おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

こんなに弾けるとは

2023年02月16日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の女の子と初めて連弾ができた時の感激は、今も忘れません。



シューベルトの子守歌の後、少しずつ笑うようになった彼女。

小3の後半から前の人のレッスンが終わるのを静かに待つようになりました。

そして、この頃から会話が成立するようになってきました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


初めて連弾ができたのもこの頃です。

私がピアノを弾くと必ず横でガチャガチャ弾く真似をしていたので、連弾は夢だろうと思っていました。


それが私が横で弾いても”弾かないで”というそぶりを見せなくなってきたので、もしかしたらと練習を進め、ある時、4小節の曲が、最後まで一緒に弾けました。

連弾が成功するとは思っていなかったので、この感動を独り占めにはできないと思い、レッスン室の外で待っていらしたお父様に「初めて連弾ができたんです。聴いて下さい。」と部屋に入って聴いていただきました。


「こんなに弾けると思わなかった」

と、喜んでいらっしゃいました。


別の日にお母様にも聴いていただきました。

連弾を聴き拍手をするお母様の姿を見て、部屋を出ていかれてから、その生徒さんが「喜んでた?」ときいてきました。

人の感情がわかるようになってきたのか、拍手をする時は喜んでいる時、と覚えたのか。
いずれにせよ、人の感情、気持ちというものの存在に気付いてきたと思いました。


連弾をするときに自分から「せいのーせ」と声をかけてきたり、冬さんさよならの歌で「冬はどこに行くの?」「春ってなに?」、ときいてくるなど、自分以外の存在、物事に関心が向いてきていました。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


小4の夏頃には、こちらから渡したものを両手で受け取れるようになり、冬には、静かに椅子に座り、自分の番になるとスクッと立ち上がりレッスン室に入るようになりました。

なかなか帰りたがらなかったものが、30分でレッスンは終わりなのだとわかるようになり、翌週のレッスンが休みの時に納得してもらうのに一苦労だったものが、休みの日もあるということがわかるようになりました。

これは少し笑える話で、なぜ休みかはレッスン回数が決まっているからなのですが、それを私が「一人で練習できるように」などとわかりにくい言い方で理由を言っていたもので、余計に納得できていませんでした。

それで、ある時に「先生も休みたいから」と言いましたら、それ以来、休みの週は「先生が休みたいから?」ときくようになりました。


小5になると、スタッフから手渡されたカード(会員証)を受け取る時に、奪い取るように受け取らなくなりました。鉛筆やペンの渡し方を覚えたのもこの頃です。

アスペルガーの人が書いた本に、このようにあります。
『物を受け取らせるには、ありがとうなどの返事や反応は一切期待せず、ただそのものをそこに置いて下さればいい』(モーツァルトとクジラより)

まずはここからスタートです。

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音楽療法

2023年02月11日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンを始めた頃、音楽療法で何かできるかもしれないと思いました。


音楽療法のことをよく知りませんでしたので、図書館に行ってみました。

数は多くはありませんでしたが、その中にCDのついた本が1冊ありました。
読むより聞いた方が速いと思い、その本を借りてきました。


CDを聴いて驚きました。
実際の現場を録音してありましたが、即興演奏でどんどん進めていて、その音楽が即興とは思えない完成度で美しかったのです。

1960年代のものでしたが、音楽が全く古くなく、ミュージカルのような音楽でした。


これは歌として何曲か生徒さんに歌ってもらいたい、と思いました。
挨拶に使っている曲がレッスンで使えると思い、譜面に起こし始めました。


そのようなことをしていた時に、同じ楽器店で同じ曜日に稼働している先生と帰りの電車が一緒で、そのCDの音楽が即興とは思えない素晴らしさ、という話をしました。

そうしましたら、「それ、ノードフロビンズ音楽療法じゃないですか?」と言われました。

そんな気もするけど、覚えてない··
ん?音楽療法に詳しいのかな?ときいてみますと、そのアシスタントをしていると。

なんという偶然。


曲の楽譜が出版されていて、確かヤマハでも買えると仰るので、早速買いに行きました。

何種類か出ていて、その中の挨拶の歌を集めたものを買いました。



音楽療法に関しては、私には無理だと思いました。
そのCDを聴くと、障がいのある子供の症状に合わせて音楽を作っているようで、自閉症で症状の強い子供には不協和音の連続で、しかもかなり強い音で何度も何度も叩くように弾いており、聞いていて気持ちが悪くなってしまいました。

こんなことは出来ないと思い、レッスンの始まりと終わりがわかるように挨拶の歌だけ使わせてもらうことにしました。

この始まりと終わりがわかるようにすることは、このような生徒さんのレッスンでは必要なことです。
彼女が小学校を卒業するまではこれを続けました。小6の途中から必要ないくらいになりましたが、学年の途中で辞めると良くない気がしたので、小学校卒業まで続けました。



ノードフ氏、ロビンズ氏のセッションの様子がyoutubeにありました。
いくつか拝見しましたが、CDで聴いたような音楽は聴けませんでした。しかし、このようにピアノのすぐそばで笑顔で行っていると知ることが出来ました。
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音を読むことは・・

2023年02月10日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の女の子に音の読み方を覚えてほしいと思い、「アルフレッドレッスンブックA」を使った話です。



この教本は5線を使用する前の段階が長く作られています。

丸の動きを見て弾いていきます。

そしていよいよ音を読む段階に入ると、ヘ音記号の「ファ」から始まります。

ヘ音記号の書き始めがファの音であるからですが、彼女に何度かそのことを説明するとわかってくれました。

内心そこまでは大丈夫だろうと思っていました。
しかし、そこから先は期待していませんでした。


ところが、ノートにファの一つ上の音を書き、「これ何?」ときくと、あっさり「ソ」と答えました。

そしてもう一度ファを書くと、それも「ファ」とあっさり答えました。

調子に乗り、もう一つ下の音を書いてみましたが、それはすぐには答えられませんでした。

毎回行っていたハンドサインでドレミの順番を「ソソソ、ファファファ、〇〇〇、レレレ」と歌って見せると「ミ」と答えました。

かなり誘導的でしたが、彼女が音を読んだ。信じられませんでした。


翌週、もう一度同じことをしてみました。
しかし、ファもソもミもわからなくなっていました。誘導しても適当な音を言うだけでした。

落胆しました。


その日はノートに同じ音に同じ色を塗る宿題を出して終わりました。

ただ、以前の彼女でしたら、興味がなければ適当に答えることさえしませんでしたので、これは進歩なのです。

2週間後、彼女は復活し3つの音を自らの力で読みました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


結論としては、音を読むことは不可能だろうと思っています。

「あいうえお」の五十音が組み合わさり言葉になるように、「ドレミ」の音が組み合わさり音楽になることが理解できなければ、何のために音を読むのか意味が解らないので、この抽象的な図形のようなものを読もうとは思いません。

また、2~3個の音が読めたとしても、いつも読めるわけではなく、音を読める日を待っていてはあまりに時間がかかりすぎます。

その間に身に付けられるであろう、聞き覚えや歌に時間を割いた方が余程良いと思います。


彼女にとって必要なことは、ピアノが一人で弾けることではなく、音楽経験を通して人とコミュニケーションを取ること、自分以外の人間の存在を認識すること。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


どこまでのことが出来るだろうと色々と試みる時間が、私には1年必要でした。

自閉症者はこだわりが強く、パターン化したものを見つけ出すのが得意です。しかし、不規則なものに対しての対応は困難に思います。

瞬間的に数がわかったり、形がわかったりという特徴があり、それをどうにか音を読むことに活かせないかと探ってきました。

何度も試してはやり直しを繰り返した結果、この結論に達しました。



自閉症児のレッスン経験がたくさんある先生は、すぐに方針を決められたのかもしれません。

ただ、同じ子供は一人としていないであろうこと、その時の気分で出来る出来ないにたいへん落差があること、年齢が上がると気持ちの成長に合わせて、以前出来なかったことでもそれを受け入れる気持ちになり出来るようになることがあります。

決めつけて進めることはするべきではないと思いますが、私の一つの結論として、音の読み方に関しては困難であろうと思います。


もしやるとしたら、初めから音楽本来の姿のまますることです。
五線の線や間に丸を書く練習などせずに。

様々なことが順を追ってしようと計画立てても、受け入れる気持ちになる時とそうではない時に落差があり、ひとつの線につながるのに時間がかかり過ぎるので、結局つながらないのです。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


実は、10年くらい前に大人の生徒さんで自閉症の方がいらっしゃいました。
お仕事を休職中で時間があるのでピアノのレッスンに通うと。ピアノは初めてではなく、ご経験がありました。
ご本人が楽譜を用意され、これを使いたいと持って来られました。その楽譜は音名が全てふられていました。私も音の読みがこの生徒さんに必要なことではないと思いましたので、それを使いました。鍵盤の位置を知ることと、5本の指を使うことが出来れば、知っている曲はリズムも取れるのでこのように音楽を楽しめるのだな、とその方を見て思いました。

レッスンスケジュールのカレンダーを渡した時に、レッスンが休みの日に❌を付けただけでお渡ししましたら(本当はレッスン有りの日には⭕も付けるのです)、「ここ、丸書いてもらえます?こういうの、ちょっと駄目なんで」と遠慮ぎみに言われました。
症状が軽いと思っていたので、生徒さんが多いと⭕を書く作業が負担で省略してしまったのですが、こういうのはやはり彼にはいけなかったのだと反省。

仕事に復帰できる体調になったので、ピアノレッスンと両方は出来ないと退会されました。
私は前後に生徒さんがいて知らなかったのですが、他の先生からこの生徒さんがお母様と一緒にいらしていて、教室の向かいに映画館があるのですが、そことの間にある椅子でいつも待っていらっしゃると聞きました。
私のレッスンの時には一度もお姿を現されたことがないのですが、色々と気遣ってそうされていらっしゃるとことが察せられました。そして、こうしてずっと静かに見守られていらっしゃるのだと知りました。


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みそしるレモンフランスパン

2023年02月09日 | 苦手なことがある子供たち

これは自閉症の女の子に、なんとか音の読み方を覚えてほしいと思い、試したことです。



「ふよみなんてへっちゃら(共同音楽出版社)」というテキストがあります。

最初にしたことは、高さの違う5つの「ド」を覚えてもらうこと。

これが覚えられなければ、たぶん何をしても無理だろうと思いました。
私が抵抗を感じるほど何度も繰り返し、5つの音のカードと鍵盤の位置は覚えられました。


そして次に行ったのは、このテキストにある簡単に音の読み方を覚えられる「みそしるレモンフランスパン」

ト音記号の第1線が「み」
一つとびで読むと「みそしれふぁ」になるので、それを「みそしるレモンフランスパン」と覚えてしまうものです。


最初にこの「みそしる」の話をした時に、彼女はたいへん興味を示し「もっと教えて」と言いました。なんだかワクワクしました。

こんな言葉、他の生徒さんからも聞いたことがありませんでした。
嬉しい言葉です。

しかしその日は、ちょうど時間がきてしまい、「みそしる・・」の読み方を詳しくすることは出来ませんでした。


翌週、その続きをしようとしましたら、彼女は興味を失っておりました。

こうなると興味を呼び覚ますのは至難の業です。
私はあきらめました。

たとえ興味を持ち続けていたとしても、この方法は彼女には向いていなかったのではないかと思いました。

なぜなら、その順番でしか読めないからです。
第2線にある音が何かと言うことになると「みそしる、だから、ソ」と考えていくことがおそらくできないであろうと思いました。


丸暗記はたいへん得意です。しかし、それを活用する力には恵まれていない。そのことを受け止めるのに私が1年以上かかってしまいました。


結局、彼女に多少なりとも有効だったのは、当時使っていた「アルフレッドレッスンブックA」でした。

その話は次回にいたします。

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後悔

2023年02月04日 | 苦手なことがある子供たち

3歳の自閉症の男の子のレッスンは、ゆっくりではありましたが少しずつ反応が良くなっておりました。

2カ月くらい経つと、少しずつ手を動かしたり声を出すこともするようになっていました。

家では、レッスンでしたことを一人でやり始めることもある様子でした。
こんにちはのリズムを手の平にトントンしたり、グーチョキパーの歌と共に手を動かしたりと。



ところが半年くらい経った頃、お母様の方が体調を崩され、しばらく頑張ってレッスンに連れて来られていましたが、療養しなければいけない状態になってしまいました。

国に帰って治療すると。ご出身が外国の方でした。

それで彼はレッスンに来られなくなりました。

お父様が1度だけ連れて来られましたが、手に負えない様子でした。
レッスン室のドアを開けると、ピューッと飛び出しあっという間に姿が見えなくなってしまいました。お母様と一緒の時はそのようなことが一度もありませんでした。あの体験レッスンのドアを開け放した時でさえ。


お母様が痩せてこられていたので、気になっておりました。
もう一人の自閉症の生徒さんのご両親と、お話をする機会を作った方が良いのではと思っておりましたが、出過ぎたことかとも思い、踏み出せませんでした。

今思うと、もっとお母様にお子さんはよくやっていることを伝え、お子さんとお母様のお二人を褒めるべきだったと思います。

異国の地で、しかも発達障がいの情報自体が日本では十分ではなかった頃です。

不安に思われていたことが多かったはずです。
私に経験が少なく、もう一人の生徒さんもどうなるのかわからない中で私自身も自信がありませんでした。

力になれなかったことを、今も悔やんでいます。

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失敗

2023年02月03日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンで失敗したこと。

何をしたら良くないことが起きるのかわからず、気を付けていたものの、このような反応が出てしまうのか、と思ったことがありました。



彼女が小学2年生だった時のこと。

彼女はいつも1本指でブツブツ音を切ってピアノを弾いていました。

(ロシアンメソッドを知った今でしたら、むしろスタートはそこからと思いますが、その頃はこの導入法を知りませんでした)


まずは指を順番に使うことを覚えてほしいと思っていました。

(今でしたら、まずは3の指だけで弾いてもらいます。)

その日はノリノリでピアノを弾いていたので、今ならやってくれるかもしれないと思い、指を順番に使うことを教え始めると、態度が一変。


突然無表情になり、壁の一点を見つめて動かなくなりました。

名前を呼んでも、揺らしても、顔を覗き込んでも、くすぐってみても、無表情で壁の一点を見つめたまま動きません。


完全に彼女の中から私は消えていました。
自分の周りに囲いを作った様子でした。


私としては軽く「こうするといいよ」と強制するつもりもなく言ったのですが、邪魔された気分だったのかもしれません。

しばらくこの事はしてはいけないと思い、1本指のブツブツのままでした。

しかし、この3カ月後、絵を見て弾くクラウス・ルンツェの「2つの手12のキー」というテキストを使い、両手で5本の指を使いレガートで弾くことが出来るようになりました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


私の失敗はもう1回あります。

また同じ状態にしてしまったのです。

それは音の読み方を教えた時でした。
自閉症児に音は読めないと言われていました。しかし、何か方法があるのではないかと、その機会を私は狙っていました。

まずは5線を使ってどのくらいのことがわかるかと試し始めた途端、無表情で壁の一点を見つめ動かなくなりました。

またやってしまいました。

すぐに歌を歌い始めましたら、彼女は戻ってきました。



自閉症の人は抽象的なものが苦手です。
彼女には、ドレミは音の高さやメロディーというものを表したものではなく、歌詞でした。ドという言葉が音の高さを表していることがわかっていませんでした。

今でしたら、楽譜を読むことにこだわらなくとも、聴いて覚えられる曲を弾いてもらいます。私がそのような曲の存在を知ったからです。

不思議な音の国の教本には、音のキャラクターがいるので、今でしたらもっと違う教え方ができるかもしれません。


結局、音の読み方を教えることは出来ませんでした。


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困惑

2023年02月02日 | 苦手なことがある子供たち

シューベルトの子守歌後、少しずつ笑顔が見えてきた自閉症の女の子。

レッスンが順調に進んできていました。


ところが、夏休み中にレッスンに1度しか来れなかったことから状況が一変しました。




久々に会った彼女は、どうしたことかハイテンションで落ち着きがなく、声もやたらに大きい。

歌やピアノも途中から勝手にテンポを速める。

彼女のピアノに伴奏を付けようとすると、私の手をどけて一人で弾きたがる。私が弾き歌いをすると横からピアノをガチャガチャ鳴らす。


8カ月前に戻っていました。


虚しさが私の中に沸き上がりました。
積み重ねが出来ない。またやり直しという想い。

せっかく彼女と楽しい時間が過ごせるようになってきていたのに・・


こんな時にいつも思いました。
ご両親は彼女と毎日一緒、一生一緒なのだと。

気を取り直してまた始めるしかない。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


このようなことはその後も幾度となくありました。
休みが続かなくとも。

やっとこれならできる、という状態になっても翌週にはその記憶をそっくりどこかに置いてきてしまったようでした。

その繰り返しでした。

しかし、年数を重ねてわかったのは、その時にできなかった、というより受け入れてもらえなかった、と理解した方がよいかもしれませんが、3カ月、6か月と間をあけて再び試みるとできるようになる、ということです。


どのお子さんでもそうですが、その時を待つことがレッスンには必要です。
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いらない

2023年01月29日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症と言われた3歳の男の子のレッスンでのこと。



レッスンを始めて4カ月位経った頃(3歳10か月)、彼が発したある言葉にお母様が驚かれました。

それは、「いらない」という言葉でした。


あるカードを見せたところ、気に入らなかったらしく「いらない」と言って戻して寄こしました。

私は「あら、いらないの」と普通に受け流しましたが、お母様が興奮した様子で、


「初めてこの子、いらないと言った」とおっしゃいました。

いつも手で押しのけるだけで、こんな風に言ったことがない、と。


その時初めて、私は彼が名詞しか言っていなかったことに気付きました。
そして、母親が子供が発する言葉にこんなに敏感であることに、どれだけお子さんの成長を心配されているかと思いました。


自分の気持ち、意志を表した言葉。


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シューベルトの子守歌

2023年01月28日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症と言われた男の子のレッスン。



シューベルトの子守歌を1回目のレッスンで試した時のこと。


最初に反応したのはお母様の方でした。

途中から英語で歌われました。お母様は外国の方でした。
日本語は達者でしたので、私との会話は日本語でした。

中間部に入ると、急にお子さんの表情がパーッと明るくなり、目を輝かせました。


弾き終えると、お母様が「この曲、この子好きなんです」


体験レッスンで大声を出しかけ、「バイバイ」と強く言った生徒さんが、次のレッスンでこんなに明るい表情を見せてくれた時、私はそんなに心配するほどではない、と勝手に思いました。


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まだジュース残ってる

2023年01月27日 | 苦手なことがある子供たち

私が最も印象に残っていて、驚き、そして嬉しかったこと。




小学2年生になっていた自閉症の女の子。

彼女は歌がとても好きな生徒さんでした。
一度聞くとメロディーも歌詞もすぐに覚えてしまいます。

しかし、私の歌を直後からなぞるように歌い、聞いてから模唱することはできませんでした。


そこで、歌いながらグー、パーという動作をして、グーの時だけ歌うパーの時は聞くというように練習して行きました。

そうやって歌やリズムは聞くことが出来るようになりましたが、ピアノは出来ませんでした。

ピアノは真似ることは全くなく、ただガチャガチャ鳴らすだけで、私が弾くと必ず隣でガチャガチャやり始めていました。
そして、私には弾くなという素振りをし、一人で弾きたがりました。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


彼女のレッスンではリトミック的なことも取り入れていました。
その日は山登りの設定で音楽に合わせ、坂道を上ったり下りたりしていました。

彼女はいつでも全力でしてくれていました。
ずっと歩いて走ってでは疲れるので、この曲が聞こえたら休みましょう、とシューベルトの子守歌をピアノで弾いた時のこと。
休憩なので、椅子に座って休むということにしました。

動いていない時に私がピアノを弾くと、いつも横からガチャガチャ弾く真似をしていました。この時もガチャガチャが始まるのだろうと思いながら弾いていました。

ところが、黙って聴いていました。


私の方がいつガチャガチャが来るか恐れ、中間部の前で1度目はやめてしまいました。

そしてまた山登りの音楽を弾きました。
彼女はまた椅子から立ち上がり、坂を上るように歩きます。


疲れてきたなと思い、シューベルトをまた弾き始めました。

椅子に座り黙って聴いていました。
彼女の様子を見つつ弾いておりましたら、結局最後まで弾いてしまいました。

最後まで弾き終えると、彼女が言いました。


「いい曲」


私がピアノを弾くのを黙って聴いてくれたのはこれが初めてです。


ある日、この曲をわざと途中で中止してみました。

そうしましたら、

「あーあ、いまジュースのんでたのに、おわっちゃった。ジュースまだのこってる」

と、言いました。

彼女からこんなに長い言葉を聞いたのは初めてでした。
そして曲が途中で終わったこともわかっている上に、何か想像しながら聞いていてくれたこと。


とても嬉しかったです。

後にシューベルトの子守歌が自閉症児に効果のある曲と知りました。

゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚


小2の夏まではほとんど笑ったことのなかった彼女が、シューベルトを聞いた頃から時々笑うようになりました。

この曲のおかげなのか、彼女が変わってきた時期とちょうど重なったのかはわかりません。


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初めて会った時

2023年01月26日 | 苦手なことがある子供たち

話が遡りますが、自閉症の女の子と初めて会った時の印象。




私は自閉症がどのようなものか全く知りませんでした。

ぼんやりとしたイメージでは、自分の殻に閉じこもったり、人と口を利かない、と思っていました。

引き継ぎの生徒さんでしたので、引き継ぎのレッスン見学で会ったのが最初でした。


実際に会ってみると、自閉症というものが余計に分からなくなりました。
イメージと異なっていたからです。

声は大きい、興味のあるものに関心は示す、突然騒ぐこともない。
初めて会った私に「なにせんせい?」と親し気にきいてくる。


私の方が逆に、自分の態度、行動、言動でパニックを引き起こしてしまうことがないか、最初の2カ月くらいは不安を抱きながら接していました。


レッスンを続けていく内に、会話が成立しないことやこだわりがあることがわかり、これが自閉症というものかとわかってきました。

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バイバイ

2023年01月21日 | 苦手なことがある子供たち

私が今も悔やんでいる生徒さんのこと。

それは生徒さんに対してというより、お母様に対して力になることが私でも少しは出来たのではないか、と。

これは、2005年の話です。




お子さんは3歳の男の子。

彼の体験レッスンの様子です。



「歌わない」「動かない」「叩かない(リズムを)」

よくあること。初めての場所、初めての人。
このようなことは誰にでもあります。

仕方がない。


しかし、ひとつだけこれまでの経験と違うことがありました。

何もしないのに、母親にしがみつかない。


嫌とも言わない、全く声を発しない。
ずっとピアノを見ている。全く視線が合わない。

次第に何度か視線が合うようになりますが、ゆっくりと静かにそらします。



15分くらい経ち、お母様がおっしゃいました。

自閉症と言われたと。


少し他の子供と違う態度を取ってはいましたが、それが初めての場だからなのか、自閉症だからかは私にはわかりませんでした。


それから5分くらい経ち、グズリ始めました。

お母様は懸命に本人に歌わせようとさせました。


その内、強くはっきりとした声で「バイバイ」と言いました。
初めて聞いた言葉が別れの言葉でした。


この言い方、そして自分が決めたことに大人を従わさせようとするような強い態度。これは自閉症特有のものと思われました。


一旦こうなると、続けることは出来ません。

しかし、お母様は続けさせようとしたので、今度は大声を出しかけました。


限界。


「こうなったら、〇〇くんは絶対にやりませんよ」と言って、レッスン室のドアを開けました。

ドアを開けたのは、その生徒さんにもう続けないから大丈夫とわかってもらうためです。


お母様には今すぐにレッスンを始めなくとも、もう少し待ってからでも良いのでは、と話しました。

3歳といえばピアノレッスンを始めること自体、容易ではありません。


しかしお母様は、他の英語教室で邪魔になるからと辞めさせられた、と。
お話を伺うと、この子の心を開くものがどうしても欲しいと。

グループの体験レッスンも受けていらしたので、グループでまずは始めて、様子を見て個人を始めても良いのでは、とお話ししました。
しかし、納得いかない様子。


結局、いつもレッスンに来るだけで何もできずに終わってしまうかもしれないこと、いつまで経っても同じことを繰り返していて進歩しないと感じるかもしれない。それでも宜しければ、ということで月の途中にも拘らず入会されました。


母親の必死な心情を感じたのは初めてのことでした。

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発達障がいについて② 自閉スペクトラム症

2023年01月20日 | 苦手なことがある子供たち

アメリカ精神医学会(DSM)第5版では、自閉スペクトラム / 自閉症スペクトラム障害と記載されています。

世界保健機構(WHO)の分類(ICD)では、今も自閉症と記載され、DSM第Ⅳ版にあった広汎性発達障害、アスペルガー症候群も記載されています。

目にすることのある、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群の3つについて書きたいと思います。


  


広汎性発達障害

自閉症を中核とするカテゴリーのこと。この中に自閉症やアスペルガー症候群が入っています。

対人関係の困難、強いこだわり、パターン化した行動がみられる障害の総称です。


自閉症

知的障害(精神遅滞とも言います)が伴うもの、伴わないものがあります。

自閉症の75%に知的障害があり、女子の方が知的発達では男子より重症。

IQ70が知的障害有無の境界ライン。知的障害の85%はこの軽度精神遅滞に属します。日常生活に差し支えない程度に身辺のことは出来ますが、普通学級で小学校過程の学習は困難。


<症状>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
① 他人が存在しないかのように見える行動
② 話し言葉発達の遅れ
③ 一本調子の平板な口調
④ 幼児期に指差しをしない
⑤ こだわり、固執
⑥ 相手の気持ちを思うことや共感ができない
⑦ その場の状況に合わせ適切に行動を選択することが困難
⑧ 想像力の欠如
⑨ 平衡感覚、視覚、聴覚に刺激を与え楽しむ
⑩ 迷子になりやすい
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
全員が同じ症状を持っているというわけではありません。

<解説>
①本当はわかっていて、見ない、聞かない、意識しないようにしてガードを張っています。

②③話し言葉が使えない子供が2~3割います。使える子供でも、テレビのフレーズ、大人の会話を真似ている場合があります。
(私の生徒さんで、母親の真似と思われる「あーぁ、ほんとにもうやんなっちゃう」と意味もなく言っていたことがあります。また、一方的に話しますが会話にはなりませんでした。何か言葉を返す時でもオウム返しになり、会話は成立しませんでした。わからない時には特にそうでした。)

④感動した時にそのものを指さすとか、見て欲しい、とって欲しいものを指さすなどのコミュニケーションです。

⑤ナンバープレートを読んでしまったり、時刻表の数字の羅列に惹きつけられたり、反復練習が好き、整理整頓好きと言ったことも含まれます。

⑥相手の嫌がることがわからない、喜怒哀楽がわからないなど。

⑦聞かれてもいないのに住所や電話番号を言うなど。
(私の生徒さんで、レッスンを終えた彼女の前の生徒さんにいきなり、「どこ行くの」「何年生」と言って戸惑わせていたことがあります)

⑧ごっこ遊びが難しいと言われています。ミニカーをただ並べるだけだったり、砂を瓶に詰めるだけだったり、そのようなことを楽しみます。

⑨グルグル回る、手をヒラヒラさせる、耳をふさぎ声を出すといったことです。

⑩半径50㎝の世界にいて外への興味を示しにくい。3~5歳になると、親を気にしながら歩き迷子になりにくくなってきます。その後は、知らない人に話しかけたり寄って行くということが起きてきます。


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自閉症の大半は多動を示すと言われています。
スイッチを見れば押す、隙間があれば物を入れるという衝動性が見られたり、自分の興味、関心で頭がいっぱいになると他のことに全く注意が払えない、など。

自閉症の発症率は昔と今では随分変化しています。
20年近く前には1万人に2~5人でしたが、15年位前には1万人に21~121人と調査機関により大きな差が出ているものの確実に増えています。
現在は自閉スペクトラム症は100人に1人いると言われています。



アスペルガー症候群

知的障害のない自閉症です。言葉の遅れもありません。

高機能自閉症という言葉がありますが、教育の領域で使われる言葉で診断名ではありません。知的障害はありませんが、言葉の発達に遅れが見られます。

<症状>
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
① 共感性の欠如
② 自分の気持ちを表現する、他人にわかってもらおうと努力することが苦手
③ 比喩表現、慣用句、ことわざの理解がしにくい
④ 被害妄想にとらわれることが多い
⑤ 友達とルールのある遊びが苦手だが分ると厳格に守る
⑥ 自分のことを棚に上げ他人の不始末を指摘する
⑦ 自分の関心のおもむくままにひたすら話し続ける

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

<解説>
①思いやり、相手の立場に立つ、相手の心を読むことが苦手。相手が自分と違うことを考えているかもしれないと言った推測が苦手。自分が嫌だと思うことを他人に言っても相手がどう感じるかわからない。

②できなくて、わからなくて、困っていますと言えない。その術を知らない。

③文字通り受け取ります。
馬鹿じゃない、顔かして、耳にタコができる、足が棒になる、油を売る、などそのまま受け取ります。

④大きな声を出されていると怒られている、いじめられていると感じる。

⑤⑥厳格に守るので、暗黙の了解がわかりません。
適当にさぼろう、などわからない。周りから浮いたり、ひんしゅくを買かったり、不登校になることがあります。

⑦興味のあるものしかしない。選り好みが激しい。


῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀

アスペルガーの症状は、症状を読んでいると誰にでも多かれ少なかれあるような気がします。

アスペルガー症候群の人は、周りと上手く行かない経験を多く持っているので、小学校高学年、中学生に診断名を伝えることは慎重に行う必要があります。自分を欠陥人間と受け取ってしまうことがあるので。

しかし、できるだけ早く適切な診断をし、対応を始めることが大切です。


気になる子がいたら、
・記録を付け、その子の実態を正確に把握(悪いところだけではなく優れた所も記す)
学校や専門の医療機関での治療教育や指導上の配慮を検討する際に、記録は重要な情報になります。
・一般の小児科や精神科ではなく、発達障がい専門の児童精神科、小児精神科に相談


接し方として、否定的な言い方は避ける。状況判断ができないので、~しましょう、~しようね、といった言い方で伝える。

叱る時には名前で呼ばない。大人になって名前を呼ばれると恐怖を感じる。

῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀

アスペルガー症候群はよく、他人の気持ちがわからないと言われていますが、必ずしもそうではないように思えます。

敏感に感じていることもちゃんとあって、ただそれが自分の中でどう表現したら良いかわからないでいるような気がします。多くのことを感じすぎてわからなくなっている、とも言えるのではないかと思います。

高機能自閉症の方が書いた本も読んだことがありますが、やはりそのように感じました。

(実は、私の所にはアスペルガーかもしれないと思った男子の生徒さんがいました。不登校で小6の時に学校を転校した時に私の所に移動してきました。彼とのレッスンも色々ありましたが、心配していた中学校は2年生の途中までは学校に行けていました。しかし、ある時から行けなくなりました。彼との出会いも私には非常に思い出深く、いつか書くことが出来たらとは思っています。最終的には立派に巣立ってくれました)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障がいの子供たち』 細川徹 編 者 / 中央法規 / 2003年
『発達障害ガイドブック』 東篠恵 著 / 考古堂 / 2004年
『高機能自閉症 アスペルガー症候群入門』 内山登記夫 水野薫 吉田友子 編者 / 中央法規 / 2002年
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発達障がいについて① 分類と種類

2023年01月19日 | 苦手なことがある子供たち

発達障がいについて、本を読むと書かれていることですが、こちらに少しまとめてみたいと思います。

発達障がいは、
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・子供の時期~青年期(22歳以前)に現れる
・生涯続き症状の軽減はあるものの治るものではない
・脳の機能障害が原因と言われている
・発達障がいの特徴として、同じ子供に異なる障がいが重複して現れる
・対応を誤ると本来発症しなくともよい障がいを発症-2次障害
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□



発達障がいという言葉はアメリカで使われるようになり、世界中に広がりました。Developmental disorders と言います。

日本語では「〇〇障害」と以前は表記されていました。
日本語では、学習障がいLDをLearning disabilitiesの略にしています。
disabilitiesは障害です。しかし、アメリカ、ヨーロッパでは disorders 混乱を使っています。

最近では日本語表記に害の字を当てないのはこのような理由もあると思います。
障碍とも書かれますが、常用外の文字なのでひらがながよく使われます。碍は妨げるという意味です。

῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀


発達障がいには世界共通で使われている分類法があります。

アメリカ精神医学会(DSM)と世界保健機関(WHO)の2種です。

アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアルは精神疾患のみに使われているのに対し、WHOは身体の病気も含めた疾患全般の分類(ICD)を記載しています。


発達障がいに関しては、個人的にはDSMの方がわかりやすい印象です。
日本でもこちらを使うのが一般的だそうです。(但し、厚生省のウェブサイトにはWHO の内容が掲載されており、日本はWHOに加盟していることから公式な診断や報告はICD を使う義務があるそうです)

DSMは、1992年に発表された第Ⅳ版が長く使われてきましたが、2013年に第5版が作られました。第Ⅳ版まではローマ数字で表記されていますが、第5版はアラビア数字です。


第5版では自閉症について変更が成されました。

第Ⅳ版では広汎性発達障害の中に、自閉性障害・レット障害・小児期崩壊性障害・アスペルガー症候群・特定不能の広汎性発達障害がまとめられていました。

それが、第5版ではこのカテゴリーがなくなり自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害(ASD)となりました。


῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀῀


発達障がいはDSMでは、神経発達症群 / 神経発達障害群という大きな分類の中にあります。

そこに7つの診断名があります。
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・知的能力障害群(知的障害)
・コミュニケーション障害群
・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
・多動症/注意欠如(ADHD)
・限局性学習症/限局性学習障害(LD)
・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)
・他の神経発達症群/他の神経発達障害群
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

発達障がいは単独では起きません。
上記の7つのものがいくつか重複して現れます。

LDに関しては、読字・書字・算数障がいと種類があります。
自閉症がスペクトラムとなったのは、線引きが困難であるからではないかと個人的には思っております。
ADHDは第Ⅳ版には更に細かく分類されています。

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これらは誰でも見ることは出来ますが、診断は必ず専門医に診て頂かなくてはなりません。


私たちはこれではないかと思うことはあっても、軽率に保護者の方に口にしてはいけないと思っております。
ピアノのレッスンでは、LD、ADHD、ASD、運動障害の可能性のある生徒さんに出会うことがあります。


その可能性があることを念頭に置いたレッスンは何も言わなくとも行うことは出来ます。
障がいのある人に有効なことは、ない人にも有効であると言われていますが、全くその通りです。
むやみに混乱したレッスンにならないように、基礎知識としてピアノ講師も発達障がいのことを知っておくべきだと思っています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参考文献
『発達障がいの子供たち』編者 細川徹 / 中央法規 / 2003年

参考サイト
DSM-5とは?診断の分類や目的・用途を解説
DSMⅣからDSM5への改訂で発達障害が神経発達障害と総称されます。
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf
https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/naiyou05.pdf
広汎性発達障害とは?自閉症スペクトラムとの違い、原因と症状、診断、受けられる支援を紹介します。 | LITALICO仕事ナビ
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どこ行くの

2023年01月17日 | 苦手なことがある子供たち

自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃の話です。
18年前です。


当時小学1年生の生徒さんを1月に引き継ぎました。
前年の夏からレッスンを始めたとのこと。


自閉症と言っても色々あります。
発達障がいは1つの症状だけが現れることはなく、自閉症とLD、LDとADHD、自閉症と知的障害など複数の症状を併せ持ちます。

以前は症状の強いものを診断名としていましたが、現在は症状のあるものは併記されます。


尚、アメリカ精神医学会(DSM)の第5版が2013年に作られ、1992年から使われていた第Ⅳ版(ここまではローマ数字表記)にあった自閉症・アスペルガー症候群・特定不能の発達障害は、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)に変更となりました。

現在では自閉スペクトラム症と言うようになっているようです。

この辺りのことは別の機会にいたします。




「〇〇ちゃん、どこ行くの?」

これは彼女がレッスン開始から3カ月間、口にしていた言葉です。
〇〇ちゃんとは自分の名前です。

レッスンが終わる時になると必ずそう言っていました。


いつも私は、
「〇〇ちゃんはお家に帰るのよ」とか、
「レッスンが終わったから、〇〇ちゃんはお家に帰るのよ」とか
「お父さんとお母さんとお家に帰るのよ」と答えていました。


私が答えても、それに答えを返すことも頷くこともなく、本人はただそれを訊くだけでした。



ある日、また同じことが始まったので今度は私が「〇〇ちゃん、どこ行くの?」と訊いてみました。


すると、彼女はニヤッとしました。


「〇〇ちゃん、ホントはどこ行くか知ってんでしょ?」


すると彼女は、またニヤッと笑いました。



それ以来、彼女はこの言葉を言わなくなりました。



彼女はいつも無表情で、何をやっても楽しんでくれているのか、そうではないのかが全く分かりませんでした。

彼女から表情を見たのはこれが初めてでした。


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