親の会」。講師は医療法人弘徳会愛光病院・顧問であり、臨床児童精神医学研究所・所長の山晃資氏。
テーマは「就労へ向けて、今どんな力を育てたらよいか~年齢や発達障害の特性に応じて~」
講演会は中瀬ひがした親の会の経緯、NHKの番組でも紹介された「中瀬学級」の様子、番組の一部を見たりして始まった。
私はこの番組を見ていなかったが、中瀬学級の取り組みは素晴らしい。子どもの特性に応じてルールを教えるところ、家と学校と中瀬学級の連携で連絡ノートがうまく活用されていること、子ども達はよけいな叱責を受けず、困っている部分をどうしたらいいか1つ1つ具体的に教えてもらえるので安心して勉強できるし、自尊心を保つができるからだ。中瀬学級で長年、子供たちを指導してきた月森久江さんのお話もあった。
さて講演会のお話。
山崎先生は最近、大学の講義などで学生達に発達障害のある学生がふえはじめているのではないかと感じているという。
そのような学生の学生生活の中での支援の必要、また発達障碍児が大人になってから20~40歳ごろに被害的、攻撃的になる事例、就労に関する課題・相談、職場で問題になりやすいことなど必要な事柄でいっぱいの講演だった。
特に20歳~40歳にかけての事例は攻撃的ではないにしろ長男にもあてはまるところが多い。
そして、
「就労支援が必要なケースの特徴」
1・対人関係の歪み、未形成(強い被害的意識による拒否的・攻撃的言動の多発、自分本位と受け取られやすい態度、過緊張、周囲からの孤立)
2・極端に低い自己評価、ゆがんだ自己理解
3・昼夜逆転による生活リズムの乱れ
4・基本的動作の未収得(社会に出たときにどういう態度をとらなくてはならないか)
5・就労意欲の希薄、就労イメージの未形成
「職場で問題になりやすいこと」
1.作業指示を取り違える
2.正確に適切に仕事ができない。
3.一方的に誤解して被害的に受け取ってしまう。
4.不安やストレスをうまく表現できず、体調不良となる
5.ミスの報告や困ったときの支援依頼ができない
6.しつこく確認したり、紋切型の言い方で不快感をあたえてしまう
最近の雇用側の状況を見ていると(これは長男の障碍者雇用の経緯を通してだけの感想だけど)、単なる労働力としてで、障害者の特性を生かそうとしているとはとても思えない、だから障害をオープンにして就職するよりクローズしていたほうが就労しやすいのではないか?うまくいくのではないか?少し、そんな考えが頭をよぎったのだけど、これを見る限り、長男は就労支援が必要だと再認識。
過緊張で食事ができないときもあるし…生活リズムは乱れている…一般常識がいまだにわからないときがある、それに就労のイメージがないのも同じ。1つ1つ教えていくしかない。もしクローズで就労できたとしても上記のように職場で問題になることがあるかもしれない。
また、「資料には自閉症スペクトラムの人々の生活の困難さ」が挙げられていた。
1.状況判断ができにくいために臨機応変な対応が困難
2.コミュニケーションにかかわる困難性がある
3.対人状況および集団状況への適応困難
4.言語・知的レベルに比べて作業実行能力が低く、手先が不器用
5.独特な言動のためにいじめられたり、からかわれたりすることが多くなる
6.困ったときに他社に助けを求めることができない
7.他者の話の意味が分からず、自分もうまく話せない(話すタイミングや伝え方がわからない)
8.結果として周囲から孤立し、被害的意識が強まってくる
そして、こういった社会的困難さを持つ人々への就労支援はソーシャル・スキル・コミュニケーション技能訓練が最優先されるべきであるということだった。資料はklin&volkmar(2000)から
1.会話における習慣的なルールを知ること
2.社会的手がかりを正しく(読み取る)こと
3.会話における自己モニターをすること
また、コミュニケーション技能訓練で身に着けさせるべきポイントとして
1.話題の扱い方(相手が切り出した話題を発展させ、話題を切り替える、適切に話題を終わらせる等)
2.社会的相互作用における柔軟性(言語的・非言語的手段によるやり取り、交渉、説得・議論・不賛成などの表現の仕方を知る)
3.非言語的な社会的手がかりへの気づき(注視、仕草、声、姿勢に注意し、その意味を理解する)
4.ある状況で社会的に期待されることを正しく認識する(その状況にふさわしい行動をとる)
5.心理状態を表す言葉を正しく操作する(相手について柔軟に考えたり、臨機応変に話す)
以上が資料にあげられていた。(これは難しい~。)
また、山崎氏は安易な診断を下す臨床家に対しても臨床に対する畏れがない、乳幼児期の発達歴を軽視している、場面を変えた行動観察を繰り返さない、保育園/幼稚園/学校からの情報を得ようとしない、操作的診断基準・DSMー4,ISD-10などに頼りすぎている、保護者の気持ちをくみ取らない、など警鐘をならした。
そして、就労支援から見えるものとして、
1.就労支援は、就職(活動)という社会との接点に立たされた時に初めて問題にされるが、学校教育の段階から継続的におこなわれているべきである。
2.周囲の人々が障害特性をよく理解し、ごく普通の何気ない話し言葉の中に彼もしくは彼女を傷つけるものが潜んでいることを知るべきである。
本当に身につまされる言葉だ。長男は幸運にもアメリカの現地校で、帰国してからのフリースクールで中瀬学級のような色々な教育支援をうけることができたが、いざ就職となった時そこにはもう「わく」がないのでどうしたらいいかわからなくなってしまっていた。
初めは見守っていたが就労のイメージがないのでいつまでも就職活動をしない。「求人票を見て、説明会に行くのよ、面接を受けて云々」、必要と思われる事柄を教えてきたつもりだったがそれでも就労はうまくいかなかった。そこで彼は障碍者就労支援を受けて仕事を紹介してもらってトライしているところなのだ。
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)はしていたが、彼の得意とする好きな分野を生かすことばかり考えて、就労・自立というゴールに向けての準備が怠っていたのではないかと少し反省している。だから学校教育の段階から継続的に行われるべきということは本当にその通りだと思う。それも学校教育の早い段階で。
そして、周囲の人が障害の特性をよく理解していることは何より当人にとって支えになる。アメリカでも、日本でも周囲の方々には親子ともども支えていただいた。障碍者就労を考えている企業の方々にも「障害の特性」を理解してほしい、早急に「できる・できない」の判断をくださないでほしい、彼らの抱える困難さをわかってほしいと切に思う。彼らを理解しなければ仕事のマッチングもできないからだ。
これはおまけの話。
この講演会の主催者である「中瀬ひがした親の会」の代表者の方は、なんと、8年前長男がお世話になった成育医療センター、また白百合学園大学でのSSTクラスで一緒だったY君のお母様だったのだ!
8年もたって再会できたなんて!うれしかった~!
本当にあらゆる意味で行ってよかったと思えた講演会だった。
主催は「中瀬ひがした親の会」。講師は医療法人弘徳会愛光病院・顧問であり、臨床児童精神医学研究所・所長の山晃資氏。
テーマは「就労へ向けて、今どんな力を育てたらよいか~年齢や発達障害の特性に応じて~」
講演会は中瀬ひがした親の会の経緯、NHKの番組でも紹介された「中瀬学級」の様子、番組の一部を見たりして始まった。
私はこの番組を見ていなかったが、中瀬学級の取り組みは素晴らしい。子どもの特性に応じてルールを教えるところ、家と学校と中瀬学級の連携で連絡ノートがうまく活用されていること、子ども達はよけいな叱責を受けず、困っている部分をどうしたらいいか1つ1つ具体的に教えてもらえるので安心して勉強できるし、自尊心を保つができるからだ。中瀬学級で長年、子供たちを指導してきた月森久江さんのお話もあった。
さて講演会のお話。
山崎先生は最近、大学の講義などで学生達に発達障害のある学生がふえはじめているのではないかと感じているという。
そのような学生の学生生活の中での支援の必要、また発達障碍児が大人になってから20~40歳ごろに被害的、攻撃的になる事例、就労に関する課題・相談、職場で問題になりやすいことなど必要な事柄でいっぱいの講演だった。
特に20歳~40歳にかけての事例は攻撃的ではないにしろ長男にもあてはまるところが多い。
そして、
「就労支援が必要なケースの特徴」
1・対人関係の歪み、未形成(強い被害的意識による拒否的・攻撃的言動の多発、自分本位と受け取られやすい態度、過緊張、周囲からの孤立)
2・極端に低い自己評価、ゆがんだ自己理解
3・昼夜逆転による生活リズムの乱れ
4・基本的動作の未収得(社会に出たときにどういう態度をとらなくてはならないか)
5・就労意欲の希薄、就労イメージの未形成
「職場で問題になりやすいこと」
1.作業指示を取り違える
2.正確に適切に仕事ができない。
3.一方的に誤解して被害的に受け取ってしまう。
4.不安やストレスをうまく表現できず、体調不良となる
5.ミスの報告や困ったときの支援依頼ができない
6.しつこく確認したり、紋切型の言い方で不快感をあたえてしまう
最近の雇用側の状況を見ていると(これは長男の障碍者雇用の経緯を通してだけの感想だけど)、単なる労働力としてで、障害者の特性を生かそうとしているとはとても思えない、だから障害をオープンにして就職するよりクローズしていたほうが就労しやすいのではないか?うまくいくのではないか?少し、そんな考えが頭をよぎったのだけど、これを見る限り、長男は就労支援が必要だと再認識。
過緊張で食事ができないときもあるし…生活リズムは乱れている…一般常識がいまだにわからないときがある、それに就労のイメージがないのも同じ。1つ1つ教えていくしかない。もしクローズで就労できたとしても上記のように職場で問題になることがあるかもしれない。
また、「資料には自閉症スペクトラムの人々の生活の困難さ」が挙げられていた。
1.状況判断ができにくいために臨機応変な対応が困難
2.コミュニケーションにかかわる困難性がある
3.対人状況および集団状況への適応困難
4.言語・知的レベルに比べて作業実行能力が低く、手先が不器用
5.独特な言動のためにいじめられたり、からかわれたりすることが多くなる
6.困ったときに他社に助けを求めることができない
7.他者の話の意味が分からず、自分もうまく話せない(話すタイミングや伝え方がわからない)
8.結果として周囲から孤立し、被害的意識が強まってくる
そして、こういった社会的困難さを持つ人々への就労支援はソーシャル・スキル・コミュニケーション技能訓練が最優先されるべきであるということだった。資料はklin&volkmar(2000)から
1.会話における習慣的なルールを知ること
2.社会的手がかりを正しく(読み取る)こと
3.会話における自己モニターをすること
また、コミュニケーション技能訓練で身に着けさせるべきポイントとして
1.話題の扱い方(相手が切り出した話題を発展させ、話題を切り替える、適切に話題を終わらせる等)
2.社会的相互作用における柔軟性(言語的・非言語的手段によるやり取り、交渉、説得・議論・不賛成などの表現の仕方を知る)
3.非言語的な社会的手がかりへの気づき(注視、仕草、声、姿勢に注意し、その意味を理解する)
4.ある状況で社会的に期待されることを正しく認識する(その状況にふさわしい行動をとる)
5.心理状態を表す言葉を正しく操作する(相手について柔軟に考えたり、臨機応変に話す)
以上が資料にあげられていた。(これは難しい~。)
また、山崎氏は安易な診断を下す臨床家に対しても臨床に対する畏れがない、乳幼児期の発達歴を軽視している、場面を変えた行動観察を繰り返さない、保育園/幼稚園/学校からの情報を得ようとしない、操作的診断基準・DSMー4,ISD-10などに頼りすぎている、保護者の気持ちをくみ取らない、など警鐘をならした。
そして、就労支援から見えるものとして、
1.就労支援は、就職(活動)という社会との接点に立たされた時に初めて問題にされるが、学校教育の段階から継続的におこなわれているべきである。
2.周囲の人々が障害特性をよく理解し、ごく普通の何気ない話し言葉の中に彼もしくは彼女を傷つけるものが潜んでいることを知るべきである。
本当に身につまされる言葉だ。長男は幸運にもアメリカの現地校で、帰国してからのフリースクールで中瀬学級のような色々な教育支援をうけることができたが、いざ就職となった時そこにはもう「わく」がないのでどうしたらいいかわからなくなってしまっていた。
初めは見守っていたが就労のイメージがないのでいつまでも就職活動をしない。「求人票を見て、説明会に行くのよ、面接を受けて云々」、必要と思われる事柄を教えてきたつもりだったがそれでも就労はうまくいかなかった。そこで彼は障碍者就労支援を受けて仕事を紹介してもらってトライしているところなのだ。
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)はしていたが、彼の得意とする好きな分野を生かすことばかり考えて、就労・自立というゴールに向けての準備が怠っていたのではないかと少し反省している。だから学校教育の段階から継続的に行われるべきということは本当にその通りだと思う。それも学校教育の早い段階で。
そして、周囲の人が障害の特性をよく理解していることは何より当人にとって支えになる。アメリカでも、日本でも周囲の方々には親子ともども支えていただいた。障碍者就労を考えている企業の方々にも「障害の特性」を理解してほしい、早急に「できる・できない」の判断をくださないでほしい、彼らの抱える困難さをわかってほしいと切に思う。彼らを理解しなければ仕事のマッチングもできないからだ。
これはおまけの話。
この講演会の主催者である「中瀬ひがした親の会」の代表者の方は、なんと、8年前長男がお世話になった成育医療センター、また白百合学園大学でのSSTクラスで一緒だったY君のお母様だったのだ!
8年もたって再会できたなんて!うれしかった~!
本当にあらゆる意味で行ってよかったと思えた講演会だった。