おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

きっとノンレガート

2019年07月28日 | 重力奏法
大人の生徒さん。しかも子供の頃からピアノを弾いている生徒さん。ピアノ歴40年以上で趣味としてもかなり本格的に弾ける生徒さん方。

その方たちのレッスンでは、重さを使う弾き方をこれまでレッスンの度に曲の中でお話し、試して頂いておりました。

しかし、レッスンの多くの時間を割いてなんとか望みの音が出せても翌週には元に戻ったり、新しい曲になると全く活かせなかったりします。

その時々で弾き方を教えてもらわないと出来ないのです。

ご自分が出している音が思ったものと違うことは分かっています。
どんな音楽にしたいか頭の中に描けていてもそれを表現する方法が分からないのです。

深い音、歌う音、この2つを持てるだけでも随分違います。
その他のことも細々ありますがこの2つがないとそれらも成立しないように思います。

結局、全てはノンレガートから始まると重力奏法でレッスンを始めて1年半経ち、色々な年代の生徒さんを見てつくづく思います。

大人の生徒さんにこちらの楽譜をお薦めし始めました。


以前、はじめの一歩を買われた大人の生徒さんがいらっしゃるのですが、何度かレッスンでそれをした方が良い話をしたものの一度もレッスンに持ってこられたことはありません。
毎回レッスンで重さを掛ける必要性を実感されていらっしゃるようなのですが··

子供向けのものと思われて抵抗があるのかもしれません。
ピアノテクニックの基本(Fundamentals of Piano Technique)というタイトルの楽譜。
自分用に買ったものですがもしかしたら生徒さんにも使えるかもしれないと思っているところです。

ただ、正しい奏法で弾かないと恐らく手を痛めるので、必ずレッスンで一緒にやってからご自宅で練習して頂かなければとは思います。


画像をクリックしていただくとamazonのサイトをご覧いただけます。
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The Festival Collection Book4

2019年07月25日 | 楽譜の話題
おススメの楽譜です。

こちらのシリーズはBook 1~8まであり、便利なことにバロックから現代までの作品が1冊に収められています。

私は今回、Book 4、6、8を購入しました。
Book4は中級程度です。

バロックの作品が気に入りました。
クープラン、テレマン、ラモー、パッヘルベル、クレープス、ツィポーリ、グラウプナーの作品が載っています。

他に、
▪C.P.E.Bach / La Caroline
▪Mozart / Menuet k.5 F major
▪Weber / Allemande in E flat
▪Gurlitt / Little Flower op.205
▪Nina Perry / Elephant Tune
▪Razorenov / Two Roosters
▪Timothy Brown / Daydreaming
▪Paul Creston / Rustic Dance op.24-1
▪Christopher Norton / Oriental Flower

等、日本の楽譜ではあまりお目にかかれない作品が載っています。

デイドリーミングやオリエンタル・フラワーは大人の生徒さんにも良いと思います。
from The festival collection book4

現代の作品から3曲録音してみました。 

こちらで購入できます。
sheetmusicplus
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どの奏法で教えても

2019年07月23日 | 重力奏法
重力奏法でレッスンを始めた生徒さん。
音のニュアンスを要求することが可能なので、正直なところその奏法で始めなかった生徒さんとレッスンの中身が異なります。

音が良くならなければ結局は表現に至りません。
そこを我慢強くありたいと努めてきましたが、それを望まない生徒さんには苦痛しか与えないのが現実です。

受け入れられる時を静かに待つしかないかとこのところ思います。
本人が必要性を実感する時を待つ。

さて、重力奏法でレッスンを始めた生徒さんで順調に進んでいたかと思われたある生徒さん。
ピアノを始めたのが小学2年生。
小さな生徒さんではなかったので不思議な音の国上巻は5カ月で修了しました。

それが下巻に入りレガートになった時に進みが遅くなりました。
同じ時期に年長から始めた生徒さんにも追い越されてしまいました。

元々手首が固いタイプです。
柔らかい動きが出来ないので、そこを指摘されると本人も自己否定されている気がして辛くなります。

名門といわれている私立の学校に通っていて宿題も多いそうです。
直したくてもその時間が取れない。
私にもお母様にも手首の事を指摘されどんどん辛くなる。
お母様が、あまり言うと本人が可哀想で言えないと。
私もそれを聞きやはり言いにくくなりました。

音の出し方そのものが重さを載せるのではなく、指を伸ばしたまま手首を前に突き出して鳴らす出し方に変わってしまいました。
力まず自分が弾きやすいやり方がそれだったのだと思います。
手首は使っているという感覚だったのだと思います。

それは違うと言うと泣き出す。
困りました。

その弾き方ではレガートはできるはずもなく、これまでの生徒さんと変わらない弾き方になっていました。

なんということ··

そこで子供に使うつもりはなかったこちらの楽譜の初めのところにあるページをしてもらうことにしました。



はじめの一歩にも似たようなものはあります。
しかしそれを使わずあえてこの外版にしました。しかも注意することが英語ではありますが書かれています。

ノンレガートで重さを載せ手首を上下させることが不思議な音の国だけでされている特殊な事ではないこと。
海外でもされている弾き方であることを知って自信を持って習得してほしいと思ったからです。

このエクササイズを始めて3週間。
弾き方が元に戻っていました。(良くなっていたということです)

どの奏法で教えようとその時々で生徒さんが抱える問題は発生します。
興味を持ち続けてもらいながら正しい奏法を習得してもらう工夫はいつも私たちの課題です。

本人が望むものが必ずしも正しくはない場合、どうやって気付いてもらうか、どこまでこちらも妥協するか、いつまで待つか、保護者の方のご協力は得られるのか。

永遠に考え続けていくのだと思います。
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これは見るべし!

2019年07月22日 | 重力奏法
マルチェンコ先生のクロアチアでのマスタークラス。
ロシア語は相変わらずさっぱり分かりませんが、身体の使い方、重心がどんなに大事かは見ても少しは分かります。

44分辺りからのマルチェンコ先生の操縦士ぶりを是非ご覧ください。

07/02/2019 Mira Marchenko's Master-Classes: Ivan Baskakin, VI-th Summer School, Trogir, Croatia
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魅惑のガヴリーリン

2019年07月22日 | 楽譜の話題
以前ご紹介したガヴリーリンの連弾集。
生徒さんにエキゾチックな世界を体験してもらえる面白い楽譜です。

少し前に70代の生徒さんに「Little Clock」をおススメしてみましたが、音が不思議な感じで頑張ったけれど弾けないとボツになりました。

残念··

それから1カ月程後、高校3年生と20代の男子2人にたまたま時間が5分位余ったので初見でセカンドを弾いてもらいました。

2人共、上級です。
一人は受験生、一人は社会人でピアノの練習時間はあまりとれない生活を送っています。
レッスンを続けてくれているだけでエライ!

2人共この曲が気に入ったようでした。(別の教室の生徒さんなので一緒にしたのではありません)
私は曲調が偏らないように選曲を心掛けてはいますが、この雰囲気の曲は初めてでした。

泣きながら笑っているような悲しみがガヴリーリンにはあります。

少し大きめの年齢の生徒さんとの連弾にいかがでしょう。


Valery Gavrilin The Little Clock from Zarisovki for Piano Duet


Riga Piano Duo: Valery Gavrilin - Waltz


Валерий Гаврилин ."Дом у дороги"Вальс.


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気になること

2019年07月19日 | 重力奏法
急に思い出したので一言。

手首のかたい生徒さんにそれを改善するためにロシアンメソッド(重力奏法)でちょっとやってみる。
イリーナ先生の「不思議な音の国」を副教材として所々弾かせる。

これは通用しません。

これまでと変わらないという結果に終わります。

このメソッドで教えようと思ったら徹底して行うことが必要です。
ナチュラルな手でなければさらに時間と根気が必要です。
保護者の方にもご協力頂かなくてはなりません。

イリーナ先生の教本は、書かれている音と鍵盤の場所を一致させていくだけのものではありません。
どんな音質でどんな音楽を表現するかを習い始めから生徒さんに伝えていくものです。
そこには必要な音楽基礎知識もしっかり盛り込まれ、しかも小さな子供が理解しやすいよう工夫されています。

現在、残念ながらこのメソッドで使える曲集が日本にはないと言ってよい現状です。
「はじめの一歩」はその数少ない楽譜です。
しかし、第1巻をわざわざ「不思議」と併用する必要はないかと思います。
(よっぽど癖が強く、イリーナ先生の教本を繰り返し復習するだけでは足りない場合は別です)

普通の生徒さんと保護者の方は「不思議上巻」を修了するのに8~10カ月かかります。
向上心の強い生徒さんと保護者の方は4~5カ月で修了します。

普通の生徒さんを考えた場合、この期間をノンレガートで弾ける曲のレパートリーも付け加えて過ごさせたいと思うのです。
そこに苦慮せざるを得ないのが現状です。

重力奏法は重みを掛ける感覚がわからなければ始まりません。
その為にはノンレガートで徹底してそれを行わなければ出来ないというのが、私がこれまでの経験で得た結論です。

なので中途半端なレッスンはしてはいけないのです。
一音に3年かける。
このメソッドでレッスンを始めて1年半程経ちましたが、レガートに入ってもこの基礎を常に見直すことを実感しております。

石の上にも3年ですかね。
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うっ、これは· · ·

2019年07月18日 | 重力奏法
スコダのマスタークラスの動画がひょっこり出てきたので見てみました。

久し振りにこのような音を聞きました。
スコダではなく、レッスン生と伴奏者の方の音··

うるさかったので演奏はほぼ聞いておりませんが、レッスンの様子を見てこの奏法ではあまり改善されないだろうと思いました。

スコダは最初に音が大きすぎる、第2楽章を聞いた後に凄く良いわけではないと言っているようですが。
しかしこの奏法は恐らく多くの日本人がしている奏法でもあります。
Musikverein Vienna 1st June 2019 Piano Masterclass Paul Badura-Skoda

お口直しがほしいと思っておりましたら下の方にカントロフの動画が!
Alexandre Kantorow / Récital à la Fondation Louis Vuitton 2017

あ~、ピアノの音
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ある、ある!

2019年07月14日 | 不思議な音の国
イリーナ先生のこちらの動画、久し振りに見ました。

拝見していて、「ある、ある、こういう場面」と思いながら、以前は生徒さんの方に目がいっていましたが、今はイリーナ先生がどう対応しているかに目がいきます。

指が力む生徒さんは人の話の途中で勝手に弾き始めることが珍しくありません。
皆がそうということではありませんが、そのような傾向はあると感じております。

まず話を最後まで聴いてもらうことにこちらが神経をすり減らしてしまいます。

その内、手を振りほどいてガッと弾き始めると正直なところ無視された気がして傷つきます。

そんな時イリーナ先生はどうされているかご覧ください。

Phillip Lullaby Working on a musical composition with transferred student


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キリンの首は、な~が~い~ ♪

2019年07月13日 | グネーシンソルフェージュ
久し振りのグネーシンソルフェージュ。

その中で行われていたことを大人の方のレッスンでほんの少しお話してみました。

グネーシンの動画では1オクターブの音程でキリンの絵を見せて首が長いことを話している場面があります。
これだけ離れているのだということを知ってもらっています。

さて、レッスンで左手で1オクターブ掴みながらさらに1オクターブ跳躍する所でキリンの話をしてみました。

冒頭部にあります。

初めは、キリンの首は長いという歌で音程の感覚を覚えると話しました。
(実際の歌詞はわかりません。ロシア語なのでさっぱりわかりません。勝手にそういう歌詞にしています。)

この話だけでは「そうなんですか」で実際の演奏にうまく反映されません。
そこで、この絵登場。


「上から下までこんなに長いんですよ。横の木よりも高い。」

これだけで演奏が変わりました。
私も話しながらキリンの頭のてっぺんから爪先まで見ながら「レ ↘ レ ↗ レ」と頭の中で歌ってみましたら距離の長さを実感しました。
さらに3,5小節目との違い、8小節目のキリン2頭分の跳躍。

この1枚の絵からリアルな質量のようなものを感じ取ることができます。
グネーシンのソルフェージュで絵を使っているのは大事な意味があるのです。
Evgenia Oskolova's Music Theory open lesson № 1
24'48"辺りから1オクターブの音程
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ドゥバルク est au Japon !

2019年07月12日 | コンサート情報
只今、来日中のドゥバルク。

こんな写真が・・
Luca Debargue FB

銀座のヤマハでしょうか・・
歌曲を見てます?
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レナ・シェレシェフスカヤ マスタークラス

2019年07月10日 | 重力奏法
ドゥバルク、ジェニエ、カントロフ等の先生、レナ・シェレシェフスカヤのマスタークラスの動画が最近アップされました。

どんな感じでレッスンされているのかと思っておりましたが、モスクワ中央音楽学校で11年間(だったと思います)教えていただけあって、親しみを持って生徒さんに接していらっしゃるのがわかります。

明るい方です。
レッスンは細かいです。マイクを使っていないので言葉がとても聞き取りにくいのが残念です。まっ、聞こえたところでほとんどわかりはしないのですが・・
(イヤホンで聞いてみたらよく聞こえました。でも語学力が不足しすぎていて・・うっ)

音楽への情熱を感じます。

彼女を見ていて自分はこれだけの情熱を持って音楽に接しているだろうかと・・


Rena Shereshevskaya in a Masterclass: Nikolai Medtner (Mikhail Dubov)

レナ先生が弾かれるとハーモニーが輝きます。例えてお話されているジェスチャーもわかりやすいです。耳が鋭い!そして根気強い!妥協しない!
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アレクサンドル・カントロフ

2019年07月08日 | コンサート情報
チャイコフスキーコンクールですっかりファンになってしまったカントロフ。

あの多彩で色彩感あふれる音と深い情感、知性。
うっかり聴き始めると、ず~っと聴いてしまうのでマズイマズイ・・

コンクールの第2ラウンドで弾いたブラームスのソナタ第2番。
この曲は私には難解な曲でした。
しかし彼の演奏を聴いてなぜ難解なのか理解できた気がします。

人間、追いつめられると笑うしかないおどけて見せるしかない。そんな要素がこの曲にはあるのだなと。深刻さにばかり目がいくと正体不明に思うところがあるのですが、道化になるしかない哀しみに気付かせてくれました。

カントロフ、すごい・・

2014年にナントのラ・フォル・ジュルネに出演した時のアンコールでこのような曲を弾いています。

Alexandre Kantorow - La Folle Journée de Nantes 2014

姿勢の良さ。お手本にしたいです。
腰を落として鎖骨の下で弾いているのがわかります。
コンクールの演奏を見ても身体の使い方が上手い!
簡単に天才肌とか言わないでほしいです・・

10月の日本でのガラコンサートにカントロフが出演します。
速攻、チケット買いました
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結局はノンレガート

2019年07月04日 | 重力奏法
1年程の短期間に20人以上の子供たちにロシアンメソッドでレッスンをすることができたお陰で、奏法を習得しやすいタイプとそうではないタイプがあることに気付きました。

また、途中からでは習得しにくいこともわかりました。

私は楽器店で教えているだけですので、全員週1回レッスンで、ほとんどの生徒さんは30分レッスンです。
その限られた時間で正しく習得することは容易なことではありません。
まだ結論を出すのは早いかもしれませんが、次の生徒さんはこのメソッドで教えても上達が難しいと感じます。

▪指の力みが強い
▪一人でレッスンを受ける

手の使い方、音の出し方をしつこくやりますので、一人でレッスンを受けて一人でそれを練習で実践するのは子供には無理です。

指の力みは、週に1度のレッスン時に講師が直すだけでは直りません。
指の力みの原因はいくつかあります。

①鍵盤を押して弾こうとする
②第1関節の支えが弱い
③手首が下がっている

①に関しては、上から置く様に毎回注意して手を持っても直らない生徒がいるので、感覚として気付かない限りは直らないと思います。
②③は本人の意識が芽生えれば直せます。ただ、練習でいつも気を付けて見て下さる保護者の方が必要です。それをしてまで良い音で音楽を表現できるようになってほしいとお家の方が思っていらっしゃるかです。

ナチュラルな手でも注意が必要です。
いつの間にか違う弾き方に変わっている場合があります。

これは電子ピアノの影響があると感じます。
音を聴いて判断できないので、表情のある音とそうではない音の区別がつけられなくなるのです。いつの間にか鍵盤の奥の方に向かって突くように弾く生徒が現れました。
この弾き方は無愛想な音を作り出します。

ただ、このメソッドで始めなかった生徒はもっとひどい音で弾きますのでそれよりはまだ···

途中から奏法を直すには、重みをかける感覚がわからなければ無理です。
そのためには、ノンレガートでやるしか方法はないと思います。
最近読んだ「ロシア·ピアニズムの贈り物」にも、講習会で一音一音手首を使って弾かせていた話が書かれていました。

大人や中高生の生徒さんにもこの奏法を教えてみましたが、結局はノンレガートでそれを知らなければわからないという結論に達しました。
私自身もそうでした。

この奏法は音楽を表現するためのものです。
そうなってほしいのでこの奏法でレッスンをしているのですが、保護者の方がそこまで望んでいない場合もあるように思います。

私も図々しい年齢になったもので、それに合わせる必要はないと思っています。
ピアノの音ではない音でピアノを弾いてもそれは騒音や雑音です。
ただ、生徒さんの状態に合わせてどこまでやるかは考えて進めています。
弾き方でどこまでのことが可能かは分かりますので。

なんだか冷たい人間になった気分です。
きっと自分もそんな風にレッスンを受けていたのだと思います。
気付かなかっただけで···

ロシアンメソッドという名称ですが、ロシアンピアニズムと混同されやすいので、重力奏法という言い方に直します。
この奏法で美しく表情のある音で音楽を表現してほしいだけで、ロシアの伝統的ピアニズムを再現したいのではありませんので。
ロシアで勉強してもいない、ロシア人に習ったのでもない人間がそんなおこがましいことは出来ません

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ロシア·ピアニズムの贈り物から

2019年07月01日 | 書籍紹介
原田英代さんの「ロシアピアニズムの贈り物」、参考になることが沢山あります。
興味深く読ませて頂きました。

いくつか心に残ることがありましたのでご紹介したいと思います。

「ロシアに伝わるピアニズムとは」から
伝統を受け継ぐとはどういうことなのか?形だけを真似てみたところで伝統を受け継いだことにはならない。伝統が伝えられていくためには基本的な理念が十分理解されていかねばならばいし、それを発展させるだけの資質を持ったピアニストが養成されなければならない。

「オシップ·ガブリロヴィチ」から
タッチは鍵盤に加えられる重みの量と速度によって決定される。教師は生徒一人一人の聴覚に訴えかけて教えるべきであり、これこそ唯一の道である。つまり、教師がまずピアノで音色の効果のある演奏を示すべき。
指の力みによる演奏は乾いた硬い音を生むため、肩から腕、指先まで完全に力を抜いた状態で行う腕によるタッチを推奨する。

「ロシアピアニズムの多様性」から
ロシア人には知的な寡黙性がある。知的停滞の原因はロシアの未開状態にではなく、この文化の独特の性格に求めなければならない。この知的寡黙性こそが、高い精神性の芸術を生み出す源泉でもあったのだ。

「文学を読む必要」から
全てを体験することは不可能だ。それならばわかろうと努力することだ。

「一音一音に感情を宿らせる」から
ウラジーミル·ウラジーミロヴィチ(ソフロニツキー)、あなたの演奏は魂が込められており、霊感に満ち即興的な力にあふれているのですが、その秘密は一体何なのですか。
ソフロニツキーは答えた。私は一音一音を考えて弾いている。
この神秘的なピアニストはたんに直感に任せて弾く演奏家ではなく、音一つ一つと生を共にしていたのだ。
考えるとは、例えばその音程を感じること、その音程と自分が同化することを意味する。
メルジャーノフは一つ一つの音に人間の感情を宿らせていくことに精神を集中した。わずか一つの音でも感情を示唆できた。

「メルジャーノフの人生哲学」から
苦労が人間を豊かにする。失望は人間を熟させる。いかなるときも希望を失ってはならない。しかし、期待はするな。

「重力奏法」から
ロシアのピアニストは二千席からなる大ホールでも音を語ることが出来るのだ。生徒はまずこの奏法の訓練をさせられ、教授は指のみで弾く生徒にパパ、ママのために弾くならばそれでいいがねと言ったものだ。この重みを使った奏法をリストもアントン·ルビンシュテインも駆使していた。
重力奏法を一言で説明するならば、手首の弾力性を利用し、腕、肩、背中、ひいては身体全体の重みを使って弾く奏法と言える。それが身に付くまで忍耐強いアプローチが必要となる。
これはたんに楽をして弾くことや大きな音を出すことが目的として編み出されたのではなく、深い精神性を湛えた多様な音を生み出し、どれほど大きなホールにおいても音楽の内容を最後席まで伝えるためのものである。

胸の筋肉を使う。腰を落として鎖骨のすぐ下の部分を使う。さらに大きな音量が必要な時は腰から弾く。これは速いパッセージを強音で響かせたい時に特に役立つ。
どのように習得するのか。最初は一音一音手首の上下運動を使って音を出す練習をする。イリーナ·ザリツカヤ(ショパンコンクールでポリーニに次いで2位)も講習会でこの方法でゆっくりなテンポで一つ一つ重みをかけていく練習の仕方を生徒たちに忍耐強く教えていた。

「いかに重力奏法を習得したか」から
レッスン中、メルジャーノフは重みをかけろ、重みをかけろと言った。彼は重みをかけているのであるが、それと同じほど下半身からの支えがあった。全ての関節と筋肉が柔らかく下半身からの支えのおかげで、液体状のエネルギーがひっきりなしに楽器に流し込まれ音に還元されていた。

肘の柔軟性、手の使い方なども書かれています。
忘却の川やチャイコフスキーの四季についての話も是非読んで頂きたいです。

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