おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

「音の長さの感覚」がつかめない生徒(第14号)

2012年06月03日 | 苦手なことがある子供たち
実は、私がレッスンをしていて最も改善しにくいのがこの音の長さの感覚です。
これは子供、大人に関係なく一部の人たちに現れます。

何拍伸ばすかはわかっている場合が多く、リズム打ちも思ったよりできます。

ところが演奏となると特に長い音符に対してかなり不正確になります。
演奏しながら自然にテンポを感じる感覚が働いていないように思います。

その方たちが演奏している時に声を出して数えているのを聴いていると、2拍、3拍、4拍等はその前までとは
全く違うテンポでただ、「1,2」と言っています。
そして大抵、弾き始めの音だけ見てすぐに弾き始めます。

演奏を聴いていると音と音の間の感覚がなく、音は点として感じられているように聞こえます。
拍子感やテンポ感と言った枠がない状態で自分勝手に音を散りばめて弾いているといったらよいでしょうか。




これまで空間認知と運動能力について書いてきましたが、リズム感もこの2つの能力に関係していると思います。
特に空間認知の力です。目の前にない物の形、量感などを推測する力です。

音の長さは時間的な量感と言えます。その感覚を苦手としていると私は考えています。

音の長さの感覚がつかみにくい生徒さんにスーパーボールを弾ませてもらって下さい。
おそらく弾ませられないと思います。
弾ませるそのことしか考えていないので、ボールが戻ってくる時間を考慮していないのです。

しかし、ボールが戻ってくる時間を意識していただくと弾ませられるようになります。
そのあとでメロディーだけ弾いてもらって下さい。
聞いたこともないような滑らかさで演奏されると思います。

この感覚を育てることは容易ではありません。
子供の頃からバレエやダンスを習っていても、いつも1人だけ先に動き始めてしまい他の人と合わせられなかった話を
このような生徒さんからよく聞きます。

経験や訓練によってなかなか培われない感覚なのかもしれません。

だからと言って何もしないではいつまでたってもそのままです。
諦めずにリズム打ちは続けるべきです。
ヒンデミットの「音楽家の基礎練習」には、音楽家ではなくとも使えるものがたくさんありますので参考にしています。

このような生徒さんはこちらの手拍子に合わせて手を叩くことも苦手です。
特に大人になられてからピアノを始めた生徒さんです。
(大人の生徒さんでも元々リズム感の良い方はいらっしゃいますので、どの方もという話ではありません。)
テンポを変えて手を叩いてもテンポが速くなるとメチャクチャです。
どのテンポで叩いているか良く聴かずにいきなり叩き始めますので、こちらのテンポと合わないばかりかご自身のテンポも一定ではありません。

おそらくある意味、見通しを持つことを苦手としているのだと思います。

リズムの感覚を苦手としている生徒さんには難しいことが多いと思いますが、色々と続けていると次第に音の長さの感覚がつかめるところも増えてきます。
しかし、どうしても苦手なリズムはありますのでそこはおまけが必要です。

それから、レッスンではリズムのこと以外でもできるだけ空間認知の力を意識的に使ってもらいます。
次の音を出す直前に、その音と鍵盤の位置、そこにある自分の手の形や向きなどを瞬時にイメージするようにです。
音楽的なことまでは初めから要求しません。但し、いつも美しい響きの音であること。後からでは手の使い方を全てやり直さなければいけないことになりかねず、イメージしたものをまた変えなければなりませんので。

ピアノの蓋の上で弾いていただくことを多く取り入れていくと、自分がどれだけ正確にイメージを描かずにピアノを弾いているかが分かるはずです。




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ヒンデミットの「音楽家の基礎練習」音楽之友社

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追記:
以前、音の長さが目で見えるようにパタパタ定規のようなものを作ったことがあります。
「まん中のドが探せない」子供(第7号) - 音の国 / OTO-NO-KUNI

それに代わるものとして使えると思ったものがあるので、ご紹介します。

この丸を1拍なら1個、2拍なら2個と押すだけです。
丸を書いたり、リンゴを書いたりすることと似ていると思われるかもしれませんが、こちらの方が目の前に実物がある感覚を持てます。

長い音を伸ばす時に、最初は押した数だけそのまま手を叩いてしまうと思いますが、次第に心の中で数を数え、手の方はそのまま伸ばすことができてくると思います。

時間がかかるかもしれませんが、苦手意識がつかないように遊び感覚で出来れば、と思います。

2021年6月16日
コメント
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