おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

インヴェンション 清書譜(Edition vol.4)

2019年12月28日 | エディション研究
1720年のヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための音楽帳(クラヴィーア小曲集)のPraeambulumとFantasiaをInventio&Sinfoniaとして清書したのが1723年の清書譜といわれるものです。

清書譜の序文には次のように書かれています。

「クラヴィーア愛好家、とりわけ学習希望者が2声部をきれいに演奏するだけでなく、さらに上達したならば3声部を正しく上手に処理し、それと同時に優れた楽想(Invention)を身に付け、しかもそれを巧みに展開すること。そしてとりわけカンタービレの奏法を習得し、それと共に作曲の予備知識を得るための明瞭な方法を示す正しい手引き」

インヴェンション&シンフォニアのあの3つの目的が書かれています。
「テクニックを身に付けてほしい、カンタービレ奏法を習得してほしい、作曲を学んでほしい」

この清書譜で曲順が現在のものになりました。
弟子たちに写譜をさせて勉強させたそうです。

バッハ自身もヴィヴァルディの作品を写譜や編曲をして勉強しました。

初稿の曲順(番号は現在のもの)
1/C-dur,4/d-moll,7/e-moll,8/F-dur,10/G-dur,13/a-moll,15/h-mol,14/B-dur,12/A-dur,11/g-moll,9/f-moll,6/E-dur,5/Es-dur,3/D-dur,2/c-moll
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インヴェンション作品の成立(Edition vol.3)

2019年12月27日 | エディション研究
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、J.S.Bachのインヴェンションには1720年の初稿と1723年の清書譜というものがあります。

初稿というのは長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための音楽帳(クラヴィーア小曲集)のことです。

W.F.Bachが9歳2ケ月の時に長男の教育のために書き始めたのがこの曲集です。
この時点で長男は既にクラヴィーア奏法の基本はマスター済み。
作曲を学ぶためのものだったようです。

そのため曲順が、プレリュード・舞曲→2声→組曲→3声と徐々に複雑になっています。フーガが視野に入ってきた時点で曲集は終わっています。

全部で62曲あります。
平均律第1巻のプレリュード、インヴェンション、シンフォニアの初稿が収められています。

この曲集の「Praeambulum」が現在のインヴェンションです。
Praeambulumはプレリュードのラテン語です。

この初稿、現在のものと少し違う所があります。


こちらの演奏はこのCDです。

それぞれの曲が、チェンバロ、クラヴィコード、オルガンのどの楽器のために作られたかを考察して演奏されています。(このCDには63曲あります)
Klavierbuchlein Fur Wilhelm Fr CD amazon

バッハがこの曲集を作り始めた日付がはっきりしていて不思議に思われたかもしれませんが、これは曲集のはじめに明記しているからなのです。長男への愛情の深さを感じます。

フリーデマンはバッハの子供たちの中で一番才能に恵まれていたと言われています。
ただ、人間性の問題やらで人脈が築けなかったようで、父親亡き後、職に就かず放蕩生活を送り貧困のうちに生涯を終えたそうです。


タイトルページ:Clavier-Büchlein vor Wilhelm Friedemann Bach angefangen in Cöthen den 22 Januar Ao,1720
1720年1月22日から書き始めたとあります。
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楽譜の種類(Edition vol.2)

2019年12月26日 | エディション研究
エディション研究スタート!

まずは楽譜の種類について。

どの版を選ぶかという前に、その版が何をもとに作られているかを知ると信頼度が変わってきます。
出どころがわからないこともあります。おおもとに遡っても、それ自体が判別不可能な場合もあります。

何を言っているんだろうと思われるかもしれませんが、GO,GO!
   
楽譜は全部で7種類あります。

①自筆譜Autograph
作曲者自身が直接書き下ろした楽譜
(音や装飾音等、不明な点があった場合直接自筆譜を見る)

②筆写譜Manuskript
おかかえの写譜家、信頼のできる者(ex.弟子)、その当時の誰かが書き写したもの
(自筆譜が存在しない場合参考にする)

③初版譜Erstdruck
それまで自筆または写譜の形で伝えられた作品の最初の出版
(一般に初版はミスが多いが資料として重要)

④ファクシミリ版Faksimile
①または②を写真で復元
(自筆譜が直接手に入らない場合利用)

⑤原典版Uetext
①②③を基に可能な限り忠実に作曲者の意図を再現したもの
(作曲者の意図するものを理解するときに利用)

⑥批判版kritische Ausgabe
原典版の一種で、新しい資料などにより古い原典版に批判を加えて校訂したもの 校訂報告を添える

⑦実用版Praktisch Edition
アーティキュレーション、ディナーミク、フレージング等、校訂者の主観が入ったもの
(自分が演奏する場合にすぐに利用できるが、ひとつの演奏解釈の例として参考にする)
   

この中で実際に私たちがよく使うのは原典版と実用版です。
自筆譜にお目にかかれるのは研究者や一部の演奏家くらいなものです。
ファクシミリ版でしたら私たちでも見ることができます。

初版譜は自筆譜もない、筆写譜もない時に頼りになりますが、ショパンのように3国同時出版で(フランス、ドイツ、イギリス)その段階で既に国によって異なることがある場合困ります。巻頭か巻末にある校訂報告でそれらは報告されています。

ファクシミリ版を見ると作曲者の熱が伝わってきます。
ベートーヴェンは面白いです。

書いたものをワーッとぐちゃぐちゃに消し、右手と左手を反対に書き直し、それもワーッと消し、結局余白に自分で5線を書いてもとに書いたものに戻る、というのを見たことがあります。
ペンの勢いも感じられ面白いものです。
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エディション研究(Edition vol.1)

2019年12月25日 | エディション研究
7~8年前から書きたいことがありました。

これをどうこのブログにアップさせると良いかわからずそのままになっておりました。

以前より写真投稿の画像がサイズを選べるようになり、大きなものも可能になったのでできるかもしれないと思うようになりました。

なので、ちょっと試してみようかと思います。

タイトル名にあるように「エディション研究」です。
版の比較です。

ここ数年バッハのインヴェンションさえ弾かせたい生徒がいなくなり、もういいかこのままでと、とんだフトドキ者になっておりました。

しかし、長くピアノを趣味として続けられている私より年上の生徒さんがバッハが好きではなかったらしく、あまり弾いてこなかったそうです。

結構難しい大曲も弾くのですが、対位法や3声、4声で書かれている部分が全く構造がわからないらしく、いつまで経ってもそこでつまづきます。

私に見えている楽譜とその方が見える楽譜は違うようなのです。

しかし、同じく長くピアノを弾いていらしてこれまた結構な大曲を弾かれる別の大人の方はバッハが大好きで、この手の構造は説明しなくても見えます。

バッハはとても多くの作曲家に影響を与えています。
バッハを弾かなくともその要素がある他の作曲家の曲はワンサカあります。

ロシアンメソッドでピアノを始めた子供たちが、想像以上に弾けるようになってきているので、将来望みの曲が弾けるようにやはりバッハはやるべきだ!と考え直しました。

それで、どの版を使おうかと思い、もう一度勉強するかと思い立ったのです。
使いたい版はあるのですが、再検討したいと思います。

多くの作品に手を出す気力は今の私にはないので、J.S.Bachのインヴェンションに絞ろうと思っています。

少々専門的な世界なので、なんだろう・・、だから?と思われるかもしれません。
気が向かれたらお読み下さると嬉しいです。
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