おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

迷路ダウンロード

2023年11月17日 | 苦手なことがある子供たち

ピアノの楽譜は右手、左手の両方を見る必要があります。

目で見る範囲が広く、5線の音符の位置を縦に見て、同時に右にどんどん動かして行かなければいけません。


その目の動きがスムーズに出来ない生徒さんに出会うことがあります。

日によって目がうまく動かない、なんてこともお子さんによってはあります。


そんな時に、「迷路」は良い目の体操になります。
これで集中力が出ることもあるので、そのような時に使ってみるのも良いと思います。


私は10年以上前に書き写した手描きの迷路を使っていますが、もっときれいで楽し気な迷路が無料ダウンロードできるサイトがあることを知りました。


目の体操にいかがでしょう。
あまり細かな迷路は見ただけでやる気が失せるので、大きめのものが良いと思います。

迷路-幼児教材・知育プリント|ちびむすドリル【幼児の学習素材館】

生徒さんはたいてい紙を持って見るので、コピーした紙を厚紙に貼っておくと持ちやすいと思います。

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LD生徒への禁句、褒め方

2023年03月16日 | 苦手なことがある子供たち

もしかしたら悪気なくかけてしまうかもしれない言葉です。

【禁句】
「もっとがんばらなきゃ」
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できないことで本人も不安な気持ちになっています。そんな時に、ただ「がんばれ」と言うことは意味がありません。がんばってできるのであればLDではないのです。
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「やる気がないの」
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遅れが目立ってきた時に、励ましているつもりでも本人にとっては大きなプレッシャーになります。LDはやる気の問題ではありません。何かをやらせる時は上手におだてて乗せてあげること。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「ほかの人はできるでしょ」
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学年が上がるに従い、他の子との違いに気付いてきます。自分でもなぜできないか悩んでいる場合も多く、結果を比べて叱ることは子供にとって大きな負担に感じるだけです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「きちんとしなさい」
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がんばっても他の子と同じように出来ないのがLD。特に具体的な指示ではない言葉がけは混乱するだけです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


「そのうちできるようになるよ」
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
根拠のない慰めや励ましをするのではなく、以前の状態と今の状態を比較して、具体的に少しずつでもできるようになっていることを励ますのが良いでしょう。
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゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


【褒め方】
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★すぐ褒める。★具体的に褒める。★もっとやってほしくても「でもね」「もっと」は言わない。★できないことは目をつぶる。★聞き取りが苦手な子には大きなジェスチャーで褒める。★褒める、叱るにしっかり差をつける。★小さな成果を見逃さない。★できることを伸ばす。★夢中になっていることや好きなことを上手に褒める。
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゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


【その他】
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★「〇〇がまだだね」とやり直しのきっかけを作りながら、繰り返し根気良く教える。
★まかせる時は口を出さない。
★すぐに指示をしない。→自分で考えようとしなくなり、指示がないとできなくなる
★好きにしなさい、自分で考えなさいも良くない。→聞いても答えてもらえないため我流で推し進める癖が付いたり、わからないままになる
★止まらない質問に答え続けない。→パターンになりこだわりになってしまう
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


本にこのような言葉があります。

『できない時に叱るのはよくありません。できないのは、怠けていたり、できるのにやらないからではありません。叱るというのは、やっていることをやめさせるために行う方法で、何かをやらせる時に行う方法ではありません』

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚

これらの声掛けは、発達障がいに関係なく子供たちにかかわる私たちには身近な言葉です。
障害のある人に通じることは、障害のない人にも通じます。
私は本当に多くのことを発達障がいから学びました。


今回で、これまで知ったこと、実践してきたことをまとめたものに一区切りをつけたいと思います。

これまで書いた中で、何かひとつでも先生方の生徒さんのお役に立てることがあると幸いに思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


参考文献
『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』 
上野一彦 月森久江 著/ナツメ社/2010年

『怠けてなんかいない!セカンドシーズン2 あきらめない読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方』
品川裕香 著/岩崎書店/2010年

『じょうずなつきあい方がわかる LD学習障害の本』
宮本信也 監修/主婦の友社/2009年

『こんなとき、どうする?はったつしょうがいのあある子への支援 幼稚園・保育園』
内山登紀夫 監修/ミネルヴァ書房/2009年

『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子を育てる本』
月森久江 監修/講談社/2008年

『健康ライブラリー LD(学習障害)の全てがわかる本』
上野一彦 監修/講談社/2007年

『LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)子どもたちの「学び」と「個性」』
上野一彦 監修/講談社/2003年

『うちの子、なんかちがう?学習障害(LD)とその周辺の子どもたち』
上野一彦 監修/小学館/2003年

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8つの知能

2023年03月15日 | 苦手なことがある子供たち

人には異なる8つの知能があります。

① 言葉に優れている
(書く、読む、話す、綴る)

② 数に優れている
(数を扱うことが得意、パズル、コンピューターが得意)

③ 絵に優れている
(イメージ力に優れ、詳しく見ることが得意。色を塗る、デザインをする、組み立てる)

④ 音楽に優れている

⑤ 運動能力に優れている
(スポーツ、ダンス、縫物、彫刻、プラモデル作り)

⑥ 対人関係に優れている
(他の人のことや気持ちを理解する能力が高い)

⑦ 自分への理解に優れている
(自分の感情、夢、何を考えているかわかる)

⑧ 自然への理解がすぐれている
(植物、動物、環境)


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


発達障がいの教育に携わる人たちは、生徒たちに、
『人によって違いがあっていいこと、人には得意なことと不得意なことがあること、それは人の善悪に関係がないこと、いつも一生懸命やり自分の努力を誇りに思いなさい。いい日もあれば悪い日もある、みんなそう、へこたれないことが大事。』
と、いうことを伝えようとしています。

このことは本人たちの励みになり、素晴らしいと思います。本当に困っていて頑張っている人たちのための言葉です。


このような言葉を聞きかじり、自分たちの都合の良いように捉えている人たちも実際は存在します。

この言葉は頑張っている人たちのためのものです。

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指の神経を発達させる

2023年03月11日 | 苦手なことがある子供たち

234の指が一方向にしか動かせず、432と使えない生徒さんに指の感覚を付けてもらうために、スーパーボールを転がすトレーニングをしました。


大きめの画用紙に道を書き、その上をスーパーボールを転がしていきます。

右手の2の指を往復で転がせたら左の2の指、と1回のレッスンでひとつの指に決めて行います。

道はレベル1から7まで作りましたので、結構な期間行うことが出来ます。

この生徒さんは1回のレッスンで片手しかできませんでした。
1回転がすのに時間がかかったからです。


最初はまっすぐな一本道。その後は斜めにしたり、V字にしたり。それから少しずつ曲がり角を増やしていくと良いと思います。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


スーパーボール以外にもうひとつ行ったことがあります。

ルンツェの「ふたつの手12のキー」にあるこちらです。


3つの黒鍵を23432の順番で弾き、「3本足なんでしょう、馬さん牛さんなにかしらー」と歌いながら弾いていきます。
この絵では指を広げて置いてしまっていますが、手首の横の動きを使い、音に合わせてずらしながら弾いていきます。


私は以前はこれを使ってレガートの弾き方を覚えてもらっていました。
初めてピアノを習う生徒さん全員がしていたことです。

これで往復が出来るようになったら、次ページに黒鍵をひとつずつずらして行くものがあります。

123454321と5本の指を使います。歌に合わせ3周半でワンセット。
この形で黒鍵ひとつずつ外側にずらしていきます。両手がどんどん離れて行くのです。
これはどの生徒さんも結構面白がってくれます。レガートの手の動きを身に付けるために毎回レッスンのはじめに弾いてもらっていました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


スーパーボールを転がすのは、同じ楽器店で教えている先生から教わりました。

目的は音を作り出すための指先、ということでしたが、私の場合は単純に生徒さんが何番の指を動かしているかを自覚してもらうためです。


自分がどの指を動かしているかわからない生徒さんはいるものです。

自分が動かしているつもりの指と実際が一致しないので、話が通じないことがあります。

自分はちゃんとやっていると思っていて私に注意されるので、納得のいかない顔をします。

手のボディーイメージのことを書いた記事です。
宜しければ参考になさってください。
「どの指を使っているかがよく分からない」子供(第12号) - おとのくに♪♪

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不器用

2023年03月10日 | 苦手なことがある子供たち

運動能力障害は「不器用」と言い表されます。

発達障がいは単独では現れませんので、「不器用」だけが現れることはありません。この症状が強く、他が目立たないということはあるかもしれませんが。


不器用であると、一応の動作が出来ても、速すぎたり雑だったりします。

発達の目安は、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
3歳1カ月~6カ月 ねじぶたをしめる ぞうきんを絞る 
3歳7カ月~5歳 鉛筆を正しく持つ
5歳7カ月~7歳 微細な操作をする 文字を書く 針に糸を通す
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
分離運動(指だけ、手首だけという部位ごとの動き)が出来るようになるのは、5歳7カ月を過ぎてからとわかります。7歳までに覚えた身体の使い方は一生残ると聞いたことがありますが、このような意味からきているのかもしれません。ピアノを始めるのに適した年齢もここから想像がつくと思います。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


どちらの手を動かしているか分からなくなる生徒さんに出会うことがあります。

腕と頭の神経がうまく結びついていないのですが、これは改善できます。


クラウス・ルンツェの「ふたつの手・12のキー」というテキストの最初に、手を交差させながらピアノの上を手で歩くものがあります。

この目的は神経の発達ではなく、黒鍵に触れることからピアノを習い始めて、鍵盤に親しむことを目的にしています。
これは、2つ、3つの黒鍵の判別にもつながることです。目で見て2つと3つの黒鍵のグループがわからないと、「ド」を見つけることは出来ません。

この事を苦手とするLDの生徒さんはいるものです。見てわからなければ触って量の違いを知る。
今は、私は不思議な音の国で、大きなお家と小さなお家の屋根をここに置くのでそれで困った生徒さんは今のところおりません。


話が逸れました。
もし、どちらの手を動かしているかわからない様子の生徒さんがおりましたら、手を交差させることを取り入れてみて下さい。

このテキストの最初のものは、3つの黒鍵に両手を重ねて置き、次の3つの黒鍵グループに移る時に、下の手から抜いて移動します。

これがわけが分からなくなる生徒さんは、目の運動も上手くできていない傾向があります。私の生徒さんの場合はそうでした。

次のページには、2つ、3つの黒鍵を順番に手を交差させながら上行、下行するものがあります。



この2つを手の体操と言って毎週続けると、自分がどちらの腕を動かしているか分かってきます。

テキストは子供が描いた絵しかないので、弾き方も手の絵が描かれていて、生徒さんたちはそれを見て弾くことが出来ます。(説明は要りますが・・)

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚

腕の神経を発達させる方法でもうひとつお勧めがあります。

リトミックの故橋内良枝先生のテキストにあるもので、現在入手することは出来ませんが、知人に少しコピーさせていただきました。

これはどの生徒さんにもできることです。
目的は橋内先生によると、「遠く離れた音を弾く時、上腕の運動が速く行われるようにするためと、左右の神経のバランスをよくするため」とあります。



おもちゃのチャチャチャの歌に合わせ、写真のように手を交差させます。
画像が見づらいかもしれませんが、この3つを組み合わせれば良いのです。

腕を持って動かしてあげないと自分ではできない生徒さんがいました。
「右が上」「右が上」と言いながら動かしました。
写真の中央と右側の写真を交互にすることをゆっくりなテンポで出来るように毎週行います。

一人で出来るようになったら、左腕の練習です。

これが出来るようになったら最後の「チャチャチャ」で「右腕上、左腕上、まっすぐ」にします。

テキストにはもっと細かく上に来る腕を変えてあります。
ここまでのことが出来なくとも十分です。右腕上パターン、左腕上パターンにして、最後だけ交差・交差・まっすぐで良いです。

真ん中の「ド」に1の指を置くことさえままならなかった生徒さんが、毎週これを一緒に練習し、最後に交差するところまで出来た時の、あの晴れやかな顔は今も忘れられません。

すぐに出来なくとも良いのです。少しずつゆっくりとそこに向かっていく。できるということを経験する。それが他のことの自信につながるはずです。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


こちらの生徒さんですが、楽譜は私が指さしていてもどこを見ているか分からなくなるので、小節ごとに番号をふって、今何番弾いてると言った方がわかりやすかったです。

毎回その方法で曲を進めていましたら、番号を言わなくとも自分で分かるようになり、そのうち番号をふらなくとも良くなりました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


今回のテーマとは異なりますが、書字障害の女性が書いた本で、子供の頃ピアノを習っていた話が書いてありました。

それによると、
「文字は読めるけれど書けない。特に漢字は覚えてもすぐに忘れ、大学生になっても自分の名前さえ書けなくなる時がある。算数の図形も苦手で、図形を2つに分けるとどんな形になるかわからない。保育園の時ピアノを習い始めた。1年かかってもドの位置がわからなかった。毎回ピアノの前でどこがドか聞かれ、山のようにある鍵盤の中のどこがドかいつまでたってもわからなかった。音楽は好きだけれど歌は音を外してしまう。それをはっきりと指摘されたことも辛かった」
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逆あみだ/迷路/表神経衰弱

2023年03月09日 | 苦手なことがある子供たち

音符が読めない原因はいくつかあります。

いくつも、と言っても良いかもしれません。

ここで言う読めないというのは、丸の位置が線のどこにあるか判別できない、音符を横に読み続けるために目を動かすことが出来ない、という意味です。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


丸の位置がどこにあるかは、空間認知の力に関係しているかもしれませんが、その前に目が動かせているかです。

楽譜は五線のどこに丸があるか縦に見て判断し、それを右横に次々と繋いで読んでいきます。
縦と横の動きをほぼ同時に行います。

文字は形で判断しますので縦に目を動かす比率が楽譜より少ないと思いますが、楽譜は五線の寸法分の縦の移動距離があり、しかも上や下、真ん中と色々な所に音符が置かれます。

さらに、ピアノの楽譜は大譜表です。目でとらえる範囲が広くなります。

読字障害の、形の判別が苦手という視覚認知の問題とは違うと考えています。

私のこれまでの経験では、目が動かせていないために五線のどこに丸があるかわからない、という生徒さんが圧倒的に多かったです。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


LDのトレーニングに眼球運動をしてもらうものが実際にあります。

私はレッスンでそれをそのまま使いました 。


【逆あみだ】



普通あみだは上からたどりますが、それを下からたどります。しかも目だけで線を追っていくのです。下から上へ目を動かす方が動かすことを意識できます。

この紙は家に余っていたもので作ったので、サイズはイメージも何もなく作りました。測ってみましたら28×15㎝ 子供が持つのにちょうど良いサイズでした。

【迷路】



邪魔をする線に惑わされず目で追います。指でたどりません。
見にくいですが、ピンクの矢印が書かれたところからスタートし、どこに着くかというものです。
線をたどります。到着点にシールを貼ってあります。

こちらも余った紙なので継ぎはぎし、サイズは25×22㎝
子供が持つにはちょっとだけ大きいのですが、これ以上小さいと見づらいので、これが限界かと。
迷路をもっと単純にすると良いとは思いますが、このくらいでちょうど良いです。
迷路は、インターネットで検索すると色々出てきます。シールは誰も使わなくなった小さいものをペタペタ貼ったので、子供の冒険心を掻き立てないかもしれませんが、この迷路自体は面白がってくれます。

この2つをレッスンの始めに、目の体操と言って毎回行います。
3~4カ月も続けると、ほとんどの生徒さんは(目が動かせていないと思われる生徒さん)はこれが必要ではなくなります。


こちらは以前書いた記事です。
追従性眼球運動、跳躍性眼球運動についても書いてあります。
トレーニング法についても触れてありますので、よろしければご参考になさって下さい。
「音が読めるようにならない」子供たち2(第4号) - おとのくに♪♪


【表神経衰弱】

トランプの神経衰弱を表にして行うものです。
私はこれを音符のカードにして行いました。目を動かすことが苦手な生徒さんだけではなく、他の生徒さんにも遊びながら音符を読む練習に使えます。目を動かすことが苦手な生徒さんは、あまり数が多いとやる気を失うので、ピアノの鍵盤の上に2枚×2から慣れて行くと良いと思います。

こちらも以前書いた記事ですが、よろしければお読みください。
「音が読めるようにならない」子供たち3(第5号) - おとのくに♪♪

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眼球運動

2023年03月08日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃に、他の症状で気になる生徒さんがいました。

引き継ぎの生徒さんでした。
ゆっくり進めています、と前任の先生から聞いていました。

年中の生徒さんでした。

まだ小さいので、音の読み方が出来ていなくともさほど気にしていませんでした。
ピアノを弾くのがスムーズに出来なくとも、これもまだ小さいからと気にしていませんでした。

正直な所、自閉症の生徒さんのレッスンをどうしようかと悪戦苦闘しておりましたので、気が回っていなかったのかもしれません。

しかも同じ曜日の生徒さんでした。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


ある時に、それにしても音が上手く読めないなと思うようになり、それまでノートに音符を書く練習をしてこなかったのですが、した方がいいかなと思い、遅ればせながらやろうとした時のことです。

鉛筆を持ってもらいましたら、手をグーにして握るように持ちました。
持ち替えるかと思っていましたがそのまま書き始めました。

その持ち方では当然のことながら、五線の決まった場所に丸を書くことはできません。

その時は年長の初めだった気がしますが、まだ書く練習をお家でしていないのだろうと思い、音符を書く練習はやめました。


そして、もうそろそろ書く練習をお家でしているだろうと鉛筆を持ってもらいましたら、また同じでした。

小学校に上がる1か月前でした。

「どれみ」と文字を書いてもらいましたら、「ど」を左右逆に書きました。これは、なくはないので、たまたまかなと思いました。「れ」はどうだったか覚えておりませんが、「み」は迷うことなく鏡文字。

これは小さい子どもがよくやる間違い方とは異なっていました。
「み」の文字を書きながら向きがわからなくなり、形そのものが「み」ではなくなるものとは全く違っていました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


この生徒さんはピアノを弾く時も、なんだろう、と思うことが度々ありました。

楽譜のどこを見て良いか分からずにいる様子でした。あらぬ方向に目が泳いでいました。

あらぬ方向というのは、最初の小節から突然最後の小節に目が飛んだり、絵が描かれたところをじっと見て音符を読もうとしていたり、しまいには何も書いていない白い所をじっと見つめたり。

まだLDのことをよく知らなかった私は、イライラして「どうしてこんな何も書いてない所見るの?」と言ったことがあります。

その時の戸惑った表情、今も覚えています。


彼女はびっくりするほどのスピードで目が左右に動いて、後ろに倒れそうになったことも2度ありました。
背もたれのない椅子でしたので、本当にそのまま後ろに倒れていき、慌てて支えました。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚

ピアノを弾くこともたいへんでした。真ん中の「ド」に1の指を置くことさえままなりませんでした。

ゆっくり、ゆっくり、右手の1の指を真ん中の「ド」に近付け、もう置けるな、と思った瞬間、急に左手に変わったり、他の音にずれたり。指が一方向にしか動かせず、234と動かせても432はできなかったり。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


私の発達障がいの勉強も進み、次第にLDのことも以前より知識が持てるようになり、これは眼球運動と運動能力に問題があるのではなかと考えられるようになりました。

そこであることを始めました。
どのようなことをしたかは、このブログの初期の頃に書いたのですが、遊び感覚ででき、しかも効果がありました。

これについては、次回改めて書きたいと思います。


これで彼女は以前よりピアノが弾けるようになり、目も動かせるようになりました。

LDだったかはわかりませんが、そのことを口にしなくともレッスンで取り入れられることです。

他の先生から、説明せずにこのようなことが出来るのか、と言われたことが何度かありますが、私は保護者の方の前でも普通に行っておりました。

ピアノのレッスンはひたすらピアノを弾くだけではないですし、弾くことに役に立つことであれば、親御さんがなぜこのようなことをさせるのか、とは言ってきません。

「今、こういうことが苦手なようですから(こういうことで困っているようですから)、ここに力を入れていきましょう」とか「ピアノが弾きやすくなるように、ちょっと運動(体操)しましょう」とか、「最近のお子さんはあまり遊ばないようなので、目がしっかり動かせないでいることがあります」とか、言い方はあります。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


むしろ、ピアノレッスンで難しく感じるのは、どちらなのだろうと直ぐに判断がつかないことです。

線や間に丸を順番に書けないとか、その仕組みが理解できないとか、ドレミが読めないとかは、どのお子さんでも普通にあることだからです。

指や腕の感覚、姿勢も初めから良いお子さんばかりではありません。

わかるまでに時間がかかるのだろうか、練習不足なのだろうか、教え方が上手くないのか、と探る時間が必要になります。


以前、そうして3カ月くらい経ち、次第に目の動きに前述の生徒さんと共通するものを見るようになった頃に、学校の勉強もできないのにピアノなんか習っている場合ではない、とお父様にピアノを辞めさせられた生徒さんがいました。

小学校入学と共にレッスンを始められました。
自分の考えを持ち、話すこともしっかりしていました。ピアノも好きな様子でした。

理解する力に比べて音が読めないな、とは思いましたが、これは音感の発達とも関わりがあるのでもう少し時間が必要かと思いました。

ただ、次第に手を動かすことに不器用さが見られ、もう一人の生徒さんと共通するものが確かなものになりつつありました。


おかしいな、と気付く前に一度、家で大声で叫ぶとお母様から聞きました。レッスンでは全くそのような素振りはなく、いつも落ち着き、にこやかでした。その言葉に違和感を感じたほどでした。

それから3~4週間経ち、また同じことを聞きました。
本当に大きな声で大変なのだと。ご近所から何かあったのかと見にこられたと。

私も少しずつ、彼女の困難さが見えてきておりましたので、その原因が私なりに理解できました。
ピアノレッスンのシフトチェンジが必要だと思い、やり方を変えたら出来る方法があることを彼女自身に体験してもらおう、と考えていた矢先に突然の退会でした。

全く力になれませんでした。


3カ月程度では、原因が何にあるのか私にはわかりませんでした。

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発達障がいについて④-4 LDのタイプ

2023年03月04日 | 苦手なことがある子供たち

LDを障害別ではなく、タイプ別に分けてみます。

これは、これまで読んだ本の中にあったものです。
私はピアノレッスンで役立つものがほしかったので、この方法はわかりやすいと思いました。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


タイプ1 <知覚統合が弱い子供>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★目で見て理解することが苦手 ★動作で表現することが苦手 ★持ち物の整理や分類が苦手 ★聞いた内容を頭の中でまとめることが難しい ★位置や方向、場所などを間違える ★量を比較することが難しい ★形を判別し組み立てることが難しい
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・一つ一つ順を追って説明 ・部分から全体へ説明 ・頭の中で操作させず具体物を用いる ・図形の特徴など言葉で定義付け

これは感覚器官の問題で、空間認知にかかわることです。文字の形を正しく捉えられず読字に困難が生じたり、図形や量的なものの把握、筆算の桁がずれて計算に困難を生じたりすることもこの感覚がかかわっています。地図の見方がわからない、時間の流れを感じ取ることが苦手というのもこの感覚です。

ピアノレッスンでは、音を読むこと、鍵盤の位置、リズム、テンポ、拍子といったことと関係するのではないかと思います。



タイプ2 <言語理解が弱い子>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★言葉を理解することが苦手 ★言葉で表現することが苦手 ★言葉を使って考えることが苦手 ★時間の概念を表す言葉の理解が難しい ★会話に参加するのが難しい
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・選択肢の中から答えられるようにする ・子供の表情や最初の言葉を手掛かりに教師が代弁してあげる ・吃音で自信がない場合は一緒に話す

これは表出性言語障害です。言葉の使い方、話しをまとめる力にかたよりがあります。話したいけれど、どのような言葉でどの順番で話せばよいか頭の中で整理がつかないのです。言葉を思い出すのに時間がかかり、言いたい言葉が出てこなく「あれ」「それ」といった指示語が多くなります。自分の考えを整理するのに時間がかかると、話すまでに時間がかかり、焦って上手く話せなくなったりします。子供を委縮させる注意をしないことです。


タイプ3 <注意喚起が弱い子>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★言葉や数をすぐ覚えることが苦手 ★聞いたことをすぐ忘れる ★聞き間違いがある ★長い話を聞くのが苦手 ★話を聞きながら書き取れない ★ちょっとした雑音でも注意が逸れやすい ★相手の話を最後まで集中して聴いていられない
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・注意の集中を促してから話しかける ・一度で出来ない時には指示を繰り返す ・指示、説明は簡潔に ・絵や文字を使う ・手を取る、指でさすなどの身体的援助 ・自分に言われていることを明確にするために名前を呼んだり、顔を見てゆっくり話しかける ・落ち着いた教室作り ・掲示物は極力避ける

これは、記憶障害、聴力障害です。騒がしい場所で人の話を聞くことや発音が似ている言葉を聞き分けるのが苦手な場合があります。耳が脳に何を送ったか脳がわからず、信号が混乱し脳は別のものを聞いてしまうのだそうです。

ピアノレッスンではリズム、テンポ、拍子に関係してくると思います。



タイプ4 <処理速度が遅い子>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★目で見たことをすぐに覚えることが苦手 ★形を正確に捉えることが苦手 ★物事をすぐに処理することが苦手(目と手の対応) ★必要なものがすぐに見つけられない ★授業の準備を間に合わない ★授業時間内に課題が終わらない ★書くのが遅い ★黒板を写し終えることに時間がかかる ★書く時の姿勢や、鉛筆・消しゴムの使い方がぎこちない ★活動のペースがゆっくりで同学年についていけない
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
【対処法】
・言葉で説明する ・課題に費やす時間を十分にとる

これは記憶、空間、運動能力障害のことです。運動能力障害は体を上手に動かすことが苦手ということです。楽器の演奏にかかわってきますので、下に少し詳しく書きます。

ピアノレッスンでは、音の読み、鍵盤の位置、和音、両腕の感覚、姿勢といったことに関係すると思います。


運動能力障害
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
★細かいものが作れない ★紐を結んだり、ボタンをかけたり、洋服をたたんだりといったことが上手くできない ★運動が苦手 ★字が下手 ★基礎的な動作がゆっくりになる ★自分の身体のどの部位をどのように動かせばよいか、止めればよいかイメージできない ★指先・腕・脚などに力を入れたり抜いたりといったコントロールが上手くできない ★人の動作を真似ることが出来ない ★体の複数の動きをコントロールすることが苦手
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
これらの感覚を向上させる方法はこのブログの初期の頃に書きましたので、参考にして頂ければと思います。

「どちらの手を動かしているかが分からない」子供3(第11号) - おとのくに♪♪
「どの指を使っているかがよく分からない」子供(第12号) - おとのくに♪♪
「ピアノを弾く時の姿勢」について(第13号) - おとのくに♪♪





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発達障がいについて④-3 LD診断の注意

2023年03月03日 | 苦手なことがある子供たち

ここでひとつ大事なことを書いておきます。

診断についてです。

これは不用意に私たちが憶測で本人や保護者の方に「LDではないか」と言ってはいけません。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


何らかの発達障がいを見出した時に、母親にフィードバックすることは専門家でもたいへんな事だと言います。

特に行動に問題がなく、LDだけの場合は納得してもらうのが難しいそうです。

専門家は、こういう状態なのでつまずきがあるのではないですか?とはっきりさせた上で、つまずきの強い所、苦手な所をフォローすることを考えたい、と話すようにしているそうです。

他の子と違うから、遅れているからフォローさせてほしいという言い方は絶対にしないと。


何とか救いたいということでお願いすると親御さんも気付いている部分もあるせいか、承諾してくれるそうです。

そうは言っても理解してもらえないお母さんもいると。
感情的になり、「うちの子は違います」と言い張られ、1年位かかる人もいるそうです。

普通は文字を書き始めて、あれっ、と思うケースが多いそうですが、小3くらいまでわからないケースもあるそうです。
その間に子供がつぶれてしまう可能性もあり、その結果、学習の積み残しが増え、いじめ、不登校も出てくると。小5になって不登校になり始めて初めてLDと気付いた子もいたそうです。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

一方、早くからLDを心配される保護者の方もいらっしゃいます。

保護者の方が必ずしも発達障がいのことを詳しくご存知とは限らず、特に就学前のお子さんは大人が考えるほど抽象的なものの理解ができるわけではないので、ピアノレッスンでも丸の位置がよく分からないと心配されたり、ドレミの順番が覚えられないと心配されたりする方がいらっしゃいます。

頼りになる兄や姉がいる下のお子さんは、わからないことは教えてくれる、出来ないことは手伝ってくれることが日常的に多いと、小さい内からピアノの面倒な楽譜を自分で読めるようにしようとは思いません。

家庭環境もそのお子さんの発達には関係します。


④-1 LD 学習障害でも書きましたが、就学前のお子さんはLDと決めるのが難しいと言います。危険性が高い子供としては、

ボールを取れない。おもちゃを扱えない。言われたことを理解できない。5歳で10まで数えられない。色の名前が言えない。

ということが挙げられます。


運動能力や空間認知、聴力、記憶力に関することだと思います。

良く身体を動かし、友だちと遊ぶ。その経験がしっかり持てているかも関係してくるかもしれません。


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発達障がいについて④-2 LD 苦手の正体

2023年03月02日 | 苦手なことがある子供たち

LDの定義をわかりやすく言うと、次のようになると思います。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
知的な能力に大きなつまづきがないものの、
・聞いたことの理解が難しい
・話したいことがうまく表現できない
・文字の読み書きが苦手
・数の大小がわからない、繰り上がり・繰り下がりの計算ができない
・図形や時間の流れ、文章のストーリーをたどることが苦手
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

このような子どもたちの頭の中では、何が起きているのでしょう。

聞いたことがわかっていないからと言って、話を聞いていないのか!なんてことにならぬよう、最初の2つについて少し解説をしたいと思います。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


聞いたことの理解が難しいのは
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・長い質問を覚えていられない
・耳から入る情報処理能力が弱く、行動が遅れる
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


話したいことがうまく表現できないのは
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・話したいけれど、どのような言葉でどの順番で話せばよいのか頭の中で整理がつかない
・話し方がおかしいとからかわれた経験が原因で、言葉を発することに抵抗を覚えてしまうケースがある
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

学校では、授業が何時間目で何の教科かなかなか思い出せない、忘れ物が多い、机や椅子をガタガタ動かしたり他のことに気を取られている、ボーっとしている、ということが見られますが、これも理由があります。

授業中に何の教科を勉強しているかという意識を持ち続けることが苦手だったり、忘れ物をしないという気持ちを保つことが難しい、先生の話が理解できず課題に取り組めずにどうしていいかソワソワしている、気が散りやすい環境に置かれている、といったことがあります。


ボンヤリしている子に怒鳴ったり、なぜ集中できないか追求したり、長々と説教したりすることは逆効果です。本人も集中することが出来ないことを悩んでいる場合が多く、攻めると自信を失わせます。

心理的に追い込まないよう接することが必要になります。

他の子が出来ることが出来ないので不安な気持ちでいます。
自信を失ってばかりいると自分を肯定的に認める気持ちが育まれず、自暴自棄になったり、周囲に反抗心を抱いたりしてしまうことがあります。


叱咤激励は禁句です。励ましたり叱ってできるものではないので、問題の根本を考えて対応する必要があります。ひたすら反復練習させても成果は上がりません。

本人の努力で出来そうな課題を設定して、それができたら大いに褒める。本人にひたすら努力を求めるより、手掛かりやヒントを与える、口頭による指示だけでなく見て分かるようにすること。

LDはこちらが方法を考えれば対処できます。
一般的に取られている対処法は別の回に書きたいと思います 


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


さて、LDの詳しい種類についてここまで全く触れてきませんでした。
代表的なものは、読字、書字、計算の障害になりますが、その他にも教育的領域から見ると存在します。

これが私が本を読んで勉強した頃、わけがわからなかったことです。
本によって障害の名称も種類も異なっていたからです。どれが本当なのだろうと思いましたが、どうやら統一されていないようです。

また、発達障がいがひとつずつ区切ることができないように、LD自体もそれぞれ関連しあっています。

一応、LDにどのような種類があるか、ここに挙げておきます。

読字障害・書字障害・計算障害・空間認知障害・表出性言語障害・聴力障害・記憶障害・運動能力障害

空間認知障害を「推論することが苦手」、運動能力障害を「不器用」と表しているものや、これをLDとはせずに発達障がいのひとつのカテゴリーとしているものもあります。また、聴力障害と記憶障害を表出性言語障害に含めているものもあります。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

これら全てのLDについてこちらに書くことは致しません。

ピアノレッスンに関係すると思われるものを選び、書くことにします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献

『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』 
上野一彦 月森久江 著/ナツメ社/2010年

『怠けてなんかいない!セカンドシーズン2 あきらめない読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方』
品川裕香 著/岩崎書店/2010年

『じょうずなつきあい方がわかる LD学習障害の本』
宮本信也 監修/主婦の友社/2009年

『こんなとき、どうする?はったつしょうがいのあある子への支援 幼稚園・保育園』
内山登紀夫 監修/ミネルヴァ書房/2009年

『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子を育てる本』
月森久江 監修/講談社/2008年

『健康ライブラリー LD(学習障害)の全てがわかる本』
上野一彦 監修/講談社/2007年

『LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)子どもたちの「学び」と「個性」』
上野一彦 監修/講談社/2003年

『うちの子、なんかちがう?学習障害(LD)とその周辺の子どもたち』
上野一彦 監修/小学館/2003年

『学習障害 発達的・精神医学的・教育的アプローチ』
齊藤久子 監修/プレーン出版/2000年


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発達障がいについて④-1 LD 学習障害

2023年03月01日 | 苦手なことがある子供たち

学習障害は、アメリカ精神医学会の最新版DSM-5により、限局性学習障害/限局性学習症と診断名が変わりました。

DSM-Ⅳで使われていた学習障害という言葉は、現在でもよく使われています。

LDは、アメリカ精神医学会の医学的判断ではLearning Disorder(混乱)の略、文部科学省ではLearning Disabilities(障害)の略。

LDは治療はできませんが、教育を工夫することによって学習機能を高めたり、改善することができます。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

医学的にLDは、「読み、書き、計算」の障がいに限定。
文部科学省の教育的領域では、「聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力」の障害と範囲が広がります。

文部科学省はLDを次のように定義しています。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。 学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

これは1999年に作られたものと現在も変わっておりません。


もう少し柔らかく言うと、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
知的な能力に大きなつまづきがないものの、
・聞いたことの理解が難しい
・話したいことがうまく表現できない
・文字の読み書きが苦手
・数の大小がわからない、繰り上がり・繰り下がりの計算ができない
・図形や時間の流れ、文章のストーリーをたどることが苦手
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

これらに関しては、次回もう少し詳しく見ていきます。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

文部科学省は2002年から10年おきに、学習面・行動面で著しい困難を示す生徒の割合を全国調査しています。

これは支援を必要としているものの、通常学級にいて支援を受けられていない生徒という意味です。

調査が始まった2002年は、公立小中学校の通常学級の6.3%に存在する結果となりました。40人に2.5人。
通級、特殊学級、養護学校で既に支援を受けている生徒が1.4%。支援が必要にもかかわらず受けていない生徒がこれだけ存在するということです。
内訳は、LD 4.5%/ADHD 2.5%/LDとADHD 1.2%

第3回となる昨年2022年は、全体の8.8%。40人に3.5人、30人に2.6人です。
内訳は、LD 6.5%/ADHD 4.7%/ LDとADHD 2.3%


ピアノの生徒が30~40人いたら、これに近い人数に出会っても不思議ではありません。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


発達障がいは症状が重複しますが、LDに伴いやすい症状として、ADHD、運動能力障害があり、LDの3~5割に見られます。また、てんかんはLDと合併しやすい病態のひとつです。

てんかんは、大脳神経細胞が過剰に放電することで起きます。
放電の場所により症状は様々ですが、全身または手足の痙攣、意識障害、無意味な仕草、脱力と言った症状が現れます。
痙攣以外は気付かれないことがあり、突然の意識消失やぼんやりした表情を見せ数秒~数十秒で戻る小発作や、きょろきょろしたり、変な音、におい、痛みを感じるといった、意識がある単純発作などがあります。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


LDはサポートによって学習機能を高めたり、改善できますので、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・なるべく早い段階で児童相談所、小学校に相談
・臨床心理士、言語治療士のいる大きな病院の小児科、精神神経科を受診
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

親が抱え込むことは子供の苦しみを大きくすることにつながるので、最も避けるべきことです。

ただ、就学前の子供の判断は難しく、危険性が高いとしか言えないようですが、次のような症状があるそうです。

ボールが取れない。おもちゃを扱えない。語らい語が少ない。言われた言葉が理解できない。5歳で10まで数えられない。色の名前が言えない。

小学生になると、学業成績が悪いことで表面化します。注意散漫、鉛筆の持ち方が悪い。字が下手。運動が上手くできない。算数の成績が悪い。


実は私の生徒さんで、過去に2人、気になる生徒さんがいました。
別の機会に少し書こうと思いますが、1人の生徒さんに関しては、私がもしかしたらと思った時には手遅れでした。

家でもの凄い大声で叫び、ご近所から何事かと心配されると聞いた頃に、私のもしかしたらという考えは確かなものになりつつありました。

小学1年生でした。ピアノレッスンではLDのことに触れなくとも補助をする方法がありますので、それを試そうと思い始めた頃に退会されました。

お父様が、学校の勉強もできないのにピアノなんて習っている場合ではない、と仰ったそうで、退会手続き後にお母様にそのお話を伺い、残り1回のレッスンで急に新たなことをしたところで、それがどのような効果を発揮するものかわからないまま最後のレッスンを終えても本人が困惑するだけなので、何もできませんでした。

もう20歳は過ぎているはずです。どうしているかと今でも思い出します。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

LDと診断されるまでには検査が必要です。

ウェクスラー式知能検査がまずは行われ、LDであると推定されると3つの検査が行われます。

どの分野が苦手であるかの検査です。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

サポート機関がいくつかあります。
全国LD親の会は1990年発足。この会の発足により、日本でLDの支援が始まりました。アメリカでは1963年にその動きがあり、1975年には正式に教育支援の対象となっています。
日本では、2007年に本格的な特別支援教育が全国的に開始されました。
新着情報等最近の動き:文部科学省

LD情報を得られる公的機関もあります。
国立特別支援教育総合研究所
発達障害教育情報センター
発達障害情報センター


日本はアメリカより30年位遅れています。
支援が始まっても浸透するにはさらに時間がかかります。
知ることは大事です。音楽を専攻する学生さんはレスナーになることが少なくないと思いますので、授業で発達障がいについて学んでいると良いのですが・・

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


参考文献
『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校編』 
上野一彦 月森久江 著/ナツメ社/2010年

『怠けてなんかいない!セカンドシーズン2 あきらめない読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方』
品川裕香 著/岩崎書店/2010年

『じょうずなつきあい方がわかる LD学習障害の本』
宮本信也 監修/主婦の友社/2009年

『こんなとき、どうする?はったつしょうがいのあある子への支援 幼稚園・保育園』
内山登紀夫 監修/ミネルヴァ書房/2009年

『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子を育てる本』
月森久江 監修/講談社/2008年

『健康ライブラリー LD(学習障害)の全てがわかる本』
上野一彦 監修/講談社/2007年

『LD(学習障害)とディスレクシア(読み書き障害)子どもたちの「学び」と「個性」』
上野一彦 監修/講談社/2003年

『うちの子、なんかちがう?学習障害(LD)とその周辺の子どもたち』
上野一彦 監修/小学館/2003年

『学習障害 発達的・精神医学的・教育的アプローチ』
齊藤久子 監修/プレーン出版/2000年


参考サイト
学習障害(限局性学習障害,LD)とは?症状、支援方法を解説します。|スタジオそら学習障害(限局性学習症)
軽度発達障害フォーラム LD 統計
https://www.mext.go.jp/content/20221208-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf
LDとは?LDの定義から歴史まで徹底解剖!【詳解LD】 | Easpe
第6回 てんかんと発達障害 | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターてんかんのある子供の教育|てんかん情報センター
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症状は変化する

2023年02月25日 | 苦手なことがある子供たち

現在小学4年生の男の子の生徒さん。

卒園する頃からレッスンに通っています。
少し前に不思議な音の国上下巻とも終わりました。


体験レッスンは年長の1月だったと思います。
その時に、ADHD と言われました、とお母様から伺いました。

レッスンは考えてお返事しますとおっしゃり、1か月後にいただきました。

ADHD にしては落ち着いている印象でした。もっとたいへんな生徒さんは普通にいます。
集中力がなく、しょっちゅう体を動かしていたり、レッスンに関係のない話を突然したり、いつまでも話し続けていたり、ページの先が気になってこれは何?これはどうやって弾くの?ときいてきたり。

彼は、そのようなことはほとんどありません。
時々、先の事が気になるようですが、「今はいい」とか「まず、こっちだ」と言って自分でコントロールしようとしています。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


ただ、小3の終わり頃から、自分で勝手にどんどんイライラしてくることが出てきました。

「できない」と言ってイライラ。

ゆっくりやればできるから、と私もゆっくりな声で静かに話すのですが、イライラはエスカレート。そうなると、口出しすると余計に駄目になるので黙って見ているしかありません。

それがレッスンの終わり頃に来ることがあり、本人は目に涙を浮かべ、怒ったまま終わることになります。


その姿を見ると、他のお母様でしたら一大事と大ごとになることもありますが、彼のお母様はその辺りのことは心得ていらしていて、あらまぁ、仕方ないわね、というお顔をされます。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


その生徒さんを見ていると、自分はできない、と必要以上に思っている節があります。
学校でどのような経験をしたかはわからないのですが、解ることが君にはできる、と知ってもらうことがピアノレッスンでの役割では、と思っています。

気持ちだけが焦って、思考が停止しイライラして怒り出しているだけなので、言葉でなだめても通じないわけで、実際に解ることを経験してもらうことが必要です。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


今回、ほぼ10年振りに発達障がいのことをこちらにまとめていて、自分で過去にまとめたADHDの所を読んでいて、 ADHDの25~50%に9歳前後に現れる症状があることを思い出しました。先日のレッスンで初めてチックが表れていたので、慎重に見守らなければと思います。

また、最近その生徒さんは、話が通じにくくなっていると感じます。男の子は一度にふたつの事を言ってもわからないお子さんが多いので、ひとつずつにしていますが、そのひとつを伝えるのに時間がかかるようになっています。

例えば、ある小節の音の動きを楽譜を指差して話していても他の所だと思って「わからない」とイラついてきたり、右手だけと言っても何をしたら良いかわからずにいて、両手で弾こうとして「できない」とイラついたり。



年齢によって症状に変化が見られ、いつも良い方に向かって行くわけではないことを忘れてはいけない、と改めて自分の中に刻みました。

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発達障害について③-2 ADHD児の行動への対応

2023年02月24日 | 苦手なことがある子供たち

ADHDの生徒さんにどう対応したらよいか、本にあることですがまとめてみます。

ピアノレッスンで参考にできることがあるかもしれません。



<立ち歩く>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
思い付いたらすぐ行動に移ったり(ADHD)、学習が理解できず集中力をなくしている(LD)        
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
用事を頼む。ハンドサインを決めてがまんを覚えさせる。



<些細なことで感情が高ぶる>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
感情をコントロールする力が弱い       
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
怒ったり、泣いたりしないことを目標にする。ゲームなどで勝ち負けにこだわり負けそうになると怒りだしたり、泣き出したりするときは「おしい!」「いいところまでいってる」と次回に期待を持たせる言葉を掛ける。ピンチに陥った時に「このスリルがたまらないね」とゲームのワクワク感を味わえるようにする。誰にでも負ける時はある。気にしない、気にしないなどと声を掛ける。深呼吸する、水を飲む、何かを握りしめる。



<思い通りにならないとダダをこねる>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
ADHDのある子は感情を抑えることが苦手。泣き叫んだ結果、思い通りになった経験が重ねると、意見を通す手段として学習してしまう     
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
あくまでも冷静に対応する。子供が興奮している時には頭ごなしに注意するのではなく、まずは落ち着かせる。その後「それはいけない」「〇〇しましょう」と静かに低い声で言いきかせる。場所を変えて話す。なぜいけないか、どうすれば良かったか穏やかに説明する。「〇〇したかったんだよね」と気持ちを受け止める。



<学校へ行きたがらない>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
うまくいかないことが多く恥ずかしい、みんなと同じように出来ずやる気がなくなっている      
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
自分が置かれている状況を説明することが苦手で、自分でもなぜかよく分からないことが多い。子供のストレスが強ければ、2~3日休ませる。背景に何があるのか、どのような対策が必要か先生と保護者が一緒に考える。


<登園をしぶる>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
母親と離れるのを嫌がる。何のために行くかわからない。感覚面で過敏さがあり色々な刺激に耐えられない        
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
母親と離れるのが怖いのは、あとで迎えに来るということがわからず不安だから。いつ迎えに来るかわかりやすく伝える。門に入ってしまえば平気な子、保護者がいなくなれば遊び始める子もいる。



<家でちっとも勉強しない>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
勉強に対する苦手意識が強い、一人ではできない、手順がわからない       
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
勉強する曜日、時間を決める。終わったら必ずほめる。カレンダーに記録する。テレビを消し家族全員が勉強モードになる。空腹時、満腹時を避ける。親は過剰な声かけ、指示は避ける。



<習い事をやめたい>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
なぜやめたいか確かめる。ほかにやりたいことがあるか、本当によく考えてのことか。説得するばかりではなく、子供の気持ちを受け止めその上で対策を練る。 
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
話し合いは子供が本当に自分がやりたいことを考えるきっかけになる。どう説明すれば自分の気持ちを分かってもらえるかを学ぶ機会になる。やめる時期をすぐにではなく、〇〇が出来るようになったらと区切りをつける。もったいない、結局はダメかは言うべきではない。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


自分の気持ちを言ってもどうせ否定される、という経験を子供に何度もさせてしまうと、言わなくなります。気力をなくすか勝手に事を進めてしまうかになると思います。

親や周りの大人は自分の意見を押し付けず、まずは本人の考えや気持ちを聞くことです。

ここに書いたことは、ADHDに見られるだけではなく他のお子さんにも通用するはずです。ピアノレッスンでもお目にかかることが少なくない話です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障害のある子へのサポート実例集 小学校篇』上野一彦 月森久江 著 / ナツメ社 / 2010年
『こんなとき、どうする?発達障害のある子への支援 幼稚園・保育園』内山登紀夫 監修 / ミネルヴァ書房 / 2009年
『健康ライブラリー AD/HD,LDがある子供を育てる本』月森久江 監修 / 講談社 / 2008年

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発達障がいについて ③-1 ADHD

2023年02月23日 | 苦手なことがある子供たち

ADHD、ADDといった言葉を聞いたことがあると思います。

ADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害のことです。

以前は注意欠陥・多動性障害と呼ばれていましたが、アメリカ精神医学会のDSM-5の改訂で現在の診断名に変わりました。

ADDは多動のないものです。現在では不注意優勢型ADHDと言うそうです。
大人の場合は、整理が極端に苦手、物が捨てられない、エネルギッシュに物事を始めるものの途中でやめてしまう、といった症状が現れます。


ADHDの障害は次の3つです。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・不注意(注意を持続させることの困難)
・多動性(過剰な行動)
・衝動性(衝動をコントロールする・抑制の欠如)    
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

これらは同程度に混同するわけではありません。


基本障害は行動抑制の欠如ですが、症状や問題は変化して行きます。
幼児期・学齢期(6~15歳)にかけ、多動・衝動性が見られますが、学童中期には多動は収まってきます。
不注意は思春期以降も続く傾向があります。

男児に多く、女児に対し5:1~8:1の割合で見られます。
常に症状が出るわけではなく、教室や大勢の中、勉強時間、食事中、支度中に現れます。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


アメリカ精神医学会のDSM-5は、多動症/注意欠如(ADHD)になりましたが、その前のDSM-Ⅳには、注意欠陥および破壊的行動障害とありました。
破壊的行為障害とは、行為障害・反抗挑戦性障害・特定不能の破壊的行為障害を言います。

WHOのICDには、現在も行為障害、反抗挑戦性障害が書かれています。

(発達障がいの診断基準はDSM(アメリカ精神医学会)とWHO(世界保健機構)の2種類存在します)

反抗性挑戦障害は非社会的行為ではありません。

ADHDの25%~50%に反抗性挑戦障害は現れます。
これは、9歳前後に発症し思春期以降は発症しません。かんしゃく、口論、大人の要求を無視、わざと他人をイライラさせる、執念深い、といったものです。精神療法やカウンセリング、両親への行動療法が必要になります。

そして、これが進んでしまうと行為障害という2次障害が引き起こされます。
2次障害とは、発達障がいが原因で起こる失敗や挫折の繰り返しから、感情や行動にゆがみが生じ、周囲を困らせてしまう行動をとることです。


行為障害は、ADHDの10%にみられます。残虐行為、放火、盗み、家出、激しいかんしゃく、といった非社会的行為です。
行動を間違っていると認識していることが滅多になく、罪悪感が欠落しており治療は困難です。施設での治療が必要になります。


ここまで進んでしまう原因は、出来ないことや不快に感じることに配慮して対応しないためです。

反抗挑戦性障害の段階で、上手く行かないことが多いことから、「わざとふざけている」「やればできるのに」「何度言っても言うことを聞かない」と親が叱ってばかりいると危険です。

防ぐためには、
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
・雑談をする
・返事が返らなくとも腹を立てない
・気長に構える
・感情を表に出せるよう仕向ける     
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
返事が返らないのは、無視をしているわけではなく、自分の気持ちについて話すことに慣れていない、自分の好きなことについて考えていて気付かないことがあるからです。


¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨


家庭での対応が大切です。他の発達障がいと違い、気持ちの持ちようとか、心がけ次第とか思われてしまう可能性があります。ADHDは前頭葉の機能不全です。(前頭葉は注意・思考・感情のコントロールをつかさどり、物事を整理・処理・実行する機能を担います)

家でもピアノレッスンでもガミガミ言われていたら、その子供は行き場がなくなります。

ピアノのレッスンは雑談が必要な子供の場にもなります。
ピアノレッスンを受ける目的が、必ずしもピアノが弾けるようになるだけではないのです。

話している内に、自分の中にあることが整理されて見えてきます。
親以外のよく会う大人で、しかも学校の先生と違い一対一です。
2年でも3年でも、その生徒さんが気が済むまで話に付き合えるのがピアノの先生でもあります。


30分レッスンの25分が雑談でピアノは5分でも、その生徒さんにそれが一番必要なことでしたらそれで良いのです。

後ろに生徒さんがいなければ、教室が閉まる時間まで話を聞くことだって出来ます。ピアノを全く弾かずにそうやって毎週1時間半過ごした生徒さんもいます。


雑談ができるのは、あまり小さい年齢では無理で、小学校高学年以上です。

毎週一人一人の生徒さんと会っていて、しかも幼児から大人まで接しているピアノ講師は、学校の先生や親とも違う存在です。

そうは言っても、頑なに人に頼れないタイプの子供もいます。親がそのようなタイプであり、迷惑をかけてはいけないと考えているのかもしれません。人を頼ることは悪いことではありません。人間は誰かの役に立てることを嬉しく思うものです。

その子供が話せるようであれば、話を聞く。
2人の間だけの話。親に筒抜けにしないで。

誰でも、最後に決断するのは自分です。
それができる日まで見守る縁が訪れることも私たちにはあるのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障がいの子供たち』 細川徹 編 者 / 中央法規 / 2003年
『発達障害ガイドブック』 東篠恵 著 / 考古堂 / 2004年

参考サイト
ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?特徴やよくある困りごと、接し方など|LITALICOジュニア|発達障害・学習障害の子供向け発達支援・幼児教室|療育ご検討の方にも
ADDとは?症状や診断基準、ADHDとの違いを解説します


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優しさ

2023年02月17日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の女の子のレッスンを始めて6年経った時にあったこと。

これは私への最大の贈り物。



ご両親に連弾を聴いて頂いた時のこと。

喜んでくださったお二人の姿を見て、ご両親がレッスン室を出られたあと、「ありがとう」と私の腕をなでながら言いました。

その時、私は心の中がフワリと温かくなり、「私の方こそ、ありがとう」と、いつの間にか、人に感謝する気持ちを知った彼女に驚きながら喜び合いました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


私は彼女と出会ったことで、相手をそのまま受け入れることを学びました。
性格や考え方といったものではなく、本人にもどうにもならないことがあると知り、それは他の生徒さんとの付き合いにも活きていると感じます。

受け入れるということは気付くことでもあります。
彼女は私にそれを授けてくれ、それが私から他の人にも伝わっているように思います。


また、彼女には曖昧さは通じず、いつもまっすぐに向かっていくしかありませんでした。

嬉しい時は本当に喜びを表し、良くないことは本気で叱りました。
彼女は私に素の自分を出して共に歩むことを教えてくれました。


もし、自閉症の生徒さんに出会ったら、講師として自分は何もできない、どうしたら良いかわからないと避けずに、その生徒さんが出来ることを探して、成長を待って、まっすぐ向かってみてください。

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