いよいよ最終回です。
あと一息お付き合いくださいませ。
略語
FE フランス初版
GE ドイツ初版
A 自筆譜ファクシミリ
m. 小節
【校訂報告 ✐౽】
m.148,150(譜例13) GEは、これらの小節の始まりのE♭がナチュラルになっている。FEは、m.148と150がE♭で、149と151がEになっている。この版では、148と150に対応する144と146がE♭の為ここもE♭とし、149と151に対応する145と147がE1である為、ここをEとした方が適切ではないかと思われ、そのようにした。
譜例はm.148。
曲の流れの中で対応する小節を見てみます。Es音は青文字、E音は赤文字です。
GEは148&150がE音。 FEは148&150がEs音。パデレフスキー版はFE と同じ。
短調と長調のコントラストが美しい部分です。
これを経て誇らしげなあのテーマが戻ってきます。形式上のコントラストもある部分です。
自筆譜ファクシミリもm.148はEs音です。その他もFEと全く同じです。上の楽譜はエキエルですが自筆譜と同じです。FE、パデレフスキー版とも同じです。
m.148がE音のミクリはm.150ではEs音になっています。
ミクリ版を使われるときには、ここは修正が必要になると思います。
【校訂報告 ✐౽】
GEには、左手の4番目の和音のC1がない。
ここは華麗なコーダに入る直前の小節です。
自筆譜ファクシミリは次のようになっています。最後から3つ目の左手の部分です。
C音はどこにもありません。加線が鮮明に見えています。
エキエルもC音はありません。パデレフスキー版にはC音が入っているので、使う時には注意した方が良さそうです。
m.143からのホロヴィッツのバスラインの繊細な表現。84歳の時の演奏です。
以上です。
今回は校訂報告全てを載せてはおりません。
演奏上、気になるところを抜き出してみました。
また、校訂報告の翻訳は私自身のものです。
言い回しがわかりにくいところがありましたら申し訳ございません。
昔はなかったエキエル版が登場したことで、曲の印象が部分的に変わったり、弾きやすくなったりしているかもしれません。
版の比較をしてみて、エキエル版が必ずしも自筆譜通りに再現していないことがわかりました。
今は自筆譜のファクシミリ(自筆譜を写真で撮ったもの)が以前より入手しやすくなったので、疑問に思ったら確かめてみると確信が持てます。
自筆譜と違う時に、それによってどう音楽に違いが生まれるかも考えると楽しいものです。
おしまい ✐౽