鵬と日食
日本時間の昨日(現地時間8月21日)、アメリカで皆既日食が観測されたニュースが報じられていました。
今回の日食は、ハワイを含む北太平洋の東側と北アメリカ大陸のすべて、南アメリカ大陸の北部、北大西洋地域の大部分、そしてアフリカ大陸の北大西洋沿岸および西ヨーロッパの一部までの広い範囲で見ることができたと言うことです。
この内、アメリカ西海岸のオレゴン州から東海岸のサウスカロライナ州まで、北アメリカ大陸を横断する帯状の地域で皆既日食となったそうです。
日食は、地球と太陽の間に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象のことです。
そして太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があり、日本では2016年3月9日に部分日食が観測されました。
この日食の現象を古代中国では飛んでいる「鵬(ほう)」が太陽を横切った為に起きる現象だと言われていたそうです。
鵬とは、古代中国の架空の動物で、伝えられるところによれば、背の大きさは数千里、翼は垂天の雲の如く一度に九万里を飛ぶと言う、気の遠くなるような大鳥だそうです。
この怪鳥のルーツは北海の果てに棲んでいる「鯤(こん)」という大魚が化したものだということです。
この鳥がひとたび力を込めて飛び立てば、翼は空一面に立ち込める雲かと思われるくらいで、海面がどよめき動くほどの猛風が吹き起こり、鵬はそれに乗じて北海の涯から南海の涯に飛ぶのだそうです。
斉諧(せいかい)と言う世の不思議を識る人の言葉によれば、鵬が南海に飛び移るには、海水に羽ばたくこと三千里、つむじ風にうち乗って上ること九万里、六ヶ月間飛び続けた後、初めて羽を休めると言います。
このような大きな鳥であるからこそ伝わる伝説も凄まじく、日蝕は飛んでいる鵬が太陽を横切った為に起きる現象という逸話まであるようです。
昨日アメリカで見られた皆既月食は、勿論、「鵬」が太陽を横切ったためではありませんが、科学的に解明されている現在の日食の理論から離れて、鵬が太陽を横切るという古代人のロマンを感じてみては如何でしょうか?