おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

ブラームスの言葉

2023年03月30日 | 書籍紹介

「ブラームスは語る」という本があります。

ホイベルガーという作曲家で音楽評論家であるブラームスの知人が、ブラームスとの会話をメモに書き留めていたのだそうです。

会話は出来るだけその日の内にメモするように努めたと。
会話をメモしていたことを知ったブラームスは真っ赤になって怒ったそうですが、何とかなだめ、怒りを鎮めてもらったとのこと。


これを読むと、ブラームスはけっこう毒舌家だったのかなと・・
芸術に対しては厳しい人だったことがわかります。

当時の音楽界やブラームスの作曲家評も少しわかります。

ベートーヴェンのことは、モーツァルトやハイドンに比べると形式では大胆と言えないとか、ベートーヴェンでモーツァルトやバッハより弱いのは、不協和音の使用法だ。モーツァルトのようなすごい不協和音がないんだ、とか。

現代ではブラームスはベートーヴェンの後を継ぐ人物のように言われているので、ベートーヴェンをこのように言っていたとは少々驚きました。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲、交響曲、室内楽についても言っています。

例えば、モーツァルトの協奏曲ハ短調こそ天才的ひらめきのある芸術の中の芸術。ベートーヴェンのハ短調だって、モーツァルトに比べればはるかに小物で弱々しい。斬新さゆえの刺激と内なる価値は区別されなくては、と。

ハイドンのことは、今の自分の年齢になって凄い量の作品を生み出している。この時期からさらに偉大なものへと発展している。ものすごい人物だ、と。


あと、皮肉ですが、「みんなわかっちゃいない。でも幸せなことじゃないか。だから僕らは食べていける。僕の音楽にしても、みんな本当に大切な所は理解されていない。」と言っていて、ムーティ氏が仰っていた言葉を思い出しました。

「ソプラノやテノールが高い音で長く伸ばすだけでブラボー。客はそれを聴きたいと思ってしまっている。」


昔も今も同じようなものなのかと思いました。


クララについてはほぼ書かれていなく、クララが亡くなった時にドイツに向かった時の話と、自分の新しい曲をクララに送って見てもらうと、彼女は手書きの楽譜を隅から隅までちゃんと目を通して、暗譜して何度でも情熱的に試し弾きしてくれると。
それから、お互い送った手紙を交換して自分たちで手紙は処分したと。


ブラームスは写真が結構残っています。どれも同じ感じで、あの髭のブラームス。

このような会話や写真、録音が残されていると後期ロマン派でもさほど遠くない気がしてしまいます。


この本は、3巻ある「ブラームス回想録集」の第2巻です。
第1,3巻は現在入手可能のようですが、この第2巻は絶版のようです。
私は図書館で借りることが出来たので読めました。2019年2月に第7刷発行とあるのですが、数が少なかったのでしょうか・・

音楽之友社のサイトです。
フリーワード「ブラームスは語る」を含む - 音楽之友社


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生徒さんと連弾

2023年03月29日 | レッスン

生徒さんと連弾をしました。

VandallのIntermezzoです。
この曲はいつ弾いても癒されます。

今回は一昨年の11月からピアノを始めた生徒さんと弾きました。
「不思議な音の国」下巻の最後の章に入るところです。発表会の練習で少しの間、本をお休みしていましたが、最近また再開しました。


この曲はこれまで、気分転換や初見で、少し進んだ生徒さんに弾いてもらっておりました。
今回初めて、進度に合わせて選曲をしました。

すると、生徒さんのパートが思ったより難しいのだと気付きました。
セカンドとズレたようになる所でわからなくなるとか、私の手が生徒さんの上に来るので、ある部分が鍵盤が見づらくなるらしく手の場所が分からなくなる、とかあるようです。これは鍵盤を見ずに弾くことが必要です。

また、2人で伴奏を作りだすので、スラーの弾き方の注意が必要だったり、テンポを受け継いでrit.していくとか、連弾の要素が結構しっかりとあります。



Festival Suite

By Robert D. Vandall. Piano Duet (1 Piano, 4 Hands) Sheet. One of Vandall's most favored duets. Small hand friendly. Three movements: "Getting Started&q...

 
こちらでサンプルページが閲覧できます。
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3日経っても思い出す

2023年03月23日 | コンサート情報

ムーティのオペラアカデミーの2日目を月曜日に聴講しました。

リハーサルの2日目を1日だけ聴講しただけですが、ムーティのリハの様子が色々と思い出されます。


振り返ると、おっしゃっていたことは基本的なこと。

しかし、そこが大切。


歌手にはレガートと発音のこと。

指揮者には、ここは4で振った方が良いとか、この動きはしない方が良いとか、指揮の動きはサークルになるように縦に振らないとか。

終始、皆に仰っていたことは、「どんな音がほしいのか、全て考えて出して」と言うこと。考えずに出した音には「私にも我慢の限界がある」と幾度となく仰っていました。


少し細かかったことと言えば、

歌手のEの発音の時に音程が下がっていると指摘されたり、
合唱のSop→Alt→Ten→Bassと同じ旋律が受け渡されるときに、Bassの入りが遅れているとおっしゃって、「もう1回」「もう1回お願いします」「もう1回やってみましょう」と5回位繰り返していたこと。

アリアでフルートとハープが一緒に演奏する所で、装飾音的な動きがあり、3人でピタリと揃えるのですが、指揮者にそこでそのまま振るのではなく細かく振り直した方が良いとアドヴァイスされ、実際に振ってみせたり、ハーピストの横に行って近くで振ってあげたりされていました。


きっと、受講している指揮者の方はもっと音楽の解釈を教えてほしいと思っていたかもしれません。しかし、その前に大事なことがあるなと思いました。

美は細部に宿ると、音楽家のどなたかがおっしゃっていましたが、こういう所を巨匠は決して疎かにしないのだと間近に拝見しました。



私自身、自分の演奏で細かな所が相当疎かになっているとこの3日間気になるようになり、ひどいもんだと思っている所です。

もっと参加できる日があると良かったのですが、生徒の発表会前でレッスンを休めないので、レッスンがない日しか行けませんでした。

しかし、1日だけでも行けて本当に良かったです。
来年も一般聴講があるかはわかりませんが、もしありましたら参加されることをお勧めします。

言葉は、同時通訳のトランシーバーを貸して頂けます。
(私は最初、ムーティの話す英語とイタリア語しか聞こえてこず、イヤホンを通した方が聞きやすかったですが、これじゃ通訳じゃないし・・と思っておりましたら、設定のチャンネルが違っておりました。途中から同時通訳で安心して聞けました

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イタリア・オペラアカデミー in 東京 vol.3

2023年03月20日 | コンサート情報

ムーティのオペラアカデミー2日目を聴講してきました。

たっぷり10:30~18:00まで。

昨日から始まり、これが6日間あります。
若い指揮者4人がムーティから指導を受け、オーケストラ、合唱も若手の音楽家たちから構成されます。

本番の歌手は、ムーティが指揮するものは海外や国内で活躍するオペラ歌手。
別日に、受講指揮者たちの指揮で抜粋で演奏されるものもあります。

曲目は、ヴェルディの「仮面舞踏会」


2021年のvol.2の時はインターネットで無料ライブ配信されておりました。
少し拝見しましたが、愛情を持ちながらも厳しい言葉が飛んでおりました。

ムーティの音楽に対する言葉、姿勢がもう一度聴きたいと思い、今回オペラには全く疎いのですが聴講してきました。


現代の音楽の悲劇を何度かおっしゃっておりました。

今は指揮者は歌に何も言わない、このことはオペラにとっての悲劇。

ソプラノやテノールが高い音で長く伸ばすだけでブラボー。客はそれを聴きたいと思ってしまっている。そういうことはやめるべき。ただの娯楽ではない。
音楽の瞬間と言うものがあり、メッセージを私は残そうとしている。失われてしまった世界になった。


何とも悲しいお話です。


ムーティが振ると、同じオケのメンバーなのに音楽が変わります。

チェロのソロからヴァイオリンの人たちに弱音で受け継がれる所があったのですが、受講生の指揮がただヴァイオリンが弱くなっただけに対し、ムーティのものはチェロの最後の諦めの音楽がヴァイオリンに受け継がれた時に、深い痛みとして染み入ってきて、泣けました。

細かな説明や話は一切なかったのにもかかわらず、ムーティが振っただけで、別物になっていました。


指揮者は、伝えたい表現のその時に合図を出して音楽を作らせるのではなく、その前に何かオケの人たちにそうなるようなものを送って、オケの人たちが自分たちの力でそうなるように導いていると思いました。


指揮については私は全く素人なのですが、現代は、指揮をするときに腕から指揮棒を動かすことが多いが、そうするとオーケストラが重くなる。手首でやるとオケも楽になる、と話されていました。

指揮の世界にも色々とあるのだなと思いました。

ムーティが受講生の手を動かして振った場面がありました。
強い音を一瞬でほしい時に、肘からぐるりと腕を回すのではなく、直線的に真っすぐ突き刺すような動きでされていました。イタリア式とおっしゃって。
ムーティが動かしただけでオケの音が生き物になりました。


ムーティは表面的な音は見逃しません。音の中に真実を見つけてとおっしゃっていました。


ムーティは歌う声も素晴らしく、オペラ歌手でも行けたのでは?と思うほどです。

vol.1の時も今回も、AEIOUの母音で音色が変わらないように、一つのラインで歌うことを何度もおっしゃっていました。

イタリア語は途切れるようには言わない、滑らかにつながって行くようにと。レガートはこういうことなんだな、と思いました。


東洋の地に、イタリアオペラをこんなに情熱をもって伝えに来てくださる。
たいへんなエネルギーと情熱です。イタリア語の発音、表現を伝えるだけでも大変な労力が必要にもかかわらず。

凍り付くような場面もありましたが、本来はもっと厳しいのだろうと思って聴講しました。



楽器店でレッスンをしている身として、それは違うと思いながら相手に合わさなければいけない場面もあり、いつもそこに葛藤があります。

ムーティとは目指している所も相手も違いますが、本当のことを失うことをいつも肝に銘じなければと思いました。

それが今回最も心に刺さりました。


良い天気


食堂の窓から見えた桜
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LD生徒への禁句、褒め方

2023年03月16日 | 苦手なことがある子供たち

もしかしたら悪気なくかけてしまうかもしれない言葉です。

【禁句】
「もっとがんばらなきゃ」
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
できないことで本人も不安な気持ちになっています。そんな時に、ただ「がんばれ」と言うことは意味がありません。がんばってできるのであればLDではないのです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「やる気がないの」
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
遅れが目立ってきた時に、励ましているつもりでも本人にとっては大きなプレッシャーになります。LDはやる気の問題ではありません。何かをやらせる時は上手におだてて乗せてあげること。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「ほかの人はできるでしょ」
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
学年が上がるに従い、他の子との違いに気付いてきます。自分でもなぜできないか悩んでいる場合も多く、結果を比べて叱ることは子供にとって大きな負担に感じるだけです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「きちんとしなさい」
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
がんばっても他の子と同じように出来ないのがLD。特に具体的な指示ではない言葉がけは混乱するだけです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「そのうちできるようになるよ」
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
根拠のない慰めや励ましをするのではなく、以前の状態と今の状態を比較して、具体的に少しずつでもできるようになっていることを励ますのが良いでしょう。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


【褒め方】
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★すぐ褒める。★具体的に褒める。★もっとやってほしくても「でもね」「もっと」は言わない。★できないことは目をつぶる。★聞き取りが苦手な子には大きなジェスチャーで褒める。★褒める、叱るにしっかり差をつける。★小さな成果を見逃さない。★できることを伸ばす。★夢中になっていることや好きなことを上手に褒める。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


【その他】
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★「〇〇がまだだね」とやり直しのきっかけを作りながら、繰り返し根気良く教える。
★まかせる時は口を出さない。
★すぐに指示をしない。→自分で考えようとしなくなり、指示がないとできなくなる
★好きにしなさい、自分で考えなさいも良くない。→聞いても答えてもらえないため我流で推し進める癖が付いたり、わからないままになる
★止まらない質問に答え続けない。→パターンになりこだわりになってしまう
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


本にこのような言葉があります。

『できない時に叱るのはよくありません。できないのは、怠けていたり、できるのにやらないからではありません。叱るというのは、やっていることをやめさせるために行う方法で、何かをやらせる時に行う方法ではありません』

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚

これらの声掛けは、発達障がいに関係なく子供たちにかかわる私たちには身近な言葉です。
障害のある人に通じることは、障害のない人にも通じます。
私は本当に多くのことを発達障がいから学びました。


今回で、これまで知ったこと、実践してきたことをまとめたものに一区切りをつけたいと思います。

これまで書いた中で、何かひとつでも先生方の生徒さんのお役に立てることがあると幸いに思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


参考文献
『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』 
上野一彦 月森久江 著/ナツメ社/2010年

『怠けてなんかいない!セカンドシーズン2 あきらめない読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方』
品川裕香 著/岩崎書店/2010年

『じょうずなつきあい方がわかる LD学習障害の本』
宮本信也 監修/主婦の友社/2009年

『こんなとき、どうする?はったつしょうがいのあある子への支援 幼稚園・保育園』
内山登紀夫 監修/ミネルヴァ書房/2009年

『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子を育てる本』
月森久江 監修/講談社/2008年

『健康ライブラリー LD(学習障害)の全てがわかる本』
上野一彦 監修/講談社/2007年

『LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)子どもたちの「学び」と「個性」』
上野一彦 監修/講談社/2003年

『うちの子、なんかちがう?学習障害(LD)とその周辺の子どもたち』
上野一彦 監修/小学館/2003年

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8つの知能

2023年03月15日 | 苦手なことがある子供たち

人には異なる8つの知能があります。

① 言葉に優れている
(書く、読む、話す、綴る)

② 数に優れている
(数を扱うことが得意、パズル、コンピューターが得意)

③ 絵に優れている
(イメージ力に優れ、詳しく見ることが得意。色を塗る、デザインをする、組み立てる)

④ 音楽に優れている

⑤ 運動能力に優れている
(スポーツ、ダンス、縫物、彫刻、プラモデル作り)

⑥ 対人関係に優れている
(他の人のことや気持ちを理解する能力が高い)

⑦ 自分への理解に優れている
(自分の感情、夢、何を考えているかわかる)

⑧ 自然への理解がすぐれている
(植物、動物、環境)


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


発達障がいの教育に携わる人たちは、生徒たちに、
『人によって違いがあっていいこと、人には得意なことと不得意なことがあること、それは人の善悪に関係がないこと、いつも一生懸命やり自分の努力を誇りに思いなさい。いい日もあれば悪い日もある、みんなそう、へこたれないことが大事。』
と、いうことを伝えようとしています。

このことは本人たちの励みになり、素晴らしいと思います。本当に困っていて頑張っている人たちのための言葉です。


このような言葉を聞きかじり、自分たちの都合の良いように捉えている人たちも実際は存在します。

この言葉は頑張っている人たちのためのものです。

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1年のまとめに

2023年03月13日 | レッスン

昨年4月から生徒さんのレッスンで、仕上がった曲を録画するようになりました。

それを1年間ためて、年度末にDVDにしてプレゼントします。


昨日、その編集を始めました。

今月地方に引っ越してしまう生徒さんがいるので、彼女の分を最初に仕上げなければと録画を見ておりましたら、2020年に作曲をした時の録画があり、2年ちょっと前のものですが、若い!

この頃はまだこんなに幼い感じだったのかと。
いつも会っているとさほど変わらない気がしますが、ずいぶんお姉さんになったのだと、しみじみ見てしまいました。


他の生徒さんもNGシーンありで、おすましして弾いているだけではなく、素の姿が収められているので、おまけで付けようかなと思いつつ、本人に怒られるかな・・と思ったりして。

でも、このかわいらしさは親御さんにも是非、見ていただきたいです。


子供時代の習い事のレッスンビデオを、大人になった時に懐かしんでもらえたら嬉しいです。
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指の神経を発達させる

2023年03月11日 | 苦手なことがある子供たち

234の指が一方向にしか動かせず、432と使えない生徒さんに指の感覚を付けてもらうために、スーパーボールを転がすトレーニングをしました。


大きめの画用紙に道を書き、その上をスーパーボールを転がしていきます。

右手の2の指を往復で転がせたら左の2の指、と1回のレッスンでひとつの指に決めて行います。

道はレベル1から7まで作りましたので、結構な期間行うことが出来ます。

この生徒さんは1回のレッスンで片手しかできませんでした。
1回転がすのに時間がかかったからです。


最初はまっすぐな一本道。その後は斜めにしたり、V字にしたり。それから少しずつ曲がり角を増やしていくと良いと思います。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


スーパーボール以外にもうひとつ行ったことがあります。

ルンツェの「ふたつの手12のキー」にあるこちらです。


3つの黒鍵を23432の順番で弾き、「3本足なんでしょう、馬さん牛さんなにかしらー」と歌いながら弾いていきます。
この絵では指を広げて置いてしまっていますが、手首の横の動きを使い、音に合わせてずらしながら弾いていきます。


私は以前はこれを使ってレガートの弾き方を覚えてもらっていました。
初めてピアノを習う生徒さん全員がしていたことです。

これで往復が出来るようになったら、次ページに黒鍵をひとつずつずらして行くものがあります。

123454321と5本の指を使います。歌に合わせ3周半でワンセット。
この形で黒鍵ひとつずつ外側にずらしていきます。両手がどんどん離れて行くのです。
これはどの生徒さんも結構面白がってくれます。レガートの手の動きを身に付けるために毎回レッスンのはじめに弾いてもらっていました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


スーパーボールを転がすのは、同じ楽器店で教えている先生から教わりました。

目的は音を作り出すための指先、ということでしたが、私の場合は単純に生徒さんが何番の指を動かしているかを自覚してもらうためです。


自分がどの指を動かしているかわからない生徒さんはいるものです。

自分が動かしているつもりの指と実際が一致しないので、話が通じないことがあります。

自分はちゃんとやっていると思っていて私に注意されるので、納得のいかない顔をします。

手のボディーイメージのことを書いた記事です。
宜しければ参考になさってください。
「どの指を使っているかがよく分からない」子供(第12号) - おとのくに♪♪

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不器用

2023年03月10日 | 苦手なことがある子供たち

運動能力障害は「不器用」と言い表されます。

発達障がいは単独では現れませんので、「不器用」だけが現れることはありません。この症状が強く、他が目立たないということはあるかもしれませんが。


不器用であると、一応の動作が出来ても、速すぎたり雑だったりします。

発達の目安は、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
3歳1カ月~6カ月 ねじぶたをしめる ぞうきんを絞る 
3歳7カ月~5歳 鉛筆を正しく持つ
5歳7カ月~7歳 微細な操作をする 文字を書く 針に糸を通す
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
分離運動(指だけ、手首だけという部位ごとの動き)が出来るようになるのは、5歳7カ月を過ぎてからとわかります。7歳までに覚えた身体の使い方は一生残ると聞いたことがありますが、このような意味からきているのかもしれません。ピアノを始めるのに適した年齢もここから想像がつくと思います。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


どちらの手を動かしているか分からなくなる生徒さんに出会うことがあります。

腕と頭の神経がうまく結びついていないのですが、これは改善できます。


クラウス・ルンツェの「ふたつの手・12のキー」というテキストの最初に、手を交差させながらピアノの上を手で歩くものがあります。

この目的は神経の発達ではなく、黒鍵に触れることからピアノを習い始めて、鍵盤に親しむことを目的にしています。
これは、2つ、3つの黒鍵の判別にもつながることです。目で見て2つと3つの黒鍵のグループがわからないと、「ド」を見つけることは出来ません。

この事を苦手とするLDの生徒さんはいるものです。見てわからなければ触って量の違いを知る。
今は、私は不思議な音の国で、大きなお家と小さなお家の屋根をここに置くのでそれで困った生徒さんは今のところおりません。


話が逸れました。
もし、どちらの手を動かしているかわからない様子の生徒さんがおりましたら、手を交差させることを取り入れてみて下さい。

このテキストの最初のものは、3つの黒鍵に両手を重ねて置き、次の3つの黒鍵グループに移る時に、下の手から抜いて移動します。

これがわけが分からなくなる生徒さんは、目の運動も上手くできていない傾向があります。私の生徒さんの場合はそうでした。

次のページには、2つ、3つの黒鍵を順番に手を交差させながら上行、下行するものがあります。



この2つを手の体操と言って毎週続けると、自分がどちらの腕を動かしているか分かってきます。

テキストは子供が描いた絵しかないので、弾き方も手の絵が描かれていて、生徒さんたちはそれを見て弾くことが出来ます。(説明は要りますが・・)

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚

腕の神経を発達させる方法でもうひとつお勧めがあります。

リトミックの故橋内良枝先生のテキストにあるもので、現在入手することは出来ませんが、知人に少しコピーさせていただきました。

これはどの生徒さんにもできることです。
目的は橋内先生によると、「遠く離れた音を弾く時、上腕の運動が速く行われるようにするためと、左右の神経のバランスをよくするため」とあります。



おもちゃのチャチャチャの歌に合わせ、写真のように手を交差させます。
画像が見づらいかもしれませんが、この3つを組み合わせれば良いのです。

腕を持って動かしてあげないと自分ではできない生徒さんがいました。
「右が上」「右が上」と言いながら動かしました。
写真の中央と右側の写真を交互にすることをゆっくりなテンポで出来るように毎週行います。

一人で出来るようになったら、左腕の練習です。

これが出来るようになったら最後の「チャチャチャ」で「右腕上、左腕上、まっすぐ」にします。

テキストにはもっと細かく上に来る腕を変えてあります。
ここまでのことが出来なくとも十分です。右腕上パターン、左腕上パターンにして、最後だけ交差・交差・まっすぐで良いです。

真ん中の「ド」に1の指を置くことさえままならなかった生徒さんが、毎週これを一緒に練習し、最後に交差するところまで出来た時の、あの晴れやかな顔は今も忘れられません。

すぐに出来なくとも良いのです。少しずつゆっくりとそこに向かっていく。できるということを経験する。それが他のことの自信につながるはずです。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


こちらの生徒さんですが、楽譜は私が指さしていてもどこを見ているか分からなくなるので、小節ごとに番号をふって、今何番弾いてると言った方がわかりやすかったです。

毎回その方法で曲を進めていましたら、番号を言わなくとも自分で分かるようになり、そのうち番号をふらなくとも良くなりました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


今回のテーマとは異なりますが、書字障害の女性が書いた本で、子供の頃ピアノを習っていた話が書いてありました。

それによると、
「文字は読めるけれど書けない。特に漢字は覚えてもすぐに忘れ、大学生になっても自分の名前さえ書けなくなる時がある。算数の図形も苦手で、図形を2つに分けるとどんな形になるかわからない。保育園の時ピアノを習い始めた。1年かかってもドの位置がわからなかった。毎回ピアノの前でどこがドか聞かれ、山のようにある鍵盤の中のどこがドかいつまでたってもわからなかった。音楽は好きだけれど歌は音を外してしまう。それをはっきりと指摘されたことも辛かった」
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逆あみだ/迷路/表神経衰弱

2023年03月09日 | 苦手なことがある子供たち

音符が読めない原因はいくつかあります。

いくつも、と言っても良いかもしれません。

ここで言う読めないというのは、丸の位置が線のどこにあるか判別できない、音符を横に読み続けるために目を動かすことが出来ない、という意味です。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


丸の位置がどこにあるかは、空間認知の力に関係しているかもしれませんが、その前に目が動かせているかです。

楽譜は五線のどこに丸があるか縦に見て判断し、それを右横に次々と繋いで読んでいきます。
縦と横の動きをほぼ同時に行います。

文字は形で判断しますので縦に目を動かす比率が楽譜より少ないと思いますが、楽譜は五線の寸法分の縦の移動距離があり、しかも上や下、真ん中と色々な所に音符が置かれます。

さらに、ピアノの楽譜は大譜表です。目でとらえる範囲が広くなります。

読字障害の、形の判別が苦手という視覚認知の問題とは違うと考えています。

私のこれまでの経験では、目が動かせていないために五線のどこに丸があるかわからない、という生徒さんが圧倒的に多かったです。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


LDのトレーニングに眼球運動をしてもらうものが実際にあります。

私はレッスンでそれをそのまま使いました 。


【逆あみだ】



普通あみだは上からたどりますが、それを下からたどります。しかも目だけで線を追っていくのです。下から上へ目を動かす方が動かすことを意識できます。

この紙は家に余っていたもので作ったので、サイズはイメージも何もなく作りました。測ってみましたら28×15㎝ 子供が持つのにちょうど良いサイズでした。

【迷路】



邪魔をする線に惑わされず目で追います。指でたどりません。
見にくいですが、ピンクの矢印が書かれたところからスタートし、どこに着くかというものです。
線をたどります。到着点にシールを貼ってあります。

こちらも余った紙なので継ぎはぎし、サイズは25×22㎝
子供が持つにはちょっとだけ大きいのですが、これ以上小さいと見づらいので、これが限界かと。
迷路をもっと単純にすると良いとは思いますが、このくらいでちょうど良いです。
迷路は、インターネットで検索すると色々出てきます。シールは誰も使わなくなった小さいものをペタペタ貼ったので、子供の冒険心を掻き立てないかもしれませんが、この迷路自体は面白がってくれます。

この2つをレッスンの始めに、目の体操と言って毎回行います。
3~4カ月も続けると、ほとんどの生徒さんは(目が動かせていないと思われる生徒さん)はこれが必要ではなくなります。


こちらは以前書いた記事です。
追従性眼球運動、跳躍性眼球運動についても書いてあります。
トレーニング法についても触れてありますので、よろしければご参考になさって下さい。
「音が読めるようにならない」子供たち2(第4号) - おとのくに♪♪


【表神経衰弱】

トランプの神経衰弱を表にして行うものです。
私はこれを音符のカードにして行いました。目を動かすことが苦手な生徒さんだけではなく、他の生徒さんにも遊びながら音符を読む練習に使えます。目を動かすことが苦手な生徒さんは、あまり数が多いとやる気を失うので、ピアノの鍵盤の上に2枚×2から慣れて行くと良いと思います。

こちらも以前書いた記事ですが、よろしければお読みください。
「音が読めるようにならない」子供たち3(第5号) - おとのくに♪♪

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眼球運動

2023年03月08日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃に、他の症状で気になる生徒さんがいました。

引き継ぎの生徒さんでした。
ゆっくり進めています、と前任の先生から聞いていました。

年中の生徒さんでした。

まだ小さいので、音の読み方が出来ていなくともさほど気にしていませんでした。
ピアノを弾くのがスムーズに出来なくとも、これもまだ小さいからと気にしていませんでした。

正直な所、自閉症の生徒さんのレッスンをどうしようかと悪戦苦闘しておりましたので、気が回っていなかったのかもしれません。

しかも同じ曜日の生徒さんでした。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


ある時に、それにしても音が上手く読めないなと思うようになり、それまでノートに音符を書く練習をしてこなかったのですが、した方がいいかなと思い、遅ればせながらやろうとした時のことです。

鉛筆を持ってもらいましたら、手をグーにして握るように持ちました。
持ち替えるかと思っていましたがそのまま書き始めました。

その持ち方では当然のことながら、五線の決まった場所に丸を書くことはできません。

その時は年長の初めだった気がしますが、まだ書く練習をお家でしていないのだろうと思い、音符を書く練習はやめました。


そして、もうそろそろ書く練習をお家でしているだろうと鉛筆を持ってもらいましたら、また同じでした。

小学校に上がる1か月前でした。

「どれみ」と文字を書いてもらいましたら、「ど」を左右逆に書きました。これは、なくはないので、たまたまかなと思いました。「れ」はどうだったか覚えておりませんが、「み」は迷うことなく鏡文字。

これは小さい子どもがよくやる間違い方とは異なっていました。
「み」の文字を書きながら向きがわからなくなり、形そのものが「み」ではなくなるものとは全く違っていました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


この生徒さんはピアノを弾く時も、なんだろう、と思うことが度々ありました。

楽譜のどこを見て良いか分からずにいる様子でした。あらぬ方向に目が泳いでいました。

あらぬ方向というのは、最初の小節から突然最後の小節に目が飛んだり、絵が描かれたところをじっと見て音符を読もうとしていたり、しまいには何も書いていない白い所をじっと見つめたり。

まだLDのことをよく知らなかった私は、イライラして「どうしてこんな何も書いてない所見るの?」と言ったことがあります。

その時の戸惑った表情、今も覚えています。


彼女はびっくりするほどのスピードで目が左右に動いて、後ろに倒れそうになったことも2度ありました。
背もたれのない椅子でしたので、本当にそのまま後ろに倒れていき、慌てて支えました。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚

ピアノを弾くこともたいへんでした。真ん中の「ド」に1の指を置くことさえままなりませんでした。

ゆっくり、ゆっくり、右手の1の指を真ん中の「ド」に近付け、もう置けるな、と思った瞬間、急に左手に変わったり、他の音にずれたり。指が一方向にしか動かせず、234と動かせても432はできなかったり。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


私の発達障がいの勉強も進み、次第にLDのことも以前より知識が持てるようになり、これは眼球運動と運動能力に問題があるのではなかと考えられるようになりました。

そこであることを始めました。
どのようなことをしたかは、このブログの初期の頃に書いたのですが、遊び感覚ででき、しかも効果がありました。

これについては、次回改めて書きたいと思います。


これで彼女は以前よりピアノが弾けるようになり、目も動かせるようになりました。

LDだったかはわかりませんが、そのことを口にしなくともレッスンで取り入れられることです。

他の先生から、説明せずにこのようなことが出来るのか、と言われたことが何度かありますが、私は保護者の方の前でも普通に行っておりました。

ピアノのレッスンはひたすらピアノを弾くだけではないですし、弾くことに役に立つことであれば、親御さんがなぜこのようなことをさせるのか、とは言ってきません。

「今、こういうことが苦手なようですから(こういうことで困っているようですから)、ここに力を入れていきましょう」とか「ピアノが弾きやすくなるように、ちょっと運動(体操)しましょう」とか、「最近のお子さんはあまり遊ばないようなので、目がしっかり動かせないでいることがあります」とか、言い方はあります。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


むしろ、ピアノレッスンで難しく感じるのは、どちらなのだろうと直ぐに判断がつかないことです。

線や間に丸を順番に書けないとか、その仕組みが理解できないとか、ドレミが読めないとかは、どのお子さんでも普通にあることだからです。

指や腕の感覚、姿勢も初めから良いお子さんばかりではありません。

わかるまでに時間がかかるのだろうか、練習不足なのだろうか、教え方が上手くないのか、と探る時間が必要になります。


以前、そうして3カ月くらい経ち、次第に目の動きに前述の生徒さんと共通するものを見るようになった頃に、学校の勉強もできないのにピアノなんか習っている場合ではない、とお父様にピアノを辞めさせられた生徒さんがいました。

小学校入学と共にレッスンを始められました。
自分の考えを持ち、話すこともしっかりしていました。ピアノも好きな様子でした。

理解する力に比べて音が読めないな、とは思いましたが、これは音感の発達とも関わりがあるのでもう少し時間が必要かと思いました。

ただ、次第に手を動かすことに不器用さが見られ、もう一人の生徒さんと共通するものが確かなものになりつつありました。


おかしいな、と気付く前に一度、家で大声で叫ぶとお母様から聞きました。レッスンでは全くそのような素振りはなく、いつも落ち着き、にこやかでした。その言葉に違和感を感じたほどでした。

それから3~4週間経ち、また同じことを聞きました。
本当に大きな声で大変なのだと。ご近所から何かあったのかと見にこられたと。

私も少しずつ、彼女の困難さが見えてきておりましたので、その原因が私なりに理解できました。
ピアノレッスンのシフトチェンジが必要だと思い、やり方を変えたら出来る方法があることを彼女自身に体験してもらおう、と考えていた矢先に突然の退会でした。

全く力になれませんでした。


3カ月程度では、原因が何にあるのか私にはわかりませんでした。

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作曲家を知ろう! ヴィヴァルディ

2023年03月06日 | 作曲家を知ろうシリーズ

今月、生徒さんに聴いてもらう作曲家はヴィヴァルディ。

おそらく「四季」は聞いたことがあると思います。


ヴィヴァルディは長く忘れられていた作曲家です。

J.S.バッハが復活し、ヴィヴァルディの曲を編曲し勉強していたことがわかり、それでヴィヴァルディが発見されました。

オペラ上演のために楽譜を売り、資金繰りをしウィーンへ行ったものの、当てにしていたヴィヴァルディファンの皇帝カール6世が崩御し国が1年間の喪に服すことに。

演奏会の上演は禁止され、借金を抱えイタリアへ帰ることも出来ず、ウィーンの地で病に倒れ亡くなります。

カール6世はマリア・テレジアの父君。
女性が王位につくことは許されないとオーストリア継承戦争が起きます。


世界史で習ったオーストリア継承戦争の裏に音楽家のこんな不運があったのかと。

このシリーズを始めて、音楽家を通して国政や近隣国との関係を知り、歴史がリアルなものに感じられるようになりました。

音楽を通して、歴史や政治を学ぶことができる方法もあり、その中で一人の人間がどう生きたかを知り考えることができる。音楽は文学と結びついたものも少なくはないので、そのようなことを学ぶこともできる。

学校の音楽の授業を、歌ったり、音楽鑑賞に留まらせず、もっと広げていけたら良いのにと思います。


ヴィヴァルディ | Composer Sakkyokuka

Composer Sakkyokuka

 



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発達障がいについて④-4 LDのタイプ

2023年03月04日 | 苦手なことがある子供たち

LDを障害別ではなく、タイプ別に分けてみます。

これは、これまで読んだ本の中にあったものです。
私はピアノレッスンで役立つものがほしかったので、この方法はわかりやすいと思いました。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


タイプ1 <知覚統合が弱い子供>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★目で見て理解することが苦手 ★動作で表現することが苦手 ★持ち物の整理や分類が苦手 ★聞いた内容を頭の中でまとめることが難しい ★位置や方向、場所などを間違える ★量を比較することが難しい ★形を判別し組み立てることが難しい
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・一つ一つ順を追って説明 ・部分から全体へ説明 ・頭の中で操作させず具体物を用いる ・図形の特徴など言葉で定義付け

これは感覚器官の問題で、空間認知にかかわることです。文字の形を正しく捉えられず読字に困難が生じたり、図形や量的なものの把握、筆算の桁がずれて計算に困難を生じたりすることもこの感覚がかかわっています。地図の見方がわからない、時間の流れを感じ取ることが苦手というのもこの感覚です。

ピアノレッスンでは、音を読むこと、鍵盤の位置、リズム、テンポ、拍子といったことと関係するのではないかと思います。



タイプ2 <言語理解が弱い子>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★言葉を理解することが苦手 ★言葉で表現することが苦手 ★言葉を使って考えることが苦手 ★時間の概念を表す言葉の理解が難しい ★会話に参加するのが難しい
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・選択肢の中から答えられるようにする ・子供の表情や最初の言葉を手掛かりに教師が代弁してあげる ・吃音で自信がない場合は一緒に話す

これは表出性言語障害です。言葉の使い方、話しをまとめる力にかたよりがあります。話したいけれど、どのような言葉でどの順番で話せばよいか頭の中で整理がつかないのです。言葉を思い出すのに時間がかかり、言いたい言葉が出てこなく「あれ」「それ」といった指示語が多くなります。自分の考えを整理するのに時間がかかると、話すまでに時間がかかり、焦って上手く話せなくなったりします。子供を委縮させる注意をしないことです。


タイプ3 <注意喚起が弱い子>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★言葉や数をすぐ覚えることが苦手 ★聞いたことをすぐ忘れる ★聞き間違いがある ★長い話を聞くのが苦手 ★話を聞きながら書き取れない ★ちょっとした雑音でも注意が逸れやすい ★相手の話を最後まで集中して聴いていられない
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・注意の集中を促してから話しかける ・一度で出来ない時には指示を繰り返す ・指示、説明は簡潔に ・絵や文字を使う ・手を取る、指でさすなどの身体的援助 ・自分に言われていることを明確にするために名前を呼んだり、顔を見てゆっくり話しかける ・落ち着いた教室作り ・掲示物は極力避ける

これは、記憶障害、聴力障害です。騒がしい場所で人の話を聞くことや発音が似ている言葉を聞き分けるのが苦手な場合があります。耳が脳に何を送ったか脳がわからず、信号が混乱し脳は別のものを聞いてしまうのだそうです。

ピアノレッスンではリズム、テンポ、拍子に関係してくると思います。



タイプ4 <処理速度が遅い子>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★目で見たことをすぐに覚えることが苦手 ★形を正確に捉えることが苦手 ★物事をすぐに処理することが苦手(目と手の対応) ★必要なものがすぐに見つけられない ★授業の準備を間に合わない ★授業時間内に課題が終わらない ★書くのが遅い ★黒板を写し終えることに時間がかかる ★書く時の姿勢や、鉛筆・消しゴムの使い方がぎこちない ★活動のペースがゆっくりで同学年についていけない
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・言葉で説明する ・課題に費やす時間を十分にとる

これは記憶、空間、運動能力障害のことです。運動能力障害は体を上手に動かすことが苦手ということです。楽器の演奏にかかわってきますので、下に少し詳しく書きます。

ピアノレッスンでは、音の読み、鍵盤の位置、和音、両腕の感覚、姿勢といったことに関係すると思います。


運動能力障害
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★細かいものが作れない ★紐を結んだり、ボタンをかけたり、洋服をたたんだりといったことが上手くできない ★運動が苦手 ★字が下手 ★基礎的な動作がゆっくりになる ★自分の身体のどの部位をどのように動かせばよいか、止めればよいかイメージできない ★指先・腕・脚などに力を入れたり抜いたりといったコントロールが上手くできない ★人の動作を真似ることが出来ない ★体の複数の動きをコントロールすることが苦手
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
これらの感覚を向上させる方法はこのブログの初期の頃に書きましたので、参考にして頂ければと思います。

「どちらの手を動かしているかが分からない」子供3(第11号) - おとのくに♪♪
「どの指を使っているかがよく分からない」子供(第12号) - おとのくに♪♪
「ピアノを弾く時の姿勢」について(第13号) - おとのくに♪♪





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発達障がいについて④-3 LD診断の注意

2023年03月03日 | 苦手なことがある子供たち

ここでひとつ大事なことを書いておきます。

診断についてです。

これは不用意に私たちが憶測で本人や保護者の方に「LDではないか」と言ってはいけません。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


何らかの発達障がいを見出した時に、母親にフィードバックすることは専門家でもたいへんな事だと言います。

特に行動に問題がなく、LDだけの場合は納得してもらうのが難しいそうです。

専門家は、こういう状態なのでつまずきがあるのではないですか?とはっきりさせた上で、つまずきの強い所、苦手な所をフォローすることを考えたい、と話すようにしているそうです。

他の子と違うから、遅れているからフォローさせてほしいという言い方は絶対にしないと。


何とか救いたいということでお願いすると親御さんも気付いている部分もあるせいか、承諾してくれるそうです。

そうは言っても理解してもらえないお母さんもいると。
感情的になり、「うちの子は違います」と言い張られ、1年位かかる人もいるそうです。

普通は文字を書き始めて、あれっ、と思うケースが多いそうですが、小3くらいまでわからないケースもあるそうです。
その間に子供がつぶれてしまう可能性もあり、その結果、学習の積み残しが増え、いじめ、不登校も出てくると。小5になって不登校になり始めて初めてLDと気付いた子もいたそうです。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

一方、早くからLDを心配される保護者の方もいらっしゃいます。

保護者の方が必ずしも発達障がいのことを詳しくご存知とは限らず、特に就学前のお子さんは大人が考えるほど抽象的なものの理解ができるわけではないので、ピアノレッスンでも丸の位置がよく分からないと心配されたり、ドレミの順番が覚えられないと心配されたりする方がいらっしゃいます。

頼りになる兄や姉がいる下のお子さんは、わからないことは教えてくれる、出来ないことは手伝ってくれることが日常的に多いと、小さい内からピアノの面倒な楽譜を自分で読めるようにしようとは思いません。

家庭環境もそのお子さんの発達には関係します。


④-1 LD 学習障害でも書きましたが、就学前のお子さんはLDと決めるのが難しいと言います。危険性が高い子供としては、

ボールを取れない。おもちゃを扱えない。言われたことを理解できない。5歳で10まで数えられない。色の名前が言えない。

ということが挙げられます。


運動能力や空間認知、聴力、記憶力に関することだと思います。

良く身体を動かし、友だちと遊ぶ。その経験がしっかり持てているかも関係してくるかもしれません。


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発達障がいについて④-2 LD 苦手の正体

2023年03月02日 | 苦手なことがある子供たち

LDの定義をわかりやすく言うと、次のようになると思います。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
知的な能力に大きなつまづきがないものの、
・聞いたことの理解が難しい
・話したいことがうまく表現できない
・文字の読み書きが苦手
・数の大小がわからない、繰り上がり・繰り下がりの計算ができない
・図形や時間の流れ、文章のストーリーをたどることが苦手
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

このような子どもたちの頭の中では、何が起きているのでしょう。

聞いたことがわかっていないからと言って、話を聞いていないのか!なんてことにならぬよう、最初の2つについて少し解説をしたいと思います。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


聞いたことの理解が難しいのは
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・長い質問を覚えていられない
・耳から入る情報処理能力が弱く、行動が遅れる
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


話したいことがうまく表現できないのは
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・話したいけれど、どのような言葉でどの順番で話せばよいのか頭の中で整理がつかない
・話し方がおかしいとからかわれた経験が原因で、言葉を発することに抵抗を覚えてしまうケースがある
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

学校では、授業が何時間目で何の教科かなかなか思い出せない、忘れ物が多い、机や椅子をガタガタ動かしたり他のことに気を取られている、ボーっとしている、ということが見られますが、これも理由があります。

授業中に何の教科を勉強しているかという意識を持ち続けることが苦手だったり、忘れ物をしないという気持ちを保つことが難しい、先生の話が理解できず課題に取り組めずにどうしていいかソワソワしている、気が散りやすい環境に置かれている、といったことがあります。


ボンヤリしている子に怒鳴ったり、なぜ集中できないか追求したり、長々と説教したりすることは逆効果です。本人も集中することが出来ないことを悩んでいる場合が多く、攻めると自信を失わせます。

心理的に追い込まないよう接することが必要になります。

他の子が出来ることが出来ないので不安な気持ちでいます。
自信を失ってばかりいると自分を肯定的に認める気持ちが育まれず、自暴自棄になったり、周囲に反抗心を抱いたりしてしまうことがあります。


叱咤激励は禁句です。励ましたり叱ってできるものではないので、問題の根本を考えて対応する必要があります。ひたすら反復練習させても成果は上がりません。

本人の努力で出来そうな課題を設定して、それができたら大いに褒める。本人にひたすら努力を求めるより、手掛かりやヒントを与える、口頭による指示だけでなく見て分かるようにすること。

LDはこちらが方法を考えれば対処できます。
一般的に取られている対処法は別の回に書きたいと思います 


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


さて、LDの詳しい種類についてここまで全く触れてきませんでした。
代表的なものは、読字、書字、計算の障害になりますが、その他にも教育的領域から見ると存在します。

これが私が本を読んで勉強した頃、わけがわからなかったことです。
本によって障害の名称も種類も異なっていたからです。どれが本当なのだろうと思いましたが、どうやら統一されていないようです。

また、発達障がいがひとつずつ区切ることができないように、LD自体もそれぞれ関連しあっています。

一応、LDにどのような種類があるか、ここに挙げておきます。

読字障害・書字障害・計算障害・空間認知障害・表出性言語障害・聴力障害・記憶障害・運動能力障害

空間認知障害を「推論することが苦手」、運動能力障害を「不器用」と表しているものや、これをLDとはせずに発達障がいのひとつのカテゴリーとしているものもあります。また、聴力障害と記憶障害を表出性言語障害に含めているものもあります。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

これら全てのLDについてこちらに書くことは致しません。

ピアノレッスンに関係すると思われるものを選び、書くことにします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献

『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』 
上野一彦 月森久江 著/ナツメ社/2010年

『怠けてなんかいない!セカンドシーズン2 あきらめない読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方』
品川裕香 著/岩崎書店/2010年

『じょうずなつきあい方がわかる LD学習障害の本』
宮本信也 監修/主婦の友社/2009年

『こんなとき、どうする?はったつしょうがいのあある子への支援 幼稚園・保育園』
内山登紀夫 監修/ミネルヴァ書房/2009年

『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子を育てる本』
月森久江 監修/講談社/2008年

『健康ライブラリー LD(学習障害)の全てがわかる本』
上野一彦 監修/講談社/2007年

『LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)子どもたちの「学び」と「個性」』
上野一彦 監修/講談社/2003年

『うちの子、なんかちがう?学習障害(LD)とその周辺の子どもたち』
上野一彦 監修/小学館/2003年

『学習障害 発達的・精神医学的・教育的アプローチ』
齊藤久子 監修/プレーン出版/2000年


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