〽 包丁一本 晒に巻いて
旅へ出るのも 板場の修業
待ってて こいさん 哀しいだろが
ああ 若い二人の
想い出にじむ法善寺
月も未練な 十三夜
ご存知、昭和35年に大ヒットした藤島桓夫の「月の法善寺横町」の歌詞です。
今日は法善寺をご紹介します。
「法善寺横丁」
法善寺横丁はミナミの繁華街にありながら、静かななにわ情緒を漂わせている横丁ですが、元々この地は浄土宗天龍山法善寺の境内で、参拝客相手の露店がいつしか横丁に発展し、戦後盛り場として復活したそうです。
長さ80m、幅3mの2本の路地が東西に伸びる横丁内には、老舗の割烹やバー、お好み焼き、串カツ店などがならび、東西両端にある門にそれぞれ掲げられた「法善寺横丁」の文字は、西は藤山寛美、東は3代目桂春団治によって書かれたものだと言うことです。
・西側入り口の看板です。
「法善寺」
法善寺は難波にある浄土宗の寺院で、山号は天龍山、ご本尊は阿弥陀如来です。
そのほか水掛不動(西向不動尊)や金毘羅堂などがあり、特に水掛不動は有名です。
当寺院は千日念仏を行ったことから俗に千日寺と呼ばれ、千日前という呼び名はこの寺院の門前に由来しています。
「水掛不動」
戦前にはお供えの意味で、命の元になる大切な水を供えていただけだったそうですが、有る時、女の人がお不動様に縋(すが)る思いで「水掛不動さん、願いを叶えて下さい」と水を掛けたのが始まりで、その時より水を掛けて祈念するようになったようです。
・全身苔に覆われている水掛不動です。
「不動明王」
不動明王は不動尊ともいい、大日如来の教令輪身(きょうれいりんしん)であって、火焔を背にして右手に剣を取り、左手に縄を持って憤怒の姿をしています。
不動明王の前で盛んに祈祷が行われるのは、不動明王には大威力があって難を除き、魔を降伏し、念ずる人の(祈願者の)どんな願いでも、すべての人にわけ隔てなく利益を与えてくれるからと言われています。
「夫婦善哉」
法善寺の横にあるぜんざいのお店です。
この店ではぜんざい一人前を2つの椀に出すことから夫婦善哉と言うようになり、織田作之助がこのお店や法善寺を舞台にして書いた小説・「夫婦善哉」で有名になりました。
このお店は文楽の太夫・竹本琴太夫こと「木文字(きもんじ)重兵衛」という人がはじめた「お福」という名のお店だそうで、一風変わった店と評判だったようです。
何が変わっていたかと言うと、このお店では一人前を注文すると二杯のお椀に分けて善哉が出てきたからです。
「なんで二つや」と聞かれると、店を切り盛りしていた重兵衛の妻「こと」と娘「かめ」はニッコリ笑って、「おおきに。めおとでんね」と答えたといいます。
実際は、二つのお椀に分けた方がたくさん入っているように見えると考えたからなのですが、これが大当たりし、その後の「夫婦善哉」へと繋がっていったそうです。
・織田作之助の小説「夫婦善哉」のモデルとなったお店です。