「ブラームスは語る」という本があります。
ホイベルガーという作曲家で音楽評論家であるブラームスの知人が、ブラームスとの会話をメモに書き留めていたのだそうです。
会話は出来るだけその日の内にメモするように努めたと。
会話をメモしていたことを知ったブラームスは真っ赤になって怒ったそうですが、何とかなだめ、怒りを鎮めてもらったとのこと。
これを読むと、ブラームスはけっこう毒舌家だったのかなと・・
芸術に対しては厳しい人だったことがわかります。
当時の音楽界やブラームスの作曲家評も少しわかります。
ベートーヴェンのことは、モーツァルトやハイドンに比べると形式では大胆と言えないとか、ベートーヴェンでモーツァルトやバッハより弱いのは、不協和音の使用法だ。モーツァルトのようなすごい不協和音がないんだ、とか。
現代ではブラームスはベートーヴェンの後を継ぐ人物のように言われているので、ベートーヴェンをこのように言っていたとは少々驚きました。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲、交響曲、室内楽についても言っています。
例えば、モーツァルトの協奏曲ハ短調こそ天才的ひらめきのある芸術の中の芸術。ベートーヴェンのハ短調だって、モーツァルトに比べればはるかに小物で弱々しい。斬新さゆえの刺激と内なる価値は区別されなくては、と。
ハイドンのことは、今の自分の年齢になって凄い量の作品を生み出している。この時期からさらに偉大なものへと発展している。ものすごい人物だ、と。
あと、皮肉ですが、「みんなわかっちゃいない。でも幸せなことじゃないか。だから僕らは食べていける。僕の音楽にしても、みんな本当に大切な所は理解されていない。」と言っていて、ムーティ氏が仰っていた言葉を思い出しました。
「ソプラノやテノールが高い音で長く伸ばすだけでブラボー。客はそれを聴きたいと思ってしまっている。」
昔も今も同じようなものなのかと思いました。
クララについてはほぼ書かれていなく、クララが亡くなった時にドイツに向かった時の話と、自分の新しい曲をクララに送って見てもらうと、彼女は手書きの楽譜を隅から隅までちゃんと目を通して、暗譜して何度でも情熱的に試し弾きしてくれると。
それから、お互い送った手紙を交換して自分たちで手紙は処分したと。
ブラームスは写真が結構残っています。どれも同じ感じで、あの髭のブラームス。
このような会話や写真、録音が残されていると後期ロマン派でもさほど遠くない気がしてしまいます。
この本は、3巻ある「ブラームス回想録集」の第2巻です。
第1,3巻は現在入手可能のようですが、この第2巻は絶版のようです。
私は図書館で借りることが出来たので読めました。2019年2月に第7刷発行とあるのですが、数が少なかったのでしょうか・・
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